税務調査の撃退法・1.税務調査官とは | 税務調査専門の公認会計士・税理士、たけよしのブログ

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彼を知り己を知れば 百戦殆うからず(孫子)




まずは、税務調査官がどういう人間なのか知ることが重要です。




小職が書籍で調べたもの、同業者からの伝聞、元税務調査官の方との意見交換等で仕入れた情報ですが、ある程度信憑性があるものと小職は考えております。




<税務調査官の地位>


①国家公務員である。


 ⇒税務署職員及び国税局職員は国家公務員です。そのため、階層が細かく分かれ肩書きもたくさんあり、国税庁長官を頂点とするヒエラルキーが確立しています。




税務署では、調査官→上席調査官→統括官(ここからが管理職)→副署長→署長という構成が一般的で、統括官以下が実際に税務調査を行います。




②税務署の末端職員は高卒が多い。


 ⇒税務職員になるには、総合職(旧Ⅰ種)、専門・一般職大卒(旧Ⅱ種:採用人数は約1,100人)、専門・一般職高卒(旧Ⅲ種:採用人数は400人弱)の国家試験に合格する必要があります。



 このうち、総合職は官僚として省庁にいますので、国税局や税務署にいる調査官は専門・一般職の大卒及び高卒です




③23年以上平穏無事に勤め、(簡単な)試験に合格すれば税理士になれる。


 ⇒税務職員は、平穏無事に23年間税務署で勤務すれば、申告書整理等の事務だけをやっていたとしても税理士になれます




特に学歴にコンプレックスがある職員は、将来税理士になって先生と呼ばれ、偉そうな態度を取って優越感に浸ることを夢見て毎日勤務しています




④異動が頻繁にある。


 ⇒税務署職員は1年ごとに大きく異動があります。



それまで個人課税(所得税)にいたのに、1年で別の税務署の徴収部門へ異動したり、その翌年はまた別の税務署の法人課税(法人税)へ異動したり、といった感じです。




<調査官の人事評価>


①税務調査官の評価は、第一に調査件数、第二に徴収額で決まる。


 ⇒世間ではよく、「調査官は追徴を取ることが人事評価につながるので、非違を見つけるまでは帰らない」と言われますが、実際には調査件数がまず重要なようです。




そして、建前上は徴収額はあまり関係ないようですが、以前多額の追徴が取れたところに調査に行って、大した額を取れなかった場合などは評価が良くないこともあるようです。




②上司の評価が重要


 ⇒これは一般企業でも変わりませんが、税務署の場合は上司の評価が一層重要なようです。



というのも、税務調査先の選定は統括官が行い、部下である上席調査官や調査官に振り分けますので、簡単かつ追徴が取れそうな調査先をいかに振り分けてもらえるかが重要になります。(平たく言うと、上司に好かれることが重要です。)




③頑張っても評価に反映されない期間がある。


 ⇒以下補足しますが、まず、税務署の年度は7月から6月で、7月に異動があります。



従いまして、7月の異動前に評価等を確定させる必要があり、年明けの所得税の申告対応や3月決算の法人が多いことによる法人税申告対応等を加味しますと、実質的に8月~12月までの調査しか評価対象になりません




8月~12月に調査が入った場合、調査官もやる気であるために「トンデモ」が増える可能性がありますが、3月とか5月に入った調査であれば調査官の評価に関係しないため、モチベーションが低いようです。(すぐに是認で帰ることもあるようです。)




<調査官の性格>


①上から目線


 ⇒小職の経験からですが、公務員は、1.行使する国家権力が強大であればあるほど、2.自らの職階が低ければ低いほど、3.自らの能力、知識が乏しければ乏しいほど、態度が横柄になります




「よく吠える犬は弱い」という事ですが、逆にいえば、態度が大きく挑戦的で尊大な調査官ほど知恵に難がありますので、付け入る隙は大いにあります


②面倒を嫌がる

 ⇒調査官の地位や人事評価を見ていただければわかりますが、上司に気に入られ平穏無事に楽をして過ごすことが重要ですので、基本的に面倒を嫌がります




楽な案件を楽に進めることに勝るものはありません。



③人事評価にバツが付くことを極端に恐れる。


 ⇒税務職員にとっては、平穏無事に職員人生を終える(そして税理士”先生”になる)こと、上司から良い評価をもらうことが非常に重要です。




逆に言うと、左遷の憂き目にあうようなマイナスを上司に知られてしまう事や、税務調査で不手際をやったことを上司に知られるなど、人事評価に響くことを極端に恐れます




④法律を守ろうという意識に欠ける。


⇒次項でも述べていますが、調査官は法律を守って税務調査をやろうという規範意識に著しく欠けています。



これは末端職員から税務署長までに言えることで、法改正があったにもかかわらず、今までどおりの横暴な調査をやっているケースもあります。




納税者側も「お上に逆らうのは無謀」という意識があるからか、適法適切な反論を諦めてきたことも、こういった規範意識の欠如の一因になっているのではないかと思います。




税務署側の言い分としては、「そんな規制に従って調査をやっていたら脱税を摘発できない」と言いますが、脱税摘発のために国が法律違反をやっていいという理屈はありません。




<調査官の能力・知識>


①税務に関する知識はピンきり


 ⇒これについては異動が多く、やむを得ない部分もあるかもしれませんが、担当調査官の知識はピンきりです。




ただし一つ言えるのは、法律条文に基づかないことでも平気で指摘をするトンデモ調査官もいますので、相手の発言を鵜呑みにしないことが重要です




統括官(税務署の最下の管理職で課長クラス)でも、分かっていない調査官はいます。




②法律の知識はほぼゼロ


 ⇒調査官は民法を始め、商法・会社法、憲法といった基本的な法律の知識はほぼゼロです。




たとえば、(保証契約や事業用定期借地権等以外の契約につき、)「契約書が無いんだから契約自体が無効だ」とか、平気でのたまう程度です




③税務調査の根拠法規・通達に対する知識すらも著しく低い

⇒平成25年1月1日から税務調査にまつわる法律が整備され、国税通則法に収録されました。また、「税務運営方針」を始めとした税務調査に関する通達も生きています。




しかしながら、これらの法律や通達のうち、調査における納税者の利益に関する規定はほぼ守られていません。




税理士としての現場感覚では、知っていて守っていないというよりは、規制されていること自体を知らず、結果として守られていないという感じがします。




もちろん、知らなかったとしても違反は違反で、処罰対象です。



以上、調査官がどういう人間かを見てきましたが、次回では基本的な戦術・方針について述べさせていただきます。







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