地方選挙を制するためのミニ講座

勝負の世界には、後悔も情けも同情もない。あるのは結果、それしかない。 (村山聖/将棋棋士)


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これまでにもお伝えしました通り、難解で時代遅れの公選法。

その公選法を解釈した書物は結構出回っており、

政党や自治体でも「やっていいこと・悪いこと」を一覧にした資料等を企画し、

国民の関心を選挙・政治に向けようと努めていますが、

それでも一般の人たちにはなかなか理解が進んでいないのが現状です。

前回「ウグイス嬢は女子高生」 でも述べさせていただきましたが、

私は、大人がろくに公選法を理解していないのに、

18歳の高校生を選挙の現場に迎えるということについて、

もう少し準備と議論があってもいいのではないかと案じています。

よって今回は「ここが理解できれば公選法の大枠が捉えられるかな」と、

思われる節を解説したいと思います。



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公職選挙法において、

「選挙運動」のやり方については細かくかつ、厳しく具体が決められております。

例えば街宣車による運動では、

車上運動員の数、報酬の上限、運動ができる時間帯、車の規格、車載看板の規格等が

こと細やかに決められております。

選挙事務所の運営についても、事務員の数と報酬上限、労務者の賃金条件、

飲食物の提供、看板の規格・数等が細~かく決められております。

運動の仕方についても規制があり、

法定の文書図画以外の印刷物の頒布はできません。

その他戸別訪問による運動の禁止、選挙権が無い者の運動禁止、

車上運動員以外の運動員への報酬の支払いができない等、

できないことづくめではないかと感じてしまいますが、

逆に「何ができるのか」という視点でよく読むと、

街宣車と演説・電話・ネット・口コミ・はがき・公報・公営ポスターと

候補者一律、同じ土俵、公正公平な規制の範疇で戦えという、

公職選挙法で決められた「選挙運動」の姿かたちが見えてきます。



しかしこれはあくまでも「選挙運動」の話。

つまり選挙が告示(公示)され、立候補届け出が済んだあとから、

投票前日の2359分まで、市議会選では7日間の運動期間内の決まり事です。

そしてここまでの内容は広く発信されており、いろいろな書物やネット、

自治体選管が候補者向けに配る資料等で知ることができるはずです。



では告示(公示)以前の規制はというと…。

ここからが皆さんが頭を悩ませる部分であると推測します。

告示前に戸別訪問ってやっていいのかどうか、

リーフレットの法的規格ってあるのかどうか…。

いろいろ調べてみても、明確かつスッキリと疑問を解決できる指南書や回答に

なかなか出会えないと思います。



それもそのはず、

実は告示前の活動である「政治活動」には原則規制がないのです。

規制がないということは条文がないわけなので、解釈文も読み下し文もないわけです。

つまり何でも自由にできるということです。

※ただしある一つの条件を満たしていればの話ですが…。(これは後述します)



おそらく中学校の社会科で習ったと思いますが、

我が国では基本的人権を、侵すことのできない国民の永久の権利として

憲法が制定しております。



19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。

21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。



つまり日本国内においては、個人がどんな信教を持っても自由ですし、

さらに思想を表現し、媒体を使って情報発信することも許されているわけです。

よって政治信条を表現すること、それを広めようとすることに関して、

文書図画の規制もなければ、運動方法の規制もないのです。



じゃあ「告示前の戸別訪問がよいか悪いか?」と問われれば、

当然のことですが「いいんです。」

憲法が思想・言論・表現等の自由を認めているのですから、

これは国民としての権利を行使しているということになります。



くれぐれも「政治活動」は国民としての権利の行使ですから自由です。

軍歌を大音量で流す右翼団体の街宣活動も、政治活動の一手法なので、

警察から道路使用許可を受けていれば全く合法です。

政治信条を綴った印刷物を作り頒布すること、

これとて規格に制限はありません、座布団大だろうと単行本形式だろうと可。

頒布の方法も、新聞折り込みや郵送等の有料配布のほか、

駅で通行人に手渡ししても、軒並みポスティングするにしても全くの自由です。



どうですか? 簡単でしょう。



でも念のためおさらいしましょうか。

まず「選挙運動」と「政治活動」は似て異なる全くの別物であると認識し、

しっかりと分けて考えてください。



「選挙運動」ができるのは、選挙告示(公示)日から投票前日の2359までです。

この「選挙運動」には細かい規制と決まりごとがありますが、

選管が配る「立候補の手引き」等にその詳細はきっちりと記されています。

細かい規制の根拠は、資金力が陣営の優劣を決める要因にならないための配慮です。



そして「政治活動」は、選挙運動期間と投票日を除いた期間に行える活動ですが、

原則規制はありません。自由に行えるものです。

その背景には、国民の基本的人権を侵してはならないという憲法の定めがあります。



さて「選挙運動」と「政治活動」の違いが理解できれば、

公選法の概要のうち、3分の2が理解できたことになります。

残り3分の1、それが先ほど赤字で書いた政治活動を行うにあたって、

満たさなければならないある一つの条件を理解することです。



それは「政治活動」が「事前運動」にならないようにすることです。



「事前運動」という新たな言葉が出てきましたが、

「事前運動」とはその名が示す通り、告示以前に選挙運動を行うことです。

公選法において「事前運動」は固く禁じられております。



あなたが某市議会議員選挙に出ようとする場合、

「市議会議員候補」と名乗れるのは告示日に立候補届を出してからになります。

告示以前は立候補をしようと準備はしていても、身分は候補者ではありません。

ですから、告示以前の政治活動に使う看板等に「市議会議員候補」と書くことや、

選挙に出るということが文中から読みとれる広報物を作ったり、

活動のなかで「選挙に出る」ということを公言したりすると

「事前運動」になってしまいます。

「立候補予定者」というような言葉も使ってはいけません。

政治信条等の記載がなく、単に名前と顔だけを売ろうと意図された制作物も、

「選挙を意識した売名のための道具」とみなされますので、

政治活動におけるポスターというのは、原則あり得ません。

名前を大きく書いた看板等も、売名の道具とみなされますので認められません。

「政治活動」とはあくまでも政治信条を訴える活動のこと。と、理解してください。



ただ広報物については、

「討議資料」と小さく書いて「これは事前運動用ではありませんよ」とアピールしたり、

ポスターにわざわざ「室内用」と書いて「公衆の面前には貼らんけんね」と宣言したり、

「事前運動」ととられない工夫と通念が存在します。

あと政党としての活動についてはこの限りではありませんし、

さらに細かいルールと脱法の術がありますが、ここでは割愛します。



「選挙運動」「政治活動」は理解できた。

そこに「事前運動」が出てきて多少話が複雑になりましたが、

政治活動を行おうとするときに、

その行為が「事前運動」あたるか、「そうではない」と自信を持って言えるか。

この判断が自身でできるようになると、あなたは名参謀ということになります。



『「選挙運動」「政治活動」そして「事前運動」も概ねわかった。

でもさぁ、戸別訪問していて「選挙でしょ」って言われたらなんて答えるの?』

私が選挙の現場で本当によく耳にする質問ですが、

そう相手から聞かれたら、

今度は逆にウソをつかないで、ハイと答えた方がいいと思います。

だいたいリーフレットも名刺も、

それを見たら選挙だとわかるようにデザインされているはずですから、

「いえいえ、これは政治活動の一環でして…」なんて弁明するのは野暮だし、

そこまで感の働かない人に出会うこともないと思います。



ただリーフレットに「●●市議会議員候補予定者」みたいな

明らかに証拠となってしまう文言は、絶対に刷り込んではいけません。



前述のように政治活動には何の規制もありません。

然るに、政治活動として後援者名簿の収集を行ったとします。

100人分もの名簿を集めたAさんに、ガソリン代として実費分の現金を渡した…。

ここまでは問題ありません。

しかしこの行為が票の取りまとめ(事前運動)ではないかと容疑をかけられた。

その時、Aさんが「票集めではない」と説明できれば、事件にはなりません。

ところが事前運動にあたる物的証拠(例えば「市議会議員候補」と書かれた名刺)が

名簿収集のために訪問した家々や、Aさんの車中・持ち物から出てきてしまったら、

「票集めではない」という言い逃れは一切聞いてもらえません。

ガソリン代として渡した現金、単に実費弁償分として払っただけのお金が、

違法な運動報酬という黒い金に化けてしまうわけです。

このようなケース、

ガソリン代を渡した人物とAさん、両方罰金刑以上の有罪になると思います。



選挙をちょっとかじったことがある人がよく言う言葉に、

「文書違反くらいなんともない」というのがありますが、

これが事前運動に分けられる文書違反だとしたら、

例えの通り、致命傷になってしまうこともあるわけです。



公選法のキーワードは3つ、「選挙運動」「政治活動」そして「事前運動」。

この三つが理解できれば、とりあえず選挙運動員・参謀として合格です。



冒頭にも申し上げた通り、

今夏以降は18歳のしかも高校生が選挙に参加するようになります。

違法な雇い方をして、高校生が取り調べを受けるなんてことになったら大変です。

「知らなかった」では済まされません。



選挙に携わる人、教育現場の人には特に公選法の肝心なところだけでも

理解をいただければと思います。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



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