出会い....(4)

2007-07-19 23:35:39 Theme: ハッピーエンドの条件
彼女はまた遠くを見つめ始めた。
呼吸は大分楽になったようである。


具合の悪そうな人と楽しく時間を過ごすなんていうことは難しいし、
かといって沈黙を続けるのも難しい。

「僕は佐々。君の名前は?」
彼女の答えは質問。
「ささって名前?苗字?」
物心ついてからこの質問はずっと繰り返されている。
一度だけ、うそをついたこともあった。
親に対する小さな反抗。

「佐々は名前。苗字は松村、
佐々木さんと結婚したら佐々木佐々になるけど
そんな心配いらいよね。」
「おもしろいね。」
こんなことで笑ってくれる子も珍しい。

「で、君はどこに住んでいるの?」
彼女は町のほうを指差した。
「あっち」「あっち?」

そこには蜃気楼のように
ゆっくりゆれる都会のビル群があった。
でも彼女の視線はさらに遠くをみているようである。
僕も彼女もしばらく
そのゆれるビルを
そしてその向こうのなにかを
じっと見つめつづけた。


・・・・

「もう時間。楽しかったわ!」
楽しかったの?
たわいのない挨拶をしただけなのに。
でも、なぜだか僕にも楽しい時間だった。

彼女の正体がわからずじまいなのは残念だが。
もう会うことも無い男に
これ以上はなすことは無いのだろう。

彼女は立つことにおびえるよう
ゆっくりと体を持ち上げた。
そして、何も言わず歩き始めた。

しかし最後に
彼女は名前も住所も告げず
ただ一言つぶやいた。
「また会って欲しい・・・」と


それに僕は静かにうなずいた。


「でも、どうやって連絡をつければいい?」

彼女はまたにっこりと笑う。

「ここにくれば会えるわ」

漠然とした答えだったが
僕は何の疑問も抱かず
そして会えることに確信を持っていた。

それからは
彼女の会いたいときには必ず
そして僕が会いたいときにも必ず
二人はその場所で会うことができた。

なぜなら
仕事もおろそかに
そこに毎日通い詰めた
僕がいたから・・・

つづく

ガールフレンド/アヴリル・ラヴィーン
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出会い....(3)

2007-07-12 23:34:42 Theme: ハッピーエンドの条件
(といわれても・・)

周りをきょろきょろしているうちに
彼女の呼吸はおだやかになり、
顔にも赤みが戻ってきた。

「もうだいじょうぶ。」

全然大丈夫そうではないが
彼女が起き上がろうとしているので
僕は肩を貸し
ベンチに座るのを手伝った。

「ときどき、こうなるの。助けてくれてありがとう」
「いや。僕は何もしていないよ。」
「ううん。助けてくれた・・私を・・から」
「から?」

彼女は辛いのか
下を向き黙り込んでしまった。

何も話さず、黙って見つめることが
今の僕にできる最大の努力かもしれない。

近くで見る彼女は本当に白かった。
周りの緑にも
空の青にも
負けることの無い白だった。

彼女に色をつけることは
誰もできないと
白は語っていた。

しかし、
その白には何も混じることはできないが
破くこと
壊すこと
燃やすこと
は簡単にできそうな
弱い悲しい存在に思われた。

つづく


出会い....(2)

2007-07-05 23:54:37 Theme: ハッピーエンドの条件

彼女の視線は本当に遠くを見ていた。

服も白く
体も顔もみんな白かった。
僕の視野には、勝手にソフトフォーカスがかかり
その中でにじんで消えていくようだった。

視線を元の「トンネル」に戻し
いつもの「線路」を歩き始めたとき
また、ヘッドフォンが抑えることのできない声が聞こえてきた。

「助けて・・」

再び視線を彼女に戻す。
今度の彼女は、遠くではなく僕を見ていた。
そして動けなくなった僕を見て
彼女はうれしそうに微笑み
そして視界から消えた。

「!」

彼女はその場に倒れこんだのだった。

金縛りが解けた僕は
飛び跳ね、彼女の元へと駆け寄った。

「だ、大丈夫ですか?」
彼女は目を閉じ苦しそうな息をしていた。

そんな僕らを誰も気に留めない。
まるでそれが日常であるかのように。

「とりあえず、救急車を呼びます。」そういい終わらないうちに
彼女は僕の腕を、どこからそんな力がわいてくるかと思うほど
強くつかんでいった。
「病院には行きたくない。お願い・・・」


つづく

フィクションです。念のため・・

出会い....(1)

2007-06-28 22:01:54 Theme: ハッピーエンドの条件
一番の喜びはこの日のことだ。

都会にいると人と目をあわす機会が少なくなる。
顔や足を見ることはあっても
目を合わせることは悪いことであるかのように
避けてしまうことが多かった。
そして夜のTVのニュースキャスターと目が合いどきりとする。

そんな日常の中
彼女の目に僕は捕まってしまった。

その公園は,
僕も良く通る公園で
用もなく、目的も結果も無い
ただの散歩をする場所だった。

彼女は白い服を着て
公園にある一番小さなベンチの前で遠くを見ていた。
遠く、遠く。

誰もそんな彼女を気に留めるでもなく
足早に、そして無関心に
公園の水の流れとなっていた。

僕もその一人のはずだった。

外界の音は白いヘッドフォンでさえぎられ
視界は前を歩く人の背中をはずれることもなく
トンネルを歩くのと変わらない。

たぶん彼女は叫んだのだろう。
音としてではなく
心として。

白いヘッドフォンは
彼女の声をさえぎることもなく
周りの人はその声を聞くこともなく
僕の視線は彼女へと向けられた。

つづく
南風/レミオロメン
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けんか....(4)

2007-06-21 23:31:20 Theme: ハッピーエンドの条件
彼女は突然現れた。
何事もなかったかのように
ドアフォンのボタンを連打し
扉を開けると同時に
家に駆け込んできた。

何も変わらなかった。

彼女は
かばんから携帯を取り出し
「新しく買った」
「いくらで買った」
「僕の番号を登録した」と

こちらに
話しをさせる暇を与えないよう
まくしたてるよう
時間を惜しむように
しゃべり続けた。

「ごめん」
僕が謝っていた。

本当に
僕が
彼女のことを何もしらないことに
時間を経過したことで
気づかされていた。

そしてあきらめていた。

しかし、
彼女は
前と変わらない姿で僕の前に現れた。

だからごめんと。

そう僕は何も知らなかった。
彼女の名前さえも・・・

つづく

クラッカー

けんか....(3)

2007-06-07 22:05:23 Theme: ハッピーエンドの条件
やきいもは手に入れても
彼女は見つからなかった。

雨のせいなのか
時間のせいなのか
体中が震えるほどの寒さが僕を取り囲んだ。

やきいもも湯気を失い
しまいには形を失いつつあった。


もう帰ろう。
しかし、彼女は待っているかもしれない。
いや帰ろう。
僕と同じに凍えているかも・・・

僕はそれを何度も繰り返した。


結局
やきいもは、包まれた新聞紙と一体化したごみとなり
コンビニのゴミ箱へと消えた。

彼女の姿も
そのあと見ることはなかった。

まるで雨が溶かして流したように
僕の周りから何もなくなってしまった。


そう、それから
3日過ぎるまで・・・

つづく

the hooters New Album?


けんか....(2)

2007-06-07 21:42:12 Theme: ハッピーエンドの条件
僕は追いかけなかった。
追いかける必要がないと、自分に言い聞かせた。
それを声にだし、何度も何度もくりかえして
自分を納得させようと努力した。

しかし、
そんなに強い人間ではないことを
ざんざん振りの雨の中を彼女を探して走る自分の姿を
商店街のショーウィンドウに見たとき思い知らされ
なぜだか笑いがこみ上げてきた。

雨が振っているのに気づいたのもそのときである。

二流の小説なら彼女は見つからず
僕は一生忘れない後悔を残す。
三流の小説なら彼女が見つかり
「ごめんな俺が悪かった」となり
ハッピーエンドへと向かう。
一流の小説なら・・・

そもそも
やきいもで別れる話に
一流も二流もないだろう。

僕は探すのをやめた。
疲れたんだ。

それなのに
神様は僕をゆるしてはくれなかった。

雨にぬれた公園のベンチに腰を下ろすと
黄色い小さなバンが雨の中、小さな煙を出して
とまっていた。

最初はとりとめもなく見ていたが
顔をつたう雨粒が三度ほど
目に入ったとき
その車が

やきいもを売っていることに気づいた。


つづく
The Hooters
One Way Home

けんか....(1)

2007-06-01 00:23:03 Theme: ハッピーエンドの条件
一番の後悔はこの日ことだ。


短気なのは僕ではない。彼女のほうだ。

しかし今になって思うと
気の短さは僕の時間の中であって
彼女の時間軸の中では充分に長かったのかもしれない。

怒りは感情の裏返しというけれど
そのときの僕はそうは思わなかった。
これほど相手を本当ににくいと思ったことはなかった。


どのけんかもそうだけど
(というほど経験はないが)
最初はささいなことから始まる。

僕たちの場合は
「やきいも」
だった。


彼女が突然食べたいと言い出した。

そういえば
彼女がものを食べている記憶が無い。
食べていないわけではないけれど
記憶に残っていないんだ。
それなのに「やきいも」を連発する。

もともとそんな時期ではない。
さらにそんな時間でもなかった。

明日にしようというと
彼女は吐き捨てるようにいった。

「なにもわかっちゃいない」

彼女にも聞こえたかもしれない。
怒りの扉を止めていた太い鎖が突然大きな音を立てて切れた。

「何をわかって欲しいんだ!
僕は何をわかっていないんだ!」
「全てよ!」
扉にはあと二三本鎖があったようだが
それも立て続けに切れた。

「わかろうとも思わないし。わかりたくもない。」
まぁけんかの常套句だった。
しかし彼女の答えは予想外だった。
「あなたの持っているものを、私はもっていないの。
あなたができることを、私にはできないの。」
怒りの頂点にいた僕の頭では、彼女の言葉は処理不能だった。
よって口から出てくることばも単純だった。

「出て行け!」

そもそもここにいる理由が無いといえば無い。
なぜ一緒の時間をすごしているかということも
あらためて考えるとわからなかった。
ただ、出て行けという言葉は、
口をついて出てきた言葉だが
それはとても鋭利な刃物だったようだ。

僕の怒りの扉を抑えていた鎖を切った「なにか」は
二人の間を結んでいた細い糸まで切っていったようだ。
そして、もともとつながっていたのが不思議だというように
切れた二つの糸はまったく違う方向へと飛んでいった。

彼女は何も言わず
何ももたずに家を出て行った。

来週木曜日につづく

ハッピーエンドの条件 <<フィクション>>

2007-06-01 00:18:13 Theme: ハッピーエンドの条件
彼女に会ったは一ヶ月前。

そして別れたのは昨日。

ありきたりの恋愛小説のような

涙を誘う感動小説のような

そして、日記のように日常を語るような

そんな一ヶ月だった。


出会いは単なる偶然

そして別れは彼女の死。


悲しい映画がハッピーエンドで終っても
楽しい映画が悲しい結末で終わっても
涙がでてくる。

そんなことを言っていたCMは
何のCMだったろう・・・。


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毎週木曜日は
ねた切れのためフィクションになります。
ご了承ください。
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つづく

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