2005-08-27

113.感情なき涙

テーマ:彼女じゃない恋愛

仕事を定時に終わらせ、急いで家に帰る。
玄関で靴を脱ぎ、お風呂場へと直行した。
浮き上がったメイクもドロドロと流れる汗も一気に洗い落とした。


ウキウキする、ワクワクする、心が弾む。
だけど、何故だか目に涙が溢れた。
どうしたんだろうか、私。


軽く髪を乾かし、メイクを始める。
だけど、目に浮かぶ涙がマスカラを滲ませる。
目に石鹸でも残ってるんだろうか。
涙・・・止まれ。


そこへ彼からの電話。
「もしもし、まだですか~」
「もしもし、うん、後もうちょっと」
「もう家出ても大丈夫?」
「駄目だよー。髪も濡れてるし何も出来てない」
彼に準備が出来たら連絡すると言い電話を切り、準備を進める。
が、10分もしない内にまた彼からの電話がなる。
「はぁい、何?」
「着いた」
「はぁ?」
「着いたから出といでよ」
「まだって言ったじゃん」
「いいよ、スッピンでも」
「嫌だ」
「俺も待つの嫌だ」
彼は子供がワガママ言うようにごねた。

かなり迷った。
薄っぺらい顔で行くのか、それとも彼を待たせるのか・・・。
鏡と向き合い悩んだ。
私、メイクしないと本当、ガキっぽい。


だけど、私はそのまま家を出た。
早く会いたい、それだけの想い。


彼の車に乗り込むといつものように彼は私の顔を覗きこむ。
「ホンマに殆どメイクしてないな」
私はムッとした。
そんな私に彼は私の頭を軽く撫でる。
「髪も半乾きやな!」
益々ムッとした。
こんなんでも、可愛いって言ってくれると思った。
「お前、女としてホンマ最悪な状態やな」
ヤバイ、私泣きそうだ。
やっぱりちゃんと準備してくるんだった。
「目ぇつむって」
そう言われ言われたとおり目をつむると、そっと彼は私の下まぶたを親指でなぞった。
「お前、泣いてんの?」
「泣いてないよー」
「マスカラ滲んできてるぞ」
私は慌てて鞄の中から鏡を取り出し、確認した。
やっぱり少しマスカラが滲んで、下まぶたが薄っすら黒かった。
「お風呂入った後から涙でるの」
「ゴミでも入ってんのか?」
「わかんない」
彼はぐっと私の顔に近づき眼の中を覗き込む。
「大丈夫っぽいけど・・・」
「うん、大丈夫、ちょっと変なんだわきっと」


彼は不信がりながらも、車のエンジンをかけ車をゆっくり発車させた。
涙は溢れないものの、今にも溢れ出しそうな私の目。
この涙は一体何?
自分の中の何処を探しても、この涙に繋がる感情がなかった。
自然に私は視線を窓の外へと向ける。
無言・・・。


「せのりー、カラオケしよっか」
無理やりテンションを上げたような彼の声に、私はぼんやり相づちを打つ。
「お前と会ったらカラオケ行こうって思っててんな」
彼はずっと同じ調子で話し続けた。

私はずっと、ぼんやりぼんやり相づちを打つ。


ヤバイ、涙出てきた。
鞄の中からハンドタオルを取り出す。
「大丈夫か?」
彼は心配そうに伺ってくる。
「うん、大丈夫」
涙浮かべながら、彼の顔へと向き直し笑ってみせた。
悲しくなんかはない、だから、とても上手に笑えたと思うのだ。
彼の顔も笑顔になったから。
「ほんま、変な奴やなー。乾燥してんのか?」
彼はまだ少し心配そうだった。

クーラーの温度を下げたり、風が私の顔に当たらないように色々試してくれていた。


本当に私どうしちゃったんだろう。
解からない、感情、お家に忘れてきちゃったかな・・・。

彼の声も何だか遠くて、少しだけ一人ぼっちの気がした。

変なの。

何だろう、この孤独感。


彼がチラチラと無言でこちらを伺う度に、私は体を左に背けた。

シートベルトが頬に痛い。

ちょっと背けすぎだろうか。

自分で何考えてるのか、何やってるのか解からず、私はそのままでいるしかなかった。

私の名前呼んでよ、心の中で呟いた。

私、今、自分の意志で動けない。



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コメント

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10 ■> ToaCoさん

知って理解することの怖さも充分にあるかな。
理解したいと思う気持ち以上に、自分の心を支配する。
そして自分の気持ちさえ解からなくしてしまう。

もっと頑張るから、理解できる安心が欲しいです。
「覗いてみな」そう言って欲しい。

9 ■なんなのでしょうか。。

本当に謎です。
自分の気持ちでさえ把握できない。。
彼の心を理解するの、難しい理由がなんとなくわかってきた最近です。。

でも、がんばって理解したいです!

8 ■> tomoさん

確かに生理前は激しいですよね。
ちょっとしたことで怒って、泣いて、気持ち悪いくらい笑ってみたり。
そうですね、泣ける相手って限られてますもんね。
私の場合は、彼。
彼に会うまでは、涙なんて枯れてしまったのかと思うくらい泣かないでいたのだけど、彼の前では本当泣き虫しぎ。
多分、私、泣きたかったんだろうな。
彼がスイッチだったのかもしれない。

7 ■> まめ子さん

自分の感情にさえ気づければ、相手に伝える事もできたのだろうけれどね・・・。
少しでも心配させたくなくて、そっぽ向くことしか出来なくなって、余計心配させたりで。
こういう時、本当どうしたらいいのだろうかと考えるけれど全く答えは出てこずで。

キャー本当ですか。
何か、ブログが繋がった感ありますよね。
私もお伺いしますです、マジで!
あぁ、読みたいブログが沢山溜まっててうずうずしてます。
時間たりねぇ~な~。

6 ■> cute-styleさん

うん、多分、お風呂に入る前にはあった心、どっかに忘れてきちゃってた。
もしかしたら、自分で隠してしまったのかもしれないけれど・・・。

本当になんだろうって思うよね。
宇宙なんて行ったことないけど、無重力状態って感じがする。
キーーーーンって耳鳴りするような、静けさの孤独。
満たされている筈の中からではなく、何となく外から感じる孤独感。
締め付けられるような気がしてきます。
不思議です。

5 ■> キンキンさん

私は結構不真面目に部活やってたんでなかったけど、一生懸命やってる時に同じ様な状態になる事があるよ。
泣いたら・・・頑張ってる自分が壊れそうで否定したいのかな、でも、辛い事も否定したくなくて、答えが出ずに涙に変わるんだろうか。

勝手に出てきた涙は理由が解からずで、心配させた人たちに、本当悪いなって思うよね。

でも、たった一人そういう自分に気づいてくれる人がいたら。
抱きしめてくれる人がいたら。
きっと、涙の理由にも気付ける気がする。
全部まとめて受け入れてくれる人いたらいいよね。

4 ■わかります。

ワタシの場合、感情無いままけど泣くことって生理前の情緒不安定な時はよくあります。んで生理くるとケロっとしてたり。
泣くことって必要なことだと思うので(理由がわからなくても)素直に涙を流せる人が目の前にいるって大事なことだと思います。

3 ■ふえー

共感ですよ~せっかく会えたっていうのにどうしていいかわからずそっぽむいちゃったり…さらに心配してくる彼の反応でなんだか泣けてきちゃったり…嬉し涙なのか惨めなのか。。。
いずみさん我がへっぽこにきてくれました~元気もらえそうです~まめ子も頑張らねば!

2 ■トアコ

きっと、お化粧と一緒に心を忘れてきてしまったんですね。
だから、いつも我慢している涙がこぼれたのだと思いましたー。

満たされているはずなのに疎外感を感じてしまう。。トアコもよくあることです。
なんなのでしょうか、この気持ちは。
謎です。

1 ■あたし

どーしたんやろ…?
ってときどき自問自答して
答えでなくて頭ん中がグルグルなることが
最近あります。。。
あたしの場合ゎ部活がちょっとしんどいってゆうか…。
部活終わったあとなぜかポロポロ涙がでてきちゃって
ダチを心配させてしまいました(ノ´Д`;ノ
自分がしんどい時に
自然に空気を読み取って
声をかけてくれる相手がいたら
どんなに救われるだろーか…って思います。。
名前を呼んでほしい時に、呼んでくれる人。
抱き締めてほしい時に、抱き締めてくれる人。
口に出さなくてもキモチ感じ取ってくれる人がいてくれたらなぁ(>_<)

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