便器移設と素人の限界

テーマ:

バスルーム改装にあたって

わが夫(英国人)は

建築素材にこだわるだけでなく

最終的には全体の設計図まで

自ら作っておりました。

 

もちろん英国でもそこらへんを

デザイナーや業者に『お任せ』あるいは

『丸投げ』することは可能なのですが

「時々ホテルやレストランで

『どうしてこんなデザインにしたんだ』という

トイレに出会うことがあるでしょう。

同時に『このデザインは素敵だ』と

心から思えるバスルームもあるじゃないですか。

僕はそういう経験を活かしたいんです」

 

専門の方に設計を

頼むことも考えはしたのですが、

たとえば我が家の旧バスルームは

出窓の手前に洗面台がついていて

結果として出窓の窓ガラスを開けるためには

毎回洗面台によじ登らなくてはならず

夫はなんとしても改装の際に

この洗面台の位置を変えたかったのが

とある業者にその話をしたところ

「水場の位置を変えるとお値段が高くなりますよ。

洗面台は同じ位置ししておいた方がいいです」

 

「そのぶんの手間賃は払いますから」

 

「いや、職人がそういうの、嫌がるんですよね」

 

じゃあ何か、我々は新しいバスルームでも

毎朝毎晩洗面台を登攀せねばならんということか。

 

天井に『カビが生えにくい』素材の

プラスチック板を張り付けたい、というと

「そんなのもったいないですよ。

天井なんて木の板にして

ペンキを塗ればいいじゃないですか。

カビが出たらペンキを塗り直せばいいし」

 

「そういうペンキ塗り直しを避けたいために

プラスチック板を使いたいんです」

 

「うーん、でも、そういうのって

個人住宅ではあんまりやらないことですしね、

普通の平板のほうが取り扱いが楽なんですよ」

 

そんなわけで我が家の新浴室は

設計者:夫、となったのでございます。

 

まあそれはいいんです、わが夫は

幼き頃より『趣味:建築』という

義父(白色シュレック)のもとで

研鑽を積んだ過去を持つ男ですし。

 

「こんなの実現不可能だ、という

デザインはしていません。ただ

通常の改装よりも手間がかかるというか

職人さんにとって一部作業が

面倒なデザインであることは認めます。

でもそのぶんの賃金は払うつもりですし」

 

妻として夫のこういう自信は嫌いではない。

 

が、そうした自信が過剰

なりすぎた瞬間も確かに存在したのです。

 

「妻ちゃん、便器の付け替えは僕、

自分でやろうかと思うんです」

 

「・・・またどうして?」

 

「いや、僕でもできそうな仕事なんです。

デザインにこだわったぶん

手間賃がかかる見通しですから、

自分でできることは自分でしたいな、と」

 

「その意気込みは結構だけれど

君、便器の付け替えなんて

やったことがあるのかね」

 

「初体験ですが原理は理解しています」

 

「原理の理解は大事なことだが・・・

そこは専門家にお任せしないか」

 

「でもね、依頼してやって来た専門家が

僕以上に原理を理解していない

可能性だってあるんですよ」

 

「しかし彼らには経験があるわけだろう?」

 

「もしかしたら未経験の新人が

来ないとも限りませんよ」

 

それはそうかもしれませんけど。

 

私としても説得に努めたのですが

夫の意思はかたく、これはもう仕方ない、と

「わかった。じゃあ便器の付け替えは

自力でやってくれたまえ。そのかわり

作業は私が仕事か何かで

家を留守する日に実行してくれ」

 

「・・・何故ですか、便器付け替えの日には

もちろん君に在宅していてもらわないと困りますよ!」

 

「困りますってどうしてだ」

 

「だって万が一何かが起きた時に

助けを求める相手が僕にも必要でしょう?」

 

素人が便器を交換しようとした際に

発生する可能性のある

他者の助けを求めなくてはいけない事態とは。

 

「おい、真っ平御免だ、いいな、

君がどうしても自分で

便器を付け替えたいというなら

責任を自分ですべてとれる範囲でやってくれ、

私を助力として計算に入れてくれるな!」

 

「君がそんなことを言うとは思いませんでしたよ!」

 

「この程度の私の反応さえ予期できない人間が

便器付け替え作業における不測の事態に

じゅうぶん備えられているとは思えない、

重ねて言うぞ、真っ平御免だ、

安物買いの銭失い、ここはちゃんと

玄人に仕事を頼もうではないか!」

 

バスルーム改装の実作業には

我々はプロフェッショナルを

雇用することにいたしました。

 

適切な判断であったと思います。

 

 

まあでもその

『プロフェッショナル』探しの旅も

難航したのよ

 

そのお話はまた明日

 

便器の付け替えに自信アリな貴方も

DIYにおける己の限界を

熟知していらっしゃる貴方も

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バスルーム改装を目的に

私と夫(英国人)がどれだけの時間を

ショウルーム見学に使ったか。

 

思い出したくもないというのが本音です。

 

浴槽・便器・洗面台の三種の神器だけでなく

鏡とか手すりとか壁・天井・床の

素材までにもこだわりを持っていたわが夫。

 

いや、正直、浴室の壁なんて

カビにくくて掃除がしやすかったら

何でもいいじゃございませんか。

 

「そうですか、君は材質には

それほど興味がないんですね。じゃあ

そこらへんは僕の方で決めますから、

君は色について意見を出してください」

 

ああ、それは勿論、と頷いた私は甘かった。

 

『色についての意見』なんて

「じゃあ全体をクリーム色で統一して」

くらいでいいのかと思っていたら

夫はあちこちのお店から色見本を借りてきて

「天井をこの色にすると壁はこの色かと

思うんですけど、模様のパターンが

どうも合わないですね、パターンで合わせると

こっちの色ですね、でもそうすると

色味がよくないですね。

天井用素材の候補を変えてみましょう」

 

私はただカビの生えにくい

浴室が欲しいだけなのに・・・!

 

浴槽にしても『装飾性の少ない

モダンデザインで』という方向が決まっても

いざ実物を購入する段になると

ふちの丸みや全体的な佇まいなど

細かい点が気になりはじめ

また世の中星の数ほど浴槽デザインは存在し

もうどれを選んでいいのやら

考えれば考えるほどわからなくなり。

 

そんな中、とうとう夫がとあるカタログを開いて

「これはどうでしょう。シンプルな上にもシンプル。

デザインの特徴を挙げろと言われても

咄嗟に挙げられない程に没個性的な設計。

でも掃除はしやすそうですし大きさも僕好みです」

 

「なるほど、いいな。『嫌な点がない』という意味で

非常に期待が出来る商品サンプル写真だな。

これ、実物をどこかで見ることはできるのか」

 

メーカーに直接電話で問い合わせると

「そちらの品でしたらこちらの

ショウルームに実物を展示しております」

 

指定されたショウルームにいそいそと出かけた我々。

 

いや、しかし、浴室専門のショウルームというのも

世間には多数存在するのですね、

私はこれまで気づいていませんでした。

 

受付で目当ての品の型番を告げると

「そちらは第一展示室にございます」

 

第一展示室に入って

すぐのところにその浴槽はあり

「あ、これだこれだ、型番からしてこれだ。

なるほど、これで悪くないんじゃないか

・・・何だ、想像していたのと違ったか」

 

夫は怪訝そうに眉をしかめており

私はてっきり実物に何か

不満でもあったのかと思ったのですが

「妻ちゃん、僕らが見たかった浴槽は

これじゃないですよ。これは違う型です」

 

「でも型番がここに貼ってあるじゃないか。

それにカタログに載っていたのも

こんな感じの風呂桶だったろ?」

 

「こんな感じではありましたが、何かが違います。

ほら、カタログを見てください。少し違うでしょ?」

 

そう言われたら確かに何かが少し・・・

 

でもこれ、写真うつりとか照明による影の差とか

そこらへんの微小な差異だったりもしない?

 

首をひねる私をそこにおいて

夫はつかつかと受付に戻ると

「第一展示室にある浴槽ですが、

あれ、型番と違う物が展示されていますよ」

 

「・・・失礼ですが何とおっしゃいました?」

 

「型番が『A123』だとしたら

型番『A132』が展示されています。

でも壁の商品説明の紙は

『A123』となっているんです」

 

「失礼ですがお客様の勘違いでは?」

 

夫は受付の方としばらく話し込み、

結局バックヤードから

浴槽担当の係まで呼びつける騒ぎとなり

私はちょっと離れて様子をうかがっていたのですが

浴槽担当者と夫が浴槽の実物を前に

カタログとにらめっこをした結果

「・・・お客様!その通りです!これは

『A123』ではございません!

なんてこった、どうしてこんなミスを・・・!」

 

「あの、で、僕らは『A123』を見たいんですが

それはどこに展示されているんでしょう」

 

「申し訳ありません、現在当店には

『A123』は在庫としてなく・・・

他店舗の状況をすぐに調べます。

しかしお客様、よくこんな些細な

違いにお気づきになりましたねえ!

この浴槽、実はもう3年間ずっと

ここに展示してあったんですが、その間誰も

この間違いには気づきませんでしたよ!」

 

「・・・それはこの浴槽が不人気で

売れたことがない、という意味ですか?」

 

「いえいえ、これは人気商品です。

すごく売れています。だからこそ

第一展示室の正面に置いてあるんです」

 

「でも誰も間違いに気付かなかった、と」

 

「そうです。いや、このサンプルを見て

型番『A123』をご注文下さったお客様は

大勢いらっしゃるんです。でも・・・

そうしたお客様方は本当は型番

『A132』が欲しかったわけですよね、

だって実際にご覧になった浴槽は

『A132』なんですから。でもそういう方に

我々は『A123』をお届けしていたんですよ。

ただ我々は今まで一度もクレームを

受けていないんです、不思議です」

 

「まあ些細な差といえば些細な差ですからね」

 

「お客様、よくお気づきになられましたねえ・・・!」

 

ショウルームからの帰り道、夫はぽつりと

「僕、今ちょっと浴槽に関して

偏執狂的になっていますかねえ」

と呟いたのでありました。

 

 

プロフェッショナルが

3年間見逃していた間違いを

一瞬で指摘できたのですから

素人の直観力というのも

侮れないと思うわけです

 

 

 

 

まあしかし当時の夫は

ちょっと危ない目をしておりましたよ

常時浴室のことばかり考え込んでいて

 

浴槽選びに自信のある貴方も

そんなもの、選ぼうと

考えたことすらないです、な貴方も

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様式は人を選ぶ

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バスルームを改装するにあたって

私が重視するのは『手入れのしやすさ』。

 

「そこから考えると洗面台・浴槽・便器、

すべてモダン・シンプル・デザインが

一番なんじゃないかな。無駄な遊びがなく

拭き掃除が楽にできる感じで」

 

夫(英国人)は私に同意しつつも

実際に展示場やお店に行くと

『古き良き伝統のデザイン』みたいな

コーナーに引き寄せられてしまう癖があり

「この洗面台、いいと思いませんか」

 

その洗面台は遠目に見れば

それなりにシンプルな

立ち姿ではあるものの

よく見ると細部にはこれでもかと

手のかかった装飾が施されていて、

洗面ボウルというんですか、

あの水がためられる部分と

その周囲の平らな部分の境目には

ご丁寧に二重線のように

深い溝が掘られているし

左右二か所にある石鹸置場にも

ちまちました飾り彫りがしてあるし

もちろん蛇口もトラディショナル・スタイルで

支柱もハンドル部分も過剰なまでに

ぼこぼこ凹凸がついていて、

うん、わかる、これがある種の粋

英国が世界に誇るスタイルの

完成形であることは理解できる、

しかし私にはこれは埃と水垢の

一大集積装置にしか見えないの・・・!

 

こんな蛇口、表面がすぐ曇っちゃうでしょ!

 

濡れた石鹸をここに置いたら

このきれいな飾り彫りには

石鹸カスがこびり付きまくるでしょ!

 

全体を彩る二重線状の刻みには

どうしたって水が

こぼれてたまって跡になるでしょ!

 

「ちょっとこれは・・・ほら、私の唯一の希望

『掃除のしやすいデザイン』からほど遠いし」

 

「そうですか?ほら、こっちの洗面台なんか

陶器の洗面台の下に鉄製の

手すりみたいなのがついていて

タオルを干したりできますよ。

すごく合理的なデザインじゃありませんか」

 

「うーん、でも私には別に洗面台の真下に

タオルを干したい衝動はないし、

かといってタオルを干さなかったら

そんな手すりには埃が積もるだけだし、

だいだい何だ、排水パイプ隠しのパネルにも

ご丁寧に飾りが掘りこまれているじゃないか、

これはもう徹底的に拭き掃除をしないと

どんどん汚れが溜まっていく恐怖のオブジェだぞ」

 

「でも君は今だって毎日

洗面台の掃除をしているでしょう?

手間は同じなんじゃないですか?」

 

「違う。全然違う。同じ毎日の掃除でも

すっきり平坦なモダン洗面台と

あちこちにデコボコした装飾のついた

トラディショナル洗面台では

掃除の面倒の度合いが段違いだ」

 

しかし私は浴槽選択において

夫の希望の鋳鉄浴槽を

選択から退けた過去を持つ立場、

洗面台のデザインは

夫の希望をかなえるべきかしら、

装飾過剰な洗面台ももしかしたら

思ったほどには手入れが

面倒じゃないかもしれないし・・・

 

ただ洗面台と浴槽と便器は

デザインを統一しようと思っているんだけど

この洗面台に合わせた便器は便器で

また掃除が大変そうなのよね・・・

 

なんでもこういうスタイルを

『ジョージアン様式』と呼ぶらしいけど・・・

 

そんな思いを綴ったメールを

東京に住む妹に送ったところ

「お姉ちゃん、インテリアのデザインが

何故進化し続けているか、それは

手入れの楽さを製造者と使用者が

日夜追及しているためなのよ。

溝の刻まれたお洒落洗面台は

絶対に手入れが大変。便器も同じ。

お姉ちゃんにジョージアン様式は無理

 

やっぱりねー!

 

「そういうわけで申し訳ないが

君が希望するトラディショナル・スタイルの

洗面台・浴槽・便座は諦めよう。

だいたいそういうのって高いしさ。

安くても新しいデザインのものを買おう」

 

「でも妻ちゃん、安かろう

悪かろうって言うじゃないですか」

 

「大丈夫だ、そこまで安いものは選ばないから」

 

「でもねえ、妻ちゃん・・・僕、この

ジョージアン様式と呼ばれるデザインが

どうも非常に好きみたいなんですよ」

 

「それはわかる。その理由もわかっている。

これは君のお父様(白色シュレック、趣味:建築)が

お好きなデザインだ、そうだろう?

君の実家の客用浴室は

このデザインで統一されているものな」

 

「ええ。思えば僕は子供のころから

父にこのデザインの素晴らしさを

説かれて育ってきたんです」

 

「うむ、ジョージアン様式は素晴らしいよ。

実際とても美しいと思うよ。しかしな、

君の実家のあの浴室を誰が

掃除しているかというと、それは

君のお父上ではなくお母上だ」

 

「・・・僕の母もこういうデザインは好きですよ」

 

「君のご両親はよくお客を招くね。

10人近いお客が浴室を使った後に

石鹸置場がどんな様子になっていたか

ちょっと冷静に思い返してみたまえ」

 

「・・・でもお客はたまのことですし」

 

「夫よ、一事が万事だ。

こういう様式は同時の上流家庭向けに

デザインされたものだろう?

ジョージ王朝時代の上流家庭には

召使が存在した、そうだな?

これはな、そうした召使たちに

暇を与えないために考案された

スタイルなんじゃなかろうか。

家庭内にじゅうぶんな労力を

確保できるだけの資金力を

示すツール、それが

ジョージアン様式洗面台だったんだよ!」

 

な、なんだってー!

 

・・・我が家の洗面台・浴槽・便器は

お掃除しやすさが売りの

モダン・デザイン品になりました。

 

希望が通って嬉しい私です。

 

 

ジョージアン様式、なんというか

一見シンプルでありながら

よく見ると非常にデコラティヴという

お好きな人にはたまらんスタイルなんですよ

 

宿泊先のホテルの浴室がこのスタイルで

掃除が万全に行き届いていたら

それは私も大喜び間違いなし

 

ただ私は日々の日常生活で

そういう労力を惜しむ性質でございまして

 

鋳鉄浴槽やジョージアン様式インテリアを

美しく使い続けているの方のことを

心底尊敬する私です 自分には無理です

 

最近自分の限界を認めることに

抵抗がなくなってきた私に

それはいいこと?駄目なこと?

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便器と(いきなりこんな

書き出しでごめんなさいね)

洗面台と浴槽を

新しくすることにしたわが夫婦。

 

「デザインなどに

何か希望はありますか」

 

「私はとにかく掃除と

手入れがしやすいことが第一だな」

 

展示場に行きカタログを眺め

ああでもないこうでもないと話し合う

私と夫(英国人)に夫の父、

すなわちわが義父から助言がありました。

 

「浴槽は是非鋳鉄(cast iron)製にしたまえ」

 

鋳鉄というのはつまり鋳物、

型の中に鉄を流し込んでできる製品のことで

こうした手法で作られた浴槽は

英国の一部の皆様に

根強い人気を誇っております。

 

はっきり言ってしまえば富裕層向けの商品で

お値段もそこらの普通の浴槽とは

比較にならないほどの高め設定。

 

「いや、そんな贅沢は・・・」

 

「しかし君、これは一生に一度の買い物だぞ。

鋳鉄浴槽はいいぞ、まず第一にお湯が冷えない。

劣化しないから長く使える。

浴槽は毎日使うものだろう。

多少高くてもいい品を買うべきだ」

 

敬愛する父の言葉に

夫は心を動かされてしまったらしく

「君は長風呂で熱めのお湯が好きでしょう。

僕らの予算を超える品ではありますけど、

君が望むなら僕は

鋳鉄浴槽を購入してもいいですよ」

 

「ありがとう、でも私は望んでいないから」

 

「調べてみると鋳鉄浴槽は

デザインがいい物が多いんですよ。

そこはかとない高級感が感じられる

形状をしているものが多いんです」

 

「なるほど、でも私は欲しくないから」

 

「補償期間が長いのも特徴ですね。

それだけ製品に自信があるのでしょう。

たぶん一度鋳造浴槽を設置したら

浴槽を買い替える必要は

二度とないんでしょうね。

そう考えるとこれは

お得な買い物かもしれませんね」

 

「お得かどうかではなく

私は鋳造浴槽を希望しないから」

 

頑なな私の態度に夫は少し不機嫌そうに

「どうしてそんなに鋳造浴槽を嫌がるんです」

 

「私の唯一の希望『手入れが楽』に

反する浴槽だからだよ」

 

「ああ、それは誤解ですよ!

鋳造浴槽はむしろ

お手入れが簡単なんですよ」

 

「ふうん、それは誰が言った」

 

「・・・浴槽メーカーが言っています」

 

「夫よ、それはセールストークだ」

 

「そんなことありませんよ!

鋳造された鉄の表面が

ホーローびきになっているんですから

汚れを落としやすいのは絶対です」

 

・・・君がそこまで言うのなら

私も踏み込んで反論せねばなるまい。

 

「夫よ、私も英国滞在は長い、

鋳造浴槽を浴室に設置した

高級ホテルやB&B(民宿)に

泊まったことも何度かある。

その経験に基づいてお尋ねしたい、

新品同様の美しさを保った

使いこまれた鋳造浴槽を

君はこれまでどこで目にしたことがある」

 

「・・・」

 

「ないだろう。どの浴槽も

ホーローが欠けたり欠けたところが変色したり

くすみが出たりしていただろう。

表面がざらざらしたりしていただろう。

いいんだ、あれが味という感覚はわかるんだ。

だが私は自分の浴槽は

常にツルツルに保っておきたいんだよ」

 

「・・・」

 

「鋳造浴槽は『劣化しにくい』は真実ではない」

 

「・・・妻ちゃん、僕の実家の

客用浴室にある浴槽もあれは鋳造製ですが」

 

「君のお母様が今まで一度でも

『鋳造浴槽は手入れがしやすくて楽だわ』と

おっしゃったことがあるか」

 

「・・・」

 

「あの浴槽がツルツルしていたことがあったか」

 

「僕の実家の浴槽が

清潔でないと言いたいんですか」

 

「違うよ、だから『味』の問題だ。

日本で露天の岩風呂に入って

『底がザラザラしていてイヤ』とは

私は言わないよ。そういうことじゃないんだ。

でももしもどうしても君が

鋳造浴槽を欲しいというなら

その浴槽の掃除は君の役目な」

 

我々はプラスチック製の

現代風浴槽を購入することになりました。

 

 

ええ、もちろん義父はへそを曲げたわ

 

「妻ちゃん、僕たちの決断は僕の父を

不幸にしてしまったみたいなんですが」

 

「そうね、悲しいことね、でもこの浴槽は

義父のものではなくて我々のもの、

そしてもしも君が決断をひるがえした場合

君は『不幸な父』の代わりに

『不機嫌な妻』を相手にすることを忘れるな」

 

私は『嫌な嫁』なのかしら

 

最終的に夫が鋳鉄浴槽をあきらめたのは

ある日展示場に出かけた際に

『鋳鉄浴槽:壊れにくい、欠けにくい!

なんと10年間の品質保証!』と

大々的に宣伝を撃たれていた品の中央に

大きなひっかき傷があったためかと

 

なお鋳造浴槽の名誉のために申しあげますと

あの『美しさを維持しつつ鋳造浴槽を毎日

使用している』人を私は1名ほど存じております

 

でもね、彼女は掃除好きなのよ

 

(彼女よると鋳造浴槽はメーカーによって

手入れのしやすさに差もあるらしい)

 

あ、あと某スカイ島の某高級宿泊施設にあった

鋳鉄浴槽は年代物なのにピカピカであった

 

でもあれは客室お掃除係の

技術と気合の賜物だと思う

 

己の限界をよく理解している私に

諦めたらそこで試合終了ですね

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日ごと寒さがつのる2016年師走。

 

しかし今年の私は去年・一昨年より

気持ちに余裕を持って冬に対峙しております。

 

あのね・・・

 

今年の我が家はね、

蛇口を捻ったらお湯が出るの・・・!

 

すみません、それはつまり

前回の冬まではお宅に給湯システムは

存在しなかったということですか?と

思わず呆然としてしまったそこの貴方、

まあそのようなものもあるにはあったの、

でもまずボイラーそのものが

私と同年齢くらいのご老体なうえ

ちょっと小柄というか力が弱くて

お風呂なんかでお湯を使いたい時は

その1時間くらい前に加熱スイッチを

入れなくちゃいけなかったの。

 

また我が家は無駄に古いせいか

給水パイプの配置も

わけがわからんことになっていて、

トイレの洗面台と台所の蛇口は

ボイラーからそこまで距離があり過ぎたのか

まずどれだけ待っても

お湯は出てくれなかったの。

 

というわけで手洗いは冷水が基本、

台所の洗い物もお湯が必要な時は

鍋か何かでわざわざお湯を沸かして

それを使ってどうにかしていたの。

 

もう毎日がサバイバル冒険隊。

 

まあ一番辛かったのは

時間はかかるけれども

なんとかお湯は使える洗い物より

朝のお弁当準備でございましたね。

 

氷の様な水で野菜を洗った後に

冷え切った手を温める方法が

どこにもないというあの絶望感。

 

しかしあの悲劇はすでに過去のもの!

 

そう、わが夫(英国人)は先日

新型ボイラーを

我が家に導入してくれたのです。

 

それでもそこまでの道のりは長かった。

 

引っ越してきたばかりの我々にとって

緊急課題は2つありました。

 

1つはこの旧式ボイラー。

 

もう1つは半壊便所

 

そうです、皆様覚えておいででしょうか、

我が家のトイレには便座がなく

その床と壁と天井は煙草のシミで変色し

どれだけ拭き掃除をしても

異臭を放つことを止めず

シャワーを浴びても自分が本当に

きれいになったのかならなかったのか

わからないくらいの有様で、

「本来なら最初にボイラーを直して

それから新型バスルームを導入したいのですが

気持ち的に僕らが優先したいのは

実はバスルーム、はっきりいうと

トイレだったりしないでしょうか」

 

「その通りだ。悪臭が気になるあまり

入室の際にいちいち

息を止めなくてはいけない

バスルームというのは

健康にも良くない気がする」

 

まずとにかく便器だ!

便器を新しいものに取り換えよう!と

決意を固めた我々でしたが、

いくら便器が新しくなっても

あの悪夢のような天井・壁・床を

どうにかしないと臭気対策が取れないこと、

便器を単体で1つ買うよりも

『便器・洗面台・浴槽』の3点セットを

購入した方が値段的に格段にお得なこと、

「それにどうせなら僕、バスルームの

トイレとシャワーの位置を変えたいんです。

便器だけとりあえず替えることもできますが、

そうすると便器の取り外しと設置を2回ずつ

することになり二度手間になりますよね」

 

そういうわけで我々はこれを機会と

バスルームを完全改装することにしたのでした。

 

続く。

 

 

喉元過ぎれば熱さを忘れるとは

よく言ったもので、

私は新ボイラー導入前の

『お湯のない生活』の不便さを

すっかり忘却しておりました

 

・・・この春、わが両親が

東京からこっちに

遊びに来てくれたじゃないですか

 

夕食の席でわが母

(イメージ武将:豊臣秀吉)が突然

「・・・この家、蛇口からお湯が

出るようになったのね・・・

よかったわねNorizo、

お母さん心配していたのよ!」

 

ふつつかな娘で申し訳ありません

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