• 23 Jun
    • ヨーグルト(牛乳)は身体に良いのか悪いのか

      ヨーグルトは便秘に良いという意見と、便秘を悪化させるという意見がある。 前者は、乳酸菌や、乳酸菌が作り出した有用な成分が腸内環境を改善するという。 後者は、ヨーグルトは腸を冷やす、また、日本人には乳糖不耐症が多いのが日本人の体質に合わない証拠だという。 牛乳が健康に良いかどうかも意見が分かれる。 どちらが正しいのか? 私の経験では、どちらも正しいと思う。メリットとデメリット両方があり、人によってメリットが上回るかデメリットが上回るか異なるのである。   便秘外来で有名(初診4年待ち)の順天堂の教授の小林弘幸先生はヨーグルトを推奨している。 ただし、ただ摂ればいいというのではない。「人の腸内細菌は一人一人微妙に違っているので、自分に合った菌を取り入れなくては意味がない。腸の中のものは48時間で外に出てしまうので、継続して取り入れなければならない。ヨーグルトの乳酸菌は30種類くらいあるが、そのうちどれが合うかは試してみないと分からない。ポイントは、1種類決めたら同じものを毎日2週間から1ヶ月摂取し続ける。しかし大抵2週間で効果が分かる。ヨーグルトを食べだしたときにお腹が急に張ってくる人がいるが、腸の環境が変わったからお腹が張ったり、変わってくるからそうなるので、「おかしい」とそこでやめてしまうのではなく、普通だったら3、4日でその症状は治まってくる。3、4日は我慢して、それでも続くようなら、自分には合わないと考えて、別のヨーグルトを試してみるとかいうのが重要」と主張していた。 一方、同じく便秘の権威で、海外からも便秘患者がくるという松生恒夫先生は、乳酸菌の摂取を勧めるが、日本人には植物性乳酸菌が合っており、ヨーグルトは腸を冷やす、と主張しているようである。   私自身の経験を述べる。 私は、毎日ヨーグルトを摂取したら、半日くらいで、腸の音がしなくなり、腹が張ってくることに気がついた経験が2回ある。苦しいので数日でやめたら一日で元に戻った。 そのときは、小林先生が言うように、腸内細菌が合わないのかなと思っていた。 一方、手作りした水キムチを食べると、発酵が進んだものであれば、数時間もすると、腸が動く音がして、ガスが頻繁に出て、腸の動きが良くなったのが分かるのである。「水キムチは多くの乳酸菌を含む」というのは事実だと実感していた。 生きて腸に届く乳酸菌のヨーグルトだと腸内細菌に合わなくても、死菌ならむしろ好影響なのではないか、と思い付いて、加熱してみた。ホットヨーグルトダイエットというのがあるくらいであるから。 100gをホットヨーグルトにして、完全に分離させた。 すると、腹は張らないのだが、水キムチを食べても、腸の動く音はしない、どうもおかしいことに気がついた。 ヨーグルトによって腸が冷えて腸の動きが低下したのに間違いないと確信した。そのようなデメリットが出る人と出ない人に分かれるのである。 ホットヨーグルトにすると、冷やす作用は和らぐであろうが、成分は同じなので、ホットにしても腸が冷やされてしまう人もいるであろう。 一方、ホットヨーグルトにすれば冷えない人もおり、そのような人では乳酸菌の恩恵を受けることが考えられる。 このとき、体温は変わらないし、手足が冷えたわけではないので、腸が冷えているとはすぐには気がつかなかった。 マクロビでも、チーズ以外の乳製品は、強烈に身体を冷やすというが、なるほどその通りである。   ということで、食生活の記事でも述べたが、「何々の食べ物が健康に良い」かどうかは、頭から信じ込まず、やってみて、良い反応が出ているか悪い反応が出ているか変わらないか、確かめる必要がある。 私は、子供の頃から下腹がぽっこり出ていた。便通は毎日あったので、残便があって腹が張るかくれ便秘だとは全く気がつかなかった。 牛乳や自家製ヨーグルトを毎日食べさせられていたが、もちろんそれだけが原因ではないが、むしろ、健康に良いとされた食習慣が腸を悪化させていた、と、今にして思うと気づかされている。  

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  • 30 Apr
    • 食生活

      健康的な食生活はどういうものなのか。「具体的にこういう献立で健康になれる」というものがあったら毎日その通りに作ってみたいものですが、実はそんなものは存在しないのです。 長野は長寿日本一、健康寿命日本一、一人当たりの医療費は最低なので、長野の食生活がもっとも成果を出しているといえましょう。 しかし、「野菜中心」「味噌の消費量日本一」「ファーストフード店が少ない」は納得できますが、「塩分11g/日」「魚の消費量は少ない」など、従来提唱されてきた健康的な食生活と異なる部分があります。 沖縄県は、かつては長寿県だったのに、「豚肉を減らす」など、現代的な栄養学を指導した結果、逆に転落してしまいました。 ではどうすればいいのでしょうか?   ここで、食べたものはいつ排泄されるのかという話をします。 排便はなぜ朝に起こりやすいのでしょうか? 腸のぜん動運動(食べた物を肛門の方へと移動させる収縮運動)は、副交感神経(リラックスしているときに働く自律神経)が優位なときに活発化します。 そのため、仕事や勉強が終わってリラックスしていたり、落ち着いて食事を摂ったりしているときは比較的活発化しています。ただ、夜になるにつれて、ぜん動運動は徐々に弱くなっていきます。 一方、睡眠中は「モチリン」というホルモンが約100分毎に周期的に分泌されます。 このホルモンには「消化酵素の分泌を促進する」、「小腸内にある便を大腸へ送り出す」といった働きがあります。モチリンのこの作用によって、胃と小腸が空っぽになり、翌朝の食事を迎え入れる準備が整えられます。 腸の中を移動した便はS状結腸に滞留します。そして、この滞留している便は、「大ぜん動」という1日に2~3回起こる大きなぜん動運動によって、直腸へと押し出されます。大ぜん動によって便が直腸に到達すると、直腸から脳に信号が送られて「便意」が生じます。 大ぜん動は「胃に刺激が加わったとき」に生じます。胃への刺激が腸へと伝わり、大ぜん動が促されるのです。これを「胃・結腸反射」といいます。 ただ、「胃に刺激が加わったとき」といっても、昼食や夕食時より朝食時のほうが大ぜん動は起こりやすいです。なぜなら、昼食や夕食時と比べて、朝食時のほうが胃は空っぽに近いため、胃への刺激は強くなるからです。 さらに朝食時には、S状結腸にある程度の便が滞留しています。そのため、朝食を摂ることで大ぜん動が引き起こされると、S状結腸に溜まった便の排泄が促されることになります。これが「朝に便意を生じやすい理由」です。   ということで、食べたものは翌朝排泄されます。脱線しますが、「便秘にはヨーグルトが効く。食べたらその日のうちに便秘が解消される」という人は、消化不良で便が排泄されてしまっている可能性があります。 ということで、その日の腹の調子が正常でなかったら、前日、間違ったことをしていないか考えます。食生活が悪い他に、ストレスや睡眠不足、身体を冷やすなど、いろいろな可能性があります。 腹の調子は、自分では正常だと思っていても、正常ではないことが実に多いです。便が毎日出ていても、消化不良の食べ物が混じっていることもあるし、沢山食べても異常にお腹がすくなら、消化不良の可能性が高いです。残便感があったり、下腹がぽっこりでていたら、残便で腹が張っていることが考えられます。 また、食べ過ぎや、逆にカロリー不足は、その日のうちに、空腹感が酷かったり、逆にお腹がすかなくなったりして気づくことができるでしょう。 「腹八分目」といいますが、食べた直後は、適切な量かどうか分からないものです。食べて時間が経ってから、「足りなすぎる」と分かります。その経験を蓄積することで、自分に合った量の見当がつきます。 ですから、そのような、消化吸収に注目していれば、すぐに自分の不健康な生活習慣に気づいて修正できます。 現代的な栄養学というのは、そういうときにこそ効果を発揮します。   私は、最近、日記をつけて、食べた献立や、それをふりかえって推測されることを記録しています。 それで私が気づいたのは、 ごほう、さつまいも、ひじき、きのこなど、確かに整腸効果がある。しかし、さつまいもをたくさん食べたいから米飯(麦ご飯ですが)を減らそうなんてやると逆に翌日の便通が悪くなった。だからバランスが大事である。おそらく、蛋白質が足りない場合も,同様に気づけると思うのである。 おきたらすぐ湯をわかしてスパイス入りの熱いお湯を飲むとその日の体調が良いと感じた。 ショウガを飲むと確かに冷え性に効くように思う。 記録をつけないと、「何々が健康によい」という説を真に受けて、実際の効果を深く考えないものです。   玄米菜食、ナチュラルハイジーン、アーユルヴェーダなどの提唱する食生活には、いずれも、良い教えも危険な教えも含んでいます。現代の栄養学にも多少の問題はあります。欧米人に合わせた栄養学が、そのまま体質の違う日本人に合致するはずがないのです。 実際に、消化吸収の症状に注目して、自分の食生活のどこが悪いのか考えて修正していけば、健康的な食生活に近づけると思います。 アーユルヴェーダにおいて、消化不良によって生じる未消化物を「アーマ」といいます。アーマが蓄積するとドーシャ(体質)が乱れるため、あらゆる病気の原因となるといいます。 実に的を得ていると思います。ただし、消化不良だけでなく、食物繊維が足りない、何々の栄養が足りない、食べ過ぎ等も含みますが・・・。 間違った生活による悪い結果は,一番最初に消化器症状にあらわれます。それを見過ごして放置すると、あらゆる病気に発展するし、消化器症状のうちに修正すれば、あらゆる病気を予防できるということです。

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  • 15 Apr
    • どんなお茶がいいか

      私はわざわざお茶を買ってまで飲もうとはしないのだが、実家からいらない緑茶を送ってきたので、一ヶ月以上飲んでいた。 すると冷えと便秘に苦しむようになり、寝ていて汗をかかなくなったので、洗濯する必要性を感じなくなるほどであった。ある日、冷えとは関係なく朝まで一睡もできなくなり、コーヒーで眠れなくなった経験と同じなので、緑茶のせいだと思い当たった。 緑茶は身体を冷やすため、冷えによって、コーヒーよりも眠れなくなる人がいるそうなのである。 緑茶をやめたところ、数日で、緑茶で悪化した分の冷えは改善した。 そういえば,緑茶は鉄分の吸収を妨げるんだった。つまり消化吸収によくないということだ。 そこで、どんなお茶がいいのか考えてみる。 まず、何も健康に問題がない人は,お茶を飲まずにお湯でも飲んで、浮いたお金を有効に使うのが健康によいと思う。 世の中は、「何々が健康によい」と宣伝して利益を得ようとする人ばかりで、情報戦の中で正しい情報を見抜くのにはそれなりの実力が必要であるし、「何々が健康によい」と思い込んで何かの健康法をやると、悪い症状が出ているのに気がつかず、かえって健康を害することが多いからである。 一方、問題を抱えていれば、このお茶は効果がある、ない、が分かりやすい。自分の症状を解決してくれそうな薬効のお茶を選ぶといいと思う。 マクロビオティックでは、身体を温める陽性の食べ物、冷やす陰性の食べ物、どちらでもない中性の食べ物に分類する。 中国の陽性陰性に分類する考え方を取り入れているのであろうが、誰が言い出したのか分からず、これはどうかと思うものがたくさんある。 トマトは身体を冷やすというが、夏野菜は身体を冷やす、といっても、唐辛子やその薬効を引き継いだピーマンは夏野菜 だし。 でも、お茶等のように,毎日飲むもの、大豆製品のような日本人が常食するものについては、経験談を積み重ねて、正しいことを言っている可能性が高いと思う。 緑茶、紅茶、ウーロン茶は、陰性のお茶で体を冷やすという。三年番茶が、発酵によってカフェインやタンニンがほぼなくなり、身体を温め、おすすめだというのである。三年番茶は刈り取った茶葉を、三年間熟成させたお茶である。 しかし、私は、身体を冷えるというのは、原因ではなく結果であって、温めればそれで健康問題が解決するわけではない。すなわち、冷えるから健康を害するのではなく、健康に悪いことをやっているから冷えるのである。消化不良に効くお茶がいいと思った。動物性食品を減らせば消化の悪い食べ物が増えるし、冷える原因は消化不良だと考えていたからである。 そこで私のおすすめは、クミンティーである。レシピではティースプーン1杯とあるが、ティースプーン1/4くらいで十分であった。1日ティースプーン半分程度と書いている人もいる。 クミンシードは、スーパーで売っている量は少なすぎるが、ネットで安価でメール便で売ってくれる量は多すぎる。料理だけでなくお茶にも使えば大量でも消費できる。クミンの消化増進効果は、英文で研究論文がいくつもあり、信頼に足る。 もともと、私は、インドのベジタリアン、豆料理の伝統からして、インドのスパイスには消化をよくする知恵があるだろうと考え、スパイスを料理に取り入れていた。しかし、消化の悪い食べ方をしていたので、何の効果もなかった。 しかし現在は、食材を小さく切ること、よく噛むこと、豆の食べ方、ナッツの食べ方、摂取上限はどのくらいかetc勉強して、思い当たる生活習慣は改めていた。 すると、クミンティーを一回飲んだ直後から身体が温まって、服一枚脱ぎ、寝ている間も持続したのが分かった。これにはびっくりした。 つくづく、人間が古来から活用していた薬草の効果はすごいんだなと実感した。しかし、はじめに症状に効くものを探すのではなく、生活習慣を直すことが先である。 生活習慣を直さず、薬で治そうとする、という普通の姿勢がよくないことは以前に書いたが、民間療法においてもそれは同じである。 ベジタリアンを目指すなら、鉄分の吸収を妨げることが証明されているこのような飲みものは飲むべきではないと考える。   (数字はmg/100mlを示す)                                     タンニン   カフェイン コーヒー              110              40 インスタントコーヒー 52               16 紅茶         37               50 緑茶         18               10〜20 濃い緑茶(玉露など) 100             160 ウーロン茶         32               20      

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  • 14 Apr
    • ベジタアリアンになる前に4(ナッツ)

      動物性食品を減らすとなると、必然的に増やそうと考えるのは豆とナッツであろう。 豆の皮ほどではないが、ナッツ・シードも消化が悪い。 ローフーディストは、生ナッツを浸水してから食べるべきだと主張している。 生ナッツには酵素抑制物質というのがあり、そのまま食べると身体の酵素を使ってしまうというのである。浸水させて水を捨てると、その酵素抑制物質が溶け出すという。 一方、ローストすると、酵素抑制物質が働かなくなるが、栄養素は落ちるという。 酵素抑制物質というのは誰が言い出したのか、怪しい理屈だと思うが、私は、生ナッツは吸水させる、またはローストする、という結論自体は正しいのではないかという気がするのである。 酵素がどうとか、フィチン酸がどうとかいう難しい理屈ではなく、難消化性のものを消化吸収して栄養にした動物の肉をやめるなら、人間自らが消化が悪い食材を消化吸収しなくてはならない。そのためには、動物の消化器の代わりに、知恵と工夫で代替しなければうまくいくはずがない。 生ナッツ、シードを吸水させると、やわらかくなり、口の中でペースト状になる。これは相当消化しやすいだろう。長時間浸水させたら料理に混ぜて加熱してしまえば雑菌の心配もない。 また、吸水させれば、フードプロセッサーがなくても、すり鉢で少量すりつぶすことができそうである。 生ナッツ・シードを生で売っているのは、本来であれば、パン作りで使ったり、炒め物にしたりという料理用なのであろう。 生ナッツは乾物もどきと考えて、戻したほうがいいのではないかと思う。 もう一つ、タンニンの問題がある。アーモンド、くるみは渋皮を必ずむいて食べることである。これは表面にはタンニンが含まれており、鉄分の吸収を阻害してしまうからである。食べ方としてはアーモンドは12時間水に浸し、そのあと熱湯に1-2分つけると渋皮がむける。くるみは、水に1-2時間浸しし、同じく1-2分熱湯につけると渋皮がむける。 一方、ローストすると消化がよくなるのか? ローストすると消化がよくなるエビデンスは見つけられなかったが、胡麻は炒ると消化が改善する(それでも消化が悪いからすらなくてはいけないが)ことから、ナッツ、シードが、加熱したら難消化の何かが破壊されて消化が改善するということは、ありそうな気がするのである。 金ごま本舗のブログより 種子は、難消化のセルロースに覆われています。 幸運にも口の中でたまたま破壊されない種子が消化器官を通り抜けて排出されて、 その場の環境条件良ければ、芽が出て根を張り成長することができます。 粒のままの洗いごまは生の状態で固い種皮(セルロース)の包まれています。 一般的料理には、焙煎したいりごまを使います。 いりごまにすると固い難消化のセルロースは破壊されていますので消化は可能です。 さらにすりごまにするとごまの表面積が広がり、 消化液との接触が多くなり消化されやすくなるのは間違いありません。      浸水時間   一日摂取限度 アーモンド 8〜12時間    20〜25粒 カシューナッツ 2〜4時間   10粒前後 くるみ 6〜8時間      25g(7粒) ヘーゼルナッツ 8〜12時間  20粒前後 ビーガンナッツ 4〜6時間  30粒前後 マカデミアアッツ 2時間   5粒前後 松の実 浸水不要       20粒前後 カボチャの種 4〜6時間   10粒~15粒前後 ひまわりの種 6時間     20粒前後(大さじ1杯) ヘンプシード 浸水不要   おまけ 落花生   30粒前後 いりごま  大さじ1~2杯(10g~20g)   私は、カボチャの種は乾かして、手が滑らなくなったら、爪切りで皮を切って取り出して、食用にしている。パンプキンシードを買うと高いのでお試しを。

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  • 13 Apr
    • 抗がん剤は効くか

      立花隆氏の「NHKスペシャル取材班 がん生と死の謎に挑む」という本の中から 再び近藤理論と出あったのは、僕自身ががんになって、「患者の立場から語ってくれ」と、がん関係のシンポジウムに招かれたときのことです。それは朝日新聞の主催で開かれた、一般市民向けのシンポジウムでした。 僕以外の演者はすべて、大学や大病院、がんセンターなどのそうそうたるがんの有名臨床医たちでした。昼休みだったと思いますが、控え室でみなが雑談的にいろんな話をしているときのことです。 いつのまにか話題が抗がん剤の話になっていきました。抗がん剤がどれほど効かないかという話を一人がしだすとみんな具体的な抗がん剤の名前を出して、次から次にそれがどれほど効かないかを競争のように話し始めました。 「結局、抗がん剤で治るがんなんて、実際にはありゃせんのですよ」と、議論をまとめるように大御所の先生がいうと、みなその通りという表情でうなずきました。僕はそれまで、効く抗がん剤が少しはあるだろうと思っていたので、「えー、そうなんですか?それじゃ『患者よ、がんと闘うな』で近藤誠さんがいっていたことが正しかったということになるじゃありませんか」といいました。 すると、大御所の先生があっさり、「そうですよ。そんなことはみんな知ってますよ」といいました。僕はそれまで、近藤さんが臨床医たちから強いバッシングを受けていた時代の記憶が強く残っていて、近藤理論は、臨床医たちからもっとネガティブな評価を受けているとばかり思っていたので、これにはびっくりしました。 誰か異論を唱えるかと思ってしばらく待ちましたが、誰も唱えませんでした。あ、近藤理論は基本的に正しいのだと、認識が大きく変わったのは、あの瞬間でした。 こういう話の意味が理解できない人が多いと思うので、解説しておきたい。 近藤先生は、白血病と精巣腫瘍だけは抗がん剤をやるべきだと主張している。 例えば精巣腫瘍は、抗がん剤がよく効いて、実質臓器に転移がなければ、9割くらいが治る。その実質臓器に肺は含まれない。肝臓や骨に転移があると厳しい。その代わり抗がん剤の負担は大きく、抗がん剤によって死亡する人が数%存在する。 このような癌は、「抗がん剤が効く」と言えるだろう。抗がん剤の負担という不利益を、利益が上回るのである。 一方、例えば、大腸癌胃癌の術後再発予防のための抗ガン剤は、再発予防効果は10パーセントである。それを説明して、やるかやらないか患者さんが選択する。 10パーセントしか効かない薬なんて、普通、効くって言わないだろう。ところが、患者さんは、「この抗ガン剤は効く」と考えてやりたがるのである。 8割くらい効けば、「この薬は効く」と考えるものと思うが、なぜか抗ガン剤では、奏功率が4割、つまり、効かない可能性の方が高くても、患者さんは「この抗ガン剤は効く」と解釈するのである。  同様に、効いても、数ヶ月延命できるとか、1年延命できて、「効いた」と解釈する人は、そのために犠牲にする時間や体力といった不利益の大きさが分かっていない。  つまり、「どのくらいの効果で効くと言えるのか」という考え方の違いである。  定義されているように「一時的に縮小する」「生存期間が延びる」というのを「効く」と考えれば、効く抗がん剤はたくさんある。  しかし、抗がん剤は正常細胞をも攻撃するから、体力を削る。末期がんは、最期は動けなくなるものと思っている人は多いだろうが、その前の抗がん剤を始めとした治療で体力を削ってしまったから動けなくなってしまった人も多いのである。実際には、そういう治療の負担を受けなかった人の中には、体力が温存できているから、比較的最期まで動ける人も少なくない。  だから、生存期間が延びるとしても、そのために犠牲にするものと天秤にかけて、不利益が利益を上回ると考える人は、「この抗がん剤は効かない」とみなすだろう。 そういうわけで、感覚の違いである。医師自身は、自分だったらやりたくないような抗ガン剤でも、患者さんがやりたがるという現象が起きる。  予測される治療成績、副作用は説明されるはずなので、頭を冷やして考えれば、一般人でも、「この抗がん剤は効く」といえるかどうか、判断できるのではないかと思うのだが・・。  そして、治療の不利益が利益を上回るならば、治療しないほうがいいに決まっている。  一般人は、抗がん剤の利益は理解しているかもしれないが、抗がん剤の不利益が、目に見える副作用しか頭にないようである。    そこで動物愛護(ベジタリアン)の話に戻る。  サプリの原材料は、動物から抽出しているという。多分、そうなのだろう。  西洋薬は、動物実験を経て開発されていると思うし、製造過程でも動物を用いる生物学的製剤がある。  したがって、無駄な動物の犠牲を避けるために、不必要な薬、サプリを使わないことを心がけるべきであろう。「この薬は本当に必要なのか?」と自分に問うのである。  抗がん剤は、動物実験を経ており、これから先も、新しい抗がん剤の開発のために、たくさんの動物が犠牲にされる。そういう路線に加担することになる。  「動物実験は悪である」という認識があれば、「動物を犠牲にしてまで治療するのは良いことなのだろうか。そこまでして、得られるモノは何か」と冷静に考えることができるであろう。

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  • 11 Apr
    • ベジタリアンになる前に3(黒豆、枝豆)

      インドでは、ありとあらゆる豆が食べられており、豆は消化が悪いため、皮を取り除いたダルなど、工夫されてきたが、大豆だけは食文化が発達しなかったくらいである。だから、大豆を消化するには、工夫が必要である。 また、中東料理で「ひよこ豆のフムス」が有名である。本場では、ひよこ豆の皮は取り除くことになっているので、昔の人達は消化吸収を気にしてきたことが分かる。しかし、日本のレシピでは、ひよこ豆の皮をつけたままフムスにするのがスタンダードであろう。それで十分美味しいからである。 ということで、日本人にとって、消化吸収への配慮は盲点である。ここでつまづく人が多いであろう。   枝豆、黒豆も大豆の仲間で、大豆と同様、消化が悪い。 消化をよくする工夫ができないだろうか?   国立がんセンターのHPにあるように、大豆は加熱により消化率は向上する。 そこで枝豆であるが、加熱時間を長くすれば、消化がよくなる道理である。ゆで時間を長くするとマズくなるのだが、加熱時間を長くして、かつ美味しくできないだろうか? このブログに、圧力鍋で枝豆を蒸す調理法が書いてある。本来、圧力がかかったらすぐに火を止め、水で急冷するのだが、こういう話が載っていた。 余熱5分やってしまったら、色が悪くなっていて、お豆もスっごくやわらかすぎで…失敗したことがあります。 でもね、そのお豆がびっくりするくらい甘くてやわらかくて! 「ずんだ餅」などにするときは、一瞬加圧+余熱で置けば、つぶしやすいやわらかさで、ねっとりしたずんだあんができそうですよ。 ずんだというのは、仙台の銘菓で、ゆでた枝豆の甘皮をとりのぞき、すりつぶした餡であり、ずんだもち、ずんだロールケーキなどのお菓子にする。 そこで、ブログの経験談のように軟らかく蒸して、皮をとりのぞいてずんだにしておかずに使えば、消化がよくなるし、食べ過ぎない。 例えば香ばしキノコのズンダ(枝豆)和え 黒豆も同様で,加熱時間を長くやわらかくして、皮を取り除き、ディップやペースト等にするとかね。 枝豆も黒豆も発酵させて納豆にできるが、黒豆は大きいので、ひきわりにしないと、糸は引くが豆の芯まで均一に発酵させることができない。   しかし、一番大事なのは、食べ過ぎないことである。 枝豆も、黒豆も、美味しくて食べ過ぎてしまうことが問題なのである。納豆1パック分の摂取にとどめられないでしょう? 豆を食べ過ぎてしまう理由だが、大量にまとめて作るから、というのがあると思う。 私は、豆は水筒で少量ずつ水煮している。少ししか作らなければ食べ過ぎることはない。  

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  • 09 Apr
    • ベジタリアンになる前に2

       摂取している植物性蛋白質を有効利用することが必要である。  ベジタリアンになって失敗して挫折する人が多い理由の一つとして、大豆に頼りすぎて問題を起こすケースが少なくないと思う。  大豆は、消化が悪い。その理由は 大豆の蛋白質そのもの 大豆に限らず、豆の皮は消化が悪い そのため、大豆をそのまま摂取することは勧めない。 消化を良くするために、昔の人達は加工食品を生んできた。 1について、発酵によって、微生物が大豆蛋白質を消化しやすくする。味噌、納豆など。  味噌の話       大豆がみそになる場合、大豆タンパク質が加水分解され、約60%がアミノ酸になり、少量でも効率良く大豆タンパク質が体内に吸収できます。 みそ汁1杯に使用するみそ(淡色辛みそ)12グラムで、大豆タンパク質1.5グラムをとることができます。 私たちが一日に摂取したい大豆タンパク質は、もめん豆腐ならば、1/3丁、絹ごし豆腐ならば、1/2丁ですが、みその場合は大さじ2杯と1/2(45グラム)で足ります。 これは、みそ汁にして3~4杯分。 納豆PRセンター 納豆はタンパク質の消化吸収率がよく、煮豆のままだと65%程度のものが、納豆に加工すると80%以上に吸収率が高まります。 なお、納豆は、皮はそのまま残るので、納豆の皮は消化が悪い。ひきわり納豆は、納豆の皮を除いてあるので、消化が良くなる。 発芽大豆 発芽によって大豆たんぱく質はペプチドやアミノ酸へ分解されるので、腸壁から吸収されやすくなることがわかっています。 自分で大豆を発芽させる場合は、大豆の発芽率はよくないので注意。発芽大豆を調理したものを買うと割高になる。   2について。 まず、おからは摂取しないほうがよい。食物繊維が多いことから、おからの一日推奨量は、50g以下。これは大さじ2杯なので、容易に限度量を超えてしまう。 豆腐について 豆腐は、大豆の組織を十分壊し(磨砕)、タンパク質や脂肪等を一旦遊離させた上で、消化の悪い繊維質を除いて(おからに移行)もう一度固めたものですから、消化吸収が良いのです。 豆腐となった場合、その吸収率は極めて高く、92~98%が消化吸収されるとされています。 そういうわけで、私は、大豆の摂取は味噌と納豆半分ずつから摂っている。納豆は自作している。高野豆腐が底値のときは高野豆腐を少し買うが。 具体的には、平日の朝は、納豆1/2P分を入れた味噌雑炊と決めている。

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  • 08 Apr
    • ベジタリアンになる前に1

       動物の生命を奪わないベジタリアンが理想的と思いながら、様々な事情により諦めている人も多いであろう。  そういう人達にアドバイスがある。  動物の生命を奪わないで、動物性食品を摂る方法がある。それは、副産物で、売れなければ廃棄されるであろう部分を食べることである。  スーパーの鮮魚コーナーに魚のアラが激安で叩き売りされていることがある。価格から推測すると、アラは副産物で、需要が少なく、売れなければ廃棄される可能性が高い(売れ残った肉などは、調理されてお惣菜コーナーで利用されるそうだが)。そういうものを食べれば、動物の生命を奪わずに動物性食品を摂取できるのではないか。  一方、高級スーパーでは、アラも高価だそうだ。ということは、セレブはアラの味を知っており、わざわざ買う。    次に、動物の生命を奪うのを減らす工夫がいろいろある。  無駄に浪費されている動物性食材がある。これをやめれば、健康にもよく、一石二鳥である。  動物を犠牲にしてわざわざ健康に悪い食品が作られることがよくある。洋菓子、霜降り牛(手みやげ、バレンタインデー、お中元お歳暮)などである。  そのようなものを買わない。あげない。もらわない。  洋菓子には、卵、乳製品が使われていることが多い。動物はともかく、和菓子も含めて、お菓子を摂取しないだけで、私たちはそれだけ健康になれる。お菓子を食べなければ、虫歯もできないのである。  この手のお中元、お歳暮をもらう機会があったら、お中元、お歳暮自体をお断りすることをお勧めする。今なら、ヤマト運輸の配達員の過重労働を理由にすることができる。    牛乳をやめてスキムミルクにする。  スキムミルクは、日本政府が、余剰農産物として、発展途上国に援助したことがある。もちろん、私たちが買えるスキムミルクは、価格を考えると余りものではないが、生乳として利用するより、保存の効くスキムミルクで利用したほうが、社会の面から見ても、無駄になりにくいだろう。保存が利くので、料理に使うのに便利である。    少食を身につける。  40代女性に推奨される蛋白質摂取として、大豆製品50g(豆腐なら1/2丁、納豆なら1パック)、卵3個、肉or魚200gと言われる。蛋白質60/日を、タンパク源の食品だけで計算しているのだろうが、他の食材にも蛋白は含まれるのだから、これは多過ぎだと思うのである。  過食で健康を害する人は実に多い。少食こそ健康に必要であり、少食になるには、よく噛む習慣をつけ、よく消化できるようにならなければならない。  食べる量が少なくなれば、動物食材も少なくて済む。    ラクト・オボ・ベジタリアンと、フィッシュベジタリアンと、霊的にはどちらのほうがマシなのだろうか?  私は、卵や牛乳を摂取するベジタリアンのほうがマシなのではないかと考えていた。直接動物の命を奪うわけではないからである。  しかし、シルバーバーチその他が肉食をやめるべきと言っている中身を検討してみると、畜産動物への残酷な仕打ちが、人間を霊的に遅らせる原因の一つになっていると言っている。一方魚は、ひどい環境だと耐えられず死んでしまうだろうから、畜産動物と同じようなことはできないであろう。  そのため、私は、霊的には、ラクト・オボ・ベジタリアンよりフィッシュベジタリアンのほうがマシなのではないかと思うのである。  ビーガンにはなれないが、なるべく霊的に正しいことをしたいという気持ちがあるなら、肉をやめて卵、牛乳、魚はOKになるのがよいし、もっといいのはさらに進んで、牛乳、卵をやめて魚介類の摂取にとどめるのがよいと思う。

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  • 27 Mar
    • 人工羽毛布団

      夫の羽毛布団が寒くなってきたので買い替えた。 羽毛を採ることは、水鳥を苦しめる行為である。したがって、人工羽毛布団を選択した。 洗える人工羽毛布団(ダブル) エクシードダウン 9,980円     軽くて暖かくて気に入っていると言う。   もし私が買い替える場合はエクストラダウン。防ダニ加工してあること、側生地が綿100%であることがその理由である。夫はダブルだが、ダブルがなかったので。 エクストラダウン掛け布団 シングル     4,612円 そこで、人工羽毛布団について考えた。   「羽毛を越えた暖かさ」という宣伝だが「同じ厚みなら羽毛より暖かい」という意味であり、人工羽毛布団は薄いので、質の良い羽毛布団には劣る。寒い地方で人工羽毛布団1枚でしのぐのは無理と思う。  逆に言えば、厚みを出せないダウンジャケット、ダウンコートは、ダウンを越える暖かさであると予想される。洗えるし。 プリマロフト ジャケット ¥30,800 楽天   人工羽毛布団で寒くなる構造上の問題がある。 軽いので、布団と身体の間に隙間ができて外気が入ってくる。 縫製に問題があると、中綿が寄ってしまい、中綿のない部分が寒くなる。 1について。 羽毛布団というのは、羽毛布団の上にウール、アクリルなどの毛布をかけて暖かい空気を逃がさないようにするのが正しい寝方である。 それで、今までと同様、布団の上に毛布をかけているので、身体に密着し、寒気が入らない。 逆に、重みを外したり、布団カバーを変えれば涼しくなるので、幅広い季節で使用可能と思う。 2について。一般的な羽毛布団の構造は、立体キルトになっている。一層立体キルト と二層式とでは、二層式キルトのほうがやや暖かいようである。そこで、キルトがしっかりしていそうな商品を選んだ。    人工羽毛布団シングルの値段は5000円程度、高くて2万円。羽毛布団は、少なくとも3万円は出さないと、まともな質の布団は買えないと言う。日本製でも、原材料の羽毛は輸入に頼っており、その9割がアジアの羽毛(特に中国)だから、ポーランド製など、羽毛の名産地であるものがいいようだ。コストを落とそうとすると、飼育環境が悪くなり、羽毛の質が落ちるという。  価格差が大きい上に、羽毛布団は、長持ちさせるためには丸洗いに出さなくてはならないし、経年使用で劣化する。一方、人工羽毛は自分で洗えるし、耐久性は相当のようだ。  浮いた費用を、良質の毛布や暖かい布団カバーにまわすなど、考えて工夫すれば、同じコストで、羽毛布団に匹敵する暖かさは十分可能と思う。東京西川のHPを見たら、15000円の毛布カバーがあり、めちゃ暖かい!というレビューがついていた。  他の生き物を害さないようにする心がけは、動機に応じて、霊性の向上をもたらしてくれるであろう。羽毛製品を買うのをやめ、人工羽毛製品にすることは、菜食主義者になるよりも容易と思う。

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  • 20 Mar
    • 胃バリウム検査

      長野県泰阜村は胃癌を始めとした集団検診をやめた村として有名。1984年から3年連続で、胃がんの集団検診を受けた村民が胃がんの見落としで死亡。有効性を評価せずに続けるのはおかしいと、1989年度から集団検診をやめ、訪問医療や訪問介護を充実させてきた。 1人当たり医療費が都道府県別で最も低い長野県で、泰阜村は96年度は120市町村の中で低い方から18番目、81市町村となった2006年度は42番目だった。 泰阜村で胃の集団検診廃止した網野晧之医師が自費出版した本。 網野医師は泰阜村に赴任した当時、集検に熱心な医師だった。しかし、見落とし例がでたことから疑問をもって文献を調べ、自分の頭を使って考えていき、検診には科学的根拠がないのに、上意下達的な保健行政によって始められてしまったことに気づきます。 『なぜ、村は集団検診をやめたか』 「私たちは権威ある形をとって目の前に現われたものは、たとえ仮説にすぎないものでも、認めてしまう傾向がありました。集団検診を無批判に施行していたのも、低コレステロールの勧めを説いていたのも、無意識に医学的権威に対して奴隷として従っていたこと以外のなにものでもなかったと思います」(P.73,74)   日本中のおおぜいの医師たちは、なぜいまだに根拠のない集団検診を行っているのでしょうか? 疑問ももたないのか? 疑問をもっても考えないのか? 考えても保身(儲け)のためになかったことにしてしまうのか? たんに長い物には巻かれろなのか? いずれにしても無責任この上ありません。意味のない(どころか害のある)集団検診を止めれば、浮いたお金を福祉に回すことができるのに。   「私たちは医学に絶対的信頼をおいてきました。しかし、その根拠について自らを問うことは少なかったと思います。それは常に進歩しており、真理に近づいていく日常的努力そのものが医学であるという感覚をもっていたためではないでしょうか。いつの日にか人間を病から解放してくれるという医学に、それが幻想であるとも知らず、信仰に近い依存心をもっていたのです。しかし、医学が解決した疾病は意外に少ないのです。(中略)   すなわち、治療が進歩していないという苛立ちが、少しでも早く疾病を発見できれば治療可能になるかもしれないという考え方を生み出したのではないでしょうか。(中略) しかし、その根拠は皆無なのです。(中略)にもかかわらず、早期発見治療は思想として、宗教として流布されていったのです。そこには医学は進歩の途上にあるので何ら問題はないという医学崇拝、医学絶対の思想、宗教しかなく、批判精神の欠けらも見られないのです」(P.78,79)   医学の治せる病気はたった1割、1割は医原病(医療がつくりだした病気)、8割は自然治癒するそうです。それなのに医学・医療を信じるのはまさに「宗教」です。「宗教」から抜け出すのは至難の業であるかもしれません。しかし、「宗教」ではない科学的な医療のみが行われるようになれば、増大しつづける医療費は格段に減り、そのお金で福祉を充実させ、人間はいまよりも健康的に生活し、身も心も安らかに死ぬことができるようになると思います。   癌を予防するためには、一人一人が考え、自分を律し、健康的な生き方をしなければならない。自分の頭で考えて努力しなければならないから、これは難しいことである。「食べ過ぎはよくない」と頭では分かっているだろうが、それを守れる人がどのくらいいるだろうか。 それに対し、癌の早期発見、早期治療は、医師に頼ればよいからラクである。 しかし、現実の結果を見れば、そんな甘い話は通用しない。癌は早期発見早期治療すれば解決というのは幻想であり、個人個人が、癌を予防する努力をしなければならないのである。 ところが現実は、マンモグラフィ、胃バリウムなど、被爆によって癌のリスクを上げても、ストレスによってダメージを与えても、早期発見早期治療したほうがいいというかんがえかたになっている。どう考えてもおかしいではないか。   昨日の記事で「有効性評価に基づくがん検診ガイドライン」を紹介した。国のガイドラインとして位置づけてよいようだ。 このガイドラインでは、バリウムでの胃癌検診を推奨している。対象は、50歳以上を推奨している(うちの自治体では40歳以上を胃癌検診対象としている)。 ■胃X線検査:推奨グレードB 死亡率減少効果を示す相応な証拠があることから、対策型検診および任意型検診における胃がん検診として胃X線検査を推奨します。近年、高濃度バリウムの普及後、誤嚥の報告が増加しています。不利益について適切な説明が必要です。   推奨する根拠の中身を読んでみる。   4 件の症例対照研究と 2 件のコホート研究 を死亡率減少効果の証拠として採用した。 国内で公表された症例対照研究のうち、Oshima らによる症例対照研究では有意な死亡率減少効果は認められなかっ たが、他の2件では有意な結果を得た。 (ブログ主注:ということは、2件で死亡率減少結果は見られなかったが、2件では死亡率減少結果を認めた、という意味だと思われる) コホート研究のうち1件では有意な結果は認められなかったが、1件では男性のみ有意な死亡率減少効果を認めた。 「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」2005 年度版の公開以降に国内から 2 件、 国外から 1 件のコホート研究が公表された。 国内 2 研究では検診群で 40%程度の胃がん死亡率減少効果を認めている。 海外研究はコスタリカで行われており、複数の対照群と比較し、検診群で 40~50%の胃がん死亡率減少効果を認めている。胃 X 線検査の胃がん死亡率減少効果を示している。 胃癌によって死ななければいいという話ではない。癌の治療をすれば必ず身体に負担がかかる。胃癌で死ななくても、治療の負担で心筋梗塞で死ぬかもしれないし、脳梗塞で死ぬかもしれない。全体の死亡率を比べなければ話にならない。 2013 年以降、X 線検査と内視鏡検査に関する症例対照研究が公表された。本研究では 1~4 年以内の X 線検査受診で 15%前後の死亡率減少効果の傾向はみられるものの、有意ではなかった(Hamashima Cほかの論文 Int J Cancer. 2013; 133(3): 653-9.。つまり1件の研究)   まとめると、死亡率全体を比べると、半分では死亡率が減少し、半分では減少しなかったということになる。これで、バリウム検診が有効と言えるのだろうか?恣意的に結論を出したとしか思えない。  

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  • 19 Mar
    • 乳がん検診

      乳がん検診は、私の自治体では、30歳代は超音波、40歳以上はマンモグラフィとなっている。 しかし、日本の、科学的根拠に基づくがん検診ガイドライン(乳がんに関しては、厚生労働省による調査研究「有効性評価に基づく乳がん検診ガイドライン2013年版」の研究結果を反映しているようだ)をみると、30代の乳がん検診は推奨していないのである。75歳以上に関しては記載がないが、75歳以上の人はやらないほうがいいという暗黙の了解であろう。 また、高齢者が癌を早期発見しても、癌の進行より寿命のほうが早かった場合、見つけなければ必要なかった苦しい治療をして身体にダメージを与えるから、高齢者はわざわざ寝る子を起こさないほうがいいことは言うまでもない。 しかし現実には、このように、学会の意見を反映せず、40歳未満でも高齢者でもがん検診を受けているのであろう。「癌は怖い」と感情に走り、健康について真面目に考えていないのである。   科学的根拠に基づくがん検診ガイドラインのHPより引用   マンモグラフィ単独法(40~74歳):推奨グレードB マンモグラフィと視触診の併用法(40~64歳):推奨グレードB   マンモグラフィ単独法及びマンモグラフィと視触診の併用法(40歳未満):推奨グレード I 40歳未満の乳がん罹患率は低く、死亡率減少効果を検討した研究もほとんどありません。このため、死亡率減少効果を判断することはできません。従って、推奨グレードIと判断し、対策型検診としての実施は推奨しません。任意型検診として実施する場合には、死亡率減少効果が不明であり、不利益が大きいことについて適切な説明を行うべきです。   ■視触診単独法:(40歳未満):推奨グレード I 十分な研究が行われていないため、死亡率減少効果を判断することはできませんでした。従って、推奨グレードIと判断し、対策型検診としての実施は推奨しません。任意型検診として実施する場合には、死亡率減少効果が不明であることと不利益が大きい可能性について適切な説明を行うべきです。ただし、視触診が適正に行われるための精度管理ができない状況では実施すべきではありません。   ■超音波検査(単独法・マンモグラフィ併用法:(40歳未満):推奨グレード I(以下略) 推奨グレードについての説明 A    利益(死亡率減少効果)が不利益を確実に上回ることから、対策型検診・任意型検診の実施を勧める     推奨する     B    利益(死亡率減少効果)が不利益を上回るがその差は推奨Aに比し小さい。      推奨する     C   利益(死亡率減少効果)を示す証拠があるが、利益が不利益とほぼ同等か、その差は極めて小さい ことから、対策型検診として勧めない。 D    利益(死亡率減少効果)のないことを示す科学的根拠があることから、対策型検診・任意型検診の実施を勧めない 不利益が利益(死亡率減少効果)を上回ることから、対策型検診・任意型検診の実施を勧めない    推奨しない     I    死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、利益と不利益のバランスが判断できない。このため、対策型検診として実施することは勧められない。 任意型検診として実施する場合には、効果が不明であることと不利益について十分説明する必要がある。推奨しない     日本乳がん学会のガイドラインを見ると、若年者のマンモグラフィ検診は推奨していないが、超音波でのスクリーニングについてはノーコメント。超音波で引っ掛けても、マンモグラフィに進むかどうかは医師の判断なので、不必要なマンモグラフィをやらなければ問題ないという理屈かもしれないが、小林麻央さんの件があったので、現実には、超音波で引っ掛けてしまったら、マンモグラフィ過剰診断を行う症例が激増するであろう。   なお、アメリカでは、40歳代の女性に対する乳がん検診が「推奨しない(グレードC)」に変更された。放置しても臨床的に問題にならない癌があることをきちんと述べている。 日本人は、このような理性的な検討ができない。   日本乳がん検診学会のHPより引用 2009年11月、米国予防医学専門委員会は、それまで「40歳以上の女性に対して、乳がん検診の1~2年に1回の受診を推奨する」としていた推奨(グレードB)を、「40歳代の女性に対しては、マンモグラフィを用いた定期的な乳がん検診を行うことを推奨しない」(グレードC)を発表しました。 推奨グレードがBからCに変更された理由として、検診による利益(乳がん死亡率減少効果)は不利益(要精検の結果、がんではなかった人に対する不必要な検査や放置しても臨床的に問題にならないがんに対する治療等)が存在し、利益と不利益を比べた場合に50歳代以上の女性と比較して、40歳代では利益が不利益を上回る度合いが小さいことが挙げられています。 この専門委員会の勧告に対し、米国対がん協会は、40歳代に対しても引続きマンモグラフィによる乳がん検診を行うとして、専門委員会の勧告に反対する意見を表明しています。

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  • 16 Mar
    • 自由診療

      「がん難民を食い物にする自由診療クリニック」JB pressから引用 あなたがもし「がん」になったらどんな治療を受けたいですか? 現在、全国の病院で一般的に提供されているがんの治療法は、「標準治療」と呼ばれるものです。 これまで行われてきた数多くの臨床試験の結果導かれた、現時点での最も有効性の高い治療法のことを指します。標準治療は手術、放射線、抗がん剤の3つを組み合わせたものがほとんどです。 一方、そうした従来の医薬品とは全く異なる「再生・細胞医療」が新たな治療法として大きな期待がかけられ、今後の成長分野として大きく注目されています。2012年にノーベル賞を受賞した「iPS細胞」を利用した治療もこの1つです。 残念ながらこうした再生・細胞医療の多くはまだ研究段階ですので、一般的な治療に導入されるような安全性や有効性は確認できていません。   ■ 推奨されない治療に1000万円請求も しかし、そうした研究段階の医療が実は、保険適用外の自由診療の名のもとに日本では数多く行われているのです。 主な対象疾患は「がん」で、行われているのは「免疫細胞療法」という治療法です。2015年時点の再生・細胞医療市場は約140億円。その約8割は免疫細胞療法が占めています*1 。 免疫細胞療法とは患者さんから採取した免疫細胞(リンパ球)を体外で培養・活性化させ、体内に移植しがん細胞を攻撃する、というものです。 古くから行われている治療法ですが、昨年12月に発表された日本臨床腫瘍学会のガイドラインでは、適切な臨床試験が行われていないため、治療法として推奨されないとされています*2 。 にもかかわらず免疫細胞療法を提供するクリニックは全国で300か所以上あり、受診する患者さんが後を絶ちません。治療の1回あたりの費用は50万~60万円、複数回受けることが勧められており、総額では300万~500万円かかります。1000万円を越える事例もあるようです*3 。当然、保険適用外ですので費用はすべて自己負担。患者さんは身体的、精神的にも辛い状態に加えて、経済的にも大きなダメージを負ってしまうのです。 それに対して、「欧米では、三大療法以外の代替療法の比重が増えている。だから三大療法はよくないのだ」という主張を見かける。 これは、事実なのだろうか?  欧米で代替療法が増えているのは事実である。しかし、その理由というのはこうである。  欧米では、治療法が、効果があるかないかきちんと判定し、効果がなければ何回まで、と厳密に実践する。そして、治療法がなければ、できることはありません、とばっさり言い渡す。すると、何か治療をしたい患者さんが代替療法に流れるのである。  だから、新薬の臨床治験では、治療法がないけど何か治療を受けたい患者さんが日本よりはるかにたくさん集まるのである。  それに対して日本では、効果があるかないかはっきりしなくてもダラダラ抗がん剤をやる医師が多い。もちろん小さくなっていれば効果ありと分かるが、変化なしでも、大きくなっていないのだから効果ありと解釈可能だからである。つまり、医師の解釈次第で,効果あるなしの判定を変えられる。A医師は効果なしと判定したが、B医師は効果ありと判定するということだ。  効果がある場合治療し、効果がなければさっさとやめる、そして、できることがなければ、「できることはないからこないでください」と言うのは当然のことだと思うのだが、そのようながんセンター的な当たり前の対応は,日本では「見放された」と不評のようである。 治療の1回あたりの費用は50万~60万円、複数回受けることが勧められており、総額では300万~500万円かかります。 標準治療でもそのくらいかかる。自分が払うか保険が払うかの違いである。 そういうわけで、標準治療でも、効果がない治療をダラダラやられることはよくあるし、500万円は自己負担では悪くて公的負担ならよい、と考えるのは変な話である。  人のお金だと思うと、限りなく貪欲になる。私は、むしろ、自分のお金から大金を出したほうが、貪欲に歯止めがかかる場合があると思う。  死んだらお金が必要なくなるというのに、大金を使っ て、少しでも長く生きたい、と、死ぬまで貪欲が直らない。そういう生き方をして、満足感、幸福感を得られるとは思えない。「何ヶ月延命できればよい」などと目標があるなら、その思いを満たせるかもしれないが、「少しでも長く生きたい」と希望する場合、「いつまで生きたら満足できる」という限度がないと思われるからである。  自然に叶ったことをして寿命が延びるのがあるべき姿である。自然に反したこと(正常な細胞をも攻撃すること。延命のために大金を使うという貪欲さ)をして延命しても、幸福になれないであろう。  公的負担であろうが、自己負担であろうが、死ぬまで貪欲を燃やすことが問題なのである。

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  • 15 Mar
    • 炎症性腸疾患

      癌を予防するためには,正しい生活習慣が必要であり、それをなおざりにして癌を早期発見早期治療したところで、個人として当たりくじを引くことはあるが、集団として平均すれば生存期間は延びないという話をしてきた。 では、間違った生活習慣をして、病気になってしまってからでは、どうすればいいのか。   クローン病という難病がある。原因不明で、根本的な治療法はなく、寛解、再燃を繰り返しながら徐々に進行していく炎症性腸疾患である。薬物療法を行いながら、いかに寛解期を長く保つかがポイントで、現代医学では、治ることはない。 また、それと類似した疾患に、潰瘍性大腸炎という炎症性腸疾患がある。 双方とも、ペンタサという薬が治療に用いられる。 クローン病や潰瘍性大腸炎を治した・・これは、薬を飲みながら症状をコントロールする寛解ではなく、普通の人と同じ(薬なしで症状がない)という意味であるが・・体験談を書いているブログがいくつかある。その中には、宣伝ではなく、信用できそうなものがある。   ペンタとエレンにさようなら クローン病を治した体験談を書いている。ペンタサを飲み始めたらクローン病の症状が悪化したため、ペンタサのせいだ、医師には頼れないと考え、自律神経を調える治療法を自分で探した。 なお、クローン病や潰瘍性大腸炎で、ペンタサを開始したら病気の症状が悪化するような病態が見られることがあり(ペンタサアレルギー)、その場合、ペンタサを中止しなくてはならない。このブログ主が治療した時代は、ペンタサアレルギーが、医師にもあまり知られていなかった可能性がある。 このブログから得られる教訓 発病の原因はストレスである明確な心当たりがある。無用なストレスを作らない人間になるよう努力した。 クローン病が治らない病気とされているのは、治らないのではなく、現代医学で原因が見つかっていないのである。自分で原因を探し、その原因を取り除けば治るはずだ。 クローン病を治すには、生活習慣を変えなくてはならないが、心の持ち方が正しくなってこそ、正しい生活習慣とは何か認識して実践できる。心の持ち方が正しくならないのに、正しい生活習慣を実践することはできない。だから、心の持ち方が大事である。 潰瘍性大腸炎ストーリー 潰瘍性大腸炎では、ペンタサがよく効くケースが多いのだが、このブログ主はペンタサが効かなかった。ペンタサが効かないと、治療は、サラゾピリン、ステロイド、つまり、副作用がもっと多い薬を使うことになってしまう。ブログ主は、潰瘍性大腸炎がよくなる生活習慣を考え抜き、薬を使わず、生活習慣の改善で症状がなくなったようだ。身体を冷やさないためには服のサイズはジャストサイズがいいとか、そういうことまで考えている。 このブログから得られる教訓 ストレスは潰瘍性大腸炎を悪くするので厳禁。人間、現在の出来事でストレスを感じるのは仕方ないが、将来のことを思い悩んで無用なストレスを作ってはいけない。だから、「癌になったらどうしよう」という発想をすべきではない。(だからがん検診の内視鏡もやっていない) 食事の内容に気を使う人は多いが、食事の食べ方に気を使う人は少ない。食べ方は重要。食べ方次第で潰瘍性大腸炎の悪化を防げれる。自分は潰瘍性大腸炎になる前は早食いで、食事に10分、長くても20分ぐらいで食べ終えていた。どんな人でも、よく噛んで時間をかけて食べることは重要。消化がよくなり腸への負担が減る。(ちなみに、私の知人のクローン病患者は、高校時代寮生活で、早食いを強制されていた。ストレスもあわせて、それが発病の原因になったと考えている。早食いが病気の原因になっているケースは極めて多いと思う) おもしろいと思ったのが、薬に頼れないことで、自分でなんとか試行錯誤せざるを得なかったことである。そして、「発病したとき、自分のこういうところが悪かったのだ」と、悪いところに思い当たって、悪い生き方、生活習慣を直している。この人達が、頼る薬があって、薬で症状を抑えることができていたら、こうはいかなかったのではないだろうか。 病気になってみないと、自分の生活習慣の悪さに気づかないことは多いであろう。しかし、それを気づいて克服することで、健康面のみならず、精神的な進歩、すなわち智慧が得られるのである。 そういう努力をなおざりにして、がん検診だの、医師に一方的に頼っていては、健康体にはなれないし、智慧は得られないであろう。医師は患者と一緒に暮らしているわけではないから、患者の生き方の何が病気の原因になっているか、分かるはずがない。自分で考えなくてはならないのである。

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  • 12 Mar
    • 異時性胃がん

      早期胃癌は、内視鏡切除でとりきれれば根治させることができる。 早期胃がんの内視鏡的切除術後には、3年間で4~10%程度に、異時性胃がんが出現するというデータが出ている。取り残した癌が再発するのではなく、新たな癌ができるということである。 ピロリ菌は、胃癌の大きな危険因子である。早期胃癌の患者さんも、ピロリ菌保菌者が多く、ピロリ菌を除菌すると、胃癌の発生率が低下する。 3年間で4~10%というのは随分高い数字である。5年、10年と蓄積していったらどうなるか。 ここで疑問が生じる。胃癌の危険因子を持ち、異時性胃がんが出現した患者さん達が、最初から検診を一切受けなかったと仮定する。すると、治療の適応となった早期胃癌は発見されないし、切除後に生じた異時性胃がんも発見されない。進行がんで初めて発見される。 内視鏡的切除術後に、3年間で4~10%程度に、異時性胃がんが出現していたのであれば、内視鏡切除も検査もしないで長期間過ごし、進行がんで発見されたら、同じ数くらいの異時性胃がんが見つかるはずである。 ということは、初めて進行がんが見つかって手術になる患者さんの少なからぬ割合が、複数の癌が見つかると思われる。 ところが、現実はそうではない。圧倒的多数の人が1個の胃癌で手術をする。   これはどういうことだろうか? できた異時性胃がんが消えてしまったとか、大きな癌の近くに小さな癌ができて飲み込まれたとか、いろいろ仮説を立てる事が可能であろう。 しかし、私がもっとも疑わしく思うのが、内視鏡治療が、新たな早期胃癌を引き起こす可能性である。 内視鏡治療をするならば、術前の精密検査から、初年度は7回くらい内視鏡を受けることになるだろう。すると絶食になるから、生活習慣が乱れる。また、苦痛によるストレスや、癌を心配するストレスもあるだろう。 人間が健康でいるには、正しくご飯を食べる、眠る、適度な運動をする,精神の安定を保つ、日光に当たる、きれいな空気を吸う、などの、基本的なことが大事なのである。まさに生活習慣である。 癌の早期発見早期治療のために、そのような生活習慣(ご飯を食べる。ストレスをためない)を犠牲にするのは本末転倒であろう。  

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  • 11 Mar
    • がん検診7

      週刊ゲンダイオンラインより   新潟大学医学部教授の岡田正彦氏(65歳) 続き 要するに、早期発見・早期治療をしても結果が変わらないということを、様々なデータが示しているのです。 検診に大金を費やすより、予防に力を入れるほうが、国民の健康保持にとってはるかに有効だと私は思います。 がんも、8割方予防できると考えられます。遺伝によって起こるがんは全体の5%ほどだけで、残りの80%は原因が分かってきましたから。 その一つには、前に述べたエックス線検査があります。それ以外にも、よく知られたところでたばこや塩分の取りすぎ、野菜や果物不足も、がんの発症の大きな要因となっています。それらを解消すれば、がんの半分以上は防ぐことができるのです。 最近では、手軽に野菜の栄養素を摂取できると謳ったジュースやサプリが売られていますが、それでは野菜を食べたのとイコールにはなりません。成分を分解してしまうと、がんを抑制する抗酸化物質が作用しないため、意味がなくなってしまうんです。 生活習慣のちょっとした工夫で、病気は改善されます。薬や手術では、効果があっても微々たるもので、生活習慣を改善した方が、その1・5倍もの効果があります。50%も違うということですから、これに匹敵するような医療行為は他にありません。 人間の身体は、余計な手を加えずとも、自然に沿った生活をすることで、健康が保たれるようにできているのです。検診大国・日本で健康に生きていくために、過剰検査・過剰医療の恐ろしさをよく理解することが大事なんです。 癌を早期発見早期治療したとて、くじ引きなので、個人として外れくじを引いたら健康被害を受け、集団として評価すれば寿命は延びないというのが私の実感である。 殆どの場合は、癌は、生活習慣によって引き起こされるのであろう。 人間の身体は、ダメージを受けたら不快を感じるようにできている。ダメージの蓄積が蓄積して、癌などの病気としてあらわれるのではないか。 例えば、眠れなくなった、風邪を引きやすくなった・・そこで、眠れればいいと考えて睡眠薬の常用で済ませたら、眠れなくなる原因はそのままだから、身体に見えないダメージを与え続ける。どうして眠れなくなったのか考え、解決できるなら克服すれば、ダメージはなくなるのである。 そのような、小さな不調を解決していけば、癌その他の病気の予防になると思う。 野菜や果物が身体によいといわれると、必ず、過剰接収して健康に害をきたす人がでる。しかし、「野菜果物をたくさんとったほうがいい」という思い込みに捉えられずに、よくよく観察すれば、身体によいとされる食べ物を過剰摂取すると、身体に不調が出ているはずである。 日本人は薬好き・医療好き。別の言葉でいえば、薬や医療に頼りたがる。しかし、そのような姿勢で健康になれるかどうかは、世の中を見渡せば分かるはずである。寿命はのびているが、不健康で長生きする人ばかりである。人(医師)任せで健康を守ることはできない。つまり、病気を予防するためには、正しい生き方に近づくことである。楽な道はないのである。  

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  • 10 Mar
    • がん検診6

      週刊ゲンダイオンラインより   新潟大学医学部教授の岡田正彦氏(65歳) 続き ところが日本では、いまだに検診は有効だと盲信され、国を挙げて推奨されています。 それはなぜかというと、ひとつはビジネスマター、つまり金儲けをする手段として検診がもてはやされているということ。 もう一つは「検診は有効だ」という、人々の深い思い込みによります。なくてもいいという発想そのものを持っていないのです。 検診を推奨しているのは国やマスコミであるが、一番悪いのは、癌が手遅れで見つかったら、「早く見つけていれば」という発想をし、早期治療したら人生がうまくいくものと勝手に妄想する一般人の頭だと思う。本当にそうなのか調べもしないのである。 だいたい、80代90代になって、自治体が盲目的に送付してくるがん検診を受ける高齢者がたくさんいるが、そういう人達の気がしれない。送る方も送るほうだが、受ける方んも受ける方である。そんな歳で無症状の癌を早期発見してどうする気なのだろう。 医者の側にも問題があります。医療が細かく専門化した結果、自分の領域しか知らない医者ばかりになり、検診が他の領域に及ぼす影響まで思いが至らなくなっているのです。 また、医者はこれまで自分のやってきたことが正当だったと信じたいため、検診に否定的な論文を目にしても、それは例外だと自分自身にも言い聞かせ、患者さんにもそう伝えるのです。 だから、がん検診を受けても寿命は延びないし、かえって苦しい思いをしたり、がんを発症させたりする可能性があるという事実が、患者側には一切伝わってこないのです。 そういうことは、個人個人が問題意識を持って、自主的に追究することである。本やマスコミを通じて、がん検診のデメリットを訴える医師はたくさんいる。「がん検診で寿命が延びないことがあるはずがない」「何かあったらどうするのか」「がんを早期発見したら安心できる」と感情に走って、理性的に考えようとしないのは、一般人側である。 こういったケースは、がん検診だけに限ったことではありません。人間ドックに入れば、ありとあらゆる検査の中で何らかの病気が見つかりますが、その中には無理に治療が必要でない微細な病気も多く、結果的に過剰医療に繋がって身体にダメージを与えてしまう恐れがあります。 そもそも、人間ドックという言葉があるのは日本だけ。推奨している国も他にはないのです。 また糖尿病の検査にも身体に悪いものがあります。ブドウ糖負荷試験という検査方法で、75gのブドウ糖を飲んで血糖値を計るのですが、これは5g入りのコーヒー用スティックシュガー15本分の糖分に相当します。これを一気に飲むのですから、糖尿病体質の人にとっては、発病の後押しをするようなものです。 そもそも、この検査をしなくても早朝空腹時の血糖値を計れば必要なデータが得られるということは、外国の調査研究で15年も前に明らかになっています。 日本の糖尿病の診断基準があり、血糖やHbA1C等だけで糖尿病と診断できないが、糖尿病の疑いがある患者に対し、75gブドウ糖を飲ませて、血糖の推移を調べる。この検査で正常域に入れば、今のところ糖尿病ではないと診断される。 しかし、この検査にまわるような患者は、糖尿病予備軍であり、いずれは高率に糖尿病に移行する。糖尿病と診断されようとされまいと、このような人達は、生活習慣を改めて、血糖に気をつけなくてはならない。そして、糖尿病の人に必要な生活習慣というのは特殊なものではない。 ちなみに、ブドウ糖75gという量について。 甘い飲みものは糖分が多く健康に悪いというのは常識である。 炭酸飲料500ml:40~65g 缶コーヒー190ml:2~13.5g スポーツドリンク500ml:20~34g 果汁100%ジュース500ml:50~60g いかに多いか想像できるのではないだろうか。 75gブドウ糖負荷試験は、糖尿病の診断をつけることに熱中して、肝心要の「健康的な生活をすること」すなわち「どんな人でも、糖分を摂りすぎたら健康に悪い」ということを忘れているようである。

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  • 09 Mar
    • がん検診5

      週刊ゲンダイオンラインより   新潟大学医学部教授の岡田正彦氏(65歳) 続き がんの発症人口が増えている中、近年、急激に死亡者数が減っているのが胃がんです。多くの専門家は検診の効果であると口を揃えますが、胃がん検診が普及したのはごく最近で、胃がんが減り始めたのはもっと前。実は胃がんの死亡者数が減少した本当の理由は、日本人の塩分摂取量が減ったことが大きく関係しているんです。 なるほど、確かに、胃癌検診が普及する前から、胃癌の罹患率も死亡率も減少傾向である。   国立がんセンターHPより。 人口の高齢化の影響を除いた年齢調整死亡率(女性) 年齢調整がん罹患率(山形・福井・長崎県のデータに基づく)   このデータから予想されることは 胃癌になる人が減り、うち胃癌で死なない人は減少率がもっと大きいので、胃癌になっても治る人が増えている。しかし、検診で見つかる場合、見つけなければ一生悪さをしない癌を見つけて治療してしまうケースはどうしても避けることはできない。 乳がん・肺癌・大腸癌は増えていて、死亡数も同じ増加率。 子宮がんは増えているが、死亡する人は減っているので、死なない人が増えている。 胃癌はどうにでも解釈できる。やはり、海外の研究と同じように、がん検診が意味があるか判断するには、がん検診を受けた人、受けない人の追跡調査をして、その後の生存率を調べる以外ない。 ただし、胃癌にかかっても胃癌で死ぬ人が減ったからハッピーということにはならない。 近年、動脈硬化の病気で、抗凝固薬を内服する人がたくさんいる。胃癌の精密検査・治療をするには、組織を取ることで出血が止まらなくなると困るので、一定の期間、抗凝固剤を中止しなければならない。抗凝固剤を止めたら、原疾患のリスクが上がる,例えば抗凝固剤を止めたために脳梗塞を起こしてしまった、というケースがあるのである。 すると、リスクはあるが元気だった人が、がん検診を受けたがためにホンモノの病気になってしまう、でも胃癌では死なない、ということになる。 その他、近年明らかになったこととして、ピロリ菌がある。もともと、日本人はピロリ菌保菌者が多かった。衛生状態の改善によって、ピロリ菌に感染する機会が少なくなったし、ピロリ菌の除菌療法をするようになったので、除菌されれば胃癌リスクが低下する。 私の計算では、胃がん検診は、胃がんを減らすどころか、むしろ増やしている可能性があります。肺がん検診はエックス線写真を1枚撮れば済みますが、胃がん検診ではバリウムを飲んで検査をしている間、ずっと放射線を浴びなくてはなりません。その被曝量は、肺がん検診の100倍近くも高くなります。 そもそも胃がん検診をやっているのは、世界中で日本だけ。日本は、大規模な追跡調査をやらない国なので、胃がん検診が有効だということを実証する証拠は一切ありません。にもかかわらず国が推奨しているのが、私は不思議でならないのです。 日本はもともと胃癌が多い。「癌を早期発見・早期治療したい」という気持ちを持つ国民が多いので、国がそれに応えて検診をしているのだろう。 日本では、質の高いバリウム検査技術を持つマンパワーがある。病気が多ければ、技術者も増えるのである。 しかし,今まで述べてきたように、「癌は早期発見して早期治療すれば、早期発見しない場合よりもトクをする」という安直な考えは甘いのである。 大がかりな検診は意味がないという認識は、すでに欧米の研究者の間で広まっています。アメリカ人の医者千数百人を対象にしたアンケート調査のデータでは、大部分のドクターは、「検診はやった方がいい。ただし血液検査や尿検査があれば十分で、レントゲンや心電図までは必要ない」という意見でした。

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  • 08 Mar
    • がん検診4

      岡田正彦氏は、海外で、がん検診が死亡率を下げないというデータが多いから、日本でもがん検診は死亡率を下げないという主張をする。この論理は正しいだろうか。   週刊ゲンダイオンラインより   新潟大学医学部教授の岡田正彦氏(65歳) 続き だとすると、検診で微細ながんを見つけ出し、激しい治療を施される不利益の方が、放置しておくよりもむしろ大きいかもしれない。これ一つをとっても、がん検診の有効性には大きな疑問符がつくのです。   そのことを考えるのにもってこいの、前立腺がんに関するデータがあります。 死亡後、解剖によって初めて見つかる前立腺がんは非常に多いのですが、彼らはがんを抱えたまま天寿を全うしたことになります。もし彼らが前立腺がんの有無を調べるPSA検査を受けていたら、必ず手術になっていたでしょう。その場合、果たして天寿を全うできたかどうか・・・。治療の弊害で早く亡くなっていたかもしれません。 同じことが、すべてのがんについて言えるのです。 前立腺がんを見つけたら必ず治療していたのは昔の話である。 「本来なら治療の必要がない前立腺がんを、検診で見つけてしまったがために、治療して害を与えてしまっているのではないか」という話は,昔から存在した。 データを分析して、「こういう条件を満たした前立腺がんならば、治療せず定期的な経過観察を行い、必要が生じたら治療するほうがよいのではないか」という理論がまとめられ、10年くらい前から、ガイドラインにも記載された。なぜなら、癌の治療をしたら、必ず失うものがある。一生癌の治療をしなくて済めば、それが一番健康によいからである。 しかし、大丈夫という保証はない。まず、癌から組織を採って細胞異型を調べるのだが、他に異型が大きいところがあるのに、異型が小さいところに当たってしまう可能性がある。だから、1年後にまた組織を採って調べるのである。また、大きくなってきて手術したら転移していたということがある。 ということで、現在では、ある条件を満たせば、治療せず経過観察にすることがある。しかし現実には、そういう段階で見つかる患者さんというのは、癌を早期発見・早期治療する気マンマンでがん検診を受けて見つかった人達なので、「せっかく早く見つけたのに」と不満を言うようである。 治療しない不安に耐えられなくて、途中で治療を希望するケースもある。 そのように、治療によるダメージを避けるために考えたのに、結果的には、治療せず経過観察にした群と、最初から治療を選んだ群を追跡調査したところ、前者のほうが長期のQOLが下がったという疫学調査が出た。癌を心配するストレスは、実際に健康を害するのである。   本題に入る。 前立腺がんにおいては、がん検診が死亡率を下げないというデータと、下げるというデータがある。死亡率を下げないというのはアメリカのデータである。下げるというのはオーストリアかどこかだったと思う。 アメリカでは,前立腺がんが非常に多いので、開業医が直腸診をして前立腺を触診しないと、訴えられるそうである。従って、触診で分かるような進行した前立腺がんは、すでに開業医が引っ掛けており、がん検診で見つかるのは極めて早期である。そのような癌が死亡に関係するのかという疑問が出てくる。 だから、海外といっても、それぞれ事情が違うので、海外でがん検診が死亡率を下げないというデータが出たから、日本でも死亡率を下げないという結論を出すことはできない。   問題なのは、日本人はどうしてもリスクが嫌で、メリットデメリットを考えて決断するということができず話が進まないので、デメリットがないことにされてしまう点である。 「原発は絶対安全と言ったじゃないですか」というみっともない輩がいたが、幼稚園児じゃあるまいし、原発が絶対安全なわけはない。リスクを認めると話し合いにならないので、「原発は安全です」と、リスクがないことにされてしまうのである。 がん検診、医療被爆についても同様である。がん検診や医療被爆のデメリットがないことにされ、メリットばかり喧伝される。「日本人のすべてのがんのうち、3.2~4.4%はエックス線検査が原因だと結論」というデメリットが知らされない。なぜなら、日本人にそれを知らせたら、「被爆は嫌。でも診断はきちんとつけろ」と、必要なCTまで拒否しておきながら、無茶な要求をする可能性があるからである。 「CTとらないと診断できない」と考える頭があれば問題ないが、日本人には無理である。 がん検診は、個人個人が、メリットデメリットを考えて判断すれば宜しい。 がん検診をして良かった人は確かに沢山存在する。しかし、過剰医療でダメージを受ける人も、実に多いのである。 世間は、命を救うのは素晴らしいと考え、がん検診での早期発見早期治療を推奨する。しかし、私は、がん検診で得する人ばかり優先し、不利益を受ける人を無視するのはあまりにも不公平であると思う。 がん検診を受けなかったが故に死ぬことは悲劇だと思わない。何もしなければ健康でいられたのに、がん検診を受けたがために健康を害することこそが悲劇だと思うからである。

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  • 07 Mar
    • がん検診3

      週刊ゲンダイオンラインより 新潟大学医学部教授の岡田正彦氏(65歳) 続き CTが原因でがんが発症するというデータは年々増えています。アメリカには、CTを繰り返し受けると、がんが十数%増えるというデータもあるのです。ところが、日本では全く問題になりません。それどころか、日本のCTの普及率は、2位以下を3倍も引き離す、ダントツの世界一なのです。 それでも、CTを使って数mmのがん腫瘍を早期に見つけることができれば、手遅れになる前に手術で切除して命を繋ぐことができる。だからCTは素晴らしいものだと、多くの人は思ってしまうでしょう。でも、一概にそう言えるでしょうか。 手術となったら、肺にしろ、胃にしろ、肝臓にしろ、組織をごそっと取り去ります。しかも、がんはリンパ管を通って転移するので、近くのリンパ節も全部取らなくてはいけない。大変な肉体的ダメージを受け、免疫力が大幅に落ちます。手術後には何度もエックス線写真を撮りますし、抗がん剤治療も必ず行われます。放射線療法をする可能性も高い。なおかつ、人間の身体にとって最もハイリスクな寝たきり状態を強いられ、何重もの責め苦を負うわけです。これで健康でいられるわけがありません。   例えば、胃癌・大腸がんでは、癌は粘膜→粘膜下層→固有筋層→漿膜の順に深く浸潤していく。 粘膜、粘膜下層までの深さであるものを早期癌という。 内視鏡で切除できるのは、粘膜下層までである。固有筋層を傷つけたら、腸に穴があいてしまうのである。 うち、粘膜下層のごく表層までにとどまっているものは、内視鏡治療で根治できる。 粘膜下層深部浸潤しているものは、病変そのものは内視鏡で切除できても、1割の人は、リンパ管に入ってしまって、リンパ節に転移してしまうことが分かっている。そのため、内視鏡で切除した標本を調べて、粘膜下層深部浸潤していた場合、追加で外科手術を勧めるのがスタンダードである。1割の人が転移する可能性がある、近くのリンパ節を切除するのである。 これはどういうことかというと、1割の群に入れば、手術を受けたことで根治し命が救われることになる。しかし、リンパ節に転移しない9割に入っていた場合、全く不必要な手術だということだ。自覚できなくても、リンパ節を切除されることで、身体にダメージを受ける。中には、そのようなダメージが加わることによって寿命が縮まる人もいるだろう。 9割の人は損をするのだが、1割の命を救うことができるのは素晴らしいから9割は無視する考え方である。 このように、癌の治療というのは、癌を再発させないために徹底的な治療をするので、身体に負担をかけるのである。だから、放置しても一生問題を起こさなかった癌を、検診で見つけてしまったがゆえに不必要な医療を受けることになったら、健康を害することがわかるだろう。 これが、がん検診をしても寿命が延びないカラクリである。   そうは言っても、やはりがんは悪いものなんだから除去すべきだという反論が必ず返ってきます。しかし、「がん=悪性」というイメージは、もはや古い認識です。 治療しない方がいいがん 動物実験で人工的にがんを発症させて、経過を調べたデータがあるのですが、がんの大多数は大きくならず、身体に悪影響を与えないタイプのものでした。 近年、世界的な研究が行われ、人間の場合も生涯大きくならないがんが相当数あることが分かってきました。そうしたがんは、へたにいじらない方がいい。それに、もしタチの悪いがんなら、早い時期に全身に転移するので、早期発見した時には手遅れの場合が多く、予後はそれほど変わらないというのが私の考えです。だとすると、検診で微細ながんを見つけ出し、激しい治療を施される不利益の方が、放置しておくよりもむしろ大きいかもしれない。これ一つをとっても、がん検診の有効性には大きな疑問符がつくのです。 先日述べた膵癌のような例なら、「タチの悪いがんなら、早い時期に全身に転移するので、早期発見した時には手遅れの場合」にあてはまる。 早期発見早期治療して寿命が延びる人もいるのは事実である。しかし、逆に、見つけてしまったがゆえに、治療の必要がない癌を治療して、身体にダメージを受け、寿命が縮む人もいるのである。   胃癌・大腸の早期癌(深部浸潤がん)が追加の外科切除にまわる例を説明した。 では、内視鏡治療する場合はどうか。放置しても結果として一生悪さをしない病変を治療してしまっても、たいした負担ではないのではないか?という疑問を持つのではないか。 しかし、治療の難易度の高い病変があるのである。 側方発育型腫瘍(laterally spreading tumor; LST)。簡単にいえば、平べったくて大きい、そして、癌を合併するリスクが高い。発見時に既に、2~3割の割合で癌を合併しているといわれている。     広い範囲を切除するので、出血のリスクが高いし、穿孔するリスクもかかっている。実際に穿孔することがあり、穴があいたら、緊急で外科手術にまわさなければならない。緊急手術になったら、身体はダメージを受ける。 傷が大きいのだから、出血するリスクが高くなるのは当然である。リスクが高ければ、絶食の期間を延長したり、実際に出血したら、もう一度下剤を飲んで、内視鏡で止血しなくてはならない。そしてまた絶食である。 また、見た目取り残しがなくても、顕微鏡レベルでのこっていて再発することがある。再発したら、また治療しなくてはならない。 出血にしろ、再発にしろ、患者は大変なストレス、不安により、目に見えないダメージを受けるだろう。   問題は、LSTは、癌を合併する確率が確かにあるのだが、発育のスピードと寿命を比べた場合、もし見つけなかったら、症状が出るほど進行する前に寿命が終わってしまい、一生悪さをしないかもしれないのだ。 進行がん、すなわち、ある程度深くなった癌は、発育がある程度早いので、放置すれば確実に進行するのだが。

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  • 06 Mar
    • がん検診2

      週刊ゲンダイオンラインより数回に分けて引用する。 新潟大学医学部教授の岡田正彦氏(65歳)は予防医学の第一人者で、現代医療の無駄の多さ、過剰さに疑問を呈し、健康のために真に必要なものは何なのか、独自に調査・研究を進めてきた。 ここ数年、「がんの見落とし」に関する裁判が急増しています。患者側は「どうしてくれるんだ!」と激怒して病院を訴えますが、私は、見落とされてかえって良かったかもしれないと思うんです。へたに発見されて激しい治療を受けていたら、もっと苦しい思いをして、寿命を縮めてしまう可能性があるからです。 例えば、こういうケースが例にあげられる。 膵癌は、手術可能な症例が2~3割である。手術後の再発率が極めて高率で、手術により膵臓にできた癌をすべて切除できたとしても、約90%の患者が再発するといわれている。 だから、手遅れになる前に(手術できるうちに)発見してしまったら、治療するまで健康だったのに、治療をした途端衰弱し、自由に使える時間を失ったあげく、結局は再発するということになる。しかし、生存期間は延びる可能性がある。 手遅れで見つかったら、治療によるダメージを受けなくて済み、ギリギリ(癌自体によって衰弱する時期)まで元気で過ごせるのである。 余命半年で見つかった場合、最期の半年まで症状がなく、仮にこれから苦しむとしてもわずか半年以内なのである。早期に見つかったら、苦しい治療を受けるから、それでは済まない。 寿命を縮める縮めないについてはケースバイケースである。 私は、治る可能性が高いから治療するのが自然な考え方だと思うのである。8割9割治るなら、治療したほうがいいだろう。しかし、高率に再発する、つまり治らないと分かっているのに、正常細胞をも叩いて、徹底的に治療するのがスタンダードなのだから不思議なことだ。 だから、癌をすべてひっくるめて、見落とされたほうがトクだったということはできない。早期発見したら高率に治る癌なら、見落とされたら不利益ということになる。 逆に、癌を全部ひっくるめて、「見落とされたから損した、死んでしまった」という論理は間違っている。 私は過去20年にわたって、世界中で発表された検診の結果に関する論文を読んできました。睡眠時間、体重、生活習慣、過去に受けた医療行為など、あらゆる条件を考慮した上で、がん検診を受けた人と受けない人が十数年後にどうなっているか、追跡調査した結果にもとづく論文などです。その中で最も衝撃的だったのが、20年以上前にチェコスロバキアで行われた肺がん検診の追跡調査です。そこでは、検診を定期的に受けていたグループは、受けなかったグループより肺がんの死亡率が圧倒的に多く、それ以外の病気による死亡率も明らかに多いという驚愕の結論が出ているのです。 その後、欧米各国でより精密な追跡調査が行われてきましたが、その多くが同様の結果でした。つまり、「検診を受けようが受けまいが、寿命が延びることはない」のです。 有名な1990年のチェコ・レポートである。 6300人の男性をガン検診する人(年2回を3年間継続)とガン検診しない人の半分ずつに分けたところ肺ガンでは検診をした人たちがしない人たちより死亡率が1.36倍多かった。 胸部CTではなく胸部エックス線検査!?その程度で差が出る?そもそもがん検診を受ける人って、心配性だろうから、精神的要因によって死亡率が上昇している可能性もあるだろう。 肺がんだけでなく、他のがん検診でも、同傾向の結果が出ています。 肺がんの検診を受けると、なぜ死亡率が高くなるのか。理由の一つはエックス線検査にあります。 国や専門家たちは、「エックス線検査には放射線被曝というデメリットがあるけれど、それ以上にがんの早期発見というメリットの方が大きい。だから害は無視できる」と主張します。 しかし、これには科学的根拠がありません。私はありったけの関連論文を読んできましたが、放射線を浴びても、それを上回るメリットがあるということを科学的に証明した論文は、1本もなかったのです。 イギリスの研究チームが、医療用エックス線検査で起こったと考えられるがんを調べたデータがあります。その研究では、日本人のすべてのがんのうち、3.2~4.4%はエックス線検査が原因だと結論づけています。残念ながらこのレポートは、日本では話題にされることはありませんでした。 胸部エックス線検査でさえこれだけ有害なのですから、被曝量がその数十倍から百数十倍もあるCTを使った検診が身体にどれだけ大きなダメージを与えるかは、火を見るより明らかです。 検査のための被爆が日本人の癌リスクを上げているというデータがあることは肝に銘じなければならない。 PET検診というのがあり、全国各地にPETセンターがあり、癌の超早期の発見のためにPET検診を推奨している。 また、CTコロノグラフィという検査がある。大腸内視鏡検査よりも軽い下剤で、肛門から炭酸ガスを入れて腸管をふくらませ、CTをとって画像を再構成し、大腸内視鏡のような画像を再構成する仮想内視鏡(バーチャル内視鏡)である。つまりCTをとるだけなので苦痛がない。これは、大腸癌の術前検査に有用であるのだが、これをがん検診に活用する医療機関が増えているというのである。 過剰な医療被爆によって癌が誘発されるデータが出ているのを知らされず、癌の早期発見が身体によいものと思い込んで、大量被爆して身体を害するのである。    

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