2006-06-11

251.暴力

テーマ:彼女じゃない恋愛

<繰り返し繰り返しなんだけど、あと1つ確かめたいことがあるの>
翌日、彼にメールを送る。
<ごめんね、会議中でした。まだ残業だからまた連絡する>
しばらくして彼から返事が返って来る。
夜の9時。
いつになく彼は優しいと思う。
否、こんな彼は初めてかもしれない。
彼は私に気を使っている…。
そして0時を過ぎまた彼からの連絡が来る。
<明日、映画に付き合って欲しいんやけど、都合どう?>
コレが彼の創りだす友達なんだろうかと思った。
私の都合を聞かれたことなんてなかった。
私に仕事があっても無理やり会いに来る人だったのに。
会うことが当たり前ではなくなったのだ。
<行く!実家戻るの?泊まり?ソフト?>
返事はこんなんでいい?
<夜には帰らないといけないから泊まらないな。見たい映画あるねん。少し話も出来るやろ>
<そっか。んじゃ、待ってるね>


翌朝の9時、携帯が鳴って目が覚める。
重いまぶたを開けようとするも、直ぐに閉じてしまう。
闇と光が交差する。
その度に、顔がパリパリときしんだ。
涙が止まっている。
乾いた涙は顔を突っ張らせていた。
こめかみをこすると、ボロボロと粉が出る。
朝起きるといつも横髪が揺れていたのに…。
そして催促をするようにまた携帯がなった。
私は慌てて携帯をチェックする。
<12時頃迎えに行きます>
<返事がないんですけど~>

彼からだった。
こういう強引なところは相変わらずなのだな。
<ごめん、メールで起きた。今から準備する>
<ちゃんと目ぇ覚ましてくださいね~>
携帯を閉じ、乾くことのなかった涙をシャワーで流すことにした。


シャワーを浴び、ドライヤーで髪を乾かす。
ドライヤーを切ると携帯が鳴っているのに気づいた。
いつから鳴っていたのか、手に取った時には切れてしまった。
しまった…。
直ぐに掛け直そうと携帯を開き着信履歴から発信する。
プーップーップー、話中だった。
すると、家の電話が鳴り始める。
まさか!
「もしもし」
「もしもし?!何で出ん」
「ってか、何で家電」
「ここまで来たし、寝てるんやったら意地でも起こしたろうと思って」
「相変わらず強引やね」
「で、準備はできたの?」
「これからメイクする」
「はぁ?これからなん!?」
「12時まであと30分もあるじゃん」
「俺、もうついてるんやけど」
「12時って言ったでしょ!」
「頃って言ったんです~」
「カーーー!ムカつく」
「待つのは12時までな」
「もぅ!電話中やから話かけんといて」
「え?!誰かいるん?」
「あぁ、ウチが出かける準備してるから家族がうるさい」
「心配してはんのか?」
「ちょっとね…色々あったし」
「過喚起症候群」
「そそ!よく覚えたね?」
「俺の所為やな…ごめん」
「違うって、過呼吸はその前からあったし」
「でも発作の原因は俺や」
「責任感じたいならご自由に」
「冷たっ!」
「だって、コレは自分の弱さだもん」
「そっか、そうなんだよな~」
「ん?」
「…いや、俺も言われた。仲間やな」
「あはは、過呼吸仲間~!何悩んでんの?ね~?」
「ん~まぁ~、な、色々とな」
「ふ~~~~~~ん」
「何やねん!」
「話したくなったらいつでも聞いたげるよ」
「はいはい、ありがとうございますぅ~」
「その痛みはあなたの優しさだから…」
「先輩ズラしてるけど、俺のがひどいしな!」
「何?!不幸自慢?!」
「あぁ!せのりの過呼吸なんかたいしたことあれへん」
「ぷっ。そうかもね」
「何笑ってんねん!早く準備しろ!あと15分やぞ」
「はぁ?ロスタイム15分やから」
「あぁもう待ってるからさっさとしろ!」
彼がサラリと自分の傷を話した。
私は出会ったときから彼は同じだと思っていた。
やっとやっと開いてくれた心、私には優しく包んであげられない気がした。
私は何処まで彼に触れていいのだろうか。
遅すぎるよ…。


電話を切ると家族がうるさい。

「デートか?」と干渉してくる。

私は家族に彼の話をした。

彼が家に来たいと言った翌日のことだった。

あれから家族に彼の話はしていない。

紹介したい男性に振られたなど…言えやしない。

私は家族に何も言わず家を出る。


「久しぶり、せのり」
「久しぶりだね」
「うん、今日も可愛くしてきたな」

「別に…」

「そ…そか」

「そう!」

「…腹!減ってるか?」
「う、うん」
ぎこちない。

彼の自然が不自然で、不自然が自然に感じる空間。
与えられた台詞のようだ。
「んじゃ、映画の時間見てから飯でも食うか」
「うん」
「言うても俺はあんまり食べられへんのやけどね」
「食べてきたん?」
「いや、物食うと吐き気するねん」
「あ…大丈夫なん、お腹?」
「んま、食べたあと戻すかもしれんけどな」
「もう~無理せんといてよ~」
私たちはいつも琵琶湖が見える映画館へ向かった。
駐車場に車を止め、映画館のある雑居ビルへ。
彼の歩くスピードはやっぱり速い。
少しずつ距離が開くことに寂しくなった。
駆け寄ることが出来ない心境。
何故だか近寄れなかった。
ビル内へ入ると、店が立ち並び何本もの通路になる。
彼を見つけ出せなかった。
ゆっくり歩く足、左足を追い越すはずの右足を左足にそろえ下ろした。
ため息が出そう。
「遅い!」
彼が少し遠くから私を呼ぶ。
私はゆっくり彼に近づく、帰りたいかも…。
彼は私が近づくまでずっとこちらを向いて待っている。
彼に追いつくと「遅いな!」と彼は言う。
彼の左側に並ぶ私。
彼の左手が私の後ろで動くのを察した。
彼の手を私の左わき腹で感じる。
だけど、彼は私に触れてはいない。
彼との距離10cmを感じる。
触れてはいけないという思いが私の背中を押す。
しばらく触れずに重なって歩いていた私たちだけど、彼は「せのりは遅いな~」と言いながら、私の3歩前を歩き始める。
「これくらいの速さで歩くのが常識!」
「別にゆっくり歩いたっていいでしょ」
「周りと歩幅を合わせないと迷惑なの!」
「チビの大変さが解らんのか!!」
「俺の1歩がお前の3歩くらいやな」
「そこまで足短ないわ!」
「鞄持ったるで」
彼は左手で私の鞄を奪う。
「女の鞄持つの嫌いなんじゃなかったん?」
「今日の服装はお前の鞄にも合うしな」
彼はまた私の歩幅に合わせ、私の隣で歩きだした。
たまに肩が彼の腕に触れる。
軽く触れる程度なのにとても痛かった。


映画の時間を確認して、私たちは食事をとることにした。
半分くらい食べ終わり、彼が私のペースに合わせるかのように話し出す。
「あいつと最近連絡とってる?」
「あいつ?」
「食いながら話せよ」
「えーー、難しいこというね」
「お前の友達」
「うん」
「あいつからめっちゃ連絡あるねんけど、返事してないねん」
「返事すればいいじゃん」
「メールでなんか怒ってるねん」
「怒らすようなことするからじゃん!知~らない」
「俺、あいつに何かした?」
「知らない」
「知らんことないやろ」
「自分で何もしてないと思うならそれでいいじゃん」
「お前のことやろ」
「そう思うなら誤解とけばいい」
「誤解なんか?」
「ウチには言わなかったこと、前の彼女と別れたあとに言ったんじゃなかったの?」
「あぁ…」
「ウチには関係ない、ウチは何も聞いてない」
「あの時は本気でそう思ってた」
「何も聞いてないよ…ウチに言い訳したって仕方ないよ」
「そうだよな。今度返事してみる」
「あと、他にも聞きたいことあるって言ってたよ」
「何?」
「仕事のことと、暴力のことかな」
「何それ、俺に?」
「同業者の意見と男の意見を聞きたいんじゃない?」
「ふ~ん」
「仕事の話はわからないしね。暴力は、彼氏が直ぐ『殴る』って言うから怖がってる」
「暴力ふるうんか?」
「女には手をあげないっていうらしいけど、彼氏の友達が最近その彼女を殴ったらしく問題になったんだよ」
「そんな奴と付き合ってたんか…」
「ウチは男であっても殴る奴は最低だって言ったのよ。人を殴る瞬間に男女の区別がつく理性があるなら男であっても拳を下げられるでしょって」
「まぁな」
「ゆうじ、昔殴り合いの喧嘩した話したじゃない?」
「あれは防衛だろ」
「防衛であっても、ゆうじは拳を握る人なんだって思った」
「あぁだからあの時ちょっと引いてたんか」
「ウチは逃げて欲しかったんだ…。やっぱり殴りたいって思う気持ちを抱かないで欲しい」
「殴りたいとは思うだろう?」
「思わない…どんな事も言葉で伝えられると思ってる」
「そうだよな…」
「ウチには拳を握る人の気持ちが解らないから、ゆうじに聞いたらって言ったんだよ。随分前の話だけどね」
「そっか…俺、お前殴りたいって思ったこと1度あったな」
「え?!いつ?」
「あんまりチンタラしてるから、殴り飛ばしてやろうかなってな」
「酷い…」
「普段は可愛いと思えることも、気分次第ではイラつく」
「それってウチ悪くないじゃん」
「そうやで!そういうもんなんじゃないのかな~って」
「でも、殴らなかったのは何故?」
「殴るのはいけないことだと思ってるからかな」
「その時うち次第では、カッとなって殴ってたかもしれないよね」
「そうかもしれないな」
「ウチね、母親には中学までずっと殴られて育ったのね」
「それって…」
「いや、別に虐待とかそんなんじゃないと思うけど…よく解らない」
「よく解らないって、理不尽な事もあったってことだろ?」
「まぁね、ま、それはいいじゃない!でね、ウチも中学入るくらいまで自分の気分次第で弟を殴ってた」
「殴り合いの兄弟喧嘩か」
「うぅん、弟は一度も手を上げなかったよ。殴るのは当然、殴られるのは当然だった」
「どういう?」
「上下関係と忠誠心を植えつけられてた」
「母から姉、姉から弟か…」
「そうそう!で、ある日ね、何が原因だったか忘れちゃったけど、ウチが原因だったことだけは覚えてるんだけど、お母さんにウチか弟かどちらが犯人かって言うまで正座させられてたのよ。母の機嫌を損ねさせたのはどちらだって!殴られるのは嫌だったからずっと黙ってたんだけど、弟が『僕が悪いです』って言ったんだ。当然弟は殴られてた」
「弟がかばってくれたんだな」
「でね、ウチ、弟が殴られた分、自分で自分を殴ったんだ。その時初めて自分の拳がこんなに痛いものなんだって知った。自分の拳の痛さって知ってる?殴りたいと思う気持ちに相当しない重さだよ」
「つりあわないか…」
「この拳の痛さに相当することなんて今まで一度もない」
「それ、あいつに言ったのか?」
「何で殴られる側に言う必要があんの?」
「俺か!殴らないよ」
「そうじゃない、殴りたいなんて思うことがおかしいって言ってるんだよ」
「そうだな…」
「殴らなきゃいけない時は殴ればいいと思う。苛立つ気持ちを拳に乗せても軽すぎる。拳に乗せられる想いはとても大きいよ」
彼は自分の目の前で拳を作った。
「何か力入んねぇわ」
「殴るつもり?」
「殴りたい奴がいる…。お前の話聞いてたら…許したくないのに…」
「許せることなら許した方がいい」
「許せねぇよ…」
「あなたはその人の事知らなすぐるだけだよ」
「…お前、俺のこと殴ってもいいよ」
「ほんとう?殴るよ」
「避けるけどな」
「避けらんないよ~」
「おっ!いい拳だね~、顔だけはやめてね」
「解った♪」
「おい、その素振り…アゴに入れるつもりしてるだろ…」
「怒ってないから、軽~くね」
「おぃおぃ」


残りの皿をさらけ、店を出た。
彼が殴りたい人とはきっと、顔も知らない父親だと思った。
父親の話をする時の顔をしていた。
私に殴らせたかったのは、私に殴る許可でも得ようとしていたのだろうか。
彼の母親を捨てた彼の父親、私を捨てた彼は同じ?
私は彼を殴りたいとは思わない。
彼の拳に込められた想いを消し去ることが出来たらいいのに。



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2 ■> あおじるさん

あおじるさん…ウチが知ってるあおじゅる?
違うかったらどうしよう…。違ったら申し訳ないがあおじゅるだと思って書きます!
読んでくれてたんだね、サンキュ♪最近INしてるの?ウチはこれが完結するまでINしないつもりなんだ。てか、このコメント全然記事に関係ないし…。メールしてくれればいいのに^^b
良い結果ね…結果は多分これからだと思うけど、このブログで結果を出す事はないと思う。相談に乗ってくれたあおじゅるもそうだけど、沢山考えてくれたでしょ。出した答えは肯定も否定も出来なくてさ…ウチはね、みんながそれぞれ答えを出せればいいじゃないかななんて思ってる。みんなが思い描く理想の結果へと歩んで行って欲しい。ウチも、そうありたいと思う今なんだ。それがこの恋愛の完結の形かな。
完結したらINするんで、また暴れようね~♪
( ̄ー ̄)ニヤリ

1 ■無題

更新まってます♪そして、それが良い結果であることを期待してます!!
( ̄ー ̄)ニヤリ

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