メイド喫茶


夏のまばゆい日差しが少しだけ優しく感じられるようになってきた頃、私は一人見知らぬ町に立っていた。

見知らぬ建物、見知らぬ人々、・・・・
突然の出来事に私は声を失った。

「ここは何処だ・・・」

つい独り言を言っていた。

「お若いの・・・どうなさった?」

白髪の老人が呆然と立ち尽くす私に声を掛けてきた。

「はあ・・・いったい此処は何処でしょうか?」

「ふぉっふぉっふぉっ・・・時々おぬしのような御仁にお目にかかるのう・・」

「はあ?いったいそれはどういう意味ですか?」

「ふぉっふぉっふぉっ・・・まあ、此処は忘却の町とでも言っておこうかのう・・」

「はあ・・・忘却の町・・どういうことですか?」

「まあまあ、すぐに思い出すはずじゃ!焦らずとも良かろう・・・」


そう言い残して老人はさっさと私の前から姿を消した。

私はまたしても途方に暮れる羽目に陥った。

途方に暮れつつ町の中をウロウロしていると、無性にのどが渇いてきたので目の前にあった一軒の喫茶店に入ることにした。

入って即驚いた。

其処は金髪の少女ばかりのメイド喫茶だったのだ。

話に聞いたことはあったが、現実のメイド喫茶・・・しかも、金髪の少女ばかりのメイド喫茶なんて初めてだった。

「お帰りなさいませご主人様~!」

また驚いた!金髪の外国人だと思っていた少女達は日本人だった・・・
導かれるまま少女の後について席に着くと・・三度の驚愕に声を失った・・・

座席に私の名札があったのだ!

「これはいったいどういうことなんだ!」

思わず声を荒げてしまい自分で驚く始末だ。

「ご主人様・・だいじょうぶですか?」

金髪の少女が心配そうに私を見ていた。

「だ、大丈夫だ・・・なんでもない・・・」

怪訝な表情を浮かべながら少女はカウンターへ戻って行った。

一人取り残された形の私は動転したままの頭で必死にこの状況を整理し始めたが、余りのことになんらその成果を上げることが出来ない。

少女がオーダーを取り、アイスコーヒーを運び、飲み干し、お変わりを注文する。
お変わりが運ばれ、飲み干す。
それでも、なんら答えは出ない。

そうこうするうちに、店の中にいた客達が一人、また一人、店を後にしだした。

一向にこの状況を飲み込めないままであったが、ついに最後の一人になってしまい身の置き所を失った。

「勘定してくれ・・」

「はい、ご主人様・・・お代は結構です。・・・良い旅を・・」

「ん?旅?私は旅をしていたのか?」

少女は何を言っているのか解からない風の表情のままテーブルを後にした。

私は仕方なく席を立ち出口に向かった。

「あ、ご主人様!そちらは、入り口専用です。出口はあちらになっています。」

「えっ?あ、ああ・・わかりました・・。」

言われるまま入り口と反対方向のドアから外へ出た。


店を出て・・今日何回目かの驚愕に襲われた。


























店を出てすぐ、ほんの目の前が河原、川が流れていた。

三途の川だ!・・・・

私は死んでいたのか・・・・・

店の名前は・・・・・

「冥途喫茶」・・・だった・・・・。



閑話休題
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