百鬼夜行抄 外伝 3-3

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猫バスの運転手さんのトロール(別名トトロ)が(ちょっと脅かしたので)逃げるように立ち去った後、居間に戻る途中で妖怪とすれ違った。


のほほんした感じの妖怪で何の悪意も感じなかったのでそのままやり過ごしたが、後でその時の事を後悔するとは思いもしなかった。


兎に角、その時気になっていたのは剣呑な感じのおばさんだったのだ。


居間に戻ると母が誰かと電話していた。


その間も居間の物の怪の達は自分たちの状況も知らず、和気藹々楽しそうにしていた。


勿論、一人を除いて。


席に戻ってお茶してると電話を終えた母がちょっと慌てた感じで僕に耳打ちしてきた。


「純ちゃん、寿子おばさんが入院したらしいの。私、ちょっと病院に行って来るね。後はお願いね。」


う~ん・・・・お願いされても困るけど、まあ、この物の怪の中に居て何かあるといけないので、丁度良かったかも知れない。


「あ、うん、分かった。ゆっくりしてきて良いよ。」


「じゃ、お願いね・・・もう今日ちゃん泣かしちゃダメよ。」


「あ、あれは・・・」


言い訳する暇もなく・・・


「皆さん、ごめんなさいね~、ちょっと急用が出来て出かけなくてはいけなくなりました。後の事は息子がお世話させて頂きますので、ごゆくっり寛いで修理が終わるの待っていて下さいね。」


「あ、はい、ありがとうございます。お気になさらず・・・お気をつけて。」


意外な事に母に声をかけたのはあの剣呑おばさんだった。


「は~い、じゃあ、行ってきます。」


朱雀(今日子)と母を見送って再び居間に戻る途中ある準備を朱雀にするよう伝えた。


「えっ?・・・何すんの、おにま・・・」


「まあ・・・もしもの時の備えだよ。さあ、早く。」


「あ、うん・・・分かった。」


朱雀が準備をしてる間に後々面倒臭い事になりそうなのであの剣呑おばさんをどうにかして置こう。


で、居間に戻ってすぐ取り掛かった。


「奥さん、すいませんが、どこかでお会いしたことがありますか?」


意表を付いたのかちょっと面食らった感じでおばさんは言い澱んだ。


「あ・・・それは・・・・」


「いや・・・別に良いんですけど、何と無くこちらを見る感じがそんな感じでしたので・・・」


「はあ・・・あの、坊っちゃん、お名前は純?さん?なんですか?」


「あ、いえ、母はそう呼んでいましたが、純一郎と云います。それが何か?」


「あ、その・・・以前、知って居た方とホントに良く似ていらっしゃるので・・・」


「・・・そんなに似ているんですか?・・・その方のお名前はなんとおっしゃるんですか?」


「あ、はい・・・八雲さんと言います。」


「えっ?・・・・小泉八雲ですか?」


「あ、はい・・・ご存知なんですか?」


「・・・・うんと・・・僕の祖父です。」


「えっ?・・・いや・・・そんな筈は・・・だってお会いしたのはほんの2年ほど前ですから・・・」


2年・・・・僕とそっくりな感じだった頃のおじいちゃんと2年前って事は、このおばさん死んでから50年以上経ってるって事か~・・・


「え~っと・・・じゃあ、きっと同姓同名の他人の空似なのかも知れませんね。」


そんな事、どんだけ凄い確率なんだって。


「はあ・・・今日丁度その方とのお約束の日で、お約束の場所に向かう途中だったので・・・坊っちゃんを始め見た時あまりに似てたので、迎えにきてくれたのかと思ったのに素知らぬ顔だったので・・・ちょっと怒った顔していたかも知れません・・・坊っちゃんごめんなさいね。」


おやおや~・・・爺ちゃん、何か約束していたのか~・・・何だろ?僕と同じくらいの年頃でこのおばさんと逢引って事では無いだろうし・・・


「そうですか・・・どんなお約束されていたのですか?差支えが無ければ教えて貰えませんか?」


「・・・え~・・・差支えは無いんですけど、そんなに大したお約束じゃ無いんですよ。」


「・・・構いませんよ、バスのが終わるまでしばらく時間がありそうなので宜しければ。」


「はあ・・・では・・・丁度2年前の今日ちょっとご相談があったものである場所で八雲さんとお会いしまして、その時にでは2年後にお渡ししましょうってお約束頂いたんです。」


「・・・はあ、何を貰うお約束されたんですか?」


「はい、その・・・・」


おや?何だ?ちょっと妖気が強くなってる・・・・


「言いにくい事でしたら、無理に言わなくても良いですよ。」


「いえ・・・その・・・・ぐぁ~~~~~!!!!」



あ、やっぱり・・・普通じゃないと思ったんだ・・・鬼ババアだった・・


「きゃ~~~~!!!」


「うわあ~~~~~」


テーブルの客たちが悲鳴を上げながら逃げ惑った。(けど、アンタ達だって仲間なんだけどw)


鬼ババアくらいじゃこれまでの経験で驚きもしないので、平然と問いかけた。


「まあ、そんなに興奮しないで、落ち着いて話しましょう。」


ヒソヒソ・・・(僕の後ろに隠れた物の怪達が・・・)


「鬼よ、鬼だわ。」


「ああ、ど、ど、どうしましょう~」


「・・・む、息子さんが何とかして下さるみたいなんで静かにしていましょう。」


「そ、そ、そうですね・・・くわばら、くわばら・・・」



ふん、勝手な事言ってら!


「うお~~~~!約束じゃ~~~~!お主の肝を食わせろ~!」


「う~ん・・・約束って、良く似た他人の空似の人との約束でしょ?僕は関係無いじゃんか。」


「うお~~~~~~!!!やかまし~~~ぃ~~~。そんな事はもうどうでもいいんじゃ。その顔の人間の肝を食えればいいんじゃ~!」


「それは、ダメでしょ?・・・ちゃんと約束は守らないと。ね。」



「う、うお~~~~~~!!!!約束を守って2年待ったんじゃ~~~!ほれ!!ここに二年後に肝を差し上げます。って書いてあるじゃろう~~~~!!!」


「どれどれ・・・」


鬼ババアが差し出した便箋を受け取ったら、確かにおじいちゃんの字で ”二年後に肝を差し上げます”って書いてある。


爺ちゃん、何考えてたんだろ?


う~ん・・・困ったぞ、どうしたもんかな~・・・と、悩んでいたところに朱雀が準備を終えて戻って来た。


「な、何?なんの騒ぎなの?おにま・・・」


「う~ん・・・まあ・・・ちょっとね・・・あ、良いこと思いついた。朱雀、ちょっとペン貸して。」


朱雀がいつも持ち歩いている魔除けの筆ペンを受け取って、チョチョイのチョイっと。


「あ、これ、二年後じゃ無いじゃん。おばさん、これじゃ肝は食わしてあげれないよ。」


「な、何を言ってるんじゃ~!確かに二年後にって書いてあるじゃろうが~~~!」


「ううん。違うよ、ほら!!」


二年後 って処に棒を1本足してやったもん。


「何がじゃ~~~、ふん・・・・うっ!!!いや・・・確かに二年後って・・・」


「ダメだよー、嘘はいけないよ~。・・・おばさん、わかった、僕がその約束守ってあげるよ。今度はちゃんと千年後に来るんだよ。ね。」


「う・・・いや・・・その・・・しかし・・・・・」


「あ、そ、じゃあ、その約束は反故にする?」


「あ、いや・・・わ、分った。ちゃんと約束は守るから・・・ちゃんと肝をくれるんだね~?」


「ああ・・・僕も男だ。嘘なんか付かないよ!!」


「わかった~~~~!!!じゃあ、千年後にまた会おうぞ~~~~!!!」



声を響かせながら鬼ババアは露と消えた・・・





千年後ねぇ~・・・・まあ知ったこっちゃないわな。





続く
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