2005-05-31

31.逃避告白

テーマ:彼女じゃない恋愛

何週間か後のこと、弟はひょっこり家に帰ってきた。

「とりあえず、学校行くわ。何か、仕事ないし」

弟はあまり語らなかった。

弟は一体何を知ったというのだろうか。

家族に会話はなかった。

今、語りだしたら本当にバラバラになるようなそんな気がしたからなのだろうか。

少なくとも私はそんな風に感じていた。


ため息が出る。

ため息を捕まえたら、自分が何対して滅入っているのか解かるかもしれない。

幸せを逃さない為じゃなく、私は自分の悩みを知ろうとため息を飲んだ。


「しばらく、家を出ようかと思ってるねん」

「家どうするん?」

「うーん、何とかなるんじゃない?」

「一人暮らしするん?」

「うぅん、日本じゃ私の貯金も直ぐに尽きるし、3泊が限度。海外に出ようかと思ってる」

「ほんまに逃亡やな」

「ふふ、ほんまに」

「どれくらいで帰ってくるん?」

「もう貯金も残り少ないし、1ヶ月くらい。それに逃避もそれくらいで調度いいやろ?」

「まぁな、気をつけて行ってきいや」


漠然とした会話を親友と交わす。

親友とはしょっちゅう交わされる会話だ。

実際に行動しなかったとしても、そういう気持ちなんだという心の会話だ。

街を破壊しに行こうとかどうやったら毒入りリンゴがつくれるかなど、妙な話を彼女とはする。

話すことで落ち着くこともある。

だけど、私は少しだけ本気だった。

そんなことしてみてもいいかもなと。


一人部屋で妄想を膨らます。

海外へ行くとなると何処へ行こうか。

そうだ、インドがいい。

物価も安いし、一度は行ってみたい国だった。

その間は誰とも連絡がとれなくなるんだろうな。

あぁ、何かすごい開放感。

1ヶ月か・・・。

1ヶ月連絡がとれなかったら、薄っぺらい縁なんて直ぐに切れてしまうんだろうな。

ふふ、おもしろい。

帰ってきてどれだけの人間が私の周りにいるだろうか。

父、弟たち、祖父母、曽祖父、友達は親友くらいだろうか、母もきっと諦めて連絡が途絶えるような気がする、彼は・・・私には解からない。


彼って本当、気付いたらいつも側に居てくれる。

もう駄目かなって思っていても、ずっと側にいる。

私が遠くへ行っても待っていてくれるのかな。

でも、それは繋がるものがあったからかもしれない。

もし、携帯という繋がるものがなかったら、やっぱりどうだか解からないな。

今の人達は、携帯に頼りすぎてる。

携帯が切れたときが縁の切れ目なんて格言も生まれちゃうかもしれないくらいに。


私が海外へ逃亡したら、何もかもが切れるんだな。

切ってみたい。

リセットした。

始から、生まれ変わりたい。

帰ってきたとき、全てが元に戻っていればいい。


実行したら、何もかもが終わりになるかな。


私は携帯を手にとり、彼に携帯を繋げた。

今まで繋がっていたんだと確認するように。


「もしもし」

「もしもし、今大丈夫?」

「おう、何や?」

「私ね、あなたの事好きなんよ」

「いつから?」

「いつだったかな・・・ず~っと前から」

「何で言わんかった」

「彼女がいるし」

「そっか、ごめんな」

「うぅん、それにこれが初めての告白じゃないし」

「嘘!」

「ほんとう、流されちゃったけどね」

「そっか・・・ごめん」

「いいよ、私もそのつもりで言った」

「そのつもり?」

「困らせたくなかったし」

「そうか。俺もお前の事好きやで」

「うん、知ってる。でも私の好きとあなたの好きは違う」

「返事、欲しいか?」

「今すぐ答えらえることなの?」

「うーん、お前はどうしたい」

「いいじゃん、このままで」

「お前はそれで充分なんか?」

「うん、あなたに彼女と別れて欲しいなんておもわない」

「じゃぁ何で告白したの?」

「気持ち伝えたかっただけ」

「ふーん」

「あなたには何も望まない」

「何も望まない・・・」

「うん、だけど、ずっと好きでいさせてね」

「あぁ、返事はしないよ」

自分勝手な自己解決。

私は、これで終わったんだって思った。

今まで私たちはこうやって繋がってたんだって。

スッキリした。

さぁ、何もかも消し去ってしまおう。

もう、何も残るものはない。

とりあえず、手始めに携帯メモリーを消してみよう。

操作は簡単。

このボタンを押せば一括で消えてなくなる。

ピピピッ。

甲高い機械音が、心に風を吹かせる。

携帯メモリーをチェックする。

ピピピッ。

また甲高い機械音と共に、メモリー0件の表示。

気持ちいい。

窓の外の世界が作り物にみえた。

この星に人間なんているのかな。

不思議な感覚だった。

たった今生まれたようなそんな感覚。


そうだ買い物に行こう。

一人ぼっちがこんなに楽しいと思えたのは、初めてだった。



← 30 ]  [ 32 →
AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

senoriさんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

コメント

[コメントをする]

コメント投稿

AD

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス

      ランキング

      • 総合
      • 新登場
      • 急上昇
      • トレンド

      ブログをはじめる

      たくさんの芸能人・有名人が
      書いているAmebaブログを
      無料で簡単にはじめることができます。

      公式トップブロガーへ応募

      多くの方にご紹介したいブログを
      執筆する方を「公式トップブロガー」
      として認定しております。

      芸能人・有名人ブログを開設

      Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
      ご希望される著名人の方/事務所様を
      随時募集しております。