米韓FTA発効により「TPPに参加しないと大変」という愚かな理論に屈してはならない。日本の国益を考えれば、TPPという泥船に乗るより、長年の勤続疲労により凝り固まった日本経済が構造転換を図るチャンスであろう。

[15日 東京新聞]米韓FTAが発効
米国と韓国の自由貿易協定(FTA)が十五日発効し、両国は五年以内に九割超の貿易品目の関税を撤廃する。韓国は自由貿易に積極的で、欧州連合(EU)などとのFTAも既に発効している。対米輸出競争で、日本企業は韓国企業より不利な立場に置かれることとなる。

韓国政府と研究機関の試算によると、発効から十五年間の年平均で対米輸出は十二億八千万ドル(約千六十四億円)増える。乗用車の関税撤廃は五年目になるが、自動車部品は即時撤廃され、韓国の自動車メーカーが米国で生産する車は短期で値下がりする見通しだ。

試算で輸出額は自動車が年七億二千万ドル、テレビなどの電気電子機器が一億六千万ドル増える。逆に、日本の経済産業省は日本が環太平洋連携協定(TPP)に参加しない場合、二〇二〇年時点で自動車、電気電子、機械の三分野で日本の対米輸出が一兆五千億円減ると試算する。

一方、米国から韓国へ乗用車を輸出した場合の関税は8%から即時4%に下がり、五年目に撤廃される。日本の工場から輸出するよりも低価格で販売できるため、トヨタ自動車は今年一月から、米国産乗用車「カムリ」を韓国に輸出している。

米韓両国は当初一月発効を目指したが、韓国側で野党や農業団体などが再検討や破棄を訴え、国内手続きが難航。四月の総選挙の争点となっている。

米韓FTA発効により経済産業省に族議員、既存メディアも含めて勢いづくだろう。国民に忍び寄る悪魔のささやきは下記のようになっている。

【起】米国と韓国の自由貿易協定(FTA)が15日に発効した。韓国は2011年7月に欧州連合(EU)とのFTAも発効させている。

【承】これで米国や欧州に向けて自動車、電気電子、機械などの輸出で、FTAで関税が撤廃される韓国勢が日本勢より価格競争で有利に立つ。

【転】その結果、経済産業省で自動車・電気電子・機械の3分野だけでも対米輸出が1兆5000億円も減るという試算も出ているくらいだ。

【結】だから、日本も韓国が参加しないメリットもあるので環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉に参加しないといけない。

それでは、国際社会で自由貿易が盛んになっていく中で、日本の国益に資するための戦略を順を追って考えていくことにする。

まず、日本と韓国で経済を比較するとどのような違いがあるのか考える。

韓国は日本の半分以下のマーケット規模であり、まだ日本のように産業構造も重層的に成熟していないし人件費も日本ほど高くない。

つまり、韓国はまだまだ輸出向きな国である。この点で自由貿易協定においても柔軟に対応でき、様々な国と締結できるのもそういう理由だ。

しかし、日本は違う。産業構造も成熟し社員の人件費も世界的に高水準だ。つまり、製品を作って輸出するという産業には既に不向きなのだ。

日本が輸出産業に不向きな構造のまま、TPPに突き進むとどういう結果になるのかは明らかだ。人件費カットが進み平均給与が一番下がる。

極論を言えばTPP加盟国が一律の平均給与に落ち着くということだ。詳しくはTPP参加により訪れるだろう結末を下記に示している。

参考記事:韓国とトルコが上半期中のFTA妥結に向け努力合意、日本のTTP戦略は本当に正しいのか

次に、TPP以外で日本企業の国際競争力を削がれない方法を考える。

世界各国で企業同士が競争している中、現在もそうだが今後も突出した巨大なマーケットであり続ける国は中国とインドであることに変わりはない。

世界人口が70億人で、1位の中国が13億人、2位のインドが12億人、3位の米国が3億人ということを考えると世界で圧倒的なシェアとなる。

さらにこの2国がますます経済発展をすることを考えれば、あらゆる手立てを講じてシェア獲得競争を有利に展開できるよう国が後押しすべきだろう。

せっかく日中韓FTAの議論が出てきたので乗らない手はない。そしてインドとも是非2国間でFTA締結を目指すべきだろう。

日本の自由貿易戦略については下記の後半部分で示している。

参考記事:TPP交渉参加に高い基準「全品目で関税撤廃で例外許さぬ」、一方で中韓FTA交渉入りへ5月首脳会談

ここまでTTPでなく中国・インドのFTA締結が国益と述べてきたが、最後に輸出立国として繁栄した日本の産業構造を大転換する必要性を述べたい。

理由は、日本の経常収支が今後10年以内に恒常的な赤字になる可能性が高まってきたからだ。これは自由貿易協定を盛んに行い日本企業の国際競争力が増すことで輸出が増えれば解消できるという簡単な問題でもない。

一番大きな障壁はエネルギーである。全世界的に石油・天然ガス・石炭を含めあらゆるエネルギー価格が高騰し続けているのだ。

日本にとって厄介なのはエネルギーは円高になればなるほど安く手に入るが、逆に輸出製品は円高になればなるほど高く出て行く。

つまり、これまで輸出主導のため円安が国益であり、財務省も円高になれば単独でも為替介入をして円高を防いでいたがそうもいかない。

その解決策の例として下記の大手商社の事業モデルの転換がある。

参考記事:日本の11年国際収支が経常黒字43.9%減と下落率過去最大、程よい規模の国内マーケットが仇に

要約すれば大手商社が事業モデル自体を貿易業務で手数料を受け取るモデルから事業投資で利益を上げるモデルに転換したことだ。

ここから導かれるのは海外投資やM&Aなどを拡大することである。他の業種であれば、自動車メーカーのような現地生産が挙げられよう。

逆に家電メーカーが大幅な赤字に陥ったのは、3Dテレビの失敗もあるが現地生産を進めるより国内工場の建設で巨額投資を行ったことも響いている。

このことから今後の輸出企業はトヨタ生産方式である「現地現物」による海外展開を考えるほかないだろう。もっといえば逆輸入も可となろう。

これに向けて国はどう後押しすれば良いだろう。結論的には円高推進である。ようやく円高が日本の国益と真っ当な見解を述べることができるのだ。

円高にすれば、海外での工場建設やM&Aもハードルが低くなるし、エネルギーも安く手に入ろう。また、国民にとっては輸入製品が安くなるし海外へも安く行ける。加えて日本の持っている相対的な資産価値も高くなろう。

唯一の問題は、輸出企業の工場閉鎖による国内空洞化の懸念である。

しかし、これにも明確な答えがある。国の政策で国内の企業数を増やせば良いのだ。増やし方として海外企業の誘致と国内企業の創出がある。

まず、海外企業の誘致に関しては現在40%近くある世界最高水準の法人税を減税する他ない。目処としては韓国より安い20%が目標となる。

そして海外企業を誘致した地域住民の採用を減税条件にすれば雇用創出に繋がろう。各自治体も企業誘致に励むだろうから一石二鳥だ。

次に、国内企業の創出であるが、これは規制緩和しかない。これまで民営化といえば、電力各社・JR各社・NTTグループ・JT・JP・道路各社と行っているがまだまだ地域独占という半官半民のままのスタイルが多い。

上記のような民営化の途中段階にある既存企業に関しては、何とか東京電力の会社更生法適用を突破口に改革を進めていってもらいたい。

この他に残っている既得権益は山ほどある。日本には公務員数400万人、国家公務員100万人、地方公務員300万人がいるのだから。

橋本市長が検討している経済産業省や厚生労働省の廃止、または大阪市営バスや地下鉄の民営化なども新規企業創出の施策となろう。

また、天下り先と化している独立行政法人も随意契約ではなく自由競争にすれば民間企業にも仕事が回り雇用が生まれる可能性もある。

円高が日本の国益と言える日が来ることを。

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