せとさんの崩壊日記アメブロ版

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 占いとは何か。そのヒントをライトノベルに求めてみるのも、おもしろい。

 【タロットの御主人様。】は、アスキー・メディアワークスから2007年に発行された、七飯宏隆の小説である。「電撃文庫」はライトノベルのレーベルの一つだ。
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 高校生の主人公・四阿秋人(あずまやあきと)は、亡き祖母から次期当主の座に指名されている占現師(せんげんし)である。四阿家の占術は、代々、両目を使って人の「道」を見るものだ。しかし、秋人に「道」を見る能力が宿っているのは左目だけである。

 人知が及ばない能力を備えているけれど、それが完全ではない。不完全な設定の主人公とともに、読者の私たちは物語の冒険を開始する。

 ライトノベルの読者層には男性が多い印象がある。この物語の主軸となるのは女性に人気のある「占い」である。中でもタロット占いは、女性の興味を引きやすい占術だ。

 本書では、主人公はタロット占い師ではない。占術師として最低限の知識は蓄えているが、基本的には主人公と読者が冒険を進めながらタロットとは何かを知ることができる構成となっている。

 タロットはカードを使った占術である。主人公は「失われた楽園の在処」を占現しろという依頼から、タロットをめぐる物語に巻き込まれていく。

 このストーリーで扱われるのは、大アルカナと呼ばれる22枚のカードだ。タロットには大アルカナ22枚と小アルカナ56枚の、合計78枚のカードがある。大アルカナは「自分はどうあるべきか?」などの人生を問う内容に関係しているといわれる。

 本書に驚かされたのは、大アルカナの中でも「隠者」と「節制」という二枚のカードだけを使ってストーリーをエンディングまで導いている点だ。

 「太陽」やに「月」なら最初に「そのもの」をイメージしやすい。目に見えるものだからだ。

 だが「隠者(俗世間とのかかわりを避け、山奥にひとり住む人)」や「節制(度を越しがちな食欲や飲酒・喫煙の量を抑えて、身体を壊さないようにすること)」から何かを想像し、さらに連想していくのは難しい。最初の時点で、目に見えないのだ。

 本書では「隠者」や「節制」のカードが人に乗り移ることによって、それぞれのカードに含まれた意味がわかりやすく説明されている。

 「隠者」が「時間」に関係していること。「節制」が「水」に関係していること。これらの属性を美少女キャラクターに乗り移らせる。主人公の敵として戦う。主人公とともに敵と戦う。物語を読んでいくと「隠者」や「節制」が、自分になじんでくる。

 ライトノベルには「主人公はなぜか複数の美少女にモテる」というお約束(?)がある。複数の美少女たちがカードの属性によって、違う個性を発揮する。

 さらに「カードに乗り移られた美少女たちを元に戻すには、主人公が美少女にキスをしなければならない」という設定が、登場人物の心理を変化させていく。読者は彼らの心理をなぞっていくうちに「結末は(お約束的に)こうなるんだろうな」と想像しながら、一気にエピローグまで読む。

 文章表現や登場人物は軽いノリで描かれる。対照的に、占い師がいちばん大切にするべき心得や、タロットという存在の不思議が重く響いてくる。

 主人公は一刻も早く22枚のタロットカードを集めなければならない。負けて殺されれば、カードたちが解き放たれて、世界を支配する。ハリウッド映画を見ている緊張を感じることもできる。

 本書から何を得て、これから何を得ようとして行動するのかは、人それぞれである。

 私には「もし自分が主人公で、隠者や節制のカードが『逆位置』として出てきたら、自分はどう戦って、自分の未来をどう引き寄せるのだろうか?」という設問が降りかかってきた。

 タロットカードは、正位置と逆位置で、その解釈が変わる。「隠者」や「節制」も例外ではない。正位置でさえ解釈がむずかしい。逆位置になると、カードは単純に反対の意味になるとは限らない。

 タロットは、ライトノベルの主人公よりも、人知を越えているのかもしれない。

 ライトノベルの主人公よりも人知を越えているかもしれないタロットの御主人様になるのが、このライトノベルで書かれているストーリーである。

 占いとは、何なのだろう。

 自分は、他人ではない。未来なんてわからない。とすれば、自分の未来を占うことはできない。他人ではなく未来なんてわからないところの「自分」が、占い師として他人の未来を占うというのも、おかしな話である。

 人間は「他人の心を知りたい」「未来を知りたい」という欲求を持つ。わからないことほど、わかりたくなる。

 知りたい欲求を「節制」することはむずかしい。「隠者」は「節制」することができるのか。「節制」したら「隠者」に「なってしまうのではないか」という、得体の知れない恐怖はカードが示す「逆位置」と関連があるのかもしれない。

 どうやら私は、科学よりも哲学のほうが好きらしい。

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