《ご当地アイドルの経済学》(2016.02.10,田中秀臣) 
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リフレ派の経済学者、田中秀臣さんによる、地方再生のヒントと地方アイドルの今が分かります。

【目次】
特別対談 田中秀臣×北原里英「NGT48が地方消滅を止める!」
第一章 NGT48の新潟発・地方再生戦略
第二章 AKB48と姉妹グループの経済学
第三章 ご当地ソングとしての邦楽――脱・戦後アイドル論
第四章 ご当地アイドルの戦略と経済効果
第五章 「ポストデフレ」時代のご当地アイドル


特別対談
北原さんとの対談がほぼ編集なしで掲載されたとか。北原さんのプロデューサーとしての片鱗を感じると共に、新潟に貢献したい、という気持ちが伝わってきました。北原さん自身のセルフプロデュースにはご本人も悩まれているようでしたが、好きなこと、やりたいことに徹する中で、応援してくれたり、アドバイスをくれる人が現れると思います。今後の活動に期待です。

特別対談から思い浮かんだキーワードは「共創」(きょうそう)です。(*1)
アイドルとファン、地方自治体、地方に住む人々が、お互いにアイディアや気持ちを持ち寄り、製品やサービス、街を創り上げ、改善していくというイメージから「共創」が浮かびました。
昨今は円安などにより、インバウンド消費と呼ばれる海外から日本を訪れる方々の増加に伴う影響もあり、地方でサービス産業が持ち直しているとも聞きます。
内外共に追い風のあるうちに、街づくりの基盤をバージョンアップさせるこが出来ると良いですね。


本編

新潟県は人口230万人、新潟市は人口81万人(2016年1月)だそうです。

田中秀臣(たなかひでとみ)さん、麻木久仁子さん、飯田泰之(いいだやすゆき)さんの共著《「30万人都市」が日本を救う! 》(*2)で言及された30万を超える規模です。

地方が抱える問題と生き残るために必要なヒントが挙げられます。

地方消滅をアイドルが止める、と聞くと、頭に「?」となるかもしれません。そんな方は、ぜひ、この本をお読みください。地方経済の問題点ととるべき対策と、NGT48などのアイドルの関係が述べられます。

前掲書(*2)の中で、
"「各地の中核都市を整備し、人口三〇万人程度のDID(人口集中区)を創生することで、都市機能を維持し、『地方の消滅』を防ぐ」という提言"
を行っておられます。
そして、「里山資本主義」という藻谷浩介氏(《デフレの正体》というタイトルながら、マクロ経済の話ではなく耐久消費財の価格下落について書かれた書籍の著者。これを読んでデフレの原因を人口減少と思い込んでしまった人は毒書をしたことに)が提唱する「マネーに依存しないサブシステム」を批判的に取り上げています。

地方の生き残る方途として、
"住宅供給やインフラ整備といった政治的な投資を各県の県庁所在地などの人口稠密(ちゅうみつ)地域に集中して投じて中核都市の都市機能を維持、活性化することが必要です"(56ページ)
と述べられます。

それを阻む行政の問題があり、そこでの街おこしとして、「街」の側からの声があってアイドルが協力していることが分かります。

NGT48誕生の背景には、"「地域振興のためにAKB48グループを誘致しよう」という動きが地元にあり、それにAKB48グループが「乗る」形で実現したものだと見ることもできます"(59ページ)
地元からの地域振興にかける思いがあったことがうかがえます。

地域振興のために地元が求めて起こした行動の結果として、今のNGT48があるとも言えます。

甘くない「地方消滅」という現実があるのであれば、どうすべきかを考え行動しなければ、改善はありません。


人口減少社会だからこそ、試行錯誤しながら、ファンを創り上げ、共感と共創で成長物語を楽しむところが、生き残る(生まれ変わる?)のかもしれませんね。




(*1)《イノベーションを生み出す「共創」の仕組み》

(*2)《「30万人都市」が日本を救う! 〔中国版「ブラックマンデー」と日本経済〕》(2015.08.19)