天然の界面活性剤の代表的なものがレシチンです。


レシチンは生体内細胞の構成成分で、動植物界に広く分布しています。
レシチンは種々のリン脂質で構成されている混合物の総称ですが
狭義にはホスファチジルコリンというリン脂質をさしてレシチンと呼ぶ場合もあります。


一般的にレシチンにはホスファチジルコリンの他に
ホスファチジン酸、ホスファチジチルセリン、ホスファチジルイノシトール、
ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、
スフィンゴミエリン、リゾホスファチジルコリン(リゾレシチン)などの
リン脂質が含まれています。


レシチンは主に大豆や卵黄からとられていますが
卵黄由来のレシチンはにおいがきついため、
化粧品では大豆由来のレシチンが主に使用されています。


化粧品ではレシチンのままで使用されることもあるのですが
とても酸化されやすく、においや着色のもととなり、活性酸素も発生するので、
化粧品ではレシチンに水素添加という加工を施して
アシル基の飽和度をあげ、酸化されにくくした
「水素添加レシチン(水添レシチン)」を用いることが多いです。


またレシチンのアルキル鎖の不飽和部をヒドロキシル化したものを
ヒドロキシルレシチン(水酸化レシチン)といい、
水溶性が高まり、また酸化安定性も高まっているものもあります。


リン脂質は生体では細胞膜のような脂質二重膜を形成するのに必要です。
またリポソームの形成にも用いられています。
化粧品でも乳化剤、可溶化剤、リポソーム化剤、保湿剤、
粉体の表面処理剤などに使用されています。


水添レシチンを合成の界面活性剤と勘違いしている方が多いようですが
これはれっきとした天然の界面活性剤です。
天然のレシチンに水素添加という加工を施しているだけです。


ちなみに皆さんが良くご存じのスクワランというオイルがありますが
これも元はサメやオリーブなどから取られるスクワレンというオイルを
水添レシチンと同じように水素添加して得られるオイルなんですよ。
スクワレンはそのままでは酸化されやすいので、

あまり化粧品では使用されません。
ほとんどすべてスクワランに加工されて使用されています。


水添レシチンが「合成界面活性剤である」というデマが流れたのは
恐らく、とある「毒性判定事典」という本がネタ元ではないかと思います。
この本を元に書かれた化粧品成分のウェブサイトも多いようで

広まってしまったのでしょう。
この本では意図的に間違った情報が書かれていますので気をつけて下さいね。
この本をバイブルのようにして化粧品の成分について調べたり
語ったりしている方がおられますが、とても残念な気持ちになります。
化粧品工業会などが出している原料事典がありますので
そちらを参考にしていただきたいと思います。