【森野榮一のエコノぴっくあっぷ】(14)「非難の先」 森野榮一氏

2009-11-17 07:00:00 テーマ:【森野榮一のエコノぴっくあっぷ】

森野榮一のエコノぴっくあっぷ

第14回 「非難の先」

森野榮一氏(経済評論家、ゲゼル研究会代表)



週末はゆったりしたいが、忙しい一週間であったほど、取り残し、読み残した情報があり、まとめて読まざるをえない。不景気な話が多かったときほど、人間、元気がでる明るい話が欲しいものだ。しかしネットに溢れる情報はそうとはかぎらない。せめて落ち着いた議論がほしい。そういうときは英国のメディアから読むことにしている。


ちょうどオバマ大統領がアジア訪問する直前の12日(木曜)のガーディアンを見る。「輸出は中国を非難ーー米国の経済上の苦しみを中国のせいにするのはあまりに容易、本当の悪人はウォール・ストリートの銀行家たちと彼らの影響力」という記事がある。

http://www.guardian.co.uk/commentisfree/cifamerica/2009/nov/10/china-obama-trade-deficit


たしかに中国の人民元に対する切り上げ圧力やドルから離れて自由な市場性をもたせるべきだとの圧力はある。これを中国が聞き入れるかといえばすぐには呑まないだろう。ドルが下がるほど、人民元もドル以外の通貨に対して安くなるわけで、輸出の競争相手との関係上、有利だから、容易にそうした利点を中国が放棄するはずがない。IMFもアジアの通貨が全体的に安く国際的なインバランスの原因とみているようだが、主に人民元を念頭においているのではないか。強いドルを強調せざるをえないガイトナーも、そう言うことは間接的に「過小評価された人民元」に言及していることでもある。


これに加えて、中国が多額のドル準備をため込み米国を凌ぐ大きな力を持っているように見えることも米国の一部に懸念を抱かせ、そう主張する声もネットではとりわけ大きいものがある。それは中国がドルをダンピングし始めたらドル暴落になりかねないという懸念と裏腹である。いきおい中国を悪者にする論調が力を増すということになる。


確かに自国通貨が安くなれば輸出に有利で輸入には不利、輸入インフレの懸念さえ出てくるし、反対に高くなればその逆ということは単純な理屈。ドルの下落で米国の輸出が伸びれば、それは望むところだが、同時に人民元は切り上げて欲しいというのは米国の本音にみえる。米国にとっては財政赤字の問題と同時に貿易収支の赤字は大きな問題であるからだ。


そのためにはドルをいっそう輸出競争に勝てる水準に引き下げたいということになる。このことは米国の製造業者はよく知っている。しかし彼らの政治的影響力は大きくない。米国で影響力を有しているのは金融部門である。それはこの間の金融危機でどれほど彼らが優遇されたかを見ればわかる。


金融業者にとってはドルは強いほどよい。理由は簡単。海外で彼らが資産を購入するときドルが強ければそれだけ安く投資向けのなにかを購入できるからだ。加えて輸入品を安く購入できるからインフレを引き込む懸念も少ない。


米国内には金融部門とその他部門とで、ドルの価値を巡って利害が相克しているわけだ。

こうした状況のなかで非難される先として中国がもちだされる構図になっている。たしかに自由な交換性を人民元は欠いている。ドルが他国の通貨に対して安くなったように人民元に対してもそうしたいところかもしれない。


オバマは中国も訪問するようだが、どんな交渉をするのだろうか。

同記事はけっして非難される先として中国を見るべきでないとしている。それはこういう指摘だ。


「中国のドル建て資産の保有に関し、中国は10年物の財務省証券のような米国国債を大量に保持している。中国政府がこれらの多くを安く売り払うなら、それは米国で長期金利を上昇させるだろう。抵当金利やその他の長期貸出金利は、長期の財務省証券と一緒に動く傾向があるので、これは米国経済に明らかにマイナスの影響がある。


しかし、これはドル下落とは別の問題であると強調しなければならない。長期の米国財務省証券の中国による売却の脅威は懸念すべき何かだろうか?そうではない。


まず最初に、中国政府は、米国経済に害を与えたがっていない(まだ、米国は中国の輸出の約20%を吸収している)。中国が長期財務省証券をため込んだ1つの理由は、米国での2001~2007年の経済拡大期、輸出の伸びと需要を助けるために米国での長期金利を押し下げることであった。


エコノミストによっては住宅バブルを中国のせいにしようとさえした。これらの購買がバブル期、抵当金利を押し下げるのを助けたからだ(しかし、住宅バブルは過大評価されたドルよりも熟慮された米国の政策の結果であった)。


そうして、この不況の間、既にしているように連銀は、長期財務省証券や抵当金利の望まれざる上昇に対処することができる。


さらに、米国の財政赤字強硬派と別の恐怖を煽る人たちは、私たちがさらなる債務の蓄積を回避するために深刻な景気後退の期間、成長と雇用を犠牲にしなければならないと人々を説得する別の武器として米国債務の中国による蓄積を使う。


これも危険な誤解である。残念ながら、私たちの経済問題は合衆国で作られているし、それが修復されねばならないのはここ、ワシントンでである。」


外国への評価や批判はおおむね自国内の事情や対立が反映される。国際的な不均衡を改善するために中国に姿勢の変化が必要であるにしても、不均衡を作り出してきた原因や景気後退の原因は国内にもある。

この点を見忘れた議論やあるいはあえてそこから目をそらそうとする議論は注意して読む必要があろう。この間の金融・経済危機を引き起こし、その対策のために信じがたい公的債務を膨らまさせてきたのはどこか、だれもが知っているはずだからである。


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【森野榮一のエコノぴっくあっぷ】(13)「資産バブルの崩壊――トリックの代償」 森野榮一氏

2009-11-10 09:25:50 テーマ:【森野榮一のエコノぴっくあっぷ】

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第13回 「資産バブルの崩壊――トリックの代償」

森野榮一氏(経済評論家、ゲゼル研究会代表)



ドルが下方にスライドするなかで、コモディティバブルが進行している。それはドル基軸の危うさよりは次の経済崩壊への危うさだろう。いまドル安が続くことを予想することほどたやすいことはない。


なぜなら失業率が上昇しているときにFRBが政策金利を上げたことはないし、上げられるわけでもないから。誰もがほぼゼロの金利が維持され続けると見越している。


ドル安が続くということだ。


いきおいドル・キャリーをする向きにはこたえられない状況だろう。さすがにコモディティ・バブルは非鉄金属ではわずかに下がってみせたが、また反騰するだろう。ルービニがいうように、こうした局面のリスクはドルが反発するときだ。ドル空売りの流れがなんらかの理由で反転するとき、新たな経済危機が起きるかもしれないのだ。


先週、ルービニのフィナンシヤル・タイムズ掲載の論文、「連銀は新たな巨大バブルを提供」が目を引いた。( FTD.de | Roubinis Warnung: Die Fed sorgt für eine neue Monsterblase -)

http://www.ftd.de/politik/konjunktur/:roubinis-warnung-die-fed-sorgt-fuer-eine-neue-monsterblase/50032096.html


FRBのゼロ金利政策がドル・キャリーを発生させてきた。それは簡単にいえばこのようなものだ。


「0%のレートでドルを借りる。現地通貨より10~20%下がった将来のある時点でドルの買い戻しを計画する。そのカネはなんらかのリスク資産への投資に使う(その資産がドルのカラ売りに追いつくほど損をしない限り、投資家は勝ちだ)」

http://econompicdata.blogspot.com/2009/11/did-we-learn-anything-carry-trade.html


まさに投資家はマネー・ゲームに熱中してきている。


そんななか、ルービニの議論を取り上げて、マイク・ホイットニーが11月4日付けで、「ドルが立ち直るとき市場はクラッシュするだろう。」という一文を書いている。実体経済が悪いのになぜ株式や資源高なのかと疑問を抱かせる現実に明快な答えと、そこに含まれるリスクを指摘しているように感じた。

http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=15919


およそ下記のような議論である。一読に値する。


・・・以下引用


・・・連銀はドルを売り歩くのにネックラインを閉じてしゃなりしゃなり歩く女性を必要としない。必要なのは低金利だけだ。利率がインフレ率よりも低く抑えられたとき、連銀は借り入れに補助金を出している。このことは思われているほど理解するのが難しいわけではない。


もしあなたが私にちょうど90セント支払う代わりに、私があなたに1ドル支払うと申し出たとしたら、あなたは私からできるだけ多くのドルを購入するでしょう。連銀は同じようにしている。それは借り入れの誘因を作り出すことで市場の活動を生み出している。借り入れは投機を呼ぶ。


そして投機は資産価格の着実な上昇に至る。これがゲームが演じられる仕方である。連銀は自由な市場活動の偏りのない観察者ではない。連銀は市場を駆り立てる。金利を決めることで投機を煽り、行動をコントロールしている。


リーマン・ブラザースが昨年瓦解したとき、市場は歯止めなく落下していった。機敏な修正がパニック花盛りに変わった。バブルは弾け、融資における数兆ドルが瞬時に消え失せた。風変わりな債務証書の取引は一夜のうちに止まった。グローバルな急落が続いた。市場は崩壊したのである。しばらくの間、システム全体が崩壊するかもしれないように見えた。


連銀の緊急の介入は崖っぷちからシステムを引き戻したが、経済はいまだデフレで苦しんでいる。数十億の有毒資産がいま連銀のバランスシートにこびりついている。ドルは石のように落下した。


金融システムが破裂して信用が資本の穴のなかに吸い込まれるとき、経済は下方スパイラルへと向かう。ビジネスは在庫を削減し、労働者を一時解雇する。労働者は支出と借り入れを減らさなければならない。それは製品への需要を減らすことになる。これはいっそうの一時解雇につながる。これは政策立案者が回避を試みる悪循環である。連銀の議長、バーナンキが重砲を持ち出し、史上もっとも攻撃的な中銀の介入に着手したのはそのためである。


連銀は金利をゼロ近くに落とし、(債務を貨幣化する)量的緩和プログラムは実際に金利をさらに低く、およそマイナス2パーセントに押し下げた。


バーナンキは金融システムのあらゆる部門に政府保証をした。彼はその元々の価値の一部しか価値がない危険な抵当に全額のローンを提供した。市場はもはや連銀なしには機能しえない。連銀が市場であり、それは”回復”を語ることが愚かであることの理由である。回復の考えには需給に基づいてシステムが独立して立っていることが含まれる。しかし、いまのところ政府が需要を提供しており、これはいかなる市場も存在せず、回復もない理由なのである。


ゴールドマン・サックスのアナリストはこれをこう要約している。

「実質GDPのなかでどれくらいが財政刺激によっているか、またこれまでのところ刺激の効果に関して我々がどのあたりにいるのか。この際、正確な答えは不可能ではあるが、このリポートのいくつかの面で、二月央に策定された財政パッケージ、ARRA(American Recovery and Reinvestment Act)が第三四半期向けに報告された成長のほとんどすべてと見積もられる。」


プラス成長は政府支出が作り出した幻想である。経済はいまだ横ばいである。消費者支出や融資は鋭く退している。失業は着実に(緩慢なペースではあるが)上昇している。そして賃銀は30年ぶりに低下する機会にあり、低調である。デフレの圧力が出現している。


雇用なき回復”の話は作為的な紛らわしいものである。・・・


”雇用なき回復”はたんに常軌を逸した通貨政策によってもたらされた資産インフレを示しているだけである。波打つ株式が真の回復と混同されるべきではない。


連銀はきつい向かい風に直面している。低金利は意図しない結果をもちうる。ドル紙幣の”安さ”がドルをキャリー・トレード向けに資金提供する通貨にした。投資家は低コストでドルを借り入れ、それを使って外の場所で高利回りの資産を購入する。急速に拡大しているそのプロセスは経済学者のルービニがフイナンシアル・タイムスの論文でこう指摘するように危険に満ちている。


「三月以来、あらゆる種類のリスク資産で大規模な反発がみられる。・・・そして新興市場のあらゆる資産クラス(株式、債券、通貨)における大きな反発さえもみられる。同時に、ドルは急激に弱くなった。政府債券利回りは穏やかに上昇しているとしても、低く、安定しているのにである。・・・


しかし米国と世界経済が控えめな回復を始めているとき、三月以来資産価格は・・・連動して上昇してきた。・・・リスク資産の価格はあまりにも上昇した。マクロ経済のファンダメンタルズに比べてあまりに速く上昇してきた。


それでこの大規模な反発の背後にあるものはなにか。たしかにゼロ金利と量的緩和からの流動性の波によって助長されてきた。しかしこうした資産バブルを煽るより重要な要因は米ドルの弱さである。


それはあらゆるキャリー・トレードの母である。米ドルは連銀が金利を維持し長い間そうすると期待されているので、キャリートレードの資金源通貨となった。米ドルを空売りする投資家は高度なレバレッジを効かせて高利回りの資産やその他のグローバルな資産をを購入するが、ドル建てでゼロ利率で借り入れをしてはいない。彼らはマイナスの金利で借りている。


こうしたリスキーなゲームを演ずるどの投資家も天才のようにみえる。彼らが借り入れのマイナスのコストによって融資された巨大なバブルに乗っていてさえもそうである。


・・・こうした政策はグローバルな資産バブルを焚きつけ、それがまた新たな米国の資産バブルを焚きつけていく・・・


こうしたキャリー・トレードを焚きつける無謀な米国の政策は他国に金融緩和政策に従うように強いている。これは・・・短気利子率をより低く維持するものである。・・それでグローバルな資産クラスは日ごとに大きくなる。


しかしある日この資産バブルは弾ける。もし諸要因がドル安を逆転させ突然相場が上がるようになるなら・・投資家はドルの空売りをカバーするのでレバレッジを効かせたキャリー・トレードは突然、手じまいされねばならないであろう。・・・」


市場を観察する誰もが株式とドルの逆相関に気づいた。ドルが色あせるとき、株式が急上昇する。そしてドルが強くなると株は急落する。おそらくバーナンキがドルを印刷するのを止めるとき、ドルは逆コースをとり復活する。それは資産クラスすべてにわたるバブルを破裂させる次の厳しい調整の引き金となるだろう。


資産価格を引き下げ、再膨張させることでのバーナンキの成功は完全に金利操作と流動性注入に依存してきた。家計のバランスシートを修復し、生産を増加させ、総需要を強化するいかなる努力もなかった。それは幻想家の議長による賢明なるトリックであるが、それには代償がある。ドルが上昇するとき、市場はクラッシュするだろう。そしてバーナンキには責任があるであろう。


・・・引用終わり


バーナンキの危機からの脱出策は金利操作と流動性注入というトリック、しかしそれには代償がある。いかなる賢明にみえる策も隙がゼロではない。安いドルは投機に流れ、それが次のリスクを生む。それも経済が回復し強いドルの政策への変更がなされるようだと発生する可能性があるのだからやっかいだ。




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【森野榮一のエコノぴっくあっぷ】(12)「米国、景気回復しないわけ」 森野榮一氏

2009-10-27 07:00:00 テーマ:【森野榮一のエコノぴっくあっぷ】

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第12回 「米国、景気回復しないわけ」

森野榮一氏(経済評論家、ゲゼル研究会代表)



経済の先行きには無関心ではおれない。どうなるのだろうか。

ネットでは相変わらず、米国に多い破綻予言者やリバタリアン系、サバイバリスト系、ゴールド信奉者たちのドル崩壊の議論をみかける。


しかし昨年来の危機以来、通常ならざる局面が続くが、さすがに声高な議論が事実をほんとうに反映し、先行きを予測するものなのか、冷静な声も聞く。他方で、楽観的な見方も目にしはするが、言われるほどに回復がみられるわけでもない。


議論が錯綜しているとき、物事はカンタンに考えてみることも必要かもしれない。

そんな折り、先週土曜、24日付けで、BloggingStocksの記事を見た。


「2010年に経済が回復しないであろう10の理由」

http://www.bloggingstocks.com/2009/10/24/10-reasons-the-economy-wont-recover-in-2010/

というもの。


簡潔に経済回復が期待できないわけを十個挙げている。


「経済が回復していると思う?もう一度考えてみよう。景気後退と回復はV字型ではないだろうね。いちばんよくてもU字型、持ち直していくまでには時間がかかるということだ。しかしもっとありそうなのは、私たちがW型の景気後退と付き合っていて、それも二番目の足の終わり近くにいて、これから下降していく・・・そして経済がたとえ横ばいであっても、株式市場はほぼ確実にダウンするだろうし、そのとき雇用なき回復がどんなものかがわかる。だから統計が次の四半期に経済の回復をいっても、現実の世界は2010年を通して不況の痛みを感じるだろう。信じ切れないかい。ここに2010年に経済が横ばいか下降する10の理由がある。」


として、これらにつき、順次取り上げている。要点はこうだ。


理由1 劇的な富の損失。
「人々はいっそう貧しいと感じているだけではなく」、実際に貧しい。住宅価格の下落によって個人の資産は2010年に減少し続ける。住宅差し押さえは高水準のまま。これは住宅価格のさらなる引き下げ圧力になり、住宅保有者に資産の損失を経験させる。


理由2 雇用なき景気回復。
ウォールストリートのアナリストは「2010年あるいは2011年に失業率を13%と予想している。」こうした高失業率は賃銀を押し下げる。それは所得の減少につながる。


理由3 消費者はお金を使うことを恐れている。
「所得を失う恐怖が個人消費を押しつぶし続ける。」GDPの七割が消費なのだから消費の回復なしには景気回復はない。


理由4 変化する消費者の態度。
「消費者は支出に対する態度」も変えた。倹約が美徳になったのである。消費性向における変化は一時的なものではない。


理由5 貸し渋りが続くだろう。
1997年から2008年までの消費の伸びは住宅のエクイティ枠とクレジットカードで支払われてきたが、09年末には4兆ドルを超える与信枠の引き揚げがあるだろう。信用基準は高くなった。「大部分の人がお金を借りることができない。」これは2010年も続くだろう。


理由6 過剰生産能力。
需要に出合うことのない「ヒト、工場、商店などの過剰な生産能力がいたる所にある。」米国における工場の稼働率は最低水準にある。


理由7 ビジネスは支出しない。
消費が弱いのに投資需要は出てくるはずはない。


理由8 アンクルサム(米国)は私たちを救済しない。
連邦政府はすでに債務過多で、2010年には消費や投資需要を引き上げる手段をもっていない。


理由9 連銀も救済しない。
連銀はすでに金利をほぼゼロに引き下げているし、そのバランスシートは悪化している。改善の必要に迫られるだろう。


理由10 しっかり見回してみると。
周囲で景気のよい話をみることはない。


これらはおそらく多くの、ふつうの米国市民が感じていることだろう。複雑に物事を考えるのもよいが、現実はふつうの人間たちが作っていくものとすれば、カンタンな要点から事が見えてくるということもあろう。極端な破滅的事態にはならないかもしれないが、横ばいの停滞のなか景気後退感が深まる先行きにならざるをえないのではないか。そんな感じを持たされる一文であった。




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【森野榮一のエコノぴっくあっぷ】(11)「ドル安という本音」 森野榮一氏

2009-10-13 09:59:49 テーマ:【森野榮一のエコノぴっくあっぷ】

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第11回 「ドル安という本音」

森野榮一氏(経済評論家、ゲゼル研究会代表)



連休はよい日和りである。


先週は、火曜日のインディペンデント紙のロバート・フィスクの記事が話題になった。湾岸諸国が石油のドル建て取引を終わらせ、ユーロや人民元、日本円、ゴールドなどの通貨バスケットで置き換えるために中国やロシア、フランス、日本などと秘密の会合をもったというものだ。これはドルの凋落を囃す声を強めたようにみえた。


実際、落ちてくるはずがないと思っていた空が落ちてくるかのような話だから耳目をひく。最後にはIMFを国際的な中銀にしろという動きまで報じられる始末。


たしかに国際金融システムには改革が必要だが、そう事が一気に進むとも思えない。ドル安の進行のなかでドル基軸の終わりを考えたい向きがいる反面、相場をなさる方々には、逆に張る向きもいらっしゃる。たしかに相場だから、ドル高に振れる局面もあるだろうが、ここはひとつ国際経済の変化の先をどう考えたらよいのか、落ち着いて考えてみるにはよい時期かもしれない。ましてや時の政権が東アジア共同体だのと空想的な事を言って浮かれている国に居住していればなおさらかもしれない。


休日、落ち着いているときは、比較的に自分が好みとしているメディアの情報を読むことにしている。あくまで個人的に、これまでの体験でここの情報や主張はいいなと思っているに過ぎないものだが、後になってみるとやはりそうだったなと感じさせられる経験が個人的な好みを作るのに一役買っている。そういうメディアのひとつにテレグラフ紙があるので、ネットで電子版を開く。


「“通貨の健全性の軽視”は米国経済に現実的な危険をもたらすかもしれない。――ドルになにが起こっているのか、この問いが世界の金融界を支配している。先週米国通貨は貿易加重ベースで新たに14か月ぶりの安値に下落した。ドルの下落が勢いを増している」という10日付けの記事がある。

http://www.telegraph.co.uk/finance/comment/liamhalligan/6292787/Benign-currency-neglect-could-spell-real-danger-for-US-economy.html #


まあ大要、議論はこんなところだ。

「世界経済は回復しているので、投資家はもはや安全な避難場所としてドルを必要としないと多くの米国のエコノミストがいう。」


「これはナンセンスだ。」安全な避難先はドルから離れて、コモディティという触知できる資産にシフトしたのが現実で、もうこれ以上米国政府はドルを印刷しておられない。


「これが1オンス1000ドルを超えた理由であり、また豪ドルのような高金利の通貨が豪州の輸出業者が抗議するほどに上昇している理由。」その一方で世界の投資家は米国通貨が沈没船であることを懸念してそれから離れている、と。


これにに異を唱えるのは難しいとも。


「米国はいまだ国民所得のほぼ3%にあたる経常収支の赤字を持っているし」、輸出入のギャップは広がっている。こうした対外不均衡はかなりの部分、米国が世界最大の石油輸入国であるためである。ドルが下落するということは、ドル建ての商品は上昇する。つまり、原油価格が上昇すれば貿易赤字は増加するということだ。このことは金融アナリストなら誰でも承知している。しかし問題は「関係が逆に作用する」ということにある。石油が上がると米国は貿易赤字に苦しむことになるので、ドルが弱くなる。


米国政府は強いドルが必要だと強調する。しかしこう言うことは「私たちの知性を侮辱する」ものだ。ほんとうは「米国政府は絶望的なまでに弱いドルを望んでいる」。そのことで、莫大な対外債務を軽減し、合わせて輸出の増加を望んでいる、と。「連邦準備制度理事会がドルがいっそう弱くなることを止めようとしてなにもしないことを通貨市場は知ることになる。」「“健全な通貨であることを無視する”ことがオバマの回復戦略の礎石である」。


危険は、安定した衰退が急激な降下に変わるかもしれないところにある。急激なインフレがもたらされるだろうし、不況とセットになったスタグフレーションが世界最大の経済を襲うわけだ。


「この危険はとてもありそうである。」


これは世界の人々が懸念している米国の大規模な財政・金融の拡張政策のためで、「ドルが下落している根本的な理由」である。


米国のマネタリー・ベースは一年以上前は国民所得の6%であった」が、いまや一年間、紙幣を印刷して「12%である」。「米国のベースマネー供給は12か月で108%膨張した」。量的緩和も続いている。そしてこれらに加えるに、ドル・キャリー・トレードの圧力が加わる。米国は容易に金利を上げうる状況ではない。低金利のドルは売られて、ドル売り圧力は強まるばかりだと。


こうしたドル安への懸念や見方は、大方もそう考えているにちがいないと思わせるものだ。


たしかにドルの下落はドルにペッグしている人民元の下落でもあるから、相対的に自国通貨高となった中国を除くアジア諸国は、対中国との貿易競争上の理由からか為替市場に介入したようだが、ドル安の長期的な趨勢は止まらないだろう。


果たしてドルは終焉へと向かうのか。世界の経済の重心は新興国へと移動している。他方でドルは下落し、米国では規律のない財政・金融政策が続く。米国経済の現状を考えれば、これはかなりの期間、続かざるをえないものだ。


ドルの緩慢なる下落が米国の本音だろう。しかしそれが米経済の再生につながるのか、ドルの緩慢なる死への道なのか。はたまた急変してドルの急降下がどこかでありうるのか、ドルを巡る騒ぎは収まらないことだけは確かか。



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【森野榮一のエコノぴっくあっぷ】(10)「数字の操作」 森野榮一氏

2009-08-25 07:00:00 テーマ:【森野榮一のエコノぴっくあっぷ】

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第10回 「数字の操作」

森野榮一氏(経済評論家、ゲゼル研究会代表)



情報は鵜呑みにするものではないといわれる。


たしかにそうだが、こと、経済の数字となると発表された数字を疑うわけにもいかない。だれもその数字をたよりに状況を掴もうとする。


疑ったところで自分自身ですべて調べあげるわけにもいかない。


ただ、中国の数字についてはこの間、とかく、疑念が表明されてきたのも事実だ。電力消費量に比べてGDPの伸びが高すぎるとか・・・


しかしこれとて疑問の域を超えることはできない。自身で確かめようもないことをどう受け止めるか、受け止め側の問題とするしかなく、事の正否を議論してもどうなるものでもない。


中国の株式市場は典型的な流動性バブルをこの第二四半期に演じてきたわけで、一部に中国経済を持ち上げ、過大な期待を煽る雰囲気が充満していた。最近は上海の市場が調整局面を迎えはしたが、期待感が薄れる気配は強いものではない。


そんななかで、私自身はまあ、あまりあてにできんな、という感じでみてきた。


基本を考えれば、このバブルが生まれた理由は、在庫循環もあるが、政府の刺激策が大きい。それはいつまでも続けられるものではないし、今回の経済危機の原因でもある世界の構造的不均衡がなくなったわけでもないからだ。


そんな折り、ネットにはたくさんの投資家向けサイトがあるが、あれこれ覗いていたら、そのものずばり、「中国のウソ。いま中国から出てください、その経済全体が内部から崩壊するころです」という記事があるではないか。


ほんとなのかな、と、それはそれでまた半信半疑で読んでみる。

http://www.investmentu.com/IUEL/2009/August/china-lie.html


大要、こんなことが書いてある・・・・


「中国がこの景気後退から世界を脱出させるだろうとの話が受け入れられている。米国からは首尾よくデカップルされるし、たとえ他のどの国もが実際に低落するか不安定な状態に置かれていてさえ、今年、GDPは8%近く成長するはず。・・・


ただ、問題はその主張が偽りであるということだ。

中国が経済指標で嘘をついたのはこれが初めてではない。ほとんどの人が忘れているが、昨年、ほとんどの人が、中国のGDPが10兆ドルに近づいたと考えた。


エコノミストたちが・・・数字を4兆ドルに訂正するまでそうであった。これはきわめて大きな開きだ。


そして、それでも今日、偽りは続く。中国は同国で作られたすべてをGDPの一部にカウントする。・・・それは売れる必要はない・・・ただちに販売されたとして扱われる。それは倉庫でカビの生えるパンの山かもしれない。価値のない塊は損失としてではなく利益として扱われる。誰かがそれを購入したかのようにだ。


誰もがすべてを購入していたとき、事はじゅうぶんにうまくいった。


ただひとつ問題は誰もがもう購入しなくなったということだ。事実、輸出は前年比23%落ちた。中国の経済は25%超が輸出なのだ。中国はこれをGDPの考慮に入れない。代わりに、彼らは工業生産で10.8%の利益を見るだけだ。製造された物が購入されないかどうかは気にかけない・・・

しかし事はもっと悪くなる。生産が実際に落ちてくる。・・・中国の電力消費量はこの四月、前年比で3.63%落ちた。工業生産は8.29%の下落。・・・


経済が8%も成長するようなブームの期間、電力消費は上がり、景気後退で落ちる。どちらが中国で起こっていると考えますか。真実は工場が停止しているということ。」



かなり露骨な物言いだとは思うが、さもありなんとも感じる。新興国の成長を見込んで大量の投機資金もなだれ込んでいるようだ。政府も、過剰な資金供給を続けてきた。不動産や株式はバブル状況を呈してきたが、産業の実際はそうではなかろう。


しかしそれは必ず息切れする。輸出が回復しなければ中国にとって好都合な、世界的な不均衡の構造を生み出すなかで利益をあげ続けられた昔にはもどれまい。


だが、消費の最終的な受け皿であった米国の貯蓄率は上がらざるをえない。


中国が内需に真に依存しうる発展を考えるなら、貯蓄率を下げる選択をするしかないだろうが、これは下がりにくい。同国のように社会保障制度が不十分であれば、人は頑固なほどに貯蓄に励む文化を変えようとはしないだろう。


たとえ資産バブルで家計の資産を膨らませて貯蓄率が下がるようにしようにも、資産バブルの恩恵を受ける層に属せない多数の人口が控えている。


資産インフレで富裕層が消費を増やしたとすれば、それが統計を操作しなくてもよくなるような経済に脱出していける出口になるのか、注目したいところだ。



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