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写真は沼津駅3番ホームで発車を待つ「あさぎり8号」RSE車です。

古い話で恐縮ですが、管理人は昨年の12月8日、沼津に仕事で出向いた帰り、いつも新幹線で帰るのは芸がないと思い、あさぎり号を利用しようと思い立ち、当日沼津駅で切符を買いました。


せっかくですので、2階建てグリーン車を奢りましたが、その乗車率はといえば、惨憺たる有様でした。師走、しかも年末の多客期の直前ということで、そもそもお客が少ない時期なのでやむを得ないと言えばそうなのですが…。

管理人の乗った3号車2階席には、沼津発車時点で乗客は管理人1人! これには絶句してしまいました。


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ほとんど無人のグリーン席(写真は4号車の2階席)


普通車はどうかといえば、御覧のとおり↓

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沼津発車時点で、この車両(5号車)に乗客はたったの3名!


2階建て車両の階下席、RSE20000形御自慢のセミコンパートメントも、1階普通席も全くの無人でした。

セミコンパートメント、4号車1階席はこのとおりです。


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こういうグループ客対象の席というのは、やはり売りにくいのでしょうか…。


3号車の1階普通座席も御覧のとおり↓

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沼津発車時点で無人だった3号車の1階席


管理人はこれにはちょっと驚きました。

この列車は、沼津を出ると裾野・御殿場と停車していくのですが、御殿場線区間では目立った乗車があったのは御殿場くらいなもので、それでも定員の3分の1くらいの乗りでしょうか。小田急に入る松田(この駅は「あさぎり」で小田急線に入るとき又は新宿方面からの「あさぎり」で下車するときは、新松田と同じ扱いになる)である程度乗りましたが、それでも定員の半分になるかならないかくらいしか乗っていませんでした。


RSE車のグリーン車は、2階席であるが故の静かさと、横3列というゆとりを持った座席配置がセールスポイントとなっていますが、ここまで乗車率が振るわないと、静かすぎてかえって不気味なくらいでした。


ちなみに、RSE車の2階建て車両(3・4号車)にはサービスコーナーがあり、生ビールを供するビールサーバーがあります。

かつての小田急といえば、「走る喫茶室」の異名をとったとおり、ロマンスカーでの茶菓・軽食類のシートサービスが著名でしたが、近年では合理化に伴ってワゴンサービスに移行し(それもロマンスカー全列車ではなくなった)、シートサービスを実施しているのは、VSE使用列車とRSE使用列車(こちらはグリーン車のみ。普通車はワゴンサービス)となっています。

しかし、この日は係員さんがいなかったせいか、樽を模したビールサーバーがどことなく物悲しげに見えました。


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写真中央の樽型の機械がビールサーバー


「あさぎり8号」は松田駅構内の連絡線を渡り、夜の小田急線へと踏み入れます。その後は、闇の中を淡々と進み、本厚木・町田と停車して乗客を迎え入れます。本厚木から先は、他のロマンスカー列車の中に埋没してしまった感じで、乗車してきた人も軽装のお客が多かったように思います。管理人の乗っていた車両は、グリーン車のせいかほとんど動きはありませんでしたが…。


結局、6割くらいの乗車率のまま、19時36分に新宿駅に到着しました。


このときの乗車記は、既に4か月を経ているものですから、タイムリーではありませんし、ネタの鮮度という意味では明らかに劣っています。それは管理人自身も承知していますが、ではなぜこのような「鮮度落ち」のネタを御提供申し上げたかといえば、この列車の特急券が、今年3月14日のダイヤ改正を機会に、JR東日本の管内では売られなくなったからです。

「JTB時刻表」4月号の「昼間の特急」(緑色のページですね)の「あさぎり」の項目には、この列車の特急券は主な旅行会社・小田急各駅・JR東海及び西日本の各駅で発売する旨が明記されています。

この文言からお分かりのとおり、JR東日本がすっぽり抜け落ちていますね。この列車は東京側の始発駅が小田急線という私鉄の路線とはいえ、新宿という大ターミナルにあるのですから、新宿側からこの列車に乗ろうというお客は、JR東日本の沿線に住まいがあるか、又は用事がある人が大半だと思います。なのに、そのエリアで特急券を売らないのでは、空席の有無が小田急新宿駅に来るまで分からず、来てみたら満席だったら嫌だということで、かえって足が遠のいてしまうこともあるのではないでしょうか。それ以前も東日本の駅で発見してもらうのはかなり面倒だったようで、この列車の利用率がふるわなくなったといわれてだいぶ経ちますが、その理由はこのような特急券の買いにくさにもあったのでしょう。

JR東日本がこの列車の特急券を売らなくなったことは、JR東海との不仲を裏書きする状況証拠である、などと下種の勘繰りをする気は管理人にはありません。ただ、特急券を手に入れることのできるチャンネルが減ったことで、この列車の利用がしにくくなってしまったというのは事実ですから、やはりこの列車にある意味で「引導」が渡されたという見方は、決して間違いではないと思います。


かつて当ブログでは、「あさぎり」の明日が見えにくくなっているという指摘をした記事を物しましたが、状況はその当時よりも深刻化しているように思えてなりません。思えば、RSEも来年で登場20年。車両そのものの寿命が来る時期でもあり、この列車の去就は注目しておくべきだと思います。


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