音楽は自由にする/坂本龍一

¥1,785
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坂本龍一さんのインタビューを元にした自伝です。

なんと才能豊かな方だろうと思っていましたが、その陰には、ご両親、祖父母の影響があったのだと知りました。

お母さんは、幼稚園選びからよく考えていらっしゃって、才能教育をしている自由な幼稚園を選択。
小学校の入学式には真っ白のブレザーを着せたり。(とても目立って恥ずかしかったとか)

お母さんの「人と同じことに付和雷同する人間になるな」という強い方針を感じました。

お父さんは編集者でとても忙しかったようですが、教育熱心なお父さんでした。

坂本龍一さんの生まれもった才能もありますが、ご両親の方針の中で、自由に自分を生かした活動をしていく伸びやかさを感じて、とても素敵だなと思いました。

その後、YMOの仲間と知り合い、世界的な音楽家へと活動の場を広げて行くのですが、チャンスを確実につかむ姿にどん欲さはなく、どちらかというと、向こうからやってくる、というイメージがありました。

坂本龍一さんが、ドビュッシーをとてもお好きだったと知り、共感しました。私もドビュッシーが一番好きで、ピアノ曲のCDを高校時代に聞き、全身に電流が流れたような感覚になったことを思い出しました。

一人の人がどのように成功したのか、その背景を知るだけでも、かなり面白い自伝だと思います。彼のことをあまり知らない人でも、楽しめる一冊だと感じました。
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打ちのめされるようなすごい本/米原 万里

¥2,400
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癌で他界された、エッセイストの米原万里さんの書評本です。

2006年5月にがんで他界した著者の、『週刊文春』に連載された渾身のがん闘病記である「私の読書日記」と、1995年から2005年までのほぼ全ての書評を収録する。井上ひさしによる解説付き。

米原さんが打ちのめされたすごい本たちを紹介されていますが、この本こそ、打ちのめされるようなすごい本だと思いました。

シニカルでユニークな視点でありながら、真摯で情熱的な米原さんならではの、本のチョイス。
私も何冊かピックアップしました。これから米原さんお勧め本を読むのが楽しみです。

個人的に打たれたのは、米原さんの闘病記です。
最後の最後まで、自分の病気から目をそらさず、一般的な治療に甘んじず、沢山の本を読み、沢山の病院を訪れ、自分の納得のいく治療をしようと闘った米原さん。
最後は天命を全うされましたが、その生き方は米原さんらしく、妥協しない人生の選択だったと思います。
残されたものは多大です。そこから影響を受ける人は沢山いるでしょう。

米原さんの命はそうして受け継がれて行くのだと思います。ご冥福をお祈りします。

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嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)/米原 万里

¥580
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作家の森絵都さんのお勧め本で知りました。
米原万里さんは、ロシア語の通訳、翻訳者として、また、エッセイストとして活躍した女性の方だそうです。

タイトルからして興味をそそられる一冊です。

著者の米原さんは、お父さんが共産党の幹部だったそうで、小学生の頃、プラハのソビエト学校に通っていました。ソビエト学校には50カ国の共産党関係の仕事をする子息たちが通っていたので、友達は全て異国人。そこがまず、将来の米原さんの基盤になっているのです。

そのソビエト学校での親友3人のその当時の状況と、30年後に再会する様子が事細かに書かれており、米原さんのウィットの聞いた文章と、親友たちのその後が気になり、一気に読んでしまいました。

親友の3人は、ギリシア人のリッツァ。ルーマニア人のアーニャ。ユーゴスラビア人のヤスミンカですが、私個人としては、ヤミンスカに一番惹かれました。
今、ヤミンスカはどうしているのでしょうね。治安が悪い国なので気になります。

どの女性も個性があり、作者の視点も加わって、読み物としても面白いです。
事実は小説より奇なりといいますが、こうした体験を現実にしている米原さんならではのエッセイが沢山あるようで、これから読むのが楽しみです。

もう、既に鬼籍に入っているとのこと。若いのに残念です。


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加島 祥造
『求めない』 加島祥造

今話題になっている、加島さんの詩集です。

大きい字で、手乗りサイズの本の手触りもよく、繰り返しの言葉が何かを訴えかけてくれる一冊でした。

求めない、という言葉は、私にも共感できます。
作者は冒頭で、求めてもいいと、人間の本能を肯定してくれています。
求めてしまう気持ちを認めた上で、あえて自分が本当に必要なもの以外を求めないことで、本当に大事なものが確認できて、シンプルに感じて生きていけることを伝えているのだと思います。

人に期待しすぎない方がいいという私の気持ちと、一致することがある詩集でした。

加島さんは、人に求めないことで、人が安心してくれる、ということを書かれています。
人に期待を大きくして求めてしまうと、困惑してしまいますよね。

もちろん、期待をゼロにするのは無理。
親しくなればなるほど、相手の存在自体に期待してしまうものかなと思います。
だからこそ、自分で自制しないと、相手にも負担がかかるし、自分にとっても一人で生きて行くという土台が揺るいでしまって、辛いのも自分なのです。

そういった、人間の本能を知りつつ、シンプルに生きようという、80歳を超えて語る加島さんの言葉には、人間の最終的に到達する部分を見たように思いました。



有栖川 有栖
作家の手紙

36名の著名な作家たちが、それぞれ自由に手紙を書いた小説集。
フィクションもあれば、ノンフィクションもあり、多彩な内容で本当に面白い一冊でした。

さわりですが、タイトルで面白かったのが、

「人間でないことがばれて出て行く女の置き手紙」
「タイプだと思った相手に交際を申し込む手紙」
「相手の妻が読むことを想定して、同窓会で再会した初恋の男からの誘いを断る手紙」

などなど。
日本語ってすごいな、と実感した内容の一冊でした。
そう、日本語を操れる作家さんたちの腕を見せられた感じです。

日本語というか日本人って、不思議な人種ですよね。
やんわりと遠回しに伝える。それで分かってくれないと空気が読めない、ってなるのでしょうか。
押し付けず、はっきりも言わず、でも、伝えたいことが確実にある。

そんな日本人ならではの性格を含んだ手紙集です。

中にはドキッとするような内容のものもありました。
私的な手紙(別れた妻に、子供に面会させて欲しいという手紙)など、本気だったのでちょっと驚きました。

日本人だからこそ、分かるし、笑える。そんな一冊です。
そして、人の手紙を読むのって、プライベートを覗き見するような、ちょっと淫美な感じがしませんか?
人間の心理をついた企画です。




吉本 佳生
スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学

新聞や雑誌で話題になっている一冊を、ようやく読むことが出来ました。

予想以上に勉強になって、面白かったです。

読んだ方の反応は、経済学を勉強された方にはつまらない内容だったようですが、私のような知識のない消費者にとっては、目から鱗の話しが沢山聞けて、読みやすく、興味深い1冊でした。

タイトルにもあるスタバでカフェラテを買うなら、一番お得感があるのは、グランデだということが詳しく説明してあり、細かなことですが、消費者は賢くならなければいけないんだな、と思いました。

他にも生活に密着した話題で、経済の話しを面白く分析してくださっています。

例えば、DVDがどんどん値が下がるのはなぜか
100円ショップの儲かる理由
所得格差について
子供の医療費無料は決してプラスにはならない
携帯の複雑な料金プランについて


などなど。
本当に、ああなるほど、こういう仕組みだったのか、と無知な私は、その度に感心してしまいました。

つまり、深く考えずに消費していると、かなり損をするということも分かります。
どうしてこの店が成り立つのか。どうしてこの金額でもうけが出るのか。
なぜ、この料金体制なのか。

仕組みが分かると、損をしなくなるかもしれません。
どの話しもかなり興味深かったので、一つを取り上げるのは難しいのですが、私が一番密着した話題として、DVDの価格低下のことについて、簡単に書きますね。

ある映画のDVDに出してもいい額は、その人、その人で違う。
メーカーは高く売りたいけれど、その金額で買う人が何人いるか分からない。
だから、最初に特典を色々とつけて、まず高い値段で出す。
欲しい人は、金額に関わらず、特典を喜び、定価で買う。
そこで、まず、第一のもうけが出ます。

その次に値段を下げると、この金額なら欲しいと思う人が購入する。
メーカーは大体、その金額で買う人数を予測しているそうです。そして、段々とさげていく。先に高く買った人も、そのことで不満を抱かないように出来ているそうです。

面白くて奥が深いな~、日本経済は。

こういう分かりやすい本があれば、これからも読んでみたいなと思います。



脇坂 るみ
赤い鳥翔んだ―鈴木すずと父三重吉 (Y.A.Books)

今年も終わりに近づいてきて、すごく素敵な方と巡り会いました!
といっても、本を通じての出会いですが、鈴木すずさんとおっしゃる方です。
 
児童文学の祖でもある鈴木三重吉さんのお嬢さんで、今年91歳になる方です。
とてもお洒落で凛とした可愛らしく優しく強い女性であることを、本を通じて感じました。


この方の人生を大きく分けると3つに分けられます。

1部
お父さんである鈴木三重吉さんの娘として過ごした時代。

三重吉さんはかなり厳しい方だったようですが、童話への愛情は誰よりもあって、私財をなげうっても守ろうとしたのが、「赤い鳥」です。これが現在の日本の児童文学の基礎になっていることは間違いなく、素晴らしい功績を残された方だと思っています。
それまでの児童文学は、大人が教訓のために書く本で、子供の側に立っていませんでした。この赤い鳥には、子供のための子供の心を理解して書いた、素晴らしい作品が掲載され、現在も読み継がれている話を沢山輩出しています。
 
2部
すずさんが結婚されていた時代です。戦争に突入し、ご主人は肺結核になり、幼い娘2人を残して、亡くなってしまいます。
 
やがて戦争は敗戦を迎えます。疎開先ですずさんは、どうやって食べて行こうかと悩み、まず人の服の仕立てをはじめて、やがて、洋裁学校を開くまでになります。
誰にも頼らず、子供を育てるという強さと、これからの女性はきっとお洒落をしたくなるという、女心を忘れていないすずさんの強さと優しさが女性の芯を感じて、素敵でした。

3部
日本の既製服の洋裁技術、自分の技術に限界を感じて、直にアメリカの既製服業界で勉強したいと考え、単身、渡米するのです。
まだ戦後で、女性が独りで渡米し勉強するなど、本当にめずらしいことだったと思います。
娘さん2人は女子大生になり、温かく送り出してくれました。
その時、すずさんは43歳です。
もう43歳と思うか、まだ43歳と思うか。そこが、すずさんと他の人の違いなのだと感じました。
アメリカで飛び込みで自分を売り込み、そこで勉強しながら会社の利益にも大きく貢献したすずさん。お昼休みも夜も自分で勉強するのです。 
 
足掛け4年。アメリカで学ぶ事は全て学び、日本に帰国します。
そこからは日本の既製服業界に、大きな功績を残されるのです。
東京スタイルという会社に、技術者として就職したすずさんは、平面裁断だった日本の裁断を、アメリカ式の立体裁断に変えて、サイズ、規格も統一。たたんで箱につめて納品していた服を、ハンガーにかけて納品するようになったのも、すずさんの発案です。
アメリカでは当然そうだったのですが、当時の日本はそんな程度の扱いだったようです。
もちろん、こういった改革は簡単にはいかず、軋轢は相当あったようですが。

日本の服飾業界の、陰の功労者だと感じました。
60歳を超えて退職された後も、すずさんの向上心は止む事をしりません。
詳しくは本を読んでもらえたら嬉しいです。

今、すずさんは91歳。まだまだお洒落を忘れずに、生き生きと輝いている女性です。
きっと、何かをするのに、年齢なんて本当は関係ないのでしょう。思えば、きっと願いは叶うのでしょう。
色々と心に残る言葉もあり、今の私が読んだからかもしれませんが、大事な一冊になりました。

この本を紹介してくれた友人に、心から感謝しています☆






高橋 歩
Adventure Life ~愛する人と、自由な人生を~

ちょっとしたきっかけで高橋歩さんを知りました。
初めて読んだのが今回のこの本です。

表紙の女の子の可愛さに惹かれたのですが、中にはぎっしりと、自由人の高橋さんの半生が書かれていました。

この方が自由人だとすると、私は不自由人だと思うくらい、真反対にいる方です。
なぜなら、私は軌道から外れる方がドキドキしちゃう、小市民だからです。
だけど、高橋さんに惹かれるのは、やっぱり人間は楽しく生きればそれがベスト。
人がどう思うかを気にして生きるのは、自分の人生なのにナンセンスと思う気持ちもあるからです。
(ちなみに私が小市民でいるのは、人の目を気にしている訳ではなく、私自身が安定志向だからなのですが)

私は定職につかずに、世界を放浪して楽しむ度胸はありません。
でも、高橋さんのような、思いついたらすごい行動力で動き、必ずそれを実現するというタフさは心から素敵だと思います。
そして、その人柄があるから、人脈もあるのでしょう。
家族も出来て、ますます自由度がアップする高橋歩さんてすごい!

他の作品も読んでみたいと思っています。

写真もとっても素敵なものばかり。感性が豊かな方だと思います。



俵 万智
プーさんの鼻

俵 万智さんの第三短歌集です。

私はタイムリーに、サラダ記念日、チョコレート革命と読んできました。
サラダは、淡い初恋、仕事、家族の短歌
チョコレートは不倫の恋が中心
そして、このプーさんの鼻は、未婚の母として選んだ覚悟を底辺に、子供への思い、愛情が溢れんばかりに詰まっています。

まさに、この三冊に紡いだ言葉の玉手箱で、俵 万智さんの半生を見させて頂いているかのようです。

私のことを振り返ると、赤ちゃん~幼児の時の子育ては、楽しむより、大変なことばかり。
じっくり味わって、楽しめなかった私がいます。

俵 万智さんがすごいなと思うのは、大変な瞬間にも短歌を紡いでいること。
きっと、言葉にすることで、客観的になり、愛おしさも増すのでしょう。
寝る時間もない程大変な毎日の中、言葉を魔法のようにつなげて作る短歌を綴っていることに、素敵だなと感激しています。
そうすることで、愛を自己確認出来ますよね!

本の中の、特に心に残った数点を、ここに転記させてください。

「どこまでも歩けそうになる皮の靴 いるけどいないパパから届く」

「バンザイの姿勢で眠りいる吾子よ そうだバンザイうまれてバンザイ」

「生きるとは手をのばすこと 幼子の指がプーさんの鼻をつかめり」

「「これもいい思い出になる」という男 それは未来の私が決める」




関根 眞一
となりのクレーマー―「苦情を言う人」との交渉術 (中公新書ラクレ 244)

ある意味、自分が知らない世界を見る楽しさを味わいつつ、仕事上でクレームを言われた時の対応方法のヒントにもなった本です。

著者はある大手百貨店の相談室長をしていた方で、きちんとした正当な苦情と、いちゃもんという意味のクレームとを区別して書かれています。

この本に出ているのは、クレームがほとんど。
え?? そんなむちゃくちゃなことする人がいるの~というような驚愕な事件が日常茶飯事のようです。

どの人の目的も、最終的には金。
でも、百貨店は揉めれば金を出すと風評が立てば、そういう人が押し寄せることを懸念して、よっぽどのことがない限り、金1封も出しません。
それが良くわかりました。

現在、クレーマーが注目されています。
今までは起こりえない場所(学校、病院など)で多発するクレーム。
百貨店などは物を売っているのですから、昔から、いちゃもんをつける人も多かったでしょう。

その中でも突出したすごいクレームや変わったクレームを、実例をあげて取り上げているので、読み物としても面白い。

その後で、人の話を聞く姿勢を勉強できる。


1粒で2度美味しい本でした。
軽い気持ちで手に取ってみてくださいね。