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2005年12月27日 14時58分07秒

中国―地方官僚の腐敗の実態とは?発電所建設をめぐる住民と警察の衝突事件

テーマ:国際―アジア

土地徴用めぐる住民闘争続く―中国
元凶は地方官僚の腐敗

 中国広東省汕尾(さんび)市で六日発生した発電所建設をめぐる住民と警察の衝突事件は村民に多数の死傷者が出たことで国際的にも政府による弾圧事件として注目を集めている。今回のような土地徴用をめぐる地方政府と住民の確執は地方官僚の不正・腐敗構造が元凶で氷山の一角とみられており、中国全土に巣くう深刻な難題だ。(香港・深川耕治)

 中国では電力供給不足に伴い、広東省では二〇二〇年までに新たに三基(陽江、韶関、汕尾)の原子力発電所の建設が計画され、汕尾市東洲村にも風力発電所の建設が予定されていた。発電所建設をめぐり、地元村民と武装警察隊が衝突して死傷者を出した同事件では建設計画が出されて以降、一貫して反対していた地元住民が、発電所建設用地として徴用された土地の補償額が少なすぎると反発し、折り合いがつかず紛糾。


 未解決のまま、地元政府によって強制着工しようとしたことに、住民側が徹底阻止しようとして武装警察隊とにらみ合いとなり、住民らが武装警官の銃撃で死傷した。

 衝突での死傷者数は広東省政府の情報では死者三人、重軽傷者八人だが、香港誌「亜洲週刊」(十二月二十五日号)が現地村民の話として伝える情報では、少なくとも死者十四人、重軽傷者五十人超となっている。


 建設予定の大型風力発電所は広東省の十大建設プロジェクトの一つで七億㌦を投じて汕尾市中心部から南へ二十㌔に位置する東洲村(人口一万人)に建設する計画。建設予定地は村民の耕作地、山地、湖のエリアで約四千人の農民が地元政府による強制的な土地買収によって「失地農民」になってしまう計算だ。


 村民らの主張では、少なくとも二億元(一元=十四円)の耕地補償費が村民に支払われず、地元政府の官僚らが着服・横領しており、発電所建設以外にも発電所職員用宿舎の建設投資費三千九百三十六万元についても、土地を提供した村民への利益還元が必要でありながら補償費として支給されないままだという。


 村民らは代表を立てて昨年から地元政府幹部に不公正を直訴し続けたが無回答。今年六月以降は建設予定地に竹のバリケードを張り巡らし、毎日、監視して建設開始を阻止してきた。十二月六日午後、武装警察隊を含む警官約五百人が建設予定地に強制的に乗り込み、阻止しようとした村民三人を逮捕。七十代の老人を含む十数人の村民を殴打した。その後も、約千人に増員された武装警察隊と村民らはにらみ合いを続け、武装警察隊は催涙弾を投げ込んだり、約三時間にわたって自動小銃を乱射し続け、村民十四人以上が死亡、五十人以上が重軽傷を負った。


 海外メディアから「天安門事件以降、初めて武装警察が国民に銃口を向け、大量銃殺した事件」と非難されたこともあり、現場の武装警察隊を指揮していた公安副局長が検察当局に拘束され、政府は現場への出入り規制を強化し、報道を封殺するため火消しに必死。だが、天安門事件の再評価を求める知識人らがネット上で抗議活動を行い、公民権の徹底調査を求めている。


 農村部の土地徴用をめぐる村民と地元政府の補償費をめぐる衝突事件は、地元政府官僚が土地買収費の着服・横領が主要因で、官僚腐敗は深刻。汕尾での事件は海外メディアにまで報道された氷山の一角にすぎない。地方住民による同様の抗争事件は〇三年で五万八千件、〇四年で七万四千件と年々増加しており、〇四年七月に発生した河南省鄭州市師家河村の流血事件、〇五年には安徽省池州の大規模騒乱事件、広東省広州市番禺区太石村の役人罷免による衝突事件など続発し続けている

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2005年12月27日 14時42分51秒

中国脅威論/的確に認識し適切な対応を

テーマ:今日の社説

 麻生太郎外相の「中国脅威論」が非難を浴びている。その非難の論拠は、日本が中国を脅威と見ることは日中両国の対立を増大させるから不適切というものだ。国際情勢認識について初歩的な間違いを犯しているといえる。


能力・意思への評価必要


 麻生発言に先立ち、今年の防衛白書では中国の軍事力増大について注意を喚起しているし、また前原誠司民主党代表も米国で中国脅威論を表明している。冷戦下では、国会で政府当局者が「ソ連の脅威」について口にすることは禁句とされた。時代が移り、今は「中国脅威論」を口にすることがはばかられる状況になっている。


 だが、あらゆる政策は内外情勢の的確な認識を踏まえて策定されるものであるから、その情勢認識が間違っていれば政策も不適切なものになる。今や中国の核・通常軍事力の増大は世界的に注目を浴びている。その脅威をもろに受けている東南アジア諸国はむろん米国でも、急速に中国脅威論が高まっている。そこでは中国の脅威の有無ではなく、そのレベルが問題とされている。


 防衛白書では、冷戦末期になってやっと「潜在的脅威」という表現が使われた。「脅威」なる概念はもともと潜在的なものであるにもかかわらず、である。だが、「脅威」が顕在化した時、それは武力行使という形をとるのであり、それはもはや、脅威ではない。


 山崎拓自民党前副総裁は、脅威について「侵略の意図と能力を持つこと」と説明している。だが、脅威は「軍事能力」「使用意思」の二要因だけでなく、この「二要因に対する評価」も不可欠な要因である。いかに軍事能力やその使用意思が高くても、それらを非常に低く評価すれば、脅威も非常に低くなり、取るに足らないものになる。あるいは、軍事能力、使用意思について認識することを拒否すれば、脅威は全く存在しないことになる。


 中国脅威論への反論の多くは、中国は平和愛好国家であるとの大前提に立っている。あるいは、「中国の軍事力行使の意思は分からないから、脅威と言うべきでない」というものだ。個人の場合と違って、国家の行動は比較的に理解しやすい。特定国家の行動様式はその国の歴史をひもとけば明らかになる。


 漢民族が中心となり五十五の少数民族を支配下に置いている中国は、現在、世界最大の植民地帝国である。共産主義中国建国以来、チベットなどを侵略して領土に併合し、ベトナムに「教訓を与える」(”小平)と称して戦いを仕掛けたこともある。インドやソ連とも武力紛争をした歴史がある。


 また、冷戦後、核保有国は核戦力の規模を縮小したが、中国のみは質量ともに増強し続けている。先般の対米核攻撃について触れた朱将軍の発言も、核戦力の拡充を受けたものである。公表国防費の年率10%以上の伸びは、これら軍拡を象徴しているといえる。


 一方、台湾への武力侵攻の威嚇を公然と行い、南シナ海における島嶼(とうしょ)を次々に占拠し、軍事基地化している。先にわが国の領海を侵犯しながら、謝罪もしない。また、わが国の尖閣諸島周辺で海底油田の埋蔵が確認されると、その領有を主張し始める。



必要なら軍事行使する国


 過去の共産中国の歴史を顧みれば、対外政策上の必要があれば軍事力行使をいとわない国である。今日本にとって必要なことは、中国の脅威に目をつむることでなく、それを的確に認識して適切な対応策をとることである。


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2005年12月26日 19時04分16秒

幼児殺害事件で考えるー携帯電話の有害サイトから子供を守る

テーマ:教育―全般

子供を襲う携帯有害サイト
石川県野々市町―下田博次・群馬大学教授がフォーラムで警鐘
親の監視届かずのめり込む/「保護者が賢くなるべき」

 インターネット接続型携帯電話による児童・生徒を巻き込んだ事件が多発している。保護者が通信手段として与えた携帯電話で子供たちが容易に有害情報に染まっていく。このほど、石川県野々市町でインターネット・携帯電話と大人の役割を考える「子どもセーフティフォーラムinいしかわ・ののいち」が開かれ、子供たちを取り巻く恐るべき実態が報告された。識者は「携帯電話を与えた保護者はもっと賢くなってほしい」と警告を発している。(金沢支局・日下一彦)


 「携帯電話の小さな画面の背後には、保護者の知らない有害情報があふれており、子供たちは四六時中、それに触れることができる」


 ホームページ上で、子供のインターネット利用の問題に取り組むNPO「ねちずん村」を主宰する下田博次・群馬大学教授の基調提案で衝撃的な報告が行われた。


 下田教授は大学院のゼミ生らとともに、JR高崎駅前などで三年前から中学、高校生に携帯電話の利用状況を取材し、FM群馬で放送してきた。


 携帯電話による事件は、出会い系サイトを介した援助交際など、その危険性がこれまでも縷々(るる)指摘されてきた。だが、最近はより過激化し、子供たちに襲い掛かっている。


 同教授によると、①一緒にカラオケに行く相手探し②出歩いた帰りに車で送ってくれる人の手配③高級料理のフグを食べさせてくれる人の募集④話し相手や癒(いや)してくれる人の発見――など、驚くような項目まで請け負う携帯サイトがある。


 女子生徒が、不特定多数の大人に向けて情報発信すると、瞬時に連絡があり、彼女たちは労せずに要求を満たすことができると言うのだ。現れる大人たちは一見、やさしそうな素振りで対応。しかし、最後に恐喝、売春、殺人事件にまで発展するケースは数え切れない。こうしたサイトにアクセスすることで生じるモラル低下も深刻だ。


 調査を始めたころは、援助交際している女子生徒に「あなたの娘が同じことをやろうとしたらどうするか」と問うと、「絶対反対する」との答えが圧倒的だった。最近では、「子供は子供で(援助交際しても)構わない」との回答が増えてきた、と下田教授。


 安易に「性」を扱う風潮が人間の基本的な道徳心を蝕(むしば)んでいるのだ。


 有害情報は、出会い系サイトからのみもたらされるのではない。ネット上の「遊び場」が多様化し、ゲームやプリクラ交換、少女たちの変身願望を実現するサイトが急増中だ。「ふみコミュ」「ハンゲーム」「カフェスタ」などのサイトが人気を集めている。例えば、「ふみコミュ」は「女の子のホームページ大賞」と銘打っている。その画面を見ると、少女雑誌のようにカラフルで、「チャット」「プリクラ」「メル友」広場など、彼女たちの好奇心を誘う“窓”が目白押しとなっている。


 中には、無料で同様のサイトを装いながら、アクセスしていくうち、仕掛けられた「落とし穴」や「ワナ」にはまり、架空の使用料を請求されるケースも少なくない。判断力が幼い彼女たちには、危険度の見極めがつかないのだ。


 また、子供同士の情報交換で、チェーンメールによる陰湿な「いじめ」が繰り返されたりする。女子生徒が更衣室で着替える同級生を携帯で盗撮し、その筋の雑誌に投稿して、遊ぶ金を稼いでいたケースもあった。


 親が子供に通信手段として携帯電話を与えても、子供たちは保護者の頭越しに有害情報を入手し、危険な大人とのコミュニケーションで闇に入り込んでいく。CDや本のみならず、薬物や凶器がネットで購入される。コンビニで決済すれば、購入の有無さえ保護者には分からないのだ。


 下田教授は「自宅のパソコンだと、画面をのぞけば子供たちがどのように利用しているか判断できるが、携帯電話は真夜中、布団の中でも操作できる。外で使えば、保護者は全く干渉できない。有害情報の被害者が、自分でも気付かないうちに共犯者になっていることもある」と警告する。


 その上で「有害情報からわが子を守るには、学校の指導に任せていても限界がある。親が危険な実態をよく知って子供に教え、彼らの判断力、自制力を養っていくしかない」と訴えている。


 「ねちずん村」では、ホームページ上に危険サイトを疑似体験できるコーナー(無料)を設けている。保護者が子供たちと共にそれを使って、いかがわしいサイトに近づかないよう学習できるシステムだ。親子で、こうしたサイトを大いに利用し、ネット社会の危険を回避する知恵やモラル、ルールを身に付けたいものだ。


 同フォーラムではまた、茨城県PTA連絡協議会による保護者への啓蒙活動や、地元・野々市町の「小中学生は携帯電話を持たない」取り組みなど、先駆的な活動が紹介された。

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2005年12月26日 18時43分31秒

京都議定書後/米国を含めて解決の道筋を

テーマ:今日の社説

 今年は、地球温暖化防止の動きの中で世界にとって重要な年となった。二月に米国抜きで京都議定書を発効させ、十二月に京都議定書後(二〇一三年以降)の温暖化対策の対話を〇六年から始めることで米国を含む締約国が合意したからだ。


米が京都体制にとどまる



 〇六年からの対話開始にこぎつけたのが、今月十日に閉幕したカナダ・モントリオールでの気候変動枠組み条約と京都議定書締約国会合である。


 この会合で、〇一年に京都議定書からの離脱を表明以来、国際的枠組みに反発してきた米国が、議長国カナダの妥協案を土壇場で受け入れ、行動計画の採択となった。もとより決裂回避の妥協案である行動計画にある協議開始は、将来の削減約束に直結しない。


 そうだとしても、一三年以降も「京都体制」存続が確認され、「対話の場を設ける」という緩やかな内容で話し合いが行われることは、米国の京都議定書復帰を可能にする糸口となるもの。温室効果ガスの排出量が最大の米国が京都体制に踏みとどまったことは、一つの前進である。


 地球温暖化防止という地球規模での環境対策のため、二酸化炭素(CO 2)など温室効果ガスの排出削減を先進国に義務付けた京都議定書は、〇八年から一二年の第一約束期間を定めたものである。従って、世界が第一約束期間からバトンを引き継ぐ一三年以降に、どのような枠組みを構築できるかは、これからの最重要課題だ。


 米国の議定書への復帰や、米国が議定書離脱の理由とした中国やインドや途上国などが排出削減義務を負わない問題なども、これから二期目に向けて粘り強い話し合いを積み重ねていく中で、解決の道筋を付けていく必要がある。


 今回、米国が京都体制にとどまったのには、幾つかの点が指摘される。


 カナダの妥協案が、緩やかな玉虫色の内容で米国にも受け入れやすかったことが一つ。日本をはじめとする各国や国の利害を超えて活動する環境団体の働き掛けに加えて、足元の米国内でも州や市レベル、草の根運動で温暖化防止に取り組む活動の広がりが無視できないまでになっている。


 日本と欧州連合(EU)は連携して、引き続き粘り強く米国政府に京都議定書復帰を促す働き掛けをすべきである。


 もう一つは温暖化防止の必要性が一層はっきりし、その取り組みの遅れがビジネスと技術開発に乗り遅れることにつながりかねない客観的情勢になってきたことだ。


 ブッシュ米大統領の対策乗り出しの出遅れが批判を受けた相次ぐハリケーン被害は、温暖化による具体例として語られた。ハイブリッド・カーの需要も、省エネ・温室化防止と結び付けて人気を博している。クリーン開発メカニズムや排出権の売買取引など、温暖化防止ビジネスも、京都体制の枠組みの中でビジネスとして具体的に進み出している。


 こうした動向に対し独自路線に固執すれば、ビジネスや技術開発から取り残される恐れもあることを感じたからにほかならない。


止まらぬ温暖化防止の流れ


 一方、会合では、議定書で約束した先進国のCO 2排出削減の履行を監視する「順守委員会」の設置を決めるなど運用体制が整い、ようやく議定書が動きだしたことも大きい。温暖化防止に動きだした世界の流れは、もう止まらない。京都議定書の第二期に向けた道は、決して平坦ではないものの、第一歩を踏み出したのである。


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2005年12月25日 17時24分44秒

科学技術計画/科学立国へ青写真を示せ

テーマ:今日の社説

 来年度から五年間の科学政策の在り方を決める内閣府の第三期科学技術基本計画が固まった。来年早々、小泉純一郎首相に答申され、三月にもその内容が決定される。今回の基本計画は、「国民に支持される科学技術」を標榜(ひょうぼう)しているが、具体性と展望に欠ける。産業活動を活性化させるもっと力強い政策が欲しい。


過去の施策の延長にすぎぬ


 同計画では、「世界的な科学技術競争の激化、少子高齢化、安全と安心の問題や地球的課題に対応する上での科学技術の役割」を踏まえ、その政策の核心に「社会・国民への成果還元」「人材育成」を挙げている。その上で、「飛躍知の発見、発明」「科学技術の限界突破」「環境と経済の両立」「イノベーター日本」など、六つの大目標を前面に出して説明を加えている。


 確かに、科学技術の重要性についての解説には詳しい。しかし、その課題を踏まえた政策案の中身は、予算配分の重点化や施設整備の必要性、大学など研究機関の研究者の処遇への配慮を指摘しているだけだ。これでは過去の施策の延長にすぎない。


 一九七〇―八〇年代の経済の高度成長期と違って、現在、日本を取り巻く国際的環境はかなり厳しい。そのため、日本が取り組むべき具体的技術や、その発展方向もなかなか見えてこず、総花的な提案にならざるを得ないのも一応理解できる。


 しかし、一方で、大学発のベンチャーが創出されつつあること、新たな「産官」共同の芽も見え始めているなどの新しい動きもある。政府は産官学を一つにまとめ、率いるための技術投資の具体的な方向を打ち出すべきだ。


 六〇―七〇年代、半導体とコンピューターなどハイテク産業が日本に定着し、技術立国としての面目を施した。その際、政府は産業界との情報や戦略の共有化を密にし、日本の取り組むべき産業政策の現実的な立案で強力な指導力を発揮し、それが奏功した。


 また、わが国は戦後、エネルギー源の確保、また福祉国家としての長期展望を実現するため原子力開発が国の基本政策として認められ、推進されてきた。これも国の主導で行い民間が追随して成功した例だ。

一方、小渕恵三首相の時に提唱された「二十一世紀に向けた新たな成長産業を育成するための産官学共同研究開発計画」のプロジェクトで、①情報化②高齢化対応③環境浄化――に対応して、重点的な研究投資を図ってきたライフサイエンス(生命科学)やIT(情報技術)、環境・エネルギーなどの分野で、着実に業績を残している企業も出てきた。


 かつてわが国では、官民が協力して、ハイテク技術の方向を見定め、日本が取るべき産業政策や企業戦略が実行に移され、大きな成果を収めてきた。生命科学や環境分野の技術で、政府はいかに主導力を発揮して他国との競争に打ち勝つか、計画内容にはそういった決意を十分込めるべきだ。



官民は十分に意思疎通を


 米国を例に取れば、国策的なテーマとして、宇宙開発や情報、通信技術関連で所期の目的を達しつつある。時代を切り開く明確な青写真を国が提示し、国民の力を集約する主導力を発揮したからだ。


 日本の場合、バブル崩壊後、政府と企業間の意思疎通が十分でなく、結果的に産業、科学技術政策について、具体的で力強いものが欠けている。その点を反省し考慮した内容を、基本計画に盛り込むべきだ。

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2005年12月23日 18時11分43秒

拉致問題/北は国連決議に耳を傾けよ

テーマ:今日の社説

 国連総会は日本人拉致問題を含めて北朝鮮の人権侵害を非難する決議を採択した。欧州連合(EU)や日米などが提案したもの。国連はジュネーブの人権委員会と総会の人権委員会で、北の人権侵害を「組織的で広範囲なもの」として外国人拉致、政治犯収容などを非難する決議を採択してきたが、総会での採択は初めてだ。

 北は国際社会の意思表示を重く受け止め、国連機関などの自由な立ち入りを全土で保証するなど誠意ある対応を示すべきである。

中東、欧州などにも被害者


 北の外国人拉致が、日本人だけを対象にしたものでないことが明らかになった。拉致被害者、曽我ひとみさんの夫であるジェンキンスさんの本の出版を機に、被害者が日本人、韓国人のほか、タイ人やマレーシア人などの東南アジアや中東、ヨーロッパの人々にまで広がったのである。


 工作員の現地人化教育が一九七六年初めに指令され、語学教育などのために外国人が拉致されたようだ。ここで見逃せないのは、拉致を含めた国家犯罪を犯罪と思わない北の思考パターンである。


 北の指導原理である「主体思想」は「人間は最も発達した物質的存在であり、物質世界発展の特出した産物」としている。人間が物質的存在にすぎないとすれば、精神的存在であるための証しである規範としての良心などは認めない。善悪の基準は共産主義国家の国是に従うか否かで決まる。それ故、独裁政権の下、大韓航空機爆破事件のような大量殺人や政治犯の大量投獄が日常茶飯事となる。


 六カ国協議の年内開催が危うくなっているのは、北が米国による対北「金融制裁」を非難して態度を硬化させているためだ。米国の制裁は北が偽ドル札作りを行い、マカオの銀行を資金洗浄に利用している疑いが出てきたからだ。このほか、麻薬密輸など北の国家ぐるみの無法行為は数多くあり、米政府の言う「ならずもの国家」であることが暴露されている。


 そこで注目されるのは、ブッシュ政権との価値観の非対称性だ。同大統領が北の人権侵害を憎み、拉致問題で日本を支持しているのは「人権は創造主から与えられた人類の奪うことのできない普遍的権利」(米独立宣言)という伝統的信念からだ。善悪は国が決めるものという北と、人間を超えた存在を善悪の根拠とする米国との決定的相違がここにある。


 政府が拉致問題の交渉役として人権担当大使を任命したのは賢明だ。ブッシュ政権も北の人権問題を担当する大統領特使を新設している。拉致問題の解決を図るには、拉致被害者の捜査・調査の推進と、体制整備により拉致問題の解決を求める国際的協調体制を強化することが重要であるからだ。


 中国、ロシア、ベトナム、イランなどが決議に反対した。人権問題を抱える共産主義国か権威主義の国が多い。日本よりも拉致被害者の多い韓国が棄権に回った。盧政権が人権問題よりも北との融和を優先させているためだろう。


国家犯罪を正当化できぬ


 国連の北代表は「日本が朝鮮半島を支配した四十年間の拉致は解決されていない」と反論したが筋違いだ。日朝平壌宣言で、わが国は「過去の植民地支配を反省し、お詫びの気持ち」を表明し、懸案解決後の経済協力を約束した。植民地支配と拉致の相殺論は時代の相違を無視したもので、過去はこうだからといって現在の国家犯罪を正当化できない。二十四日から北京で日朝対話が行われるが、われわれの常識が通じない国であることを考えて交渉に臨むべきだ。


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2005年12月22日 15時06分32秒

内閣制度120年/政党の政策力向上で未来開け

テーマ:今日の社説


 内閣制度が二十二日、創設百二十年を迎えた。わが国の近代化と繁栄を担った国家運営システムとして果たした役割は大きく、今後も議会制民主主義の下で内閣制度の発展を期したい。そのためには、参政権を有する国民一人一人の政治に対する質の高い関心が大切だ。民主制において政治は世論を反映するからだ。

民間人が力持つ政権に


 明治維新の際に五箇条の御誓文で示された方針に従って設けられた太政官制度に代わって、明治十八年(一八八五年)に内閣制度が設けられた。その四年後には明治憲法が公布された。首相任命権は天皇にあり、立憲君主主義を取り入れ、国力を蓄えてきた。


 明治期は伊藤博文初代内閣総理大臣(首相)以来、藩閥内閣が続いたが、その脱却は大正時代の原敬首相による政党内閣の誕生によって成された。しかし、大正デモクラシーの世に活発化した政党政治も、昭和七年の五・一五事件で犬養毅首相が凶弾に倒れ、政党内閣は潰えた。政治家を襲うテロは内閣制度にとって、大きな苦難だった。


 その後、翼賛体制が確立し軍部内閣となった。戦時下の“物言えぬ時代”を招き、中野正剛など、抗する者は自刃に至った例もあった。また、同盟を組んだドイツにおいては民主的なワイマール体制から選挙を通じてナチス独裁に至った。これら昭和初期の政党政治の崩壊は、戦争で多くの犠牲者を出し国土を焦土とする代償を強いることになった。


 敗戦後、現憲法で議院内閣制度が確立され、選挙で選ばれた国会議員が国会での投票で首相を指名し、首相が国務大臣を任命して内閣を組織するようになった。

 議院内閣制を担うのは政党であり、レベルの高い政党同士が切磋琢磨して形成された内閣が日本を運営することが望ましい。いかに政党政治を健全に発展させていくかが重要だ。


 だが、戦後は官主導政治の流れが定着している。独立回復を果たした吉田茂首相は外交官出身で、政党人よりも若手官僚出身者を登用した。昭和三十年(五五年)に党人派主導で保守合同し、自民党長期政権がスタートしたが、岸、池田、佐藤と三代十五年に及び官出身の首相が続いた。


 政策は官に任せ、議員立法よりも政府提出の法案が圧倒的に多く国会に提出されている。復興期に国家意識に支えられた官僚らの果たした役割は一定の評価ができるが、実質的な「政」主導が疎かになった点は否定できない。


 現在の小泉純一郎内閣では、与党の存在感が低下した。代わって政策立案では民間人による首相の私的諮問機関が圧倒的に力を持ち、上意下達の一方的な手法が目立つ。郵政民営化問題がその典型だろう。これは自民党自体にも責任がある。総裁選時の公約より、選挙対策を最優先したためでその矛盾は衆院解散と「刺客」選挙で噴出した。党内争点を国政選挙に訴えた首相は結果的に大勝し、与党の議会勢力は大きくなった。だが、数は増えても党の声が大きくならないようではいけない。


政治主導への移行が必要


 その一方で、小選挙区制度は政権公約を掲げた二大政党を形成し、政権選択が現実味を増す時代になっている。実際に政権交代が起きた際に、目に見える党の政策反映が起こり得るかは一つの焦点となろう。議院内閣制は議院内の政党の立法能力を高め官から政へと政治主導を移行させてこそ真価を発揮し得る。党としての結束を強め、政策立案能力をさらに高めて未来を切り開くべきである。


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2005年12月22日 14時58分47秒

元米中国大使が語るー米国の対中政策

テーマ:国際―米国・中南米

米国の対中国政策―ジェームズ・リリー元米駐中国大使に聞く
経済は協議推進、軍事は警戒
「平和的発展」は明白な矛盾


 ブッシュ米政権は国際社会で影響力の拡大を続ける中国とどのように向き合っていこうとしているのか。米国の対中国政策は、日本の外交・安保政策を左右する重要なテーマだ。東アジア情勢に詳しいジェームズ・リリー元米駐中国・駐韓大使(アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所=AEI=上級研究員)に聞いた。(聞き手=ワシントン・早川俊行)


 ――ブッシュ政権は現在、どのような対中政策を取っているのか。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は先月、封じ込め政策の「コンテインメイト」と、関与政策の「エンゲージメント」を合わせた「コンゲージメント」戦略だと表現したが。


 米中関係は非常に複雑で、一つの言葉に要約することはできない。その言葉は誤解を招く恐れがあり、危険だ。安全保障、対テロ、北朝鮮、台湾海峡、東南アジア、石油などあらゆるレベルの関係を見なければならない。


 米中関係はいつもそうだが、ポジティブな側面とネガティブな側面が混ざり合っている。今は為替操作や貿易赤字、市場参入、知的財産権など主要な経済問題に関して中国側と継続的に協議を行っている。その基本的作業をしているのが、ゼーリック国務副長官と戴秉国中国外務次官だ。米中関係はポジティブな側面が進展していると言った方が正確だろう。


 ――中国は十―二十年後にさらに影響力を拡大させることが予想されるが、米政府の長期的な対中戦略は。


 中国が十―二十年後に世界の大国になるという想定だが、中国がそうならない可能性も同じくらいある。われわれはその両方の事態に備えなければならない。


 中国は汚職や農民暴動など国内に大きな問題を抱えている。中国指導部にとっては非常に難しい状況だ。国内問題への対応に多くの時間を割かなければならず、そのために米国とも理解を深めることが重要になっている。


 米国の中国に対する立場は第一に、経済面で公平な競争環境を整えることによって、課題を前進させること。第二は中国軍の近代化を監視することだ。中国は米国と日本を照準にして軍事力の増強、近代化を進めており、これに備えることが必要だ。


 ――中国は自らのパワー拡大を「平和的発展」と呼びながら、一方で急速な軍備増強を続けている。


 軍近代化と「平和的発展」は明らかに矛盾している。彼らは軍近代化をゆっくり進めている、脅威にはならない、防衛的措置だと主張する。だが、潜水艦や航空機、巡航ミサイルなどを購入しているのを見れば、攻撃的な姿勢であることは事実だ。中国が発表する国防費も正確ではない。軍事力の増強を隠しておくことが、彼らの戦略の一つだ。


 ――中国は海軍力の増強に力を入れているが、将来、米海軍と海上自衛隊の脅威になるか。


 「脅威」という言葉は誤りだ。私の感覚では「挑戦」の方がふさわしい。中国が日本と米国に狙いを定めてシステムを発展させていることは疑いの余地がない。


 中国が優先順位を置いているのは海軍、戦略ミサイル部隊、防空の三つだ。おそらく西太平洋や南シナ海、インド洋への戦力投入能力を備えることを目指しているのだろう。中国はエネルギーのためにシーレーンを守らなければならないからだ。


 米国と日本のパワーの前では実際にはそれができないことは中国も分かっている。しかし、米国のプレゼンスが低下し、日本が衰退する可能性があるという前提で事を進めている。


中国は「戦後の日本」見よ
北核問題は金体制の維持優先


 ――中国は小泉純一郎首相の靖国神社参拝に反発しているが、日中間の歴史問題をどう見ているか。


 中国は日本を第二次世界大戦前の振る舞いだけで見ている。日本が一九四五年から約六十年間、近隣諸国に脅威を与えることなく、民主的に発展し、経済的にも成功を収めたことは考えていない。中国は日本のそうした側面に焦点を置くべきであり、一九四五年以前のことばかりに時間を費やすのはやめるべきだ。


 中国は靖国問題を、国民を動員したり、憤りを表明したり、韓国と共同戦線を張る上で好都合と考えている。つまり、靖国問題は彼らの戦術的な目的にかなっているのだ。


 その一方で、日本と中国の比較優位と相互依存に基づいた経済関係は強力だ。文化面でも日中は結び

付いている。四五年以降の日中を見ると、関係が進展した時期もある。七二年に国交が正常化した時がそうだ。だが、さまざまな理由でその時の関係は進展していないようだ。


 ――北朝鮮の核開発問題に関して、中国は北朝鮮に十分な圧力を掛けていないように見える。


 日本人や米国人の目ではなく、中国人の目で北朝鮮問題を見ると、中国が異なった立場からとらえていることが分かる。結論を言えば、中国は北朝鮮の現体制が存続することを望んでいる。


 どんなに不愉快であっても、中国は食糧やエネルギーを北朝鮮に支援し、生き延びさせている。それはなぜか。第一に、北朝鮮が崩壊すれば、四百万人の難民が中国東北部に流れ込み、中国を不安定化させる恐れがあるからだ。


 第二に、核兵器や生物・化学兵器、長距離ミサイルが北朝鮮軍の将軍たちの手に渡ることになる。金正日体制は少なくともコントロールを保っている。体制が崩壊すれば、これらの兵器を手に入れた軍部が、脅迫のために利用するかもしれない。これは中国が望まない事態だ。


 第三に、中国は米軍が駐留する統一コリアを望んでいない。一九五〇年に韓国動乱に参戦したのもそのためだ。中国は韓国内での影響力を高めようとしている。韓国に対する影響力が米国と同じレベルになるか、あるいは上回るまで、中国は北朝鮮問題で大きな譲歩はしないだろう。


 従って、中国は北朝鮮の大量破壊兵器保有に反対だと明言しながらも、最優先事項には位置付けていない。


 ――先月、北京で行われた米中首脳会談に対する評価は。


 首脳会談は米中関係を維持する上で非常に重要なものだ。それは一九七一年にキッシンジャーが周恩来と会談して以来、ニクソン政権からブッシュ政権に至るまでずっとそうだ。勝ったか負けたか、良かったか悪かったかは問題ではない。ハイレベルで関係を維持することが絶対に不可欠なプロセスなのだ。北京での会談もその一部といえる。


ジェームズ・リリー 

米中央情報局(CIA)情報分析官、国務省次官補代理(東アジア担当)、ジョンズ・ホプキンス大教授などを経て、駐韓大使(86~89年)、駐中国大使(89~91年)、国防次官補(91~93年)を歴任。現在、保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)上級研究員


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2005年12月21日 16時28分40秒

来年度予算原案/古い政策思想の投影を否めず

テーマ:今日の社説

 国の来年度予算財務省原案がまとまった。このあと復活折衝を経て閣議による政府案決定の運びになるが、復活折衝は単なる形だけの手続きになって久しい。財務省原案段階で政府案の全容がほぼ固まったといっていい。

 その財務省原案だが、一般会計も財政投融資計画も、緊縮的性格の強いものになっている。来年度は、地方財政もまた歳出抑制色の濃いものになる見通しで、国と地方とも財政は景気の足を引っ張る恐れが極めて強い。納得し難いとの批判も、やむを得ぬだろう。



納得できぬ緊縮的性格


 財務省原案では、一般会計の歳出規模を本年度当初予算より約二兆五千億円減の七十九兆六千八百億円、国債の新規発行は四兆四千億円減の二十九兆九千七百億円といずれも縮小、そのため、社会保障費が増えるにもかかわらず政策経費総額もまた減額になった。半面、税収は、増税と景気復調による自然増収とで、4・3%増の四十五兆八千七百億円強を見込む。


 政策費減らしと増税、いずれも景況に対してはマイナスに響く。予算原案がそのまま政府案になるなら、来年度は国の財政が国民経済の拡大を阻害するに違いない。


 もっとも、谷垣財務相だけでなく、小泉首相や竹中総務相、さらに与党自民党の執行部も、それは承知の上のことだろう。というのは、政府が十九日の臨時閣議で承認した来年度経済見通しでは、公共需要が国内総生産(GDP)の伸びを阻むものと想定しているからで、その限りでは整合性はあるといえる。だが、こうした政策路線の選択には、賛成しかねる。


 日本経済はまだ、長期の低迷からは抜け出したものの、力強さに欠ける。当然、GDPを押し上げる追加需要が、是非とも欲しい。ところが、政府は、財政を通じてそれを阻む。理解に苦しむことと受け止めざるを

得ない。


 もちろん、財政の累積赤字額が巨大で、再建を急がなければならないことは、認めよう。しかし、財政再建の力点は、国民経済の拡大成長を促進し、税の自然増収を実現することに重心を置く―これが王道であろう。


 大をなす企業は、借入金で将来を見据えた投資を積極的に進めることを、客観条件がいいと判断すれば、ためらうことがない。国民経済の運営もそれに似て、客観条件が好転したと認めることのできる今日の情勢下では、経済は静止しているとの錯覚を前提にしているかのような消極主義の財政政策では、著しく説得力を欠く。


 家計管理的な着想の域を出ない古典的な政策思想―これが、小泉首相はじめ政府と与党の中枢を支配しているように見受ける。後世代に国庫の巨大な債務の負担を課してはならぬというのは、確かに正論だが、それには、積極主義の経済運営がいうまでもなく望ましい。増税で民間の購買力を吸い上げつつ政策費も削るのでは、財政の再建は、かえって遅れよう。


 小さな政府を目指す―原則論として反対すべき理由は乏しい。が、それには、それだけの基盤条件整備を先行させるのが正しかろう。国民経済を安定的な拡大軌道上に乗せること、これを当面は急ぎたい。


金融政策に負担片寄る


 小泉政権の硬直的にすぎる経済運営で、内需の増勢は、大きくは望めない。潜在する米ドルの不安定性が顕在化するなら、景況の復調基調に異変が生じる可能性の存在も否めない。金融政策面からの景況下支えという局面が続く公算は、小さくはないだろう。いわゆるゼロ金利の長期化を懸念する。 


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2005年12月20日 14時37分25秒

中国有害汚染/対岸の火事と看過できない

テーマ:今日の社説


 中国東北部の化学工場で起きた爆発事故で松花江に流れ出した有毒物質がついに、アムール川のロシア領内のユダヤ自治州に到達したことが確認された。ロシア非常事態省は非常事態宣言を出すまでには至らないものの、来年春までに汚染状況を監視するセンターの設置を指示したという。今後さらに、日本海にまで汚染が広がる事態が懸念されており、早急な防止策を求めたい。


汚染帯は180㌔以上


 十一月半ば、中国石油天然気集団(CNPC)傘下の中国石油吉林石化公司(吉林省)の化学工場で大規模な爆発事故が起き、ベンゼンやニトロベンゼンなど高濃度の発がん性汚染物質約百㌧が松花江に流れ込んだことが、今回の騒ぎの発端だった。


 事故発生後、企業側が、河川汚染の事実を認識しながらも、事件をもみ消そうとしていた疑いが強まり、中国のマスコミによって厳しく非難される一幕もあった。事故以前から、松花江に刺激臭を放つ黄色の排水を垂れ流していたとの情報もある。中国は環境汚染対策に積極的に取り組むべきであり、情報をオープンにすべきである。


 化学工場の事故により汚染された水は下流のハルビン市へも流れ、水道供給が停止された。約二週間後には、河川を通じてロシア極東の村に有毒物質が到達したことが確認されたため、中国政府は駐中国ロシア大使を通じてロシア側に「深い謝罪の意」を伝えた。しかし、同大使は、通報の遅れに対して不満を表明し、早期の情報提供を中国側に求めたという。


 松花江は中ロ国境を流れるアムール川(中国語名称は黒竜江)につながっている。事故後、アムール川から飲用水を取っているロシア極東のハバロフスク地方は、給水車を手配するなど直ちに対応策に全力を挙げた。イシャエフ同地方知事は同川での淡水魚捕獲を全面禁止する通達を出した。


 被害を受けるのは周辺住民にとどまらない。世界自然保護基金(WWF)ロシア支部によれば、アムール川に生息する魚介類、川底の水生植物にも多大な被害をもたらし、同川の生態系に甚大な影響を与える危険があると警告を発し、調査を開始するなど、環境汚染に対する懸念が高まっている。


 近年、アムール川の汚染はひどく、七段階の水質基準で、同川は最悪から二番目の「非常に汚れた状態」になっていることが、今回の事故前にも指摘されていた。


 松花江上流に発する有毒物質の汚染帯は十二月半ば現在、百八十㌔以上に及び、その先端部分はユダヤ自治州のアムール川を時速一・三㌔のスピードで流れている。数日中にはいずれハバロフスクに到達する見込みだ。


 ハバロフスク地方を中心に百万人から百五十万人の住民がアムール川を取水源としている。隣接するユダヤ自治州でも約千五百人がアムール川の水を飲用している。


 事故発生後、同地方は、活性炭による浄水装置を設置したものの、汚染度合いによっては有毒物質の除去が完全に保証されないといわれる。



間宮海峡に到達は確実


 有毒物質はハバロフスク市を通過して、間宮海峡に達するのは確実とみられる。


 ハバロフスク水環境研究所の専門家によれば、冬にはアムール川の氷が海に流れ込んでおり、氷の中で濃縮された有毒物質が日本海やオホーツク海の環境にも影響を与える可能性が非常に高いという。日本海に漁区を持つ日本としても対岸の火事として看過するわけにはいかない。


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