everyday、カチューシャ

初夏の日差しが教室の窓をキラキラ輝かせている。

衣替えも終わり、夏が近い事を学生達の服装が知らせていた。

眩しそうに目を細めながら、その少女は一人の男子生徒を見つめている。

少女と彼は入学以来同じクラスであった。
季節は巡り、3度目の夏が訪れようとしていたが少女と彼はクラスメイト、友達の域を超える事はなかった。

少女は入学以来、彼に想いを寄せていたが、彼にそれを伝える勇気がなく、また彼もそんな少女の心内を知ってか知らずかいつも素っ気ない態度を取り続けた。


チャイムが休憩時間の終了を知らせた。

次の授業は音楽。

生徒達はそれぞれ友人と連れ立って音楽室へと移動を始めた。

少女も仲の良い友人と軽口を叩きながら移動していた。

その時急に後ろから声が掛けられた。


「柏木!お前今日のテスト、何歌うんだ?」


少女は突然彼から話し掛けられ驚いたが、驚き以上の嬉しさで舞い上がってしまい何を答えたのかさえ覚えがなかった。

ぼーっとしている少女に彼は追い討ちを掛けた。


「オレ、everyday、カチューシャ 歌うんだ!」


弾ける笑顔で彼がその後続けた話しは少女の耳には届いていなかった。

カチューシャ…入学以来少女のトレードマークだ。

少女は喜びで溢れそうになる涙を必死にこらえて音楽室へ入った。

授業が始まり、声楽のテストが順調に進んでいよいよ彼の順番となった。

彼が曲名を告げると教室内がざわめいた。

クラスメイトみんなが、カチューシャが少女のトレードマークである事を承知していたから。


「♪…こんな想って…もっと好きになるよ~…綺麗になった今日…好きだ…好きだ…好きだ…♪」


教室内は冷やかしの嵐となり、少女は喜びと恥ずかしさで顔を上げる事が出来なかった。

彼の歌が終わり、教室内の拍手と歓声が最高潮に達した時、音楽教師が彼に言った。


「静かに~!はい!お終い!秋元君…。まあ、歌自体は良く出来ました…でも、授業中に告白はいただけないなぁ…。そこ、減点します。」


え~!
ひどい~!
かわいそー!


クラス中から、非難の声が挙がるなか彼が呆然と答えた。


「告白って…何の事ですか~?」


教室中が静まり返った。


そう…。
彼はタダのAKBファンだったのだ。


哀れ少女…。



閑話休題
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