「ど根性」経済学の終焉 | 進撃の庶民 ~反新自由主義・反グローバリズム
本日は、うずら様から、「「ど根性」経済学の終焉」というコラムを頂いております!


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『リフレ派 日銀政策批判 エコノミストも「金利」重視反発』
(毎日新聞 10月12日)


「日銀が先月の金融政策決定会合で、金融政策の枠組みを、銀行などに流すお金の「量」を重視する政策から、「金利」を重視する政策に転換したことに対し、「量」拡大を主張してきた「リフレ派」エコノミストらから批判の声があがっている。 (後略)」


異次元金融緩和政策が輝いたのは、2013年4月の「黒田バズーカ砲第1弾」だけでした。
以降、3年半が経過したにも関わらず、景気回復や物価上昇の兆しは一向に現れず、年間80兆円規模の国債買取り、マイナス金利など日銀首脳部が打ち出す手は、すべて空回りばかり。
いまや、黒田バズーカへの期待感は吃水線以下にまで落ち込み、お仲間のリフレの連中からも厳しい批判が噴出する有り様です。

さて、異次元金融緩和政策に対する私の見方は、すでに、自ブログや当コラムの過去エントリーでも何度か触れたように、
・意味不明な「日銀券ルール」を撤廃したこと
・日銀の国債保有額が400兆円を超えるなど、政府債務を実質的に無効化したこと
・日銀が巨額の政府債務を買い取っても、過度なインフレが起きないことを実証したこと
の3点に関して高く評価しています。

一方、リフレ派が、
・デフレ不況下における民間経済主体は、実質金利への感応度が極めて低いことを認めようとしないこと
・“貨幣”の定義をわざと曖昧にして、「使えるお金」と「借りねばならぬお金」とを混同して流布し、「お金(使えるお金)を刷っても景気は良くならない」という誤解を蔓延させたこと
・金融政策一本足打法に拘るあまり、財政政策に極めて消極的な態度を取り続けたこと
・消費税増税に反意を示しつつ、増税賛成派の安倍政権や黒田総裁を強力に擁護し続けていること
・リフレ政策の実行と引き換えに安倍政権に摺り寄り、質の悪い改革や規制緩和推進の片棒を担いだこと
については、厳しく批判すべきでしょう。

何と言っても、リフレ政策が失敗した最大の要因は、柱となる(財出抜きの)インフレ・ターゲット政策が所期の目標を見失い、民間経済主体に対する “過度な期待”と“冷酷な態度”とが同居する筋の悪い政策に変節してしまったことに尽きます。

インフレ・ターゲット政策の真の狙いは、「デフレを脱却して経済を巡航速度で成長させるため、財政金融政策を総動員して、所定の物価目標が受け入れられるような経済の好環境と分配構造を創出すること」であったはずです。

しかし、実際に行われたのは、
・物価に対する政府・日銀のコミットメントが生み出すインフレ期待
・実質金利の低下による投融資の活発化
・円安・株高効果による輸出活性化と支出増加
を目指す中途半端な緩和ごっこに過ぎませんでした。

リフレ派は、インフレ期待や実質金利低下という夢物語でさえ、民間経済にサプライズをもたらすのに十分効果的なニンジンだと信じ込んでいました。
そして、金融機関や企業・家計に対して、もっと投融資や消費に熱を上げるよう鞭を入れ続けましたが、いくら尻を叩かれても、民間経済は怯えたまま前に走り出そうとはしませんでした。

それもそのはず。
中小企業や家計は、長すぎる不況の嵐に散々翻弄され、フロー・ストックともにガタガタに痛めつけられていますので、いくら、“史上空前の低金利とインフレ期待が起こっているのに、なぜ、いま投資しないの? 早くモノを買わないと損するぞ! 気合いだっ! 根性を見せろっ!! `Д´)ノゴルァ”と追い立てられても、借金なんて怖くてできないし、モノを買いたくても財布の中は空っぽなのです。

インフレ到来を予感した民間経済主体が取った行動は、消費や投融資の活発化ではなく、貯蓄と節約による自己防衛であり、リフレ派の期待は見事に裏切られました。


リフレ派の失態は、緊縮&構造改革派からも批判されています。

『日銀は「目覚めた」が、主役を務める局面は終わった(真壁昭夫/信州大学教授)』
(ダイヤモンドオンライン 9月27日)


「日銀の主張するように金融政策だけで物価上昇を目指すのは至難の業だ。日銀が今回、「お金を供給すれば物価は上がり、景気は良くなる」との考え方を変えるのは必然と見るべきだ。 (中略)  わが国経済を本格的に回復過程に復帰させるためには、労働市場の改革や規制緩和などによって民間企業の活力を高めることが必要不可欠だ。」

コラムの中で、真壁氏は金緩和政策を頭ごなしに批判しており、リフレ派の一部から、氏に対する反論が上がっているのも事実です。

一見、両者の主張の間には埋めがたい溝があるようですが、彼らの経済学的ポジションを俯瞰すると、むしろ、相違点よりも共通点の方が目に付きます。

例を挙げると、
・ディマンドサイドの軽視(=需要不足に対する認識不足)
・公助・共助の蔑視と自助・自立への固執
・構造改革や規制緩和、国際的フリートレードへの過度な信仰
・PB黒字化や緊縮的財政運営を支持
・雇用の質に対する無関心
・外国人労働者の容認
・輸出型産業に対する過度な期待
・人口経済学(=胃袋経済学)の呪縛
など、多くの共通点を見つけることができます。

彼らの間には、金融政策や消費税増税に対する多少の意見の相違はありますが、大まかに言えば、弱った民間経済主体のシバキ上げが趣味の「ど根性経済学」に分類できると言って差し支えありません。

緊縮&構造改革派やリフレ派は、デフレ不況が猛威を振るったこの20年間に、経済論壇や政策の主役に居座り続けたわけですが、経済統計やデータをつぶさに見れば、その理論が現実には全く通用せず、事態を悪化させるだけであったことは、既に実証され尽されています。

時代遅れの「ど根性経済学」は、ようやく終わりを迎えようとしているのです。




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