「・・・・被告人を無期懲役に処す。理由・・・・」


あれから20年が過ぎた。

最初にくいず野郎から電話が来てからは32年が過ぎている。

騙され続け、3億円強盗の濡れ衣で10年の懲役をくらい、その復讐にくいず野郎を殺し・・

たと思ったら、人違いで全く関わりのない人間を殺してしまいその償いに20年を費やした。

今日晴れて仮出所となったが俺の気持ちはもう決まっていた。

いや、この32年それだけを思い続けて生きてきた。

あのくいず野郎を殺してやる。

絶対に殺す。

当然だ。

何の罪もないこの俺を罠にかけ人生をボロボロにされたのだ。

それ以外にあいつに罪を償わせる方法は無い。


前回はAKB探偵社とか云うペテン師探偵にガセネタを掴まされ、赤の他人を殺してしまった。

今回はそんな間違いは犯すわけにはいかない。

なので有名な探偵2人に別個依頼して裏とりするのも忘れない様にした。

因みに有名な探偵二人とは渡辺探偵事務所のサワタリさんと亜愛探偵事務所のアアイさんだ。

この二人なら一人だけでも大丈夫だろうが、念には念を入れて二人に依頼したのだ。

依頼して3ヶ月、ほぼ同時期に二人の探偵から調査報告書が届いた。

二人共全く同じ人物を特定した報告をしていた。

多田 仁・・・ただひとし・・・憎んでも憎みきれないくいず野郎・・・・

前回のAKB探偵社のペテン師野郎は大田 仁・・おおたひとし をそいつだと報告してきたが、ただのけちな詐欺師だった。

そうとも知らずおれは何ヶ月もそいつを付け回し、用意周到にそいつを殺したのにその瞬間くいず野郎から電話が来ておれは絶望のどん底に突き落とされた。

今回は絶対にそんなミスはしない。


俺は多田 仁の居所を突き止め、そいつを監視し始めた。

報告書によると多田は32年前に宝くじに当たりそのお金を元に今の事業を起こし成功を収めていた。

いや、違う!その金は3億円強盗で盗んだ金だ。

俺に1億だけくいずの賞金として渡し、俺がそれに気づかず大盤振る舞いして遊んで警察に目をつけられ、その上盗まれた金で製造番号のわかっていた紙幣全てが俺が使った金から出てきたのだ。

おれの言い訳等警察が信用するはずが無かった。

その残りの足がつかない2億であいつはこんな贅沢な暮らしを32年続けていやがるんだ。

俺の32年を犠牲にして・・・・・

絶対殺してやる。

その思いがドンドン増幅されていく。

それから1年、おれはあいつを監視し続けた。

あいつの行動パターン全てを完璧に理解し、あいつの弱みも分かった。


今日は俺の誕生日・・・60になった。

あいつさえ居なければ俺は27という人生で最高の時期から今までどんな人生を送れていたんだろう・・・・

前回は殺した後の事まで用意周到に準備していたが、あいつが通報しやがった為にそれも無と帰した。

今回は後のことなどもうどうでもいいので確実に殺せるその時だけを待っていた。

そして偶然にも俺の誕生日にその日はやってきた。

あいつが取引先とゴルフに行く事になっていた為あいつは今朝早くからゴルフ場で待機していたが、相手の都合が悪くなりゴルフ場でキャンセルを知らされた。

そのまま帰るかと思っていたが、あいつは1人でコースに出てラウンドして帰るつもりのようだ。

そばに居るのは年を取ったキャディーだけだ。

こんなチャンスは滅多に無い。

俺は即決した。

今日、ここでアイツを殺してやる。


あいつがコースに出て30分ほどは林の影から様子を見ていた。

周りには人影なし。

あいつは調子が良いらしく上機嫌だった。

まあいい・・・人生最後のひととき位上機嫌でいれば良い。

その方がおれに殺される時の絶望も深いだろう。

俺はあいつを殺す時を9ホール目と決めた。

また30分過ぎてその時はついにやってきた。

あいつが9ホール目をホールアウトした瞬間、あいつの後ろに忍び寄り持ってきたアーミーナイフであいつを一突きした。


「キャーーーーーー!!!!!」


年寄りキャディの悲鳴がゴルフ場に響き渡った。


遂に、遂に、俺は復讐を果たしたのだ・・・・・

俺は感無量だった。

何の後悔もなく、ただただ至福の時間を過ごした。


「プルル・・・・プルル・・・・」


その時携帯が鳴った。

俺の背筋が凍る・・・・・

まさか・・・・いや、そんな筈は無い。

用心に用心を重ね、この復讐を果たしたのだ。

恐る恐る電話に出た。


「はい・・・・どちら様?」


「・・・・・・・・・・」


「もしもし・・・・どちら様?・・・・」


「・・・・・・・・・・」


「ちっ!イタ電かよ!」


俺が電話を切ろうとした瞬間・・・


「・・・・・・くいずです!そこに倒れてる人はだ~れだ?」


・・・・・・そんな・・・・馬鹿な・・・・


あの忌まわしい声が聞こえた。



「う、嘘だろ!!!そんな馬鹿な・・・お前は今、俺が殺した筈だ~~~~~~!!!」


「ぷぷぷ・・・・また人違いで人殺ししてしまいましたね~!」


「そ、そんな筈は無い。俺は今回は2重3重に用心して計画したんだ。間違えるはずがない!!!」


「でも、人違いですよ~~~ぷぷぷ・・・・」


「そんな・・・前回、お前も自分の名前を多田 仁だと名乗ったではないか~!」


「ぷぷぷ・・・・どうして私が本名を名乗るんですか?嘘に決まってるでしょう。ぷぷぷ・・・・」


「そんな・・・じゃあ・・・今回の探偵が2人共間違ったとでも言うのか!」


「ぷぷぷ・・・・32年前、いや33年前にその多田 仁さんが宝くじに当たったので、その時から前回の大田 仁さんと同じく私がそれらしくなりすましていただけですよ。」


「そ、そんな・・・・・お前は、お前は一体何者なんだ・・・・・」


ピーポーピーポー・・・・


遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきた。

分かっている、またコイツが通報したんだ・・・・


「まあ・・・それはあの世でじっくり考えて下さいね♪時間は永遠にありますから・・・ぷぷぷ・・・・」


「く、くそ~~~~~!!!!貴様~~~~~~!!!!」


「まあ・・・そう、興奮しないで。・・・では、人生最後のくいずです!」


「う、うるさ~~~い!!!」


「まあ・・・まあ・・・では問題です。あのパトカーは一体誰を捕まえに来ているんでしょう?チチチ・・・・制限時間は3分です。」


「・・・・・くそ~~~!!俺だろ!お前が通報したんだろ!」


「ピンポ~ン!!!!正解です!!!凄いですね~~~!おめでとう~ございま~す!」


「う、うるさ~~~~い!」


「では、賞品の発表で~す!!!!!ドロドロドロ・・・・・賞品は~!絞首刑のロープで~す!!!!!」


「う、うるさ~」


プチッ・・・・・


電話は切れていた・・・・・


俺の側には宝くじに当たって人生を謳歌していた何の罪もない人が倒れていた。


俺はその場に崩れ落ちた・・・・・






今日も真夜中に電話の音がする。


「プルルル・・・・プルルル・・・・くいずです!」





閑話休題
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