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経営に役立つ法律・会計知識 第18回
配置転換の際に気をつけなければならないこと

荒木雄平氏(弁護士法人ベリーベスト法律事務所 弁護士)

経営者の皆様にとっても、従業員の方々にとっても、頭を悩ます問題である配置転換。本日は、その配置転換についてお話ししたいと思います。

配転といえば、従業員の配置の変更で、職務内容や勤務地が長期間変更されるもので、転勤(勤務地の変換)もこれに含まれます。

この配転ですが、企業にとって、全くのフリーハンドで認められる訳ではなく、以下の要件を満たす必要がございます。

 ① 労働契約上、配転命令の根拠があり、その範囲内であること
 ② 法令違反等がないこと
 ③ 権利濫用がないこと


① 労働契約上、配転命令の根拠があり、その範囲内であること
配転をするためには、従業員の個別同意があればそれによりますが、ない場合には就業規則や労働協約上配転に関する条項があれば根拠ありと解されるのが一般的です。就業規則上、「会社は業務上の必要がある場合、配置転換を命じることができる。」等の概括的な規定でも根拠とされることが多いです。
個別の労働契約上、職種、勤務地に限定がある場合には、当該限定外への配転は無効にされる裁判例もあります。

 <裁判例>
・職種については、アナウンサー(東京地決昭和51.7.23判時820号)、キャディ(宇都宮地決平成18.12.28労判932号)、病院事務職員(看護助手への配転)(東京高判平成10.12.10労判731号)について、職種限定性が肯定されています。特殊の技術、技能、資格を有する従業員を配置転換する際は注意が必要です。

・勤務地については、採用時の経緯から現地採用を前提にされた場合(大阪高判平成17.1.25労判890号など)や、半農半工の労働者や主婦のパートタイマ^など生活の本拠が固定されておりそれを前提に採用された場合(松江地決昭51.3.16判時819号)について、勤務地限定性が肯定されています。

② 法令違反等がないこと
配転が労働組合活動の妨害を目的とする不当労働行為にあたる場合や、思想信条による差別にあたる場合、配転は無効となってしまいます。

③ 権利濫用がないこと
権利濫用の有無は、業務上の必要性、人員選択の合理性、他の不当な動機・目的(退職勧奨など)によるか、配転が労働者に通常甘受すべき程度を著しくけ折る不利益を負わせるものか、配転をめぐるこれまでの経緯、手続、会社の対応等様々な事情を下に判断されます。

例えば、従業員を退職させるための配転は、退職強要の手段として行うものなので、無効となってしまう恐れがあります。

<裁判例>内部通報者に対して報復的に配置転換命令をした事例

大手メーカー企業O社が、自ら設定した「企業行動憲章」の定めとおりに、上司の不正行為をコンプライアンス室に通報した男性社員に対して、報復的な配置転換命令をした事例です。

裁判所は、配置転換命令が業務とは無関係に個人的な感情にもとづき、いわば制裁的にされたものとして、内部通報による不利益取り扱いを禁止した運用規定に反するとして配置転換を無効と判断しました(東京高判平成23.8.31判時2127-124)。

また、裁判所は、単身赴任等でも転勤に伴う通常のものとして、労働者の不利益については、労働者側に厳しい判断を下す傾向にありました。
  
<裁判例>東亜ペイント最高裁判決
最高裁は、同居中の母親や保母をしていえる妻を残して単身赴任することとなりうるとの不利益は転勤に伴う通常のものであると判示しています(最判昭和61.7.14労判477号)。

もっとも、近時では、法改正により育児や重い介護負担のある労働者への配転命令を無効とする裁判例が増えてきています。

<裁判例>
・家庭の事情より配置転換無効とされた例

精神病の妻、実母(78歳)、高校3年生、中学3年生の子らと同居している労働者と、実母(79歳。痴呆が進行中。)と妻と同居する労働者の2名に下された姫路工場から霞ヶ浦工場への配置転換(大阪高判平成18.4.14労判915号)
妻、長男(3歳)、長女(6か月)(子が重傷のアトピー症皮膚炎あり。)と同居し、妻と共働きである労働者の東京本社から大阪支社への配置転換(東京地決平成14.12.27労判861号)
  
・本人の事情により配置転換無効とされた例
メニエール病に罹患している労働者の京都から大阪への配置転換(京都地判平成12.4.18労判790号)
神経症により1年間休職していた労働者に対する旭川から東京への配置転換(旭川地決平成6.5.10労判675号)

ですので、育児・介護の負担のある従業員について配転を検討しているのであれば、念のため、事前に弁護士に相談することをお勧めいたします。


弁護士法人ベリーベスト
http://www.vbest.jp/


■ 荒木雄平氏(弁護士法人ベリーベスト法律事務所 弁護士)
ベリーベスト法律事務所立川支店支店長。支店長として企業法務、個人法務を問わず幅広く対応を行う。地域に根差した弁護士として、1件1件の相談に丁寧に対応することを心がけ、好評を得ている。相続などをテーマとするセミナー講師の経験も多く持つ。

・経歴
 2004年3月   慶應義塾高等学校 卒業
 2008年3月   慶應義塾大学法学部法律学科 卒業
 2010年3月   慶應義塾大学大学院法務研究科修了
 2010年9月   新司法試験合格
 2010年11月   最高裁判所司法研修所入所(新64期)
 2011年12月   弁護士登録(東京弁護士会)
         弁護士法人ベリーベスト法律事務所 入所


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