三茶狼の誕生日

私はみんなから、三茶狼と呼ばれ恐れ…忌み嫌われている。
こら!
三茶楼ではない!

中華屋じゃない!


この道では、知る人ぞ知る偉大な…伝説的人物なのだ。


しかし、そんな私も毎年この時期になると気が滅入る。

どんなに人に恐れられ…私が歩くと川が割れたように人並みが一本の通り道を作る。

私が睨むだけで、人々は縮み上がり、私が怒鳴ると人々は地べたにひれ伏してしまう。

そんな私でも…
いや、そんな私だからこそ、毎年の誕生日を傍で祝ってくれる人が誰ひとりいない。

これは、結構キツいもんだ。
正月や盆、クリスマスなんかは、独りきりだって大した事ない。
そこら中でお祝いだらけだから…。

だが、誕生日は違う。
誰ひとり私の誕生日なぞ知らぬから、どんなに私を恐れていても私を祝ってはくれない。

誕生日にケーキなぞ食べたのは、ガキの頃以来…

ふん!
また今年も、酒でも引っ掛けてさっさと寝ちまうしかねぇな…。


まあ土地がら飲み屋は溢れ返ってるから苦労しない。


(チャリン…バタン)


「おー!久しぶりですね~ダンナ!」

「ちっ!この店は客にいらっしゃいの一言もねぇのか!」

「あはは…いらっしゃーい…なんにしやすか?」

「バーボンだ」

「はい…。」

「どうだ景気は…。」

「ええ…ダンナのおかげでボチボチです。」

「ダンナはやめろ!」

「あ、すいません!ちょっと癖で…藤田社長のおかげでボチボチ儲かってます!」

「そうか、まあ、良かったな…。」

「ところで、暗い顔してますがなんかあったんですか?」

「…いや、別になんでもない。」


その時、店のドアが開き誰か入って来たようだった。

私はいつもなら、決して注意を怠らない。
しかし、今日はやっぱりどうかしていた…。
その人物が背後に近づくまで全く気がつかなかった。


「ふじたー!誕生日おめでとうー!」

ん?私の誕生日を祝ってくれる…しかも女の声だ。

私はゆっくり振り返った。


《ブス!》

鈍い小さな音が腹部からした…。


この女は…
この間消した商売敵の奥菜の女…。

「ふじた…いい誕生日だろ。あたしが祝ってやるよ。
ハッピーバースデートゥユー…線香もあげてやる…ククク…。」


床が私の鮮血で染まる。


そうだな…。

久しぶりに他人に祝って貰った。


「ありがとう…。」


それが、今年の誕生日の出来事だ。



閑話休題
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