2005-05-25

17.分岐点 流される告白

テーマ:彼女じゃない恋愛

自分の心に秘めたものを誰かが知っているというだけで、何故か少しだけ安心する。

それを認めてもらえたりすると、もっと安心する。

私、間違ってないよね。

大丈夫だよね。


私は毎日彼に会いにいった。

心の片隅では少しの罪悪感が見え隠れする。

彼女に申し訳ない。

本当の所ひとつもそんなこと思っていないのだけど、一応そんな気も在るのだと心の隅に寄せてある。

彼女にしてみれば、気分のいい話ではないだろうな。


彼が仕事を休んだ日には、電話が掛かってくる。

会えないけれど、そんな日は会える日よりも嬉しかったりする。

私からは一切連絡を取らない。

やっぱり、私はそこまででしゃばれない。

今夜も彼は携帯を鳴らしてくれるだろうか。


「もしもし、何してた?」

「何もしてない」

「そう」

何だか少し彼が落ち込んでいるような声に聞こえた。

「どうかしたん?」

「ん?まぁ、人生の分岐点ってやつじゃないか?」

「あぁ、今、皆たいへんやもんな」

「お前は人事やなぁ。お前は就職したりせんのか?」

「就職はしないよ。やりたい事沢山あるし」

「やりたいこと?」

「知識もっと増やしたい」

「また、学生か?」

「うーん、学校いけたらいいけど、そうもいかんし」

「夢とかあるん?」

「あるけど、誰にも言わないって決めてる。仕事じゃないよ。遊びの一種」

「男はそうも言ってられへんしな」

「バリバリ仕事できる女性と結婚すればいいじゃん」

「それもありやけど、俺のやりたい事は仕事やからな」

「だったら、やればいいじゃん」

「簡単に言うよな」

「簡単な事じゃないの?」

「やりたいだけで会社には入れへんし」

「落ちたら来年・・・とか、駄目なん?」

「要は、そういう悩みかな。入りたい会社に入るか、入れてもらえる会社に入るか」

「そっか・・・」

「お前みたいになれたらえぇよな」

「なってみる?」

「いや、結構俺世間体気にするタイプやから・・・」

「コンプレックス?」

「まぁな!」

「でも、そんなあなたを好きな人もいるんじゃないの?」

「いるんかな?俺、お前みたいに誰にも本当の自分見せてないもん」

「でも、視てる人もいる」

「かな?」

「私は好きやけど」

「ははは、ありがとう。お世辞でも嬉しいわ。また、頑張れそうや」


私の好きは、サラリと流れていった。

自分でも流されるように言ったのだけど。

自分の想いを届けたいなんて気持ちはまったくなかった。

彼が元気になればいい、その気持ちだけを彼に伝えたかった。

誰かが応援している。

彼にはそう思ってもらいたかった。

誰かに聞いて欲しい。

口にすることで頑張れる。

認めてもらえることで頑張れる。

彼がやりたいと願う道へと歩めることを心から願った。


私たちは分岐点に立っている。

それぞれがそれぞれの道へと歩もうとしている。

私も、彼も、親友も、男友達も。


徐々にバーから人が旅立ってゆく。

休みがちな彼ら、彼らがいないバーへ私たちは出向かない。

ゆっくり、ゆっくり、私たちは離れ離れになってゆく。

喜ばしいこのことは、誰もが口にしない胸の痛み。

誰も引き止められなくて、ただ、サヨナラの時を待っている。

慌しく、移り変わり、それに段々慣れてゆく。

私は、彼に伝えた夢とは掛け離れた道へと進むこと、彼にはまだ言えなかった。



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