2006-03-10

229.耐える

テーマ:彼女じゃない恋愛

1週間はあっという間に過ぎた。
幸せという余韻がそう思わせたのだろうか。
<せのり、今日は何してた?>
<ん?幸せだった>
この1週間をその日の内に忘れ、私はそう答えるしかなかったんだ。
そのような気分だったのは確かで…。


彼に詳しいスケジュールを聞いたことはない。
もうすぐ展示会という大きな仕事があり、その為毎日が会議や出張で忙しいことや、休日出勤が当たり前の時期だったりだとか、いつも0時には寝てしまう彼が最近家に着くのが深夜1時を超えていることなど、彼の話から大体は想定がついている。
解ることは一つ、忙しいのだなということ。


携帯を手にとり、彼の電話番号を画面に呼び出してみる。
左右ボタンを交互に押して、電話番号とメールアドレスと交互に眺める。
決定ボタンは押せない。
いつも手を止めるのは電話番号の方だったから。
メールは毎日きているが、声を聞いていない。
掛けても出ないことは解っている。
着暦を残したって折り返し掛かってくることはない。
電話をしても、この日のことが記憶に残るのは私だけ。
鳴らしてみても良いんじゃない…。
夕方6時。
彼がいつもメールをくれる時間。
タイミングが合えば、きっと休憩を取っている。
もしも、繋がってしまったらどうしよう。
何を話せばいい?
・・・彼って一体私のどういう存在なんだろうか。


決定ボタンを押すと「プップップップ」と機械が宛先を確認するかのように通信を開始する。
一呼吸おいて、「プルルルルルル プルルルルルル」とコール音が鳴り響く。
「1回、2回、3回…」コール音を数える。
時に、電波の影響でコール音が途切れ無音になり「もしもし」と言いかけてしまうが、何もなかったかのようにまたコール音が鳴る。
「4、5、4…回?5回…」途切れた分まで数えたり、どうでもいい。
また無音が訪れた。
コール音が再びなるには間が空きすぎている。
これは繋がっているのだろうか。
彼の応答はない。
私は「もしもし」のタイミングを逃してしまっている。
言うべきか言わざるべきか。
その内、繋がっていたのであろう電話は切れた。
「プーップーップーッ」終了の合図を響かせている。
次に掛けなおすことには、躊躇いなどは一切ない。
考えるまもなく、コール音を聞いている。
すぐにコールは止み、彼の声が聞こえてくる。
「もしもし」
「もしもし」
「・・・・」
私が応答すると、彼は黙ってしまった。
電波は良好。
電話の向こう、彼がいるであろう場所から発せられる雑音が伝わっている。
「もしもし、ゆうじ?」
そう言いながらも、電話の向こうの音に耳を研ぎ澄まさせている。
彼の息遣いだけが聞こえてくる。
風邪は引いていないだろう彼の、乾いた鼻で息を吸い込む音が聞こえる。
何で何も言わないのだろうか。
私も黙ってしまって数秒。
ガサガサと擦れる音の後「ピッ」と言う音を残し、電話は切れた。
否、切られた。
好調に繋がれた電話はよく音を拾う。
聞きたくない、電話を切る音までもが…。
掛けなおしたいと思える気分ではない。
「そっか…」分けもわからず納得してみたり…。


<お疲れさん、毎日会議続きで疲れるわ>
いつもと変わらず、彼から夜メールが届いた。
<2月、終わっちゃうよ>
あと、1週を残しただけの2月。
デートの日は彼の誕生日になる、そう期待しての私の返事。
<今月行かれへんかったな…ごめん>
考える間もなく返ってきたメールが、女の勘をくすぐる。
何を隠しているの?
何を今しているの?
何を考えているの?
<お疲れだね。頑張ってね。ゆっくり休める日ができるといいね>
明るく振舞う自分にスイッチが入った。


不思議な電話があった日でもいつもと変わらずが一番だって言いたいんだ、彼はきっと。
何も聞くな、聞いても答えられない、そう言われている気になった。
1ヶ月、休みが1日だってないことなんてありえないとさえ疑ってはいけない。
私が聞かされている事は忙しいということだけ。
全てはそれだけで彼を察する。


「そっか…」分けもわからず納得する。


バレンタインの日のことを思い出す。
彼は最後にこういった。
「今日言ったこと忘れるなよ」
「ボケにはまだ早いよ」
「何度好きだって言ってもお前はすぐ忘れるから」
「そんなにもたないよ…」
「今日言ったことはずっと変わらない出会ったときから思い続けてることで、これから先も変わらない」
「忘れないよ」
どんなことがあっても、あの日を思い出す。
寂しくても頑張らなきゃ…。
彼に負担はかけない。
私が彼を守るんだ。
こんなことくらいで…いつかきっとなのだから。



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コメント

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4 ■> ミニっ子さん

今は、そうだな…あまり詳しくは書けないのだけど(出し惜しみ)、連絡が来ない苦しみよりも、伝わらない苦しみを味わっているかもしれません。状況は違うけれど、今も似たようなことを何度省みても繰り返しています。
彼もまた、私と同じように私を理解したつもりで勝手に納得している。お互いに伝える言葉は同じでも、そこにのかっている気持ちが少しだけズレていて、辛い。
「だったら何故?!」こんな風に思ったことないですか?私はこの頃も今もよくそう思います。毎日交し合う言葉があっても、相手とのズレはとても苦しい。
私の想いを彼の言葉で伝えることができたら、彼の想いが私の言葉で届いたのなら、そんな風に今思います。苦しみからは抜け出てませんが、いつかはと思いつつ、彼に言葉を投げかけています。

3 ■> hikariさん

私も、解っていても「男って…」と偏見の言葉を口にします。ぜ~んぶひっくるめると気が楽なんですよね。「男は」と言うときに限って、もう諦めの気持ちが大半をしめていたりします。
彼自身を見ようとして、理解しようとして一生懸命で、勝手な思い込みで型にははめない、私が思う彼と彼自身は違う、解ってあげなきゃ…気持ちばかりが先行して募るのは不安ばかり。理解するには彼の言葉が必要で、でも当の本人は口を閉ざしたまま。察してるフリをするしかなくて…。
もしかしたら私と彼の思いは一致していて、通じ合っているように見えたかもしれないけれど、私の中では通っていませんでした。誰かに「そうだよ」って言われたとしても、彼本人にそう言われるまでは私の思い込みでしかない。一瞬で心変わりするほど紙一重の崖っぷちでした。
恋ってなんだろうね。好きだけじゃだめで、相手を何処までも理解したくて、そこに自分が居ることを追い求めていて…。
今、彼の心に私が居ることがどれだけ幸せなことかと、今の現状を重ねかみしめています。

2 ■初めまして!

記事を読んでいたら、自分の遠距離の時のことを思い出しました。まさしくこんな気持ちでいつも忙しい彼からの連絡を待っていました。電話しても出てもらえない、着信を残しても掛け直して来る事もない、メールを送っても返事も来ない…会えるのは三か月に1回…でも忙しさでいつも不機嫌…。苦しかった~。
せのりさんの彼はメールはしてくれるみたいだけど、それでも相当苦しい状態だったでしょうね。今お二人がどんな状態になっているかわかりませんが、この苦しみからは抜け出している事を望みます。

1 ■せのりさん

二月の同じ時期に、私も似たような思いをしてたと思います。
せのりさんの彼氏とは忙しさの程度が全然違うかもしれないんですが、私の彼氏も仕事が忙しくて全然メールも電話もくれなかったです。
で、私は彼に負担をかけないことだけでも頑張ろうって、ひっしでした。辛かったな・・苦しかったですね。
いつかきっと・・そう本気で思えたらだいぶ楽になるんでしょうね。彼氏さんがそう思わせてくれたらいいんだけど・・
一対一ならまだ耐えられることがあるのに、って今更ながら思ってしましました。
でも、一対一でも向き合えてないカップルはいるだろうし、せのりさんたちの間で気持ちが通い合ってることは強く感じます。
それでも、最近恋って何だろうなと思いますよ。
男のひとって勝手というか何というか・・
あ、最後は偏見と私情が混じってしまいました。
ごめんなさい。
せのりさんにはいつかきっと、自分が彼の一番だって思ってほしいです。

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