日本最北端の夜
テーマ:ブログ10月8日夜
ぼんやりと窓の外を眺めながら夕方近くなると風はともかく雨は一時おさまったようだった、すかさずじいさんの自転車を借り近場の100円均一まで走る。風でまっすぐ走れない、この風本当に明日にはやむのだろうか、、、。心配しつつ100均でレインズボンを購入(荷物の軽量化のため上しか持ってきていなかった。)、明日出発するにしてもおそらくは雨も風もまだきついだろう、さすがに2日延期するほどの忍耐強さは持ち合わせていなかったので明日こそは多少の雨風も我慢して歩こうと万全の態勢を整えるのである。
風呂に入り、今夜の夕飯は豆腐鍋。皆この嵐で宿から出ることができないため昨夜と同じ面子である、温かい鍋をつつきながら実をいうと昨夜の酒がまだ少し残っていた俺は(朝はけっこう二日酔いでした。)酒もそこそこに窓の外を見やる、、、、、、、、、相変わらず風は強いが、雨はどうやら止んだようである。
と、唐突に思い立った。
「俺、やっぱり今日出ますわ。」
そこにいた一同は意外なことに賛同してくれた。昼間の嵐の中あれこれ悩んでいた俺を散々なだめてくれていたのでそれはもうあきらめだったのか、なんとなくの気持ちを察してくれたのか、、、、、、「気を付けて行ってこいよ。」と温かく送り出してくれる。二泊はしなかったものの晩飯までご馳走になったので一応宿代を払おうとするとじいさんはそれを制止し、「いらんいらん、気を付けて行ってこい。」と、一泊四食も頂いておきながら千円しか払わないのは申し訳なかったが、その力強い言葉に後押しされいざ強風吹きすさぶ暗闇に飛び出していく。時間は10時、途中寄り道するところもないのでまっすぐ歩いて日の出の時間に宗谷岬到着を目標にする。
寒い!暗い!!
そもそも夕方から暗くなってまで歩いた事は何度となくあったがいきなり真っ暗の中に飛び込んでいくのはこの長い旅路の間でも初めてのこと、そりゃそうだ、最後でもなけりゃこんな荒業はできまい。ダウンの上に着込んだレインジャケットと100均のビニールパンツのおかげで風は防げるがそれでもまっすぐに歩くことは困難、顔を風上に向けていると息をするのもままならずただうつむいて黙々と歩く。
風の具合で雲の流れが速い、時折月が出てはほのかに明るくなるのだがすぐさま隠れ、街灯もまばらな道はいつしか闇に包まれ始めた、、、行き交う車は20分に一台というところか。手のひらはかじかみ段々と感覚がなくなってきた、コンビニで買ったホッカイロをポケットの中で握り締め歩く。
日付が変わる頃遂に街灯はなくなり吹きすさぶ風で聴覚も麻痺、浜に打ち付けられた波の雫が風に乗って顔に降りかかるだけが唯一感じられることだった。耳に入る風の音が時折人の声に聞えビクッとする、、、(これは書いても仕方ないが、一瞬「エカッタ?」という声が草むらであろう方向から聞こえた、誰もいるはずがないのにあまりにもはっきりとした人の声だったためしばらくライトを照らし人影を探してみたがもちろん誰もいない、風の音だったのだろうか。「エカッタ?」は「良かった?」の意味なのか「絵、買った?」なのか、どちらにしてもいまいち意味をなさない言葉だっただけに気になる。)、、、怖いことを考え出すときりがない、ここで足がすくんでしまってはしょうがない、、、、暗闇をヘッドライト一つで歩き続ける、
……、ふとある異変に気付く。いつの間にか先ほどまでの凄まじい風が弱まり、真っ暗だった空には明るい月が顔を覗かせ始めた。
稚内中心地から宗谷岬までは27キロ。もう半分はきただろうかというところで遂に風が止み月明かりに照らされた道が見える、意外にも綺麗に整備された道だ。恐怖と寒さで固まっていた体が次第に解きほぐされていった、同時にこの1年8ヶ月の出来事が次々と頭によぎる、、、、、九州、、関西を歩いているときは想像だにできなかったこの最後の道が、関東、、、東北と次第に近づいてきた、そして今その道を歩いているのだ。もう3時間もすればゴールが見える、つらかったことも楽しかったことも全部ひっくるめて、その終わりがもう目の前にまできていた。
残り1キロ、、何も無かった道がにわかに街灯に照らされ始めた。その光の先に一際明るく光る灯台、あぁ、あそこが岬だな。様々な回想が脳裏をよぎるなか目に入った終点はあまりにも眩しい、夢にまで見た場所がすぐそこまできている。走りたくなる気持ちと反対に立ち止まりたい衝動にかられた、あそこまで行くともう終わってしまう、、、、予想もしない自分の感情に一瞬ためらうが歩を止めることはしなかった、、ただ噛み締めるようにゆっくり歩く。
やや空が白んできた頃だろうか、思っていたよりも大きな碑がそこにあった。
長い間共に歩いてきた重たいリュックをおろし一息つく。
10月9日午前4時38分、日本最北端宗谷岬到着。
感動の涙こそ流さなかったが、感謝の気持ちだけは忘れずにいつまでも持ち続けていきたい。
※追記
かなりセンチメンタルに書いてしまいましたが実際はどうだったのでしょうか?明け方ようやく最北端の碑が見えてきて、「おおぅ、やっと着いたぜ~♪」と鼻歌混じりにスキップする俺、、、と、暗闇の中からなにやらユラユラと人影が近づいて来るでないの!怖!変質者か!?怯えつつよく見てみると、この日仕事が休みで前日夜洞爺湖のイベントからその足で400キロを走り(車で)迎えに来てくれたアキコちゃんでした。あっちも暗くて誰だかわからずに恐る恐る近づいてきたらしい、怖いから!!まさか俺より先に着いてしまうとは思わなかった、でも本当にありがとう。
そんなこともあってかゴール時には感動の涙も忘れ爆笑してしまいました、あいにくはっきりとした日の出は拝めなかったものの次第に明るくなっていく岬の先っちょでひたすらニヤニヤしておりましたとも、そして最北端には数時間ほど佇んだ後ムックリをかき鳴らし一気に札幌まで突っ走ったのです、イエーイ終わったYO~~!!といった感じでした。途中で前夜のライダーハウスのじい様から電話(興奮してて挨拶に寄るのも忘れてしまっていた、ごめんなさい。)、無事到着したことを告げると皆様大興奮でした、どうもありがとう。
興奮さめやらぬまま夕方札幌到着、ゴールを祝うビールが恐ろしくうまかったのは言うまでも無く。。。
(左から帰りに食べて帰った炙りうに丼、増毛(ましけ)市の酒蔵にいた熊、増毛の駅、、、。増毛グッズは誰かさんへの御土産に。)
(※東京到着・完結篇へ続く。)












