薔薇は美しく散る








私は県内屈指の進学校で教師をしている。


その教師の中でも1,2を争う優秀な教師だという評価を周りから貰っている。


勿論、女生徒に手を出すなんて有り得ない。


品行方正で生徒皆から慕われる立派な教師なのである。


しかし・・・そんな私がよりによって自分の担当するクラスの生徒に恋をしてしまった。


イヤイヤ・・・そこは勿論自制心できっちり、誰にもそんな事は気取らせない。


しかし・・・・・




その日は丁度当番で下校時間後の見回りで校内の教室を回っていた。


あらかた回り終えて丁度自分のクラスに行き着いたところ・・・


私が恋心を抱いている坂下望が教室の真ん中にポツンと立っていた。


「おい、坂下。どうした、下校時間はとっくに過ぎてるぞ。早く帰れ。」


「あ、先生・・・先生を待ってたの・・・」


「あん?私をか?」


「はい・・・先生にちょっと話があって・・・」


「ん?・・・なんだ?・・・遠慮せずに言ってみろ。」


「・・・・あの・・・・あのね・・・・」


「なんだ・・・何か言いにくいことなのか?」


「うん・・・・あのね・・・」


「ああ・・・」


「先生が・・・・先生が・・・・」


言い終える前に望が私に思い切り抱きついて来た。


「先生が好きなの~~~!!!」


勿論私は望の体を離そうと肩を押したが、若さに勝てずそのままの姿勢で嗜める事になってしまった。


「・・・おい、坂下、ダメだ、こんな事をしちゃ。・・・離れるんだ。」


そう言いながらも私は心の奥でそのままでいることを望んでいた。


「いや・・・だって、先生が好きなの。先生、私の事、嫌い?」


「・・・いや、そんな事は無いが・・・君は私の生徒なんだ。だから・・・」


私が言い終える前に望は私の唇に自らの唇を重ねた。


「う・・・・だめるんば・・・さくあした・・・・」


何とか引き離そうと望の肩を押したが、全力で私の首を抑えてる望の力に私は屈した。


いや・・・本当は私の押す力は殆ど無いほど弱かった。


されるがママになってるうちに、遂に私の自制心は崩壊してしまった。


自分の恋焦がれる相手に口づけされているこの状況で自制心が働き続ける人間が果たしてどれくらいいるだろう。


私も大多数の一人だった。


思わず強く望を抱きしめ望の唇を激しく求めた。


お互いの思いが交錯し互いを求め合った。


その内私は望の体を上から下へと手のひらで愛撫していった。


「あん・・・先生・・・ここじゃ、ヤダ・・・」


はっと自分がいる場所を思い出した。


「あ・・・すまん・・・」


「ううん・・・違う・・・嫌じゃない・・・でも、ここは・・」


「ああ・・・いや、それより・・・すまん・・つい・・・・」


「ううん・・・わかってるから・・・・」


「あ、あのな坂下・・・」


「いいの、先生は何も言わなくて。わかってるから・・・・


片思いじゃ無くて・・、嬉しい・・・・」


赤らめた顔を恥ずかしそうに下へ向け俯いている望をそのまま押し倒してしまいたかった。


何とか自らの欲望を抑えこんで帰りを促した。



「坂下、帰ろう。」


「うん・・・先生、一緒に帰ろ♡♡♡」


「ああ・・・わかった。どこかで少し話をしようか。」


「うん・・・いいよ。」



少し後ろをついてくる望も私もなかなか口を開かなかった。


その時望からメールが届いた。


(なんか、恥ずかしいね♪・・・大好きだよ、せんせ♡♡♡)


私も面と向かっては言えなかった気持ちをメールと云う気軽さもあってつい言ってしまった。

(そうだね・・・私も望の事が好きだったよ。でも言えなかったんだ。)


(うん・・・わかってる、今スッゴク幸せ♡)


そんな甘いメールを何度もやりとりしているうちに坂の下にある歓楽街、ホテル街に差し掛かった。


思わずふたりともメールのやり取りが止まった。


ちょっと気まずい空気が漂ったがそこは何とか自制心を働かせて素知らぬふりでその通りを抜けようとしていた最後のホテルの入口の前で望が立ち止まって私の腕を取った。


「・・・ちょ・・・いや、それはダメだ、それは・・・」


言い澱む私の腕をまた力いっぱい引っ張って入り口に入ってしまった。


その時稲光が空を走った様な気が・・、いや、私の自制心が雷に打たれて砕け散ったのかも知れない。


入り口からは私の方が望を引っ張っていく形になった。


部屋の前まで来た時、何とか自制心がもう一度顔を擡げてきた。


「・・・やっぱり、いかん、これはいかん・・・」


望の手を取り引き返そうとした時、望の唇が私の唇を再び塞いだ。


折角戻ってきた自制心は木っ端微塵に砕け散った。


乱暴にドアを開けて激しく求め合いながら部屋に入って行った。


もつれ合いながらベッドに望を押し倒した時、望がいきなり私を押し退けた。


「やだ、ダメ・・・・」


私は突然の拒絶に戸惑った。


「あ・・・いや・・すまん・・・いきなりだったね・・・」


「先生、ちょっとお話しよう・・」


「あ、ああ・・・そ、そうだな・・・」



ベッドから立ち上がって中央のソファーに座った。


「済まなかった。年甲斐も無く興奮してしまって・・・」


無理やり押し倒してしまいたい欲望をなんとか押し殺して望に話しかけた。


「そうね・・・あんまりスマートじゃ無いよね。」


いきなり望の声のトーンが変わって私は面食らった。


「あ・・・申し訳なかった・・・・」


「まあ・・・いいけど・・・先生、・・・お金がいるの・・・」


えっ?まさか・・・援交しようって事なのか?そんな・・・


「あ・・・あの・・・坂下は私の事が好きなんじゃなかったのか?」


「・・・・・好きだよ。」


「じゃあ、なんで援交・・・」


「違うよ、何勘違いしてんだよ。」


口調だけでは無く、明らかに態度まで変わった望に私は呆然とした。


「先生、さっきのメールのやり取り覚えてる?」


「ああ・・・勿論だ。覚えてるとも。」


「そう、じゃあ、話は早いね。相方がさ、カードで借金作っちゃってさ。金がいるんだ。」


「えっ?相方?・・・・」


「んっとに鈍いね~!脅してんだよ。メールも、このホテル入るときの写真もあるよ。」


あ・・・あの稲光・・・フラッシュだったのか・・・


「どうすんの?払うの?」


「いくらだ・・・・」


「まあ・・・そんなにエグいことは言わないからさ、借金の300万で手を打つよ」


「えっ?さ、300万!!!そんな・・・」


「なんだ、良いのか?メールも写真もばら撒くよ!!!いいの?担任が自分の生徒をホテルに連れ込んで。しかも男子生徒を!スキャンダルだよな~・・・ホモ教師!」


そう、坂下望(さかした のぞむ)は男子生徒なのだ。・・・ホモで悪いか!!!


「・・・じ、自分だって・・・・」


「あ~~~んん!何だって~?・・・どうすんだ!払うのか!!!」


「・・・は・・・・はい・・・払います・・・・・」


閑話休題
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