February 02, 2005

おたまじゃくしのHIPHOP <1>

テーマ:おたまじゃくしのHIPHOP(おはなし)

ぼくたち おたまじゃくし
池の水面プラネタリウム
蓮の根っこをよけながら
君と今夜も 水に溶けた満月の中
藻の散歩道
幾つも空に浮かんだ蓮の葉が
月をかくすから
ときどき 三日月 たまに 月食

最近 君と泳いでいても
他のみんなに笑われる
まだ みんなまあるいのに
この広がったあしはなあに
月明かりに浮かぶ 見慣れないぼくのからだ
見ているだけで かなしい気持ち
君と少し形がちがう
長くたれた足 泳ぐたびに水に揺れる関節
ゆびの先のまあるいのはなんの役に立つの
りくに上がるまでわかんない
でも まだりくに上がれない
むかし パパがため息まじりに言ってた
「ああ、おたまじゃくしの頃はよかった」

いつか 君にもあしが生えたら
りくにあがって おとなになった君と
競争しようか
跳ねるだけ
空も飛べずに ただ跳ねるだけだけど
それがおとなのデート
とびでた瞳で ぼくをもっとはっきり見られるから
今よりいいわと
うれしいことを言ってくれる
草むらに響く鳴き声で ぼくを見つけるから
草むらに隠れても無駄よ
君って なんて可愛いんだろう
君はまだおたまじゃくし

池の水面プラネタリウム
蓮の根っこをよけながら
君と今夜も 水に溶けた満月の中
藻の散歩道



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February 02, 2005

おたまじゃくしのHIPHOP <2>

テーマ:おたまじゃくしのHIPHOP(おはなし)

りくに上がるのは決して楽しいことじゃないさ
でも ここで くろいふわふわのまま いたいなんて
甘ったれた おたまこんじょう
君はいつも遠くを見られる
君って なんてかっこいいんだろう
おとなのデートは 重力しょうぶ
いつまでも 水のなかの くろいふわふわ
そんなのムリだよね
ああ 君って なんて物分かりがいいんだろう
物分かりのいいおたまじゃくし
ぼくにはなれないや
この地球の重力を知るために
ぼくは このふわふわソウルを失いそう
透明な卵のまん中の くろくてかたいスピリット
パパから教わって 実はすこしだけ知ってるんだ
りくに上がる前から
ぼくの顔は目が飛び出て よく見えるようになる
生えてきた指先で 地をつかむ吸盤ができる
背中には 草とおんなじ色の斑点ができる
口が大きく横に広がって 大きな声で鳴く
ああ でもこの声はぼくもかなり好き
地上には分からないことばかり
でも この大きく響く声で
大好きなヒップホップも歌えるし
卵からかえった日から ずっと大事にしてた
このくろいぼくのまんなかの ふわふわソウルを
忘れないで歌にするから
そして 地上がどんなところであっても
君を見つけ出せるから
いつか あの雨上がりの道路に消えた 
ルート72って看板の 変な地響きの音のする道路に消えた
ぼくのパパとママだって
見つかるかもしれないよ
パパとママがいなくなった
あの 七色の虹のかかる地平線の向こうを
君といっしょに探そうか

君はかぶりをふるけれど
そんなに 物分かりのいいふりは
あしの生えたぼくを ゆううつにさせる
だって 君のかなしい予感は
いつだって 当たるんだもの
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February 02, 2005

おたまじゃくしのHIPHOP <3>

テーマ:おたまじゃくしのHIPHOP(おはなし)

今夜も はちみつみたいな満月
ネックレスみたいに
半透明の連なりの中に
ぼくは閉じ込められていました
くろいちいさなたましいが
たましいそのままのかたちで
ゼリーみたいな殻から出てきました
ぼくが大体この池の
危険なものをわきまえられるようになった時
ぼくのきょうだいは
ほとんどいませんでした
カエルのパパは ぼくにいつも
陸の話を聞かせてくれました
ぼくのからだがおとなになりかける前に
ぼくは恋を知りました
彼女はいつでも笑みを浮かべて
本当はみんな気付かない何かを ひとりで知っているような
そんな笑顔だから
ぼくは彼女にこらえきれずに言いました
「おたまじゃくしに生まれてくるなんてもったいない
君は神様の手違いで きっと他の何かだったんだ
おたまじゃくしは かえるにしかなれないよ」
でも 君は言いました
神様とぼくらしか 地上と水を自由に行き来できないこと
地球で天国に一番近いのは 水の中であること
そして ぼくと出会えるために
おたまじゃくしに生まれてきたのだと
ぼくは彼女のふわふわの頭を
尾ひれで迂回しながら そっと撫でました
そして 早く手足がほしいと
思えるようになりました
あんなに かえるになるのを おそれていたのに
君のやわらかなからだを
いちにちも早く触りたいと
そう思うのです
今夜も この池の中は満月
得意のヒップホップとダンスで
君を笑わせてみせる
そんな憂いは 月明かりに溶かして
きっといつか
本当の笑顔で
君のくろい顔を
くしゃくしゃにしちゃうから
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February 02, 2005

おたまじゃくしのHIPHOP <4>

テーマ:おたまじゃくしのHIPHOP(おはなし)

藻のトンネル いくつもくぐりながら
君と出会ってから ずっとおなじ散歩道 
今夜も君とおさんぽ
虹色の泡の中 ぷくぷく おたまジャグジー
今宵は お祭
おたまたちが集まって
みんなで得意な踊りで 思うままにはしゃぐ
もちろん ぼくはヒップホップ
生えかけた手で踊る
手も もう前に出るんだよ
ちょっと すかしたあいつのダンスなんかに 負けないから
あいつは 隙あらば 君に流し目をする きざなくろいやつ
困ったように笑う君に ウィンクする
ぼくは負けない 負けられない
父さん譲りの この熱い
おたまこんじょう 見せてやる
一等取ったら
君の喜ぶ顔まっさきに見せてね
賞品の 君より大きな毬藻をあげる
君のおひるねまくらにぴったりだから
家まで ふたりのまぁるい頭で蹴って帰ろうね
縁日の ミジンコキャンディー
舐めながら
さざなみごとに
ふわふわ揺れて
くろいふたつのヨーヨー風船みたい
水面に浮きあがっては消える 虹色の泡といっしょに
池の銀河を 流されていく

もう一つ天が高くなったら
そこにはどんな空が
待っているのかな
どんな青が
待っているのかな

 
すかしたあいつに 負けちゃった僕を
そばでじっと寄り添ってくれる君
もっと足が伸びたら
かならず勝つからね
カエルになったら りくに上がれたら
もう負けないんだから
くやしくって やたら話しまくるぼくに
君はぽつりと言いました
「蓮の根っこのトンネルで
遊んでた頃が 懐かしいね」
もう あの散歩道のトンネルはくぐれない
ふたりのおっきなからだ
君にも 最近生えたばかりの 
やわらかちっちゃなくろい足
君も本当は この ふわふわソウルを失うのが
不安なのに
ぼくを くろい笑顔でいつも包んでくれます
ぼくは世界を知らない
池の中のちっちゃなおたまだけど
この池の青しか 青を知らないけれど
はっきり解かるのです
君こそ 世界中で一番美しい 黒なのです

人間たちが花火をはじめたら
池の水面に 輪郭のない万華鏡みたいに きらきら反射して
ぼくたちは それから黙って花火を見ていました
今まで天と信じていたものは
ただの天井でした
花火の反射で ピンク色に染まる君の頬に
涙がつたうのを見たくないから
ぼくはそっと 君のやわらかなくろい頬に
くちづけしたのです

そして また一つ水面の夜空に 
万華鏡みたいな花火 
ゆらゆらゆれる 夏の夜でした

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February 02, 2005

おたまじゃくしのHIPHOP <5>

テーマ:おたまじゃくしのHIPHOP(おはなし)

今夜も満月 温かな光に包まれて
ぼくは 彼女の家に向かいます
彼女はいつも
細長いとげとげの藻のうしろに
隠れているのです
ぼくは藻で編んだ帽子を
彼女に渡すのです
つばが広いから きっと似合うよ

もう一つ天が高くなったら
そこには
どんな空が
待っているのかな
どんな青が
待っているのかな
りくに上がったら 白いお花を
君の頭に飾ってあげる
君のまっくろい顔に
まっしろいお花は
とても似合うはずだから

ぼくはお得意のヒップホップ踊りながら
手と足で軽やかに踊ります
ダンスの練習も完璧
あとは 陸に上がって
パパみたいな声で歌えたら最高

蓮の根っこについたとき

彼女のおうちの藻が

消えていました

岩場の後ろにも
だあれもいません
ぼくをからかっているだけだよね
早くそのまっくろい笑顔で
ぼくを出迎えておくれ
ぼくの可愛い彼女
早くそのくろいやわらかな頬を
ぼくに触らせておくれ

あまったれた おたまこんじょう
こんなぼくを
ずっと励ましてくれた君

ぼくは まるく黄色い満月に祈りました
早く彼女を見つけてください

でも
通りすがりの あのキザなやつが言いました
「お前さんは 街灯に拝むのかい?」
ああ あの満月は
人間の作った電球だったのです
ぼくが毎晩 踊っていた月明かりは
暖かさを全身に浴びていたのは
ただの ちっぽけな100ワットの電球だったのです
ぼくはとってもちっちゃいです
思っていたよりちっちゃいのです
「さっき大ナマズが通ったから、逃げ遅れたのかもしれないな」

ぼくの手も足も
おおきくなってきたけれど
ぼくはこんなの 要らない

君のお顔も触れない 手なら
君とお散歩できない 足なら

ぼくには必要ないのです

ぼくはちっぽけなおたまだから
おたまのまま ずっとここにいます
この池の底で

そして ずっと君の帰りを待っています
ぼくはダンスを踊ります
手ひれと足ひれを激しく動かしながら
ヒップホップを踊ります
月明かりと信じていた 
パパとママを奪った人間たちの作った
ちっぽけな電球の下で踊るのです

今夜も満月
愛しいあの娘は かくれんぼ
ぼくの涙は 虹色の泡になる
優しい君のくろい笑顔が
くしゃくしゃになって 満開の花咲くような
笑顔でいてくれた
夏祭りで初めてキスしたとき

ぼくが 君にこの手で触れたのも
今思えば ほんの束の間
これから ずっとずっと 触れられると思ったのに
もっとそばにいればよかった
もっと撫でればよかった
もっと抱きしめればよかった
この生えかけのくろい手で

君のくろい笑顔は
ぽくの目の前に くろくふわふわ浮かんでは
消えていきます
目の前の虹色の泡の全てが 君に見えます
この伸びかけたくろいちいちゃな手で
何度も掴もうとするけれど
ふわふわやわらかな その頬に
もう 触れられないよ

ぼくはダンスを踊ります
君を待つ間
ずっとずっと 踊りつづけています

ぼくたち おたまじゃくし
池の水面プラネタリウム
蓮の根っこをよけながら
君と今夜も 水に溶けた満月の中
藻の散歩道
幾つも空に浮かんだ蓮の葉が
月をかくすから
ときどき 三日月 たまに 月食
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