村上春樹の短編集「東京奇譚集」残りの2話について | 親愛なる人に-読書の薦め

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読んだ本の感想などを、本屋さんで見かける推薦文のように綴ります・・・お薦め度合いは、☆の数で評価します。親愛なる本好きの人たちに,このブログを届けたいです.

村上 春樹
東京奇譚集

はじめの3話はこちらです・・・


☆☆☆☆+
「日々移動する腎臓のかたちをした石」

三十代の小説家の淳平が、年上の女性とつきあい別れていくという、ストーリーだけ書けば、陳腐なようですが、いくつかの印象的な場面があり、5つの話の中で一番印象に残った作品です。


若い頃父親に、「本当に意味を持つ女性」は3人だけだといわれたことが心にひっかかる、主人公の淳平。そのため、つきあう女性とは付かず離れずの淡い関係を結び続けることが定型となってしまいます。こんな気持ち、男ならば誰しも抱くかもしれません。


印象に残った文章を引用します。彼女と会ったときの淳平の感想です。
”唇はふっくらとして、何かを言い終えるたびに、広がったりすぼんだりした。そのおかげで、彼女に関わるすべてのものが不思議なくらい生き生きとして、新鮮に見えた。”


この本、深夜に読んでいたのですが、この一文で目が覚めました。どんな女性か伝わってくるような気がします。とても自分ではこんな文章は書けません(当たり前か)。こういう、文章のきらめきを楽しめるというのも、村上春樹を読む楽しみかもしれません。


☆☆☆☆
「品川猿」
この一編だけが書き下ろしです(残りは「新潮」に掲載されたもの)。主人公のみずきは20代の女性、最近自分の名前が思い出せなくなり、困っています。医者でも病気ではないと言われました。


そこで、品川区のカウンセラー(おばさんですが優秀、変な設定)に相談します。なぜ名前を思い出せないか、おばさんカウンセラーが本格ミステリー仕込み?で、「謎解き」します。しかしながら、そこは、奇譚集、妙な違和感のある「謎解き」です。題名がヒントですかねえ。


東京奇譚集


その他,下記の村上春樹の作品


アフターダーク

神の子どもたちはみな踊る

不思議な図書館


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