邦楽ロックシーンの期待の星、phatmans after schoolの2nd Album「アンクロニクル」のレコ発ツアー
しかし今回のライブを持ってドラムのホンマが脱退するため、この編成では事実上最後のライブとなってしまった

会場に着くとステージにはこのバンドのマスコット、pasくんが映し出されており、EDM調のエレクトロが何曲も流されている
また観客の半分以上がpasくんが描かれたグッズを着用
キュウソネコカミほどではないが、高いグッズ着用率

定刻を少し過ぎて暗転すると、バンドの名曲をエレクトロにアレンジしたSEと共にスクリーンにメジャー以降リリースされた作品のジャケットが映し出され、それを背景に、

「東京、楽しもうぜ‼」

とこの日が最後のライブであるホンマを筆頭にメンバーが登場
ボーカルのタクミは黒いハットを着用して登場し、「シリアル」から演奏を始めるが、

「明日はきっといい日だよ だから頑張って生きていこうぜ」

とエピロークで歌われそうな曲だけに序盤で持ってくるとは(「セカイノコトハ」のリリースツアーも「さよならスペースシャトル」からだったが)

大気圏に突入するような同期から早くも「無重力少年」、ホンマのタイトなドラミングでスタートする「人類への過程」と定番曲を連打するが、以前と比べるとヤマザキのベースが重心低め
なので腹にガンガン低音が響いてくる

「アンクロニクル」のテーマはずばり「原点回帰」
ただ「原点回帰」といっても原点にたち戻るわけではなく原点+α
タクミのハイトーンボイスに載せて打ち込みと共に疾走する「メメントモリ(なぜかイントロの歌詞がスルー)」、

「大変に急な話ではありますが 明日で地球は滅亡してしまいます」

ととぼけたように歌う「正統性バイアス」のようにライブで培った経験を武器に音楽性を広げている

「東京少年」ではスクリーンにpasくんがPVのようにあちらこちら飛び交っていくが、

「快速列車に急行列車 目まぐるしく変わる日本の情景」

でイメージされるのは時間に追われ、自分を見失う人々
この曲は東京で歌われてこそ真価を発揮する

「東京と言えば東京タワー、東京スカイツリー、そしてお祭り好き」

とフライングVが似合うユタニが煽れば、「FR/DAY NIGHT」からユタニを倒すべくダンスタイム
ハードなリフから一転和のリズムで躍り狂う「party holic」という新機軸を加えれば、「あいまいみー」ではユタニがギターを放棄
タクミによれば、「ライブの度にダンスが上手くなっている」とのことだが、以前と比べると短くなったのは尺の関係だろう

ここまではほとんど話さなかったがタクミだが、

「赤坂BLITZって次に出る番組をビジョンで流すじゃん(BLITZ INDEX?)。北海道にいるときからいつかここでライブをしたいと思っていてて、今日こうしてステージに立てて良かったです」

と赤坂BLITZでライブをすることが念願だったと語り、バンドの中では数少ない夏の曲「棗」へ
タクミ自身も「冬の曲が多い」と語っていたが、夏バンドことORANGE RANGEはご存じ夏うたが多い
彼らは沖縄出身であるが、気候も曲作りには関わってくるのだろうか

アルバムというかpasの中で最もポップに振り切った「リコーダー」でタイトルのごとくカラフルな音を響かせ、ピュアなラブソング「等感覚コネクト」まではハイペースで曲を演奏していくのだが、

「音楽をやって行く人もいれば、今日で辞めるあっくん(ホンマ)みたいに、別の道を行く人もいる。」

とここに来て、現実を突きつけられる
バンドが止まるわけではないが、ずっとこの4人で続けてきた彼らにとってはこれは青春の終わり
「サイコロジック」でみせていた見事なコーラスワークももう見ることはできない
そんななか、タクミが始めたのは選択の話

「中学の頃、バスケ部に入っていたんだけどその頃悪い輩とつるみはじめて、部活に来なくなったんだよ。それである時、父親と話すことになって、僕の父親は普段は寡黙なんだけど、その時に「別にお前が何をしようがなにも言わないけど、自分が出来ることを狭める選択はしない方がいいよ」と言われて、それでバスケ部に戻ろうとしたの。当然、あっちからすれば「ふざけんな‼」で相手にしてもらえなくて。でもここでやらなかったら後悔すると思って、それを続けたら、僕も知らない後輩もいるなか、「こいつ戻りたいって言ってるけど、いいか?」って言われて、許してもらったから戻ることが出来たんだよ。この選択は間違ってなかったと思っている。」

この選択の話を聞いて、自分も過去を振り返っていたが、

「けど本当にしんどかったら一度リセットしたり、逃げてもいいと思う」

に救われた
世知辛い世の中、本当に辛かったら逃げてもいいと思うんだ

その流れから演奏された「7日間.」は悲劇的内容で話題を呼んだPVをバックに演奏されるのだが、この曲のテーマは死ではない

「僕は死にました」

という歌詞からは自殺したように見えるが、この曲のテーマは「新生」
つまり、再びやり直す人へのアンセムなのである
流石にPVのラストの演出は見送られたが

pasのライブではほぼ必ず歌われる大切な「ナンバーコール」を演奏すると、早くもラストの「ツキヨミ」
この曲を聞くと思い出すのはアニメの「夜桜四重奏 〜ハナノウタ〜」
当時、無名でありながら彼らを抜擢したアニメのスタッフはもっと称賛されていいはず
北海道の風景を所々に見せながら、PVを流すこの会場だから出来る演出で本編は終了

アンコールで開口一番、口を開いたのは今日をもってバンドを脱退するホンマ
タクミが話していたように、今日をもってステージを降り、別の道を歩み始めるが途中からホンマは涙をこらえ、タクミも悲しい感情を抑えるためにアルペジオを弾いてた(ちなみにこの日はホンマの母親の誕生日らしく笑いが起こる)

そんな彼が選んだのは「マイパレット」
それはこの曲がバンドの始まりの歌であり、この曲だけは何がなんでも最後に演奏したかったのだろう
バンドをやったことがある方なら経験があるかもしれないが、最初にやった曲は心のなかで大切なうたとなる
その曲は人生を支える歌になるのだ

ホンマと共に過ごせる時間も残りわずか
なので、タクミもホンマとの出会いを振り替えるが、どうやら出席番号順で席が近かったらしく最初の第一印象は「優しそうだなあ」だったらしい(逆にヤマザキは第一印象が悪かったとのこと(笑))

また、なかなか明かされていないバンド名の話になり、

「バンド名をいくつか出したんですけど、ことごとく却下されたんですよ。それでじんましん患って(笑)。そんななか、もう一度試してみようと思ってなんとかafter schoolって持っていったら「いいね。」ってなった」

とのこと
またバンド名が独特なので、

「phatmans after schoolです。っていったら「ん?」ってされることが多くて、最近はpasと名乗っています。もうパスピエみたいにしようかな(笑)」

と唐突なパスピエで笑わせる

その上で、ホンマとは今後も友達と観客を安心させ、少年時代を思い出させる「夕焼通り探検隊」から、

「最後まで楽しもうぜ‼」

とタクミが叫び、最後は「感情モーメント」で終了
最後のステージとなったホンマは最後に、

「ありがとうごさいました‼」

とお辞儀をし、笑顔でステージを去った

今回のツアー、実は参加前から不安だった
というのも新作が今までより明るすぎて違和感を覚えてしまったからである
pasといえば「ツキヨミ」、「東京少年」のような暗いイメージが強く、歌詞が強いバンドだった
それが急に明るくなった
この路線変更についていけなかったのか、今回のツアーファイナルはソールドしていない
ちょうど先日ライブを行ったBRADIOはここもソールドさせ、同世代のバンドとは少し差がついてしまったのは明白だろう

ただ冒頭にやった「シリアル」、これは今までの歌詞のなかでも特に前向きだった
ひょっとするとこの曲は、脱退するホンマのために制作されたのかもしれない
要はこのアルバムはホンマのためのアルバムだったのだ

そんなpasは休む間もなく対バンツアーが決定
忘れらんねえよのように止まるのではなく、突き進む道を選んだ
バンドは生き物、悲しみに打ち勝ちながら転がり続けなければならない

ホンマは、最後のMCで

「果たせなかった夢を3人に託します」

と話した
これは恐らく日本武道館でのワンマンだろう
3人はこれからも歩み続ける
その夢を叶えるために

そしてホンマさん、お疲れさまでした

セトリ
シリアル
無重力少年
人類への過程
メメントモリ
正常性バイアス
東京少年
FR/DAY NIGHT
party holic
あいまいみー

リコーダー
等感覚コネクト
7日間.
ナンバーコール
ツキヨミ
(Encore)
マイパレット
夕焼通り探検隊
感性モーメント