海の底までどこまでも深く深く沈みこんでいく。
自分がどこにいるのかまったく分からないままに混沌とした意識の中で
宝石のように美しく輝くものをかすかに感じる。
それは幻聴、幻覚なのか、突然、神秘的な美しさに圧倒される。
ECMから発売されたBennie Maupinの作品「ロータスの宝石」を聴いている
と、幻想的な音世界の中に埋没してしまそうだ。
Bennie MaupinはMiles学校には約1年しか在籍しなかったにも関わらず
「Bitches Brew」で裏番のごとく存在感を発揮する。
不穏なBass Clarinetが鳴り響く時、アフリカの大地をかけ抜けていくのは
一体誰なのか?
Maupinによって「Bitches Brew」の呪術的なダークサイドがより強調された
のは事実だ。
「ロータスの宝石」と題されたMaupinの初めてのリーダーアルバムは盟友
Herbie HancockとのHeadhuntersを経て発表された。
アブストラクトな空間の中にMaupinの妖しい魔術が変幻自在に現れる。
MaupinのGlockenやフルートでさえ妖しく美しく風のように魔法をかけていく。
Billy HartとFrederick Waitsのダブル・ドラムスにBill SummersのPercussion
が絡み、宇宙の子守唄のようにリズムを刻み続ける。
Hancockのアコースティック・ピアノもエレピもMaupinの魔術に加担する。
Hit-C Fiore