■書評■名著は一番大切なものを隠す「未来形の読書術」石原千秋 多読書評ブロガーおすすめ本
テーマ:書評:哲学・思想・科学■書評■一番大切なものは隠した方が良い「未来形の読書術」石原千秋
多読書評ブロガーの石井です。
最近読書関連の本を100冊位リスト化してみたのですが、その中でもなんとなく書名に惹かれて手にとって見た一冊です。
読書術というよりは、文章と読者との距離や位置関係について論じた哲学書のような風情の本です。
石原千秋さんの本は初めて読みました。受験国語や夏目漱石の本の分析についての本を出版されていて、論点が似ているということで個人的には300%面白かったです。
読者の視点がどこにあるのか?先日「光の箱舟」という本で人の視点は、無限遠点にあるという話がありましたが、本書でも対象を認識している限り、読者は「外」にいる存在で、そう考えると読者はどこまでも外側の存在だという話をめまいを感じながら読みました。
また、小説は一番大切なものを隠すという論点も非常に興味深いです。
2009年の中でもベストおすすめ書籍に選んだ「人生の目覚まし時計」という本の山場に、「一番大事なものを大事にする」という記述があります。そして、その「一番大事なもの」は何かということは説明されていません。
わざとそうしたということなのですが、私はこの本を読んだ後、しばらく「一番大事なものってなんだろう?」と考えていました。出版記念講演の際に富田さんに聴いても教えてくれなくて、相当モヤモヤしたのですが、それが結果的には非常に良かったのです。
本書において、この「隠す」という記述を読んだとき、そういうことかと非常に合点できました。
今まで本を読むとき、何が隠されているのかという観点では観ていませんでしたが、一つ本を読むときの視点を増やすことができた気がします。
また「内」「外」「境界領域」という観点から、4類型にまとめられている物語論の形式についても、ストーリーテリングの本は相当読みましたが、類書であまり見たことがない分析方法なので、一見の価値ありです。
以下、抜書きまとめ(本のポイントの抜書き)です。
■本は自分を映す鏡だ
自分が何を知っているのか、何を知らないのか、何がわかるのか、何がわからないのか、何に関心があるのか、何に関心がないのか、そういうことを知っているということ
■世界は言語である
「言語論的転回」では、ぼくたちは言葉を通してしか世界を理解することができない
世界はすべて言葉で「汚染」されている
言葉で意味が与えられている
言葉が与えられていない物事は、存在しないに等しい
■虹
「赤、橙、黄、緑、青、藍、紫」
英語には「藍」にあたる一単語がないので六色に見えると言う
■世界の発見
言葉を知れば知るほど、まだ名付けられない星雲状の宇宙があることを意識しないではいられなくなる
言葉からこぼれ落ちた世界に、読書によって言葉を与えることは「世界の発見」
■嘘
嘘をつくということは、その言葉の裏側に「嘘でない現実」があるということ
■世界を認識する主体は自分
何かを意識したとき、ぼくたちはその何かの外側にいるはずだ
■自意識
自分自身を意識するときには、意識する主体は自分の外部にいるはず
■意識するということ
意識するということは、そのものの外部にいるということ
だからこそ、本をよむあなたは世界のどこにもいない
■物語の型
「内(現実)」
「境界領域」
「外(異界)」
1浦島太郎型:
内→境界領域→外→境界領域→内
2かぐや姫型
外→境界領域→内→境界領域→外
3成長型(立身出世型)
外→境界領域→内
4退行型(反立身出世型)
内→境界領域→外
■物語の全体像(ゲシュタルト)
小説にとっての「全体像(ゲシュタルト)」とは実は「既知の物語」
適度なスリルと適度な安心感
■小説は穴ぼこだらけ
「朝九時に起きると、僕は歯を磨いてから朝食をとって、急いで玄関を出た。」
読者は、この文章に書かれなかった多くの動作 蒲団から出るとか洗面所に行くとか朝食へ行くとか着替えるとか、そういう動作を自分の経験に照らして読む。
知らず知らずの間に、言葉の隙間を埋めている
その結果、断片的で隙間だらけの文章が連続しているかのように感じられる
■作家は隠すことで読者から小説を守る
すぐれた作者は、最も大切な宝物をみすみす見えるところに置いたりはしない
宝物が多く隠されている小説が古典の名に値する
■何が埋まっているのか
読者は「好み」の宝物を自分で「発見」すればいい
【本日の紹介書籍】
筑摩書房
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読者にも大事な「仕事」がある【関連エントリー】
■記事まとめ■ストーリーテリング関連書評記事まとめ
http://ameblo.jp/satokumi1718/entry-10420384765.html
【編集後記】
妻が体調を崩して入院したことがきっかけで、今週は早帰りを繰り返し、日課の勉強会やセミナーの予定がキャンセルになることが多かったのですが、なぜか逆にビジネスランチをする機会が多くありました。
いろんなことが進んでいきそうな予感がします。
さっくん、ももちゃんとともに妻の実家に随分お世話になり、家に帰ってくるとまた楽しいらしくダンボを見ながら夜更かしをしてしまいました。
今月の101冊ノルマもう終わりそうな多読書評ブロガー石井でした。
本日も最後までお読み頂きありがとうございました。
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