真夏の夜の夢

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真っ暗な海の上を静かにボートを漕いでいた。


新月なのか空には月もない。


遠くに微かに見える星々に湖面が照らされ、漆黒の波間に僅かに煌めく灯り。


そのボートの縁をいきなり真っ白な手が掴んで、湖面からずぶ濡れの白装束の女が姿を現した。


「う、うわぁ~~!!!!」


私は思わず悲鳴を上げた。




ジリリリリリ~~~~~~・・・


目覚まし時計のけたたましい音で、ハッと目を覚ました。


パジャマ代わりのTシャツは汗びっしょりだった。


「う・・・・酷い悪夢だった・・・」


誰も居ない部屋にひとりごとが響いた。


その響きが不自然で私は周りを見渡した。


奥のテレビ台の上に50型ほどありそうなかなり大きなテレビ。


四方の壁には窓がひとつもない。


古びたカレンダーがひとつ。


私が寝ていたベッドの正面にガラステーブル。


その上には灰皿がひとつ。


・・・・ここはどこだ。


全く見覚えがない。


私はテレビが嫌いで部屋にテレビを置いたこともない。


タバコの煙が嫌いで生まれてこの方タバコは一度も吸ったことがない。


カレンダーの年号は1999年・・・20年以上前の暦・・・・


「一体何がどうなっているんだ」



また私のひとりごとが不自然に響いた。


取り敢えず起き上がってテレビのスイッチを入れてみた。


映しだされた画面にいきなり私の姿が・・・・



「な、な、なんだ・・・これは・・・・」


「昨日神宮橋の路上で殺害された川村ゆかりさんの事件に進展です。本日神宮橋署は住所不定無職の高橋洋一を重要参考人として全国に指名手配しました・・・」


川村ゆかり??高橋洋一??


どちらの名前も全く知らない。



「一体何がどうなっているんだ!!!」




ハッと目が覚めた。


汗びっしょりで悪い夢を見ていたようだ。


取り敢えずベッドから起き上がってテーブルの上のタバコに火を点ける。

「ふぅ~・・・生き返った・・・。」


うん?・・・ここはどこだ?・・・いや・・・それより、俺は誰だ?・・・・


いきなり恐怖が身を包む。


取り敢えず手元にあったリモコンでテレビをつけた。


映しだされた画面にいきなり俺の写真が・・・


「・・・・殺害されたのは会社員高橋洋一さん25歳で、駆けつけた警察官により殺人の現行犯で逮捕されたのは高橋さんの元交際相手の川村ゆかり容疑者22歳・・・・」


「な、何を言ってるんだ。俺はここにいるぞ、それに・・・」


高橋洋一も川村ゆかりも知らない・・・・


何なんだ、一体何がどうなっているんだ!!!



ハッと目を覚ました。


「しかし・・嫌な夢だった・・・」


汗びっしょりのTシャツに不快感を覚えながら起き上がり、目覚めのコーヒーを淹れて一服しているとチャイムが鳴った。


「なんだよ、こんな朝早く・・・・」


渋々玄関へ向かい、ドアを開ける。


「はい、どちらさん?」


ドアを開けたそこに居たのはさっきの夢の中で俺を殺した犯人の女・・・・




ハッと目を覚ました。


悪夢だ。


何なんだ一体何がどうなっているんだ。


周りを見渡すと部屋中真っ白・・・


何もない空間だ。


どうしてしまったんだ。


どれが夢でどれが現実なんだ。


「だ、誰か、助けてくれ~~~~~」


不自然な声が部屋中に響いた。





ピー、ピー・・・・・


私は病室に寝ていた。いや、私の体は病室に寝ていた。


私は寝ている私の体の上に浮かんでいた。


「先生!高橋さん急変です!!」


ベッドについてるインタホンに向かい看護師が医者を呼んでいた。


しかし、その右手側には使用後の劇薬アンプルと注射器・・・・


看護師が宙に浮いてる私に向かってニヤリと笑った。


「えっ?私が見えるのか?」


それには答えず看護師はニヤリと笑い続けていた。


胸に付いてるネームプレートを見て私は絶望した。


看護師 川村ゆかり





閑話休題
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