最近、親御さんから「『保育園(幼稚園)から昼に薬を飲ませることができない。』と言われたので、1日2回で済むように薬を出して欲しい。」という要望をよく受けます。たしかに、こどもに薬を飲ませることは大変手間のかかることです。たくさんのこどもを預かる保育園で、一人二人ならともかく大勢のこどもに薬を飲ませることは大変な作業であることは想像に難くありません。
しかしながら、医師の立場として、この要望に簡単に応じることができるか?答えは残念ながら「No!」です。
すべての薬には必ず薬の服用の仕方(用法・用量)が定められており、その用法・用量を守らなければなりません。そもそも、薬の用法用量は、病気の治療をするときにその使い方が一番効果がでるように、副作用が少なくなるように定められています。従って、むやみにそれを変えることは、治療効果を弱めることになります。また、用法・用量をきちんと守ったとしても、ごくわずかな確率ではありますが「重篤な副作用」が発生する可能性があります。守らなければそのリスクが増えることは言うまでもありません。仮に用法・用量を守らずに(重篤な副作用=健康被害)が発生した場合、親御さんも医療者側も非常に気まずい思いをすることになります。保育園(幼稚園)から正しくない服用方法を強制されて、お子さんが万が一健康被害を生じた時に、保育園(幼稚園)はその責任をとってくれるのでしょうか?
お子さんの健康回復+副作用のリスク軽減>>保育園(幼稚園)の都合
これは間違いありません。医療者としては、添付文書に書かれている通りに処方せざるを得ません。
たかだか風邪薬でも、薬は薬。以上の理由から、必ずしも親御さんの要望に答えることができない、ということをご了承ください。もちろん、1日2回以下にできる薬については協力を惜しみませんが、世の中には1日3回、1日4回服用させなさい、という薬もあります。そういう薬についてはこれからも添付文書で定められた通りに処方していくつもりです。