横浜市病院経営局の人事とその手法 | 不可能をかのうにする かのう重雄 オフィシャルブログ「一つ、ひとつを重ねて」 Powered by Ameba

横浜市病院経営局の人事とその手法

横浜市病院経営局の人事とその手法


横浜市病院経営局は、病院職員を除けば非常に数少ない横浜市事務職員で管理されている小さな局である。通常、事務職員であるならばあまり一つの部署に長いこと配属されない。しかし、平成17年以前の衛生局時代から病院関係の人事はきわめて膠着状態にある。


従って、ごく限られた同じ顔ぶれの横浜市事務職員によって数十から数百億の莫大な予算を投入する病院事業が展開されてきたことになる。またその衛生局OBが退職後、横浜市内の病院などに再就職していることが散見されることも調査で確認している。


衛生局OBと病院経営局が永年行ってきた病院事業の是非は、横浜市民のみならず横浜市職員そして、その家族にとっても真剣な問題のはずだ。決して対岸の火ではない。家族が脳卒中あるいは自身が脳卒中になったときはじめて、このごく限られた同じ顔ぶれの横浜市職員によって行われてきた病院事業の問題点に気づくかもしれないが、それでは遅すぎるというものだ。


横浜市立脳血管医療センターは、320億円という莫大な公的資金が投入されて設立された公的病院である。ある種、民間の病院ではあれだけの規模の脳卒中センターを作ることはまず不可能であろう。その目的も横浜市民に最新の急性期脳卒中医療を提供するだけでなく、急性期からリハビリまで一貫して提供できる設計になって建設されていた。


24時間いつでも脳卒中患者の為だけにCTMRIもスタンバイできる病院など横浜市内に存在しなかった。そして、PA治療が治験で認可される前から、センターの神経内科医師たちはtPA治療を展開しており、まだ市内でほとんど行われていなかった脳血管内治療まで行われていた。


さらに急性期治療とほぼ同時にリハビリも開始され、通常の民間病院のように1週間から2週間で退院をせかされるようなこともなく、3か月間のリハビリを同じ病院で受けることができた。本人も、家族にとっても安心して脳卒中治療を受けることができた病院だったのだ。


平成11年8月開設後、全国でも最大最新の脳卒中専門病院と評価されていた。特に急性期医療を行う脳卒中診療部の患者数も多く、好成績を挙げていた。脳卒中診療部の医師たちは全国から集められ、出身大学もさまざまであった。


当時、横浜市内の脳卒中患者の11%以上をセンターが診ていたという記録もある。センターは救急隊からのホットラインも受けていた。まさにカナダのように地域の中心的な脳卒中センターとして活躍していたのだ。特にセンターの恩恵を受けていたのが、磯子区、南区、港南区、中区の患者さんたちだった。



平成16年、横浜市衛生局の事務職員たちは突然、このセンターをリハビリ病院に変えるという方針を打ち出した。センターをよく利用していた磯子区、南区、港南区、中区民から、ぜひセンターをリハビリ病院に変えてほしいという要望がでたというわけでもない。


いったい最先端の脳卒中救急医療をやめて、脳血管医療センターがリハビリ病院になることによって一番恩恵を受ける人たちは誰であったかということを横浜市民のみならず、横浜職員はもう一度ぜひ真剣に考えてほしいと思う。


10年経過して、当時のセンターのような質の高い救急医療を提供し、集客力をもつ病院など横浜市内にはひとつも存在しなくなった。現在、横浜市の救急車が脳卒中患者さんを一番多く搬送している病院は、24時間MRIも稼働していないだけではなく、脳卒中救急加算がとれる病院として国の認定も受けていない、リハビリ施設もない民間病院である。


医師の資格もなく誰もが認めるような医学を学んだ経歴を持たない衛生局幹部職員が、センター医師の人事権と予算権限を握っていた。だから外部の専門家から成る「医療機能検討会議」を設けて彼らは公開の審議を開始させた。


問題は外部の専門家の選出基準である。当時神奈川県看護協会からも委員として選出されていたので、その方に直接お会いをしたが特に脳卒中医療の看護がご専門というわけでもなかった。


一方、医療機能検討会議と並行して、横浜市総務局と病院経営局の前身である衛生局が脳血管医療センターの医師の人事において何をやってきたかに注目してほしい。


平成15年7月、脳血管医療センターの脳神経外科は院内の倫理委員会も通さない新しい脳の手術(内視鏡による手術)を行った。術後、意識があり、家族と話をしていた患者さんは意識不明の重体に陥った。結局患者さんは亡くなられた。


術者は二人ともその新しい手術法の経験がなかった。結局、横浜市は「医療過誤と認めざるえない」という外部委員会の結果を受け謝罪した。山本勇夫現センター長が、教授時代にセンターに送った横浜市大医学部脳神経外科の医局員たちによる医療過誤であった。


しかし、衛生局は医療事故の問題を内部抗争の問題に話をすり替えた。医療事故と人間関係とはまったく異質なものであるが、その手法は問題の焦点を曖昧にするときによく使われる方法である。


昨今では、アルツハイマー病の研究のねつ造疑惑問題で、厚労省が告発メールを研究責任者の岩坪威東大教授に転送したことから内部告発者が誰なのかがばれてしまい、その結果杉下氏は岩坪氏に人格を非難され、「人格問題」にすり替えようとされたということが朝日新聞で報道されていたが、酷似したことを衛生局は行っていた。


それは、平成16年12月27日の議事録に残されている。

http://giji.city.yokohama.lg.jp/kensaku/cgi-bin/WWWframeNittei.exe?USR=kanyoks&PWD=&A=frameNittei&XM=000100000000000&L=1&S=15&Y=%95%bd%90%ac16%94%4e&B=-1&T=0&T0=70&O=1&P1=&P2=%8e%e8%92%cb%90%c3%8d%5d+&P3=&P=1&K=179&N=1397&W1=&W2=&W3=&W4=&DU=1&WDT=1



◆(手塚副委員長) 今までさまざまな衛生局の方とか副市長から伺った話の中ですけれども、内部にかき回している人がいるんだと、そういう言葉を何回か伺ったのですが、そういう事実はあるのでしょうか、副市長に伺います。


◎(前田副市長) 個別のことについて、私はお答えする立場ではございませんで、もともと脳血管医療センター内視鏡手術調査委員会において、チーム医療ができていない、組織運営すべてについて見直す必要があると指摘を受けておりますので私といたしましては、病院が医療関係者の人たち、職員にとっても働きやすい環境にするようにいい病院にしていきたいと考えている次第でございます。


職員が働きやすいことと、無謀な医療過誤が起きた問題はまったく異質の問題であるが、「内部にかき回している人がいるんだ」という、稚拙な表現で個人を攻撃している。組織的パワハラの温床が見え隠れする。



当時、脳卒中急性期医療の担っていた脳卒中診療部を率いる神経内科部長かつ副センター長であった畑隆志医師の分限・懲戒処分の内部調査委員会が行われていた。事故を起こしたのは脳卒中診療部ではない。


その委員会は降格人事を行うがための出来レースのような内部調査委員会だった。その出来レースに一役買ったのが、医療事故を起こした出身大学であるはずの横浜市立大学医学部である。


平成17年2月17日、都市経営総務財政の常任委員会で私は指摘した。もちろん議事録に残されている。


◎加納副委員長) 処分などをやるときに、正確な事実確認、それから先ほど来おっしゃっていた不信を抱かれないような透明性、公平性という問題がございますけれども、もう少し具体的に、今回の外部調査、そして今の分限・懲戒の具体的な流れがあって、冒頭のような陳謝があったわけです。


この議案で、分限及び懲戒処分というのは、あくまでも、正確な情報と正確な評価のもとにやらなければいけないと思うのです。それは先ほど来、局長もおっしゃっていました。 そこで、総務局が事務をつかさどっている今回の問題についても、本当に正確に評価し、公正さがあったのかということについて幾つかの問題点が見えている。


例えば、今回内部調査委員会が1117日に設立されて、1117日から第1回が行われた。一方で、1126日の第2回の時に、既に衛生局と市大の間で神経内科部長の人事が並行して行われている。今回調査中にヒアリングを拒んだ方の理由も並行して、既に処分ありきという中で人事が進められているとの内容証明があって、今回のヒアリングを拒んだ。


ー略ー 私が申し上げたいのは、1の任免と4の分限・懲戒処分について、いろいろと今議論がありましたけれども、具体的に進めていくときに、正確に、公正性を持った形で、さらに進めていただきたいということを申し上げているのが1点。


ー略ー 今後この議案に伴って、しっかりと公正性、透明性を持った形で任免と分限・懲戒処分を、これを機会にさらに推し進めていただきたいということをお話ししたいために今お伝えしているのです。


1126日から既に神経内科部長の人事が進んでいて、さらに12月4日、5日に、その該当者御本人が、1月1日付で脳血管医療センターに行きますということを既に公言してしまっている。


12月8日の市大の医学部教授会で既にそのことが発表され、市大の任意団体の機関紙で、1月1日付でその人は脳血管医療センターに異動しますということを、総務局が正式に人事発表する前に既に公言されてしまっているということを具体的にお示ししたかったのです。


だから、今回の議案関連で今後本市がやっていく中で、正確に、透明性のある不正のないような形でやっていただきたいということなんです。


局長にお渡ししましたけれども、市大の同窓会の資料で倶進会だよりというのがあります。お示ししました。1月30日付で、既に1月26日ごろから配布されているようです。ここには、本市が正式に発表する前の人事が出てしまっています。


この様な指摘など総務局は無視。そして、畑医師の降格人事を行った。


脳卒中急性期医療を担っていた脳卒中診療部を率いる神経内科部長かつ副センター長であった畑医師の降格人事こそ、センター脳卒中急性期医療衰退の一歩でもあった。


10年前、調査終了前から結果ありきの人事を行い、こんなでたらめともいえる調査委員会が平然と行われていた。調査委員会の時間も公金で換算されるものである。税金の無駄であり、手法はきわめて卑怯であり陰湿である。


しかし、10年経過した今現在も横浜市の人事の体質はそう変わっていない。そして、一方で横浜市は「人権研修」「パワハラ対策」と熱心だけに偽善的かもしれない。…歴史はすべて議事録に残されている。



そして、全国ワーストの赤字病院でありながら、莫大な予算を投入してまで、脳卒中センターとして設計された内部構造を大改造する必要があったのかという大きな疑問が残る。


市長部局の緊縮財政の一方で、なぜ病院経営局だけがこの強引な予算執行が容認されるのか? ー尋常な構図ではない。横浜市病院経営局。まさに特殊な組織である。