新・世界をかける少女 EPISODE3-2 | しゅご神ブログ

新・世界をかける少女 EPISODE3-2

EPISODE3-2「ザーフィアスの姫」


ユーリ「着いたぜ」


 夕方前、駆蓮たちは、帝都ザーフィアスの下町に到着した。


駆蓮「って、下町か」


ユーリ「なんだ、そのリアクションは」


駆蓮「いや、そういうつもりで言ったわけじゃないですよ?」


ユーリ「本当かよ」


駆蓮「…あれ?ラピードは?」


ユーリ「いつの間にかいなくなってやがる」


 周りを探していると、広場の方で、ラピードの声が聞こえてきた。広場に向かうと、鎧を着た青年とじゃれていた。


ユーリ「ちょうどいいところにいたぜ。フレン!」


フレン「!…ユーリ!」


 鎧を着た青年、「フレン」は、ラピードと一緒にユーリの元にやってきた。


フレン「お帰り。意外と早かったね」


ユーリ「まあな。しっかし、あそこの騎士団はあれでいいのかよ」


フレン「今度、訓練でもさせないとね。ところで、そっちの彼女は?」


ユーリ「仕事が早く終わった原因」


駆蓮「そんな言い方はないでしょ。はじめまして。斑鳩駆蓮といいます」


 ユーリに一言文句を言い、礼儀正しくフレンに名前を名乗る駆蓮。


フレン「斑鳩駆蓮…?そうか、君が」


駆蓮「はい?」


フレン「あっ、失礼。僕は、フレン・シーフォ。帝国騎士団に所属している騎士です」


ユーリ「ちなみに、俺と同じで、こいつは下町育ちの…まぁ、腐れ縁だ。んで、団長代理っていうのは、こいつのこと」


駆蓮「フレンさんが!?」


フレン「団長代理って言っても、まだまだだよ」


ユーリ「フレン。駆蓮は、エステルを訪ねてきたらしい」


フレン「エステリーゼ様を?」


駆蓮「はい。学生都市のなのはさんから、紹介されましたので…」


 駆蓮はなのはから受け取った紹介状をフレンに見せた。


フレン「なのはさんというと、あの乙女の…わかった。僕が取り次げばいいんだね?」


ユーリ「話が分かるじゃないか」


フレン「今会議中だが、もうすぐ終わるはず。城まで案内するよ」


駆蓮「ありがとうございます」


ユーリ「んじゃ、俺はここでお別れだ」


駆蓮「一緒に行かないんですか?」


ユーリ「城の連中には、いろいろ目をつけられているからな。それに、ここでうちのボスとも落ち合う約束もあるし」


駆蓮「そうですか。ユーリさん、ありがとうございました」


ユーリ「いいって。エステルによろしくな」


 ユーリは軽く手を振り、ラピードと一緒に去っていった。ユーリたちを見送り、駆蓮はフレンの案内で、城へ向かうのだった。


「フレン!今日はデートかよ!」


フレン「違いますよ」


「お勤めご苦労様です」


フレン「いえ」


「フレン兄ちゃん!これもっていきなよ!」


フレン「ああ、ありがとう」


 下町の長い坂を出て、大広場に入ると、街の人達が、次々とフレンに声をかけてくる。フレンは1人1人返事を返していった。


駆蓮「フレンさんって、人気者ですね」


フレン「騎士団団長代理として、みんなの期待にも応えないとね」


駆蓮「はぁ…」


フレン「なにか?」


駆蓮「フレンさんって、ユーリさんの親友ですよね?」


フレン「そうだけど?」


駆蓮「なんか…性格が正反対ですよね」


フレン「ははっ、よく言われるよ」


駆蓮「なんで、騎士団団長代理に?」


フレン「…ある事件があってね。前の団長が、謀反を起こしたんだ。それを解決し、功績を認められ、僕が代理を勤めることになった。でも、その功績は、すべてが僕のものじゃない」


駆蓮「というと?」


フレン「裏方で動いていた、ユーリ…ユーリのギルド、「凛々の明星」(ブレイブヴェスペリア)のおかげなんだ」


駆蓮「ブレイブヴェスペリア?」


フレン「裏で動いていた悪事を食い止め、最後には世界さえを救った、ほとんどユーリたちの活躍なのに…」


駆蓮「ユーリさんって、そんなすごいギルドのリーダーだったんですか!?すごいじゃないですか!」


フレン「いや、ユーリはリーダーじゃない」


駆蓮「はい?」


フレン「さっき言ってたでしょ?ボスと落ち合うって」


駆蓮「ボス…」


 その言葉を聞き、駆蓮は頭の中で、ユーリのギルドのボスがどんな人物かを想像する。


駆蓮「…ものすごい、ゴツいのしか出てこない」


フレン「本人に会ったら、きっと驚くよ」


 ブレイブヴェスペリアのボスがどんな人物か、フレンは知っているから、苦笑をしていた。どんな人物なのか、駆蓮は引き続き、想像するのだった。




~ザーフィアス城 城門~


フレン「ここが、ザーフィアス城だよ」


 大広場の坂をさらに上り、貴族外へ入る手前に、ザーフィアス城の城門に到着した。


駆蓮「さすがお城…。大きい…阿修羅城より大きいかも」


 城の大きさに圧倒されながらも、駆蓮はフレンの案内で城内へ。


兵士「お疲れ様です、フレン団長」


フレン「変わったことは?」


兵士「特にございません。そちらのお連れの方は?」


フレン「客人だ。それより、エステリーゼ様は見なかったか?」


兵士「先ほど会議が終わり、お部屋へお戻りになりました」


フレン「わかった。ありがとう」


 兵士から情報を聞き、駆蓮とフレンは、エステルの私室へ向かった。


 コンコンッ


??「はい」


フレン「私です。お客様をお連れしました」


??「フレン?どうぞ」


 部屋の中からの返答のあと、フレンはドアを開ける。中に入ると、ヨーロッパのお城!といった豪華な部屋が広がっていた。


??「部屋に直接通すなんて、めずらしいですね」


 そして出向かえてくれたのは、部屋の主であろう、白いドレスを着たショートヘアの女性と、ピンクの、メイド服を着た女性だった。


フレン「本来なら、手続きなどを踏まえるのですが…すいません」


??「いいですよ。そちらの方がお客さん?」


フレン「はい」


駆蓮「は、はじめまして、エステリーゼ様。斑鳩駆蓮といいます」


 少し緊張しながら、駆蓮は自己紹介をする。ドレスの女性は、軽く苦笑して、


エステリーゼ「斑鳩駆蓮さん…お話は、鈴香さんやなのはさんから聞いています。はじめまして。エステリーゼと申します」


駆蓮「こ、こちらこそ…」


エステリーゼ「よろしければ、わたしのことは、エステルとお呼びください。親しい人はみんな、そうやって呼ぶので」


駆蓮「は、はい。エステル様」


エステル「ふふっ、様はなくていいですよ」


駆蓮「…わかりました。エステルさん」


 相手は姫。鈴香とはなんだか違う雰囲気だから、緊張が解けない…。駆蓮は、まだカチコチ気味だった。


エステル「それと、こちらが」


ベル「エステル様に支えている、ベルネリッタと申します。ベルネリッタは長いので、ベルとお呼びください」


駆蓮「はい、ベルさん」


エステル「駆蓮さん、何故わたしを直接訪ねてきたのです?」


駆蓮「はい。ちょっとした事情がありまして…学生都市のなのはさんから、紹介状をいただいたので」


エステル「なのはさんから?」


 駆蓮はエステルに、なのはが書いた紹介状を見せた。エステルは紹介状を受け取り、その内容を黙読する。


エステル「…だいたいの事情はわかりました。学生都市が襲撃されたのは、本当だったのですね」


駆蓮「はい…」


ベル「その謎の敵…駆蓮様を狙っているのですか?」


駆蓮「正確には、わたしじゃなくて、この籠手を狙っているのです」


 駆蓮は狙いは無限の籠手だと、一同に見せた。


エステル「形が変わっていますね。それが、無限の籠手なんです?」


駆蓮「はい」


エステル「…なるほど」


フレン「いかがなさいますか?エステリーゼ様」


エステル「なのはさんからの…かつての仲間からのお願いですから、無視できません。フレン、駆蓮さんに宿を提供してください」


フレン「はっ」


ベル「でしたら、とっておきの場所を知っております」


エステル「それじゃ、宿の件は、お任せします」


駆蓮「あ、あの、エステルさん」


エステル「ここに滞在中は、その宿を使ってください。お代は、こちらから出しておきますから」


駆蓮「はぁ…あっ、でも…」


エステル「気にしないでください。今日はお疲れでしょう?ゆっくり休んでください」


駆蓮「…ご迷惑をおかけするかもしれませんが、よろしくお願いします」


 エステルの気遣いに、少々心が痛む駆蓮。追われている身なのに、受け入れてくれるなんで…


駆蓮「(優しい人だな、エステルさんは…)」



 エステルにあいさつをしたあと、駆蓮はベルとフレンの案内で、滞在中寝泊りする宿へと向かう。


ベル「私の知り合いが経営している宿です」


駆蓮「へぇ…」


 作りは至って普通の宿だ。帝都だから、もう少しすごいのを予想していた駆蓮だが…違っていたようだ。


駆蓮「(えっと、デュエルメイド…?宿の名前かな?でも、決闘メイドって…どんな宿なの?)」


 宿の看板を見ながら、どんな宿なのか、想像する駆蓮。そんな駆蓮をよそに、ベルは扉を開け、カウンターにいる少女に声をかけた。


ベル「こんにちは」


??「あっ!ベルお姉さま!!」


 出迎えてくれたのは、ベルと同じタイプの黒いメイド服を着た、小さな少女だった。


フレン「テリアさん、こんにちは」


テリア「あっ、フレンさんも!こんにちは!今日はどういった御用で?あっ!まさか、お二人で宿泊ですか!?」


ベル・フレン「なっ…!!」


テリア「あ~~!ついに、お姉さまにも、彼氏ができたんですね!わっかりました!!今すぐ、最上階の大部屋を開けて来ますので!!」


ベル「ストップ!ストップ!!違いますよ!!」


テリア「…あれ?」


 暴走するテリアに、赤面しながら止めるベル。駆蓮は、1人呆気にとられていた。


ベル「こちらの方に、部屋を案内してください」


テリア「お客さんですか?」


駆蓮「まぁ、そんなところ?」


ベル「エステル様からのご案内です。長期滞在なので、その辺のところも」


テリア「エステル様のお知り合いですか!?そ、そそそ、そんな方から、お代なんていただけませんよ!好きなだけ使ってください!!」


駆蓮「は、はぁ…」


テリア「ささ、どうぞどうぞ!お部屋はコチラです!」




~デュエルメイド 201号室~


テリア「ここですよ!」


駆蓮「意外とすごい!」


 部屋の中は、予想を覆すほど、豪華なものだった。宿の外見は普通なのに、中はすごいことになっている!


テリア「お出かけの際は、フロントに鍵を預けてください。あと、困ったことは、なんでも言ってくださいね!」


駆蓮「ありがとうございます」


フレン「じゃ、僕たちは城に戻るよ」


ベル「私たちは、ほとんどお城にいますので、なにかあったら、気楽に尋ねてきてください。お城の兵士には、そう伝えておきますので。ね?フレンさん」


フレン「ええ」


駆蓮「はい」


 駆蓮の案内も終わり、ベルとフレンは城へ帰っていく。一息ついた駆蓮は、ベッドに寝転ぶ。


駆蓮「はぁ…疲れた」


 疲れもあり、そのまま深い眠りへと付いた…。





~駆蓮の世界 自室~


 次に目を覚ましたら、自室に戻っていた。


駆蓮「ふあぁ~~」


 大きなあくびをする駆蓮。そのとき、


??「ワンッ!」


駆蓮「!」


 外から犬の声。その一言で、駆蓮の眠気が吹き飛ばされる。


駆蓮「なに?」


 窓から外を見ると、玄関の前に、1匹の犬。しかも、


駆蓮「ラピード!?」



 学校に行く準備をして、ラピードを出迎えた駆蓮。何故ここにいるのか?


駆蓮「あんた、よくここがわかったわね」


ラピード「ワンッ!」


駆蓮「まあいいわ。とにかく、学校行かなきゃ」


 鍵を閉め、スピードローラーを展開して、走り出す。ラピードもそれについていった。


駆蓮「そういえば、あなたの飼主は誰なの?」


ラピード「ワンッ!」


駆蓮「って、聞いたって、わかんないわよね」


 そのまま、犬と登校するという、摩訶不思議な(?)展開で、並木道に差し掛かった。そのとき、


エステル「ラピード!ラピード!」


駆蓮「ん?」


 並木道の向こうから、聞き覚えのある声が聞こえてきた。ラピードはその方向へ走っていった。


エステル「ラピード!もう、どこに行ってたの?」


ラピード「ワンッ!」


駆蓮「わたしの家に来ていたんですよ」


エステル「あ、あなたは…」


駆蓮「おはようございます、エステル“様”」


エステル「おはようございます…って、様?」


駆蓮「(あっ、ヤバ…!)」


エステル「どうして、わたしの名前を?」


駆蓮「あっ、いや、それは…」


エステル「…もしかして、1年生の斑鳩駆蓮さんですか?」


駆蓮「えっ?あっ、はい、そうです」


エステル「そうでしたか。やっぱり、聞いたとおりです」


駆蓮「なにがですか?」


エステル「翔子さんが言ってましたよ。駆蓮さんは、面白いことを言う娘だって。わたしのことも、翔子さんから聞いたのでしょ?」


駆蓮「(あの人は…なにを教えたのよ!)」


 へんなことを言う、よりかはましだが、だからといって、面白いことを言うはないでしょ…?


ユーリ「エステル!ラピードは見つかったか!?」


ラピード「ワンッ!」


 頭を抱える駆蓮と苦笑するエステルの元に、ユーリがやってきた。ユーリを見るなり、ラピードはユーリに飛びついていった。


ユーリ「ラピード!お前、どこ行ってたんだよ」


エステル「駆蓮さんのお家に行っていたそうです」


ユーリ「駆蓮?あんたが?」


駆蓮「はい」


ユーリ「噂のへんなことを言う1年か」


駆蓮「(翔子さぁ~~~~ん!!)」


 ユーリには、変なことを言うと説明していたらしい。今の一言でよく分かった。誰に聞いたのか、聞かなくてもいい!


ユーリ「昨日は、エステルとラピードが世話になったな」


駆蓮「いえ…」


ユーリ「ラピードもお前のことを気に入ったらしいな」


ラピード「ワンッ!」


翔子「あなたも気に入られたようね」


駆蓮「どっから出てくるんですか!?」


 いきなり背後から出てきた翔子に、駆蓮は大きく引いた。


翔子「気配を読み取れないなんて…まだまだじゃない?」


駆蓮「それより、ユーリさんに変なことを吹き込まないでください!!」


翔子「なんのこと?」


駆蓮「とぼけないでくださいよ!!」


翔子「それはそうと、ユーリ。エステル。ラピードなんだけど」


駆蓮「無視しないでくださいよ!!」


ユーリ「どうかしたのか?」


エステル「まさか、飼主が見つかった、とか?」


翔子「正解」


エステル「…えっ!?」


ユーリ「…そっか」


 ラピードの飼主が見つかったという翔子の報告に、エステルは驚き、ユーリは静かにそれを受け入れた。


翔子「夕方に、ここに来るそうよ」


エステル「…よかったですね。飼主が見つかって」


ユーリ「ああ」


 ラピードの飼主が見つかったのはよかったが、2人はなんだかさびしそうな顔をしていた。




 その日の夕方、ラピードの飼主が現れ、ラピードは無事、家に戻っていった。ユーリとエステルは、それを見つめることしか出来なかった…。




EPISODE3-3へ続く




次回、新・世界をかける少女

EPISODE3-3「決闘メイドと暗殺者」

世界を駆け、世界を救え