恐怖の薬草(御岳山・御嶽神社編) | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。

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レンゲショウマ群生地から山道を道なりに進むと、何やらのどかな民宿街に出ました。
自然地であると同時に観光地でもある……御岳山の立ち位置がよくわかります。
この先は御岳山のビジターセンターを経て、御嶽神社へと続いています。

自然美は期待してはいけませんが、
石垣や木塀などが形作るどこか懐かしい街風景や
山ならではの眺望が楽しめるので、散歩にはいいかもしれません。





神社の目の前までいくと、ご覧の通り。
飲食店(蕎麦屋が非常に多い)とお土産物屋が集まっています。
何となく高尾山の麓あたりを髣髴とさせますね。

なお、石砂山近辺にはこういう所がなかったりします。
……あの分だとポケモンもあまり期待できなさそう。
詳しくは来年の4月、またギフチョウを撮りに行った時にでもお送りします。




 
道中はあくまで民宿街ですが、山岳域らしくといいますか
道端に目を向けるとそこそこ山野草も見かけます。
飲食店の店頭に植栽されているものもあれば、自生らしきものもちらほら。

上のイワタバコ(左)とキツリフネ(右)は、恐らくいずれも自生のものです。
イワタバコは石垣の隙間から1株だけ生えてきていました。
何かの拍子に種が入り込んだんでしょうか?





中継点となるビジターセンターは、ポケスポットに指定されています。





民宿の壁面にくっついていた、赤色の甲虫です。
写っていませんが、カミキリムシであることは顔を見て一目でわかりました。
サイズは前回ご紹介したヨツスジハナカミキリとほぼ同じでしょうか?
これもまた花に集まるタイプで、見た目通りアカハナカミキリといいます。

遭遇率 … 2
インパクト … 2
美しさ … 3
俊敏性 … 3

ヨツスジと比べるとやや遭遇率が低いらしく、
昆虫エクスプローラーでもあちらは★3、こちらは★2となっています。
ただ、コイツも都心部でそれなりに見る機会はあるそうです。

高尾山でやたらと遭遇したムナビロアカハネムシに似ていますが
胸部の色や後羽の形などが明らかに違うので、識別は簡単です。







さて、神社を散策する前に腹ごしらえしておきましょうか。
眺望の楽しめる飲食店で、山菜うどんをいただきます。
山来るたびにいつも山菜うどん(そば)食っている気がしますが。

例外として、宮ケ瀬では川魚の定食をよく食いますね。





この飲食店の窓の外には、目の前にキレンゲショウマという植物が植えられています。
その名の通りで黄色いレンゲショウマのような花が咲くのですが、
レンゲショウマがキンポウゲ科であるのに対し、本種はユキノシタ科。
要するに似ているだけで全然違う種類の植物なのです。
イソヒヨドリなんかと同じような立ち位置だと思えばいいでしょう。




 
食事を済ませて、いよいよ御嶽神社の境内に入ります。
入口にこんな案内が。ふーん、ここにも群生しているのか……。
やけに控え目な看板なので、それほど期待しないで中に入りました。





ところが、ちょこっとといいつつ株数はなかなかのもの。
一部どう考えても自生じゃなさそうなものもありましたが、
境内を爽やかに彩り、カメラ持参の観光客も結構多く来ていました。








クローズアップ。
光の関係上、ここの方がフラッシュなしでもくっきり撮れます。







 
心なしか、こちらの方が花付きがいいような気がしないでもありません。
一株ごとの花の数とか、花弁の美しさとか、明らかに自生地より健康そう……。

とは言え、山野草ファンというものはやはり自然の中に自生する姿に惹かれるもの。
カメラ持ちの観光客に限っていうなら、やはり山頂の自生地の方が多かった気がします。
ただ、こちらは足場の悪い山道を歩かずとも花を楽しめるというメリットがありますので
自生にこだわらないのであれば、ここで用を済ませてしまうのもアリかもしれません。





レンゲショウマの存在がなくても、ここ御嶽神社は貴重な史跡。
観光客の来訪を見据えてか、ポケスポットやジムが数ヶ所に設置されています。

なお、画面右下にプリン(対ギガクッパ最終兵器)のシャドウがありますが
このあと無事にゲットすることができました。ピカチュウにはまだ出会えていません……。

ギガクッパって何?と思われた方は、検索検索ゥ♪
(別ゲームの話です)








さらにこの境内を歩き回ってみると、所々に山野草の姿を見かけました。
これはゲンノショウコ。腹痛などに効く薬草として有名です。
花は可愛らしいですがあまり大きくないので、歩いているとやや見落としがち。
山や丘陵地では普通種らしいので、注視していると結構見かけるかも?








ゲンノショウコのすぐ傍に、こんな黄色い花も咲いていました。
一株だけで、背丈はせいぜい40センチくらいといったところでしょうか。
オトギリソウ……というのですが、ひょっとして名前を知っている方は多いのでは?

ドラゴンクエスト トルネコの大冒険 不思議のダンジョンシリーズ
同名の草が回復アイテムとして登場しています。漢字表記は弟切草です。
ゲームにおいては、飲むとHPを大きく回復し、
同時に混乱や目つぶしなどの状態異常を解消するというスグレモノ。
同ゲームをプレイした人なら何度となくお世話になったことでしょう。

実際、この植物は薬草になるらしく、月経不順の改善や鎮痛効果があるとか。
焼酎漬けにして切り傷の幹部などに塗るそうです。
(より正確な使い方は書籍等をご参照下さい。本ブログでは責任を負いかねます(逃))
ドラクエで回復アイテムとされているのは、この辺りに由来するものと思われます。

一方でよく言及されるのが、オトギリソウの花言葉。
花言葉って一つの花に複数存在するのですが、本種には恨み秘密というものがあり、
花の雰囲気や効能に反してダークな雰囲気が漂います。








花言葉もさることながら、漢字表記(弟切草)もかなり物騒。
この和名にはちゃんと由来があり、Wikipediaを始め方々のサイトに記述が見られます。

曰く、
その昔ある所に鷹匠の兄弟が住んでおり、
鷹の傷薬として本種を原料とした秘伝の薬を所有していたのだが
ある日弟がその秘密を他人(恋人だという説がある)にばらしてしまい、
激怒した兄が弟を切り殺した……だから弟切草というのだそうです。

写真はオトギリソウの葉なのですが、裏側に無数の黒点が見られます。
これが、惨殺された弟のが付着したものなんだとか(怖)。
まあ、実際のところはヒペリシンという物質が葉の裏面に出てきているだけなんですけどね。

こうした物騒な背景ゆえに、ドラクエシリーズの回復アイテムとしてよりも
むしろホラーゲームの名称としての方が有名なようです。
詳しくは「弟切草 ゲーム」で検索してみてください。
なお、このゲームではオトギリソウの花言葉を復讐としていますが、
復讐はトリカブトの花言葉ですのでお間違えのないよう……クックック……。








物騒な話で終わるのもアレなので、口直し(?)に。
前回も紹介したヨツスジハナカミキリですね。またアジサイに来ていました。
次回、神社奥の山道に入っていきますが、そちらはもちろん下山に至るまで
このあと長~い付き合いになるとは、この時は思いもしませんでした。

あ、そうそう言い忘れていましたので一言。
「弟切草 奈美」でヤフーの画像検索をかけると、著しく不気味な画がヒットします。
ゲームプレイ済の方でも背筋がゾクッとすること請け合いです。

なお、御岳山の主役であるレンゲショウマの花言葉は伝統美。さすがです。
が、オトギリソウやゲンノショウコと違い、本種はキンポウゲ科らしく毒草です……。


(不穏な空気を残したまま、奥の山道編へ続く)