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2009326日、朝日新聞の報道です。


○世界最古の鉄器、トルコで発見 ヒッタイト起源説覆す


中近東文化センター(東京都三鷹市)が調査を続けているトルコのカマン・カレホユック遺跡で、紀元前2100~同1950年の地層から、小刀の一部と見られる鉄器1点が発見された。鉄滓(てっさい)(鉄を生産・加工する時に出る かす)と、鉄分を含んだ石も確認され、鉄づくりが行われていたことが確実になった。

人工の鉄の利用は紀元前15世紀ごろに同じアナトリア半島のヒッタイト帝国で始まったとされてきた世界史の通説が書きかえられる。
鉄器は2000年の調査で出土したもの。折れていて、つなぐと長さ5センチほど。さびがひどいが、切断して断面をX線で調べると、鋭い元の形が見えた。片側だけに刃がある小刀の一部と見られる。鉄滓は1個で直径2センチほど。原料と考えられる鉄を含んだ石は2個確認された。……

赤沼さんは「原料も含め加工段階の違う鉄が同じ地層から発見されたことで、この遺跡で鉄の加工が行われたことに疑いの余地がなくなった」という。

(朝日新聞、渡辺延志)


ところがここで、情報の混乱が起こりました。朝日新聞のこの報道は、人間の手によって作られた「最古の《鉄器》」と言っていますが、《はがね》だとは言っていません。しかるに他の諸新聞では、この小刀ははっきり《はがね》と呼ばれているのです。たとえば、327中日新聞夕刊の記事がそうです。



世界最古の鋼判明

中近東文化センター 東京が調査しているトルコのカマン・カレホユック遺跡 紀元前 21001950の地層から小刀の一部とみられる鉄器が出土し、岩手県
博物館 の分析の結果世界 最古の鋼」であることが分かった。センターが 1994に同遺跡で発見しこれまで最古とみられていた鋼紀元前2018世紀を約200さかのぼることになる。同じ地層から
鉄滓(てっさい)(鉄の製造時に出るかす)鉄分
を含む石も見つかり遺跡周辺で製造された可能性が高まった。


《鉄器》とのみ記すのは朝日新聞と時事通信社です。前者は326午前31後者はその約10時間後の1312に、記事を配信しました。ところが、同じ1312

に記事を掲載した共同通信社は、この10時間の時差の間に情報を修正して最古の《鋼》」と明記し、この配信を受けた各新聞社――たとえば四国新聞、山陽新聞、熊本日日新聞、山形新聞、産経新聞ZAKZAK――はすべて《はがね》説を採っています。


冒頭の表ではNo.となるこの錆びた小刀が、最古の鉄なのは間違いないとして、それが果たして《良質の鉄》(はがね)なのか、それとも単なる《炉の鉄》(普通の鉄)なのか。これらの報道を見る限りは《はがね》であると考えたほうが妥当なのですが、それにしても、なぜ、このような情報の混乱が起こったのでしょうか。《はがね》と鉄滓(てっさい)が出土したとはいっても、そのことがすぐに《はがね》を意図的・恒常的に生産していた」ことにはならないと考え、報告者が控えめな言い方をしたのでしょうか。それとも単に、「世界最古の《鉄器》」というのが「世界最古の《はがね》製品」であると言いたかった報告者の意思が、朝日新聞の記者にきちんと理解されなかっただけなのでしょうか。

分析担当者の赤沼英男氏は、2009329アナトリア考古学研究所第19回トルコ調査研究会カマン・カレホユック遺跡第IV層文化期における鉄器使用についての報告を行なっていますが、それが報告書として活字化さればNo.世界最古の《はがね》」であることが学術的事実として明確にされるでしょう。



(C)Dr.Kazuko OKADA


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