養育費の算定表の元になる計算式の考え方~基本編 | 金沢の弁護士が離婚・女と男と子どもについてあれこれ話すこと

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石川県金沢市在住・ごくごく普通のマチ弁(街の弁護士)が,日々の仕事の中で離婚,女と男と子どもにまつわるいろんなことを書き綴っていきます。お役立ちの法律情報はもちろんのこと,私自身の趣味に思いっきり入り込んだ記事もつらつらと書いていきます。


 このシリーズの前記事算定表ってそもそも何?で,東京家庭裁判所のHPにリンクさせ,算定表の用い方についての東京家庭裁判所の説明をご紹介しました。
 ちなみに婚姻費用には,婚姻費用のための算定表が別途用意されております。
 これは,googleで「婚姻費用 算定表」で検索をかければ,いろいろなところで紹介されておりますので,そちらをご参照下さい。
 また,大阪家庭裁判所で,もっと分かりやすい解説を出しております。
 行政書士飯田橋総合法務オフィスさんが紹介してます。
 東京家庭裁判所の説明よりも,こちらの説明の方が分かりやすいと思います。
 両方,参照して下さい。
 養育費・婚姻費用算定表についての解説~大阪家庭裁判所


 しかし,実は,私,正式に依頼を受けた件で養育費や婚姻費用の事件では,算定表そのものを用いていません。
 何を用いているかと言いますと,そのベースになっている計算式を使って計算で出しています。
 その方が正確に算出されるからです。
 また,子どもが複数いて,父と母が別々に養育している場合とか,父が再婚した場合とか,算定表そのものを用いるよりも,そのもととなった計算式で考えていく方が分かりやすいのです。
 この計算式については,前述の大阪家庭裁判所の解説で,詳しく説明されています。
 やや専門的な内容になってしまいますが。
 この記事では,算定表の元になった計算式について簡単に説明します。
 

 具体例で説明しましょう。
 義務者父 給与所得者 税引前年収   500万円
 権利者母 給与所得者 税引き前年収  150万円
 母と同居の子2名。 第1子 17歳,第2子 10歳


 まず,権利者と義務者の「基礎収入」を算出します。
 基礎収入とは,ざくっと言いますと,税込収入から税金,職業費,特別経費を差し引きした金額です。ざっくりいうと可処分所得と考えればいいです。
 算定表以前は,税金,特別経費について実額認定しておりました。
 しかし,算定表方式では,簡易迅速に算出するため,税金,職業費,特別経費を推計することとしたのです。つまり,実額認定しないとすることで,従前,特別経費の額等で熾烈に争われて結論がなかなか出なかったという問題を解消しようとしました。
 
 そして, 算定表方式は,基礎収入を次のように計算するとしました。

 給与所得者の基礎収入=総収入×0.34~0.42(基礎収入割合)
  (高額所得者の方が割合が小さい)

 自営業者の基礎収入=総収入×0.47~0.52(基礎収入割合)
  (高額所得者の方が割合が小さい)

 仮に,基礎収入割合を0.4と設定しますと,先の事例での基礎収入は以下のようになります。

 義務者父=500万円×0.4=200万円
 権利者母=150万円×0.4=60万円


★自営業者の総収入をどのように算出するかについては注意が必要です。ここでは省略します。

3 子の生活費の計算
 算定表以前は,義務者・権利者の世帯ごとに,生活保護の基準に従った最低生活費を算出して,これを指数として用いるという方法で,子の生活費を計算していました。
 しかし,算定表方式では,その計算が煩雑なので,統計資料に基づいて,生活費指数を次のように設定しました(難しい話ですので,分からない人はすっとばして下さい。)。

 親の生活費指数   100
 子(0歳~14歳)    55
 子(15歳~19歳)    90

 養育費算定における子の生活費
 =義務者の基礎収入×(子の指数合計)÷(義務者指数+子の指数合計)。

  先のケースですと,以下のように子の生活費を算出できます。

  200万円×(90+55)÷(100+90+55)
    =200万円×145÷245=1,183,673円(小数点以下四捨五入)。
 
 この約118万円が何を意味しているかと言いますと,仮に2人の子が義務者である父と同居した場合に,その父,子2人の世帯で子2人に割り振られる生活費の額を算出しているのです。
 分からない人は,計算式をにらめっこして下さい。

4 義務者の養育費分担額の計算

 義務者の養育費分担額
 =子の生活費×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)

 先の例でいいますと,こうなります。

 1,183,673円×200万円÷(200万円+60万円)
 =1,183,673円×200万円÷260万円=910,518円(小数点以下四捨五入)。

 この計算は何を意味しているかと言いますと,子が父と同居した場合の子の生活費について,義務者が負担する部分を算出している訳です。
 基礎収入按分で,義務者の負担割合を算出しているのですね。
 分からない人は,計算式をにらめっこして下さい。

 さて,910,518円は年額ですから,月額に直しますと,75,877円(小数点以下四捨五入)になります。
 千円未満を四捨五入すると,月額養育費は,2人合計で76,000円になります。
 そして,子どもそれぞれに分ける場合は,以下のように計算します。

 第1子(17歳)の養育費
  =76,000円×90÷(90+55)
  =76,000円×90÷145
  =47,172円(小数点以下四捨五入)
  ≒47,000円(千円未満四捨五入)

第2子(10歳)の養育費
 =76,000円×55÷(90+55)
 =76,000円×55÷145
 =28,828円(小数点以下四捨五入)
 ≒29,000円(千円未満四捨五入)


 頭が痛くなったことと思います。
 ちなみに,私は,エクセルで自動計算しており,調停とか訴訟とかで裁判所に提出する際は,そのエクセルの計算表をコピペ一発で済ませています。

 多くの場合は,こういう計算をしなくても,算定表で間に合います。
 しかし,この考え方が分かっていないと,複数の子が父と母とに別れて育てられている場合とか,父が再婚した場合とかの応用計算ができないのです。

 そこで,次からは,応用問題に入っていきます(笑)


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