2006-03-01

226.彼じゃなきゃダメ

テーマ:彼女じゃない恋愛

「お前、何でラッキー吸ってんの?」
テーブルの上に置かれた私のラッキーストライクと私の顔をいたずらに笑みを浮かべ交互に眺める、彼。
「え?!忘れた」
「今、めっちゃ嘘ついてます~って顔したぞ」
「ゆうじの真似したんじゃん」
「俺?!そんな事言うてる?」
「言う!都合悪いと言う」
「はぁ~ん、都合悪いんや」
「別に悪かないけど、都合悪そうな話を聞きたがったわけでしょ」
「まぁな、女子でラッキー吸うなんて…なぁ?!」
「二十歳の時の彼が吸ってたんだよ」
「彼が吸ってたからって吸うんや」
「その時は、ウチ吸ってなかったけど彼のタバコが切れないようにってもってた」
「で、好きだった男のタバコを吸ってるわけね」
「今の好きな人のタバコでもあるけどね」
「タバコ吸って昔を思い出してるんや」
「嫌な過去やね…」
「ふ~ん」
「彼のタバコを吸いだしたのもストレスやったし」
「も・・・ねぇ?!」
「苛立つ事がなくなればやめるかも」
「昔の男のタバコねぇ~」
「そう思いたければそう思っときな!」
「もうえぇよ!」
「自分で聞いといて…もうゆうじのタバコがなくなってもあげないよ」
「そんなタバコいるか!」
「ふ~ん、じゃ、それ、消してよ」
「これは…物を粗末にはできんやろ」
「はいはい。因みに彼のラッキーは青かったけどね」
「2mm?!」
「そうそう。激まずかったから赤にした」
「赤はうまいよな!」
「もう1本吸う?」
「・・・後で貰うわ」
こんなことで嫉妬する彼ではないと私は思っている。
ふて腐れて子供みたいに映る彼をうそ臭く感じた。
「お前は?何かないの?」
「いっぱいあるけど、聞いてもいいわけ?」
「どんな爆弾投下しようと思ってんねや?」
「ふ~ん、爆弾だと思うんだね」
「今は、軽いのな!軽いの」
「何色好き?」
「お前は小学生か?!」
「知りたくない?こういう些細な事」
「色々影響される日々に固定した好き嫌いはそうないかもな」
「そんなもん?」
「お前はあんの?好きな色」
「別に・・・」
この話を早く終わらせたいと思った。
「ふ~ん、他には?」
「別に・・・」
沢山知りたい彼の些細な話を聞きたくないと思った。

聞いたって過去になる気がして…。
「色だけか!」
「切がない…私はあなたのこと何も知らない」
「そんな寂しいこと言うなよ」
「別に・・・いい」
「俺、生茶好き。それから豚の角煮が好き。それから…」
彼は思いつくだけの好きなものを並べた。
知りたかった筈なのに、半分以上聞き流した。
彼の好きを私は殆ど覚えてはいない。


「せのりさん!」
うつむく私に彼が呼びかける。
「何よ、キモイ」
「俺の顔、まだ赤い?」
「よく判らない、暗いし」
「ちょ!そのまま、うつむかない。俺の目見て」
「な、何?!」
私はずっと彼の目を見ることが出来ず、チラチラと彼の目を伺う。
「まだ酔い冷めてへんのかな?ずっとドキドキしてる」
「酔ってんじゃない?」
「俺さ、今日お前に話そうって思って来た」
「え、な、何?!」
「俺、せのりが大好きやで」
「ホントに何?!フライング?」
私は思わず笑ってしまう。
「いぃんじゃない?バレンタインに男から告白したって」
私の笑い声はフェイドアウトする。
彼の顔は言葉を冗談にする気はないらしい。
少しきまづいが、笑ってしまった手前、私は笑顔を崩せなかった。
「で、話って何?」
軽く私は彼の話を進める。
彼は、たまに息をのみながら、言葉をならべてゆく。
彼の頭の中を覗けたらと思った。
彼に選ばれし言葉たちは、私に謎を与える。
笑顔も徐々に緊張へと流れを変えていった。
「もしも、俺とお前、逆の立場なら、どう、してた?」
「どういうこと?どんな立場?」
「俺に彼女がいなくて、お前に彼氏がいた場合」
「私は現に彼氏と別れたじゃん」
「そうやったな…」
「何?!」
「彼女がいなくても別れたか?」
「ん?意味がわかんない」
「俺、ずっと彼女おらんかってんで」
そう言われ、頭の中に過去という過去が駆け巡った。
彼と彼女が別れたことは知っている。
だけど、いつ復縁したかは…どんなに探したって見つからなかった。
一度だって彼を知ろうとしたこと、私にはなかった。
彼女に関することなど、知りたくもなかった。
「うちは…」
言葉につまる。
彼の問いに答えることなど容易かった。
だけど、何も言えなかった。
「何でお前、あの時俺に連絡してきたん?」
彼が見つめて話す過去と、私が探し当てた過去が一致する。
「あの時って…」
「俺にどうして欲しかった?俺に彼女がいるって思ってて連絡してきたんか?それとも居ないと思ってた?彼氏と別れようと思ったのは何で?」
「そ、そんな一気に言われても…」
「ごめん…」
「ずっと、好きだったからだよ…」
「何であの時やったん?」
「わ…わかんないよ…」
「彼氏が出来ました。言われた俺の気持ちって考えたことあった?」
「ごめん…ないかも」
「お前、前に俺に言ったよな。気持ちが冷めたら消えるからって。今でも同じ気持ち?」
「そうね…もしも、冷めちゃったら消えちゃうよ」
彼の話は飛び飛びで、私に話の先を読む余地など与えてはくれない。
ただ、目の前の彼の質問に答えるのみ許されたこの会話がたまらなく怖い。
別れ話なのだろうか…。
だったら、私に縋る余地を与えて欲しい。
つける嘘ならつきたい…。
私はどう答えるべきなのだろうか。
どう答えれば…。
「お前、いつから俺のこと好き?」
「出会って直ぐってわけじゃないけど、ずっと」
「俺と出会ってから何人の男と付き合った?」
「付き合ってなんかいないよ」
「・・・そうやったな。言い方悪かった、ごめん」
「それがベストな言い方なんじゃない?!覚えてないくらいセックスしたよ」
「いや、別に…そんなことまで言わなくてもえぇよ」
「別にいいじゃん、全部知ってるんだし」
「何で…その…他の男と…」
「好きな人がいるのに、何で他の男とセックスするのかって言いたいの?」
「そんな大きな声で言うなよ」
「あなたを諦めたかったからだよ」
「諦める…」
「忘れたかった」
「好きだったか?」
「好きになれるわけないじゃん。でも、いつか好きになれる、そうなれば幸せになれるかもって思った」
「冷めてるのに何でそいつらから消えない」
「始めから冷めるものなんてないから。変わらないから」
「何を求めてた?」
「あなたを忘れることのみ。そこに幸せがあると信じてね」
「忘れたいか?」
「忘れられるものなら忘れたかった」
「今も忘れたいか?」
「多分、きっと、私は忘れる為に男に抱かれる」
「何で今は…」
「今、忘れる必要なんてあるのかな?」
「また、好きでもない男に抱かれるの?」
「忘れる必要があるなら、そうなるね」
「でも…お前はずっと俺の事好きでいるよな」
「そうだね」
「また、同じこと繰り返すのか?」
「仕方ないじゃん」
「ずっと試してきたんだろう?」
「何が言いたいの?」
「俺以外じゃだめだった…そうやろ?!」
「そうだよ、だめだった」
今までスムーズに来た会話が途切れる。
彼はどんな話の道筋を想定していたのだろうか。
ここまできても、まだ私には彼が何を結論づけたいのかがよく判らない。
「何?!根掘り葉掘り聞いておいて、自信満々に俺のことが好きとか言いながら、何で私放置されてる?」
「いや、自信満々ってわけでもないけど、そう思ったんだよ。なのに俺にはずっと答えが出せなくて、しかもそんなお前を疑ったりすることもある。お前は、彼女がいる俺だから、俺の側にいるんじゃないかって…」
「言っとくけど、あなた私に1度だって彼女がいないって言ったことあった?」
「いや、言わなかった」
「そんなの思い込みじゃんよ」
「そうだな」
「あなたには彼女がいる。それに私は関係ない」
「…そうだな」
「私の所為にしないで、自分で考えて」
「そうだな」
「私はあなたが好き、それだけだよ。ずっと側にいて欲しいと思ってる」
彼は何も言わず、何度も何度もうなずくばかりだった。
ゼンマイ仕掛けのおもちゃみたいに、ずっと。
そんな彼を見ていたら、言葉があふれ出る。
「もう他の人とセックスしたくないんだ…。もう…」
彼を追い込んでいるような気になる。


別れ話なのか…。
それとも…。


これが私に与えられた最後のチャンスのように思えた。
言わなきゃ、私の想いを吐き出さなきゃ。
伝えなきゃ。


「せのり?」
名前を呼ばれることにこんなにも緊張したことがあっただろうか。
「ずっと昨日から話をしようって決めてて、考えてたことがある。あんまりまとまらなくて、今も意味不明な会話になったけどさ、俺の今のまとまらずとも出せるだけの想いを伝えたいと思う。できれば、格好もつけたいし、バシッと決めたいところやけど、思いついたままそのまま話すから、ちゃんと理解しろよな」
緊張の糸はどうなってるんだろうか。
切れちゃった?
それとも張りっぱなしかな?
私はうなずくこともなく、彼ににっこり笑って見せた。
彼は、そんな私の顔を見てどう思ったんだろうか。
一度私の目からそむけ、うつむき、ポリポリと頭を中指で掻く。
頭をあげた彼の目には何が映ってたんだろう。
少しだけこの時間を長く感じた。
そして、また彼は私の目を見つめなおし、口を開いた。


「ごめんな、せのり」



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コメント

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4 ■> sinさん

はじめまして、せのりです。
あはは、そうですね、初っ端この記事を読むとかなりの自意識過剰ですね。5年の歳月がなかったら、私もそう思ってたかもしれません。でも、この時点で本当に好きなのかと言われることの方が、不自然だったのじゃないかと、思っています。それに、そう伝わるように、私も彼に想いを届けていたので。伝わっていて嬉しいという思いのほうが強かったかな。
何故、こんな男が好きなのか。何故、そうまでして一緒に居ようとするのか。何故…そんな想いにかられたときは、是非、ログをあさってみてくださいね。う~ん、ログを読むのは私でも苦痛な量なので、コメント欄なんかで遠慮なく聞いてください。
興味を持ってもらえて、嬉しいです。ほんと、どうなるんでしょうね…この記事から1年たった今でもわからないです。

3 ■> いずみさん

ちょっと書き方間違えちゃったかな(・д・A;
この記事中盤の会話は、「あの頃」彼と再会する前後を思い出しての会話になってて、彼女がいなかったのは「あの頃」なんですよ。残念なことに…って、何が残念なんだかってね!この日、バレンタインデーには確かに彼女と復縁していて彼女がいた。彼女がいなかった事実は知っているけれど、それがいつ復縁したのか…知らなかった。
でも、あの頃とはいえ、確かに今まで悩んできたことってって思った。言ってくれさえすればとも思った。でも、記事に書かなかった、思い出せなかったのは多分、一瞬の思いだったからかな。「だから、何?」って思いのほうが本当強かった。今、彼女がいなかったからといって多分変わりはしなかったと…。彼女になれていない自分が現実だからね…。だからこその、「私の所為にしないで」、かな。
実際、彼女がいなければって思ったことは何度もあったし、別れてくれればとも何度も思った。だけど、自分で言った「彼女は関係ない」という言葉は、今後自分自身にちゃんと言い聞かせなきゃいけない言葉になる。彼女がいようといなかろうと、対する想いに左右されないということ、肌で感じることになる…これから。
私はね…もしも、彼女だったとしても、この辛い日々は訪れていたと思うんだ。

2 ■んんん!?

はじめまして!この一話だけでとても気になりました!とても興味持ちました。傍から見るとこんな彼はとても自意識過剰な感じがしますがせのりさんも正直に好きと言えるところがいいですね。どうなっていくのかとても気になります!

1 ■お久ぶりですw

彼女いなかったんですね…
予想外。。
彼女いないならいないで言ってくれないと
今まで悩んでた事って…って気分になるよ
あのなんとも言えない嫌な気分
一杯味わってきたのに…
リアクションに困る!!

大人な会話がドキドキしますよ

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