2005-10-18

150.食あたり

テーマ:彼女じゃない恋愛

彼はまだ怒っているのかもしれない。
否、怒ってはいないけれど何かしら引っかかってるのだろう。
多分そうだ、私がそうだから。
彼からの連絡が2・3日なかった。
私もなんだか気楽にメールを打つ事が出来なかった。
この無言が私をとことん後悔させる。


やっと彼用に指定した着メロがなった朝、私は携帯に飛びつく。
そして勢いよくボタンを連打して、画面を呼び出す。
が、目に飛び込んできた文字は「通話中」。
え!?


「・・・もしもし?」
「もしもし、俺」
「はぁ?」
「なんやねん!」
「いや、こんな時間に…えっ!?えー!?仕事は?」
「さー何ででしょう?」
彼の声が少し弱々しく感じた。
「声、聞きたくなったぁ?」
「そうそう、めっちゃ寂しなってな」
「ほんま?ゆうじってそういう事思うの?」
「俺かて、寂しくなるよ」
「ふーん、でも、どうしたん?」
「仕事休んでん」
「しんどいん?」
「うん、しんどい」
「痛いん?」
「うん、痛い」
「何処、痛いの?」
「お腹」
「下痢?」
「あぁ、上から下からや!」
「えー、大丈夫なん?」
「ごめん、せのりちょっと待って」
携帯を床かテーブルか、かたい所へ置く音がした。
彼の咳き込む声がする。
とても苦しそうだった。
「ごめん、もうさっきから吐きまくってんねん」
「何たべたんさー」
「なんやろう?」
「死なん?」
「死にそう」
「うーん、ダメ~」
「あぁ、死なん死なん!ってか、今日はお前が甘えさせてくれよー」
「ごーめーんー!、死ぬ言うからやーん」
「はいはい、ごめんごめん。って、だから!」
「あはは、甘え下手やなー。病院はいった?」
「まだ」
「行かなあかんよ」
「あぁ、せのりしばらく電話してても大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ」


彼は電話の途中、何度も何度も吐いていた。
近くに住んでたら、今すぐにでも飛んで行きたかった。
否、呼んでくれれば…今すぐ飛んでゆく。
苦しい声、聞いてるだけは辛かった。
行ったところで彼の辛さは変わらないのだけど、何かをしてあげないと苦しかった。
私はまだ彼の部屋へ行った事がない。
「行きたい」そんな事も言えなくて、ただ彼の望みを叶えようと思った。
きっと彼は来て欲しいなんて思ってない…そう言い聞かせて。
自己満足なんだと。


「そろそろ病院開くんじゃない?」
「ほんまや、行って来るわ」
「大丈夫?」
「あぁ」


電話を切って早く治りますようにと祈った。
お昼になって病院から帰ってきたのであろう彼からメールがくる。
<ケツに注射した>
<ケツ?!>
<めっちゃ痛かったし>
想像したらおかしかった。
見た目だけはちょっとクールな彼がケツ出して来たんだと思うと笑えた。

病院でもケツ出しながら格好つけてたんだろうかと・・・。
<頑張ったねー>
<あぁ、この年でケツに注射とはな…>
<原因解かった?>
<あぁ、まぁ、食あたり>
<本当、何たべたんだろうねー>
<思い当たるもんがない>
<あのね、ゆうじ。。。>
<何?>
<不謹慎でごめんね、うち、ちょっと嬉しい>
<いっぱい話せてか?>
<うん♪>
<最近、こうやってゆっくり話せる事なかったもんな>


しばらく彼とメールで会話し、彼は少し寝ると言って中断させた。
そして、夕方またメールが入る。
<これから出社してきます>
夕方の5時だった。
<なんでー、大丈夫なん?>
<あぁ、仕事片付けな休日出勤になってまうしな>
<無理せんとってな>
今週の休日にデートの約束がなければ、彼は休めていたのだろうかと胸が痛かった。
だけど、ほんの一言さえ私は週末の事に触れられなかった。
キャンセルになることを恐れてなのか、気を遣われることを恐れてか、何かしら怖かった。
<いってらっしゃい>
私は胸を痛めながら、彼を見送ったのだ。
嫌な女だなと思った。
こんな私が彼を治せと神に願うのは都合よすぎるだろうか。
<ケツ注射は効くな!遅くなったけど仕事も片付いたし、元気も回復>
本当なのか、深夜の彼のメールにホッとした。



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