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テーマ:
~第19回「記者を囲む会」講演要旨~
テーマ「中国の軍事的台頭と米国のアジア戦略」 講師:早川俊行氏(世界日報社ワシントン特派員)

<中国の軍事的台頭と米国のアジア戦略>

1.中国の対米軍事戦略
 中国は近年、軍備増強、海洋進出を積極的に推し進めている。もともと中国は大陸国家であり、陸軍中心だった。毛沢東の時代までは、「人民戦争戦略」を採用していた。すなわち敵軍を自国に誘いこみ、ゲリラ戦で敵を殲滅するというもの。しかし、それでは自国が戦場になるため、被害もリスクも大きい。1980年代の鄧小平時代から国土の内側ではなく、外側で敵を迎え撃つという戦略に転換。そういう流れで、海・空軍力を増強し、海洋への進出を進めている。中国海軍は作戦海域を近海と外洋の二つに分けている。沖縄、台湾、フィリピン、マラッカ海峡に至るラインを第一列島線、小笠原諸島、サイパンなど北マリアナ諸島、グアム、パプアニューギニアに至るラインを第二列島線と設定。第一、第二列島線までの制海権掌握を狙う。

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 中国の対米軍事戦略のキーワードが「接近拒否・領域拒否」(Anti-Access/Area Denial A2AD)戦略だ。具体的には、まず弾道ミサイル、巡航ミサイルの増強を急ピッチで進めている。では中国はそれをどのように用いるか。米軍の西太平洋の前方展開拠点は日本に集中している。例えば、神奈川県には第七艦隊が拠点とする海軍横須賀基地、沖縄県には空軍嘉手納基地があり、海兵隊も駐留している。もし中国が台湾を武力侵攻した場合、嘉手納基地から空軍の戦闘機が飛び立ち、空母戦闘群が介入してくる。そのような事態を想定し、中国は米軍の軍事介入を未然に阻止すべく、在日米軍基地にミサイルを撃ち込んでくるだろう。例えば、嘉手納の滑走路に撃ち込み、戦闘機が飛び立てないようにする。横須賀であれば、停泊中の艦船や補給・弾薬施設などを攻撃し、空母戦闘群の戦闘能力を著しく低下させる。すなわち、台湾海峡有事というのは、日本が戦場になる可能性があるのであり、それは非常に重い現実だ。

 続いて、中国が開発を進めているのが「対艦弾道ミサイル」だ。米軍の戦力展開の柱である空母の接近を阻止するために、航行中の空母、艦船を弾道ミサイルで攻撃するという野心的な兵器開発計画を進めている。“空母キラー”とも呼ばれる。通常の弾道ミサイルは、ロケット発射のように上空に打ち上げ、落下軌道に乗って標的を攻撃する。だが、洋上の艦船を攻撃する場合、発射から着弾までに標的は動いてしまう。これに対し、対艦弾道ミサイルは、誘導性能を高めて動く標的を攻撃するという極めて野心的な兵器だ。米軍は非常に警戒している。これが実戦配備された場合、その射程圏内では米海軍は自由な行動が出来なくなるといわれている。対艦弾道ミサイルがグアム付近まで到達すれば、第一列島線だけでなく第二列島線までが、米海軍の“立ち入り禁止区域”になる恐れがある。一方、高速で落下してくる弾道ミサイルに、レーダーで捕捉した情報を与えて誘導するという極めて高度な技術が要求されるわけで、中国には不可能との見方もある。ただ、それが実現できないとしても、米国に与える心理的なプレッシャーは大きい。冷戦時代にレーガンが打ち出した「SDI構想」が当時のソ連指導部にショックを与え、それが冷戦終結の引き金となったように、対艦弾道ミサイルは米国への心理的ダメージを与えている。

 次に「衛星破壊兵器」。中国は2007年に老朽化した人工衛星をミサイルで破壊する実験を行った。なぜ中国は衛星破壊兵器開発に力を入れているのか。端的にそれが米軍の弱点だからだ。米軍は情報収集、ミサイルの精密誘導、交信の9割を人工衛星経由で行っているが、半面、衛星を守る態勢が十分でない。人工衛星への依存度を高める一方、防御態勢が不十分なため、中国からすると米軍の戦闘能力を削ぐ格好の標的と映る。通常の戦力だけでは、中国は米国に太刀打ちできない。よって「非対称兵器」の開発に力を入れている。さらに、中国はサイバー攻撃能力にも力を入れており、米軍のコンピューターネットワークを混乱させることにより、戦力低下を狙う。

 中国は昨年、改修した旧ソ連製の空母「ワリャーグ」の試験航行を始めた。米国防総省の報告によれば、2015年までに国産空母を保有し、2020年までに、複数の国産空母を保有するとみられている。中国の空母は、米国や日本など強力な海軍力を持つ国から見れば、それほど脅威ではないとされる。格好の標的となるからだ。むしろ、空母の運用は非常に金がかかるので、他の分野に力を注がれるよりそのほうが都合がいいという日米当局者の声さえ聞く。ではなぜ中国は空母を持とうとするのか。対米・対日というより、南シナ海での領有権争いなど、対東南アジア諸国を睨んだ動きではないか。自衛隊関係者によれば、中国海軍内には、空母保有を主張する“空母派”と潜水艦を重視する“潜水艦派”があり、結局空母派が勝ったと聞いた。

2.米国の対中軍事戦略
 米国は2001年の9・11同時多発テロから10年以上対テロ戦争に莫大な資源をつぎ込んできた。イラク戦争が終結し、アフガン戦争も終盤。ようやくアジアへ目を向けることができる状況が生まれたため、昨年後半より、オバマ政権は「アジア重視戦略」を打ち出すようになった。昨年、ヒラリー・クリントン国務長官が「フォーリン・ポリシー」という外交雑誌に、「アメリカズ・パシフィック・センチュリー」(アメリカの太平洋の世紀)という論文を発表。この中で、クリントン国務長官は、過去10年間はイラク、アフガンに資源をつぎ込んできたが、これからの10年間は、アジアに資源をつぎ込んでいくと述べている。
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 中国のA2AD戦略に対し、米軍は具体的にどのように対抗しようとしているのか。それがAir-Sea Battle構想。冷戦時代に強力な陸軍を持つソ連軍に対し、Air-Land構想を打ち出した。それは、陸軍と空軍の共同作戦能力を高める内容だった。中国との戦争を想定すれば、陸上に部隊を派遣する可能性は低い。海洋こそ対中国の舞台となる。海軍と空軍の共同作戦能力を高める必要からAir-Sea Battle構想となった。昨年、国防総省内にAir-Sea Battle室が設けられ、その具体化の動きが進んでいる。その中身ははっきりしないが、二段階で設計されているようだ。まず第一段階は、中国が仕掛けてくる先制攻撃に耐え、米軍の戦力の被害を最小限に踏みとどめる。そして戦力を引き上げるなど体制を整えた上で、二段階目に巻き返し、相手に甚大な被害を与える。A2AD戦略の中国にAir-Sea Battle構想で対抗しようとする米国。中国は「陸」を舞台に攻撃を仕掛けてくる。それに対し、米国は「海」を拠点に対抗しなけければならない。陸のほうが動きやすいし、補給など後方支援でも有利。Air-Sea Battle構想が優位かどうかは議論が分かれるところ。

 海兵隊の拠点は沖縄に集中しているが、今後、グアムや豪州などにローテーションで分散していく方向性が示された。その理由の一つが沖縄は中国から近く、1000発以上ある短距離弾道ミサイルの射程圏内にあるためだ。沖縄に兵力を集中させることは、ミサイル攻撃に対して脆弱であり、リスクが高い。

 中国が海洋進出を進める理由は、何も台湾だけが目的でない。中東からのオイルルート(シーレーン)を自らの手で守れるようにしたい。今これを握っているのは米海軍であり、もし米国と戦火を交えることになったら、オイルルートが封鎖される可能性がある。ゆえにそのヘッジのために西太平洋のみならず、インド洋でもプレゼンスを高めている。この中国の動きを警戒しているのがインドだ。インドも海軍力の増強を進めている。中国とインドという二つの大陸国家が、同時に海を目指すという歴史的にも異例な状況が現出している。今まで国家間の競争や衝突の中心地は、ユーラシア大陸の東側が中心だった。だが、これが徐々に南側にシフトしてきている。米軍としてもユーラシア大陸の南側で起こりうるパワーのぶつかり合いに備えて、戦力を日本だけでなく、豪州などに分散させていく必要がある。海兵隊の分散は沖縄の負担軽減だけでなく、幅広い戦略的意味がある。オーストラリアは中国から遠く、ミサイル攻撃からの脆弱性の緩和が望める。さらにオイルルートであるマラッカ海峡へのアクセスがいい。

 クリントン論文に、「Indo-Pacific」という言葉が出てくる。今まで太平洋とインド洋は別々の海域として認識されていたが、戦略的には密接にリンクした海域であり、一つの統合された海域として捉えていくようになってきている。

 日本の役割はどうなるか。日本は中国に近く、弾道ミサイルの標的になりやすい。このため、日本の戦略的重要性は低下しているのではないかともいわれるが、必ずしもそうでない。オーストラリアでは逆に遠すぎるという面もある。既に横須賀や嘉手納などしっかりとした基地基盤もある。財政的な現実性も踏まえ、日本の戦略的価値が下がることはないだろう。Air-Sea Battle構想を発案した米シンクタンク「戦略予算評価センター(CSBA)」は、「米国がAir-Sea Battle構想に成功するかどうかは、同盟国としての日本の積極的な参加に大いにかかわっている」と主張している。民主党政権下で日米関係がギクシャクする状況が続いてきたが、野田政権になってようやく安定してきた。ネックとなってきた普天間飛行場移設問題と米軍再編を切り離したことで、普天間にとらわれず、広範な戦略議論ができるようになった。

3.経済・財政問題の影響
 中国の経済成長は鈍化ぎみ。今年2月22日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙は、中国の富裕層がアメリカに大量脱出しているとの記事を掲載。中国富裕層の間で社会不安定化への懸念が広がっている。米国にはEB-5というビザプログラムがある。米国内に100万ドル以上の投資をして、10人以上の雇用を生んだ人に、優先的にグリーンカードを発行するというもの。昨年、3000件近い応募があったが、その約8割が中国人だった。カナダにも同様のプログラムがあるが、応募が殺到したため上限を700にしたところ、そのうち697件が中国人からの申請だったという。記事は「経済が上向きだったらすべてが良かった。しかしそれが変わったら、また革命が起きるかもしれない」と、社会不安定化を恐れる富裕層のコメントを紹介している。また、中国は一人っ子政策の影響で、これから急激に高齢化が進む。そういう中で、これまでのように右肩上がりの軍事予算を維持できるのか。

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 一方の米国は巨額の財政赤字。国防費を大幅削減へ。米海軍は1990年の時点で546隻の艦船を保有していたが、現在は285隻。約半分だ。さすがにこれではまずいということで、2020年までに313隻まで増やそうとしている。しかし、オバマ政権が大幅な国防費削減を打ち出したため、その目標達成も難しいと言われている。従って、オバマ政権は「アジア重視」と言いながら、実際にはその裏付けとなる戦力には疑問符がつく。オバマ政権のアジア重視は「張子の虎」(Paper Tiger)と批判する米専門家もいる。

<アメリカ大統領選の展望>

1.オバマ大統領の再選戦略
 11月に行われる米大統領選は、民主党の現職オバマ大統領と野党共和党ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事の対決。昨秋、ニューヨークの金融街であるウォール街を占拠する運動を発端に全米でデモ活動が広がった。様々な勢力が合流したためにメッセージが分かりにくかったが、一つは「格差是正」だった。すなわち一握りの富裕層が莫大な富を握る半面、庶民は失業など苦しい生活を強いられていることへの不満だ。オバマ氏はこの動きに便乗するような形で、「エコノミック・フェアネス」(経済的公正)を再選戦略のキーワードに掲げた。庶民の格差への不満をくみ上げるポピュリズム的メッセージを発するようになった。これは、オバマ氏にとって二重、三重のメリットがある。一つは、ウォール街占拠運動の支持者の大半が民主党支持者。すなわち民主党支持者の不満をくみ上げることができる。二つ目は、オバマ氏は富裕層への増税を主張しているが、共和党がこれに徹底的に反対の立場。「共和党は金持ち優遇の庶民の敵」というレッテル貼りになる。三つ目は、ウォール街占拠運動では「We are 99%」というプラカードが目立った。すなわち1%の富裕層が莫大な富を握り、99%が残りの庶民という意味だ。ロムニー氏はその1%に入る大富豪。オバマ氏は庶民の味方とアピールできる。また、米大統領選はやはり現職が有利。特にオバマ氏は豊富な選挙資金を持つ。前回はインターネットを駆使し、小口献金をかき集め莫大な資金を得た。その資金ネットワークは健在であり、資金面でもオバマ氏が有利。

2.ロムニー氏の選挙戦略
 米大統領選は単純に得票数で決まるものでない。各州に割り当てられた代議員をどちらが多く確保したかで決まる。全米50州と首都ワシントンDCに計538人の代議員が割り当てられており、その過半数の270人を獲得した候補が勝利となる。2008年の前回大統領選では、オバマ氏は364人、共和党のマケイン氏が174人の代議員をそれぞれ獲得した。ロムニー氏は前回オバマ氏が獲得した364人の代議員から100人近くを奪い返さないと勝利はない。これは簡単ではない。

 ブッシュ前大統領の選挙参謀だったカール・ローブ氏が主張しているのが「3-2-1戦略」というものだ。「3」とは、もともとは共和党の地盤だが、前回オバマ氏に奪われたバージニア、ノースカロライナ、インディアナの3州を奪還する。「2」は、どちらが勝つかわからないスイングステートであるフロリダとオハイオ両州で勝利する。さらに、その他どこか1州を奪還する。合計すれば、270人を突破する計算になる。しかし、これはぎりぎりの戦いではないか。

 ロムニー氏の課題は、保守派の人気が今一歩であることだ。ロムニー氏が知事だったマサチューセッツ州は、米国で最もリベラルな州。この州の知事に当選するには、リベラルな政策をアピールしなければ票が取れない。このため、同性愛者の権利支持、中絶容認などを打ち出した経緯がある。大統領選では180度スタンスを転換し、保守派候補としてアピールしている。しかし、保守派はロムニー氏に懐疑的だ。共和党候補にとって選挙戦の歩兵部隊となる草の根の保守層を活気づけることは極めて重要な要素だ。その点で不安を抱える。さらにロムニー氏はモルモン教徒。日本ではこのことは大統領選の行方に関係ないとする論調も見受けるが、保守派の中核であるキリスト教福音派の間ではモルモン教への抵抗感が強い。世論調査では、モルモン教徒の大統領候補を支持しない人が2割に上る。これは無視できない。

3.外交政策への影響
 今回の大統領選の争点は経済問題が中心で、外交問題は位置付けが低い。伝統的に共和党は安全保障に強く、民主党は弱いと言われている。だが、昨年、オバマ氏は国際テロ組織アルカイダの指導者ビンラディン容疑者の殺害に成功し、リビアへの介入も結果的にうまくいった。これは得点になった。イラク戦争も終結し、アフガン戦争も終盤に向かっている。外交・安保では、オバマ氏にマイナス材料はほとんどない。よってロムニー氏は外交・安保を前面に掲げにくい状況だ。

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 ただし、中国問題はある程度争点となる。米国内では中国に対する警戒感が強まっている。米国ではメイド・イン・チャイナの製品が溢れている。ワシントンでお土産を買おうとしても、記念品などほとんどが中国製。米国の雇用が中国に奪われているといった漠然とした不安が有権者にある。従って、民主、共和両陣営が対中強硬姿勢を競い合う状況。ただ、次期政権がそのまま強硬姿勢を取るかどうかは別問題。歴代大統領は選挙中、中国にシビアなことを言っても、政権発足後は柔軟で現実的なスタンスを取ってきた。もしロムニー政権が誕生した場合、対中政策はどのような人物が政権入りするかに左右されるだろう。
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