3月下特選映画【7】★映画のMIKATA「ニッポン国VS泉南石綿村」★映画をMITAK | 流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

都市生活者の心と言葉を掌にのせた小説、電脳化社会の記号とイルージョンを巡る映画、都市の孕むシンボルと深層を探るエッセイ、街の風景と季節の色を彩る短歌…。小説と映像とエッセイと短歌をブログに・・・掲載します。





さて、3月下旬の特選映画をアップロードします。今回3月上旬に3本、『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』『シェイプ・オブ・ウォーター』『15時17分、パリ行き』などを映画館で観賞、3月は通算で7本を観賞しました。選んだ特選映画1本は、原一男監督のドキュメンタリー映画『ニッポン国VS泉南石綿村』でした。


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1本目は、撮影のモデル女性を焼き殺した猟奇殺人事件の容疑者カメラマンの木原坂雄大(斎藤工)の絡むスクープ記事を狙った、ルポライター耶雲恭介(岩田剛典)の取材活動を廻る殺人事件&サスペンス映画『去年の冬、きみと別れ』(2018年、瀧本智行監督)でした。芥川作家・中村文則原作で、瀧本智行監督が制作に関わっている映画なので、私は観に行きました。昨今、「祈りの幕が下りる時」「64」とか殺人&サスペンスの作品が多くで辟易していてたのであまり期待してませんでしたが、予想以上に面白かったです。少なくても、『三度目の殺人』よりも、私はスリリングなスプロットであり、最後の逆転劇とカラクリもよく練られている作品だナ…と思いました。


週刊誌編集者・小林良樹(北村一輝)の元にカメラマン・木原坂雄大の焼死事件の真相のネタを持ち込んだルポライター耶雲恭介の企画には、事件の真相の二転三転するトリックが隠されていた…。実は耶雲恭介は、昔、金沢のローカル出版社で、童話の翻訳本を発行していた。金沢時代に会った、盲目の美女・吉岡亜希子(土村芳)は彼の本の点字本を熱心に読んでいて、それをきっかけに彼女と交際していた。ところが、突然彼の元から消えてしまった。

真相は、東京でカメラマン・木原坂雄大のモデルになって、彼の屋敷に囚われ?身を置いていた。で、その家で謎の火災と焼死事件があった。彼の罪状は、扶助が必要な人物(老年いた者、幼年者、身体障害者、病人)を置き去りにする犯罪「保護責任者遺棄罪」を裁判で問われ、罪状は殺人罪であった…。 盲目の美女の焼死の真実を究明するために、今の婚約者の松田百合子(山本美月)を餌にして、お金で雇った松田百合子と結託して木原坂を罠に嵌めるために、偽装婚約、偽装誘拐をさせていたのだった・・・。木原坂雄大と彼の姉・木原坂朱里(浅見れいな)との間の近親関係、その姉朱里と編集者・小林良樹の間にあった殺人ほう助と恋愛関係、家庭内にあった父と幼少期の姉との間ドメスティック暴力と、2人の幼少時代の殺人事件・・・等々、まだまだ隠されたカラクリと謎の複雑な糸は、映画を見て解いてください。

最近よくTVドラマや映画やCMに頻繁に顔を出す週刊誌編集者・小林良樹役の北村一輝に注目でした。ア~人格破綻した知識人の役も演技できるんだ…と驚きました。つい先日観賞した『今夜、ロマンス劇場で』の道化た映画スター俳優役の演技も面白かったですーネ。


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明治時代以来より約一〇〇年間にわたり、大阪・泉南地域にアスベストを原料とする紡織産業(自然素材の石綿と綿を撚り混ぜて糸にする生産)が、最大で二〇〇社以上もの中小零細の石綿工場が盛んに操業していました。安くてしかも断熱性と耐火性などに優れた素材と言われて、戦前は富国強兵策に乗った軍需産業で潤い、戦後は自動車や建築部材などに使われたので、高度経済景気の中で急速に普及しました。特に、この地域の経済と景気を支える地場産業でした。肺がんで亡くなったとされた、神戸製鋼の元労働者の家族が「労災認定」の申請をするトラブルをきっかけに、「泉南アスベスト国賠訴訟団」つまり、アスベスト工場の元労働者とその家族、周辺地域の住民らは、アスベスト曝露で肺ガン、中皮腫など深刻な健康被害の原因が石綿だと気付きました。そして、その実情を知りながら、国はアスベストの経済効果を最優先して、人体への危険性と環境汚染に対して、規制や対策を放置、国民を見殺しにする国の経済優先の犯罪に賠償を求めました。損害賠償を求める訴訟の争点もそこにありました。3月の2本目の映画は、肉身を次々に病死させながら、「政治」がアスベスト被害者を棄民する姿を追いかけた215分の長編ドキュメント映画『ニッポン国VS泉南石綿村』(2017年、原一男監督)でした。

 
しかし各地で継続している国家賠償を求めるアスベスト裁判の判決を始め、問題は依然尚残されています。泉南アスベスト国賠訴訟は、「石綿被害の責任は国にある」と最終的に判決で勝訴しましたが、近隣住民の健康被害と賠償は認められませんでした。経済成長と環境破壊と公害が各地で国民の健康を害していることが国民の関心の的となり、漸く、二〇〇六年九月、日本で石綿の使用が禁止されました。がしかし、首都圏でも築40から50年の耐用年数ギリギリの老朽化したビルには、健康被害の危険性がありながら、依然アスベストを使った建物が残されています。アスベストは発病までに長い潜伏期間があるので、アスベストはいつ病苦を発症するかもしれぬ「時限爆弾」とも言われています…。今も各地でアスベスト被害と補償を国に求める裁判が継続しているようです。(アスベストについては傍記サイトを参考にさせていただきました。関係資料はサイトにたくさんあります。「アスベスト訴訟、和解手続きわずか180人…泉南訴訟から3年、進まぬ救済、賠償対象者の1割未満」「アスベスト訴訟 元作業員の救済を」(時論公論)」「国が国賠訴訟促す通知、アスベスト被害の2300人」等々)
 
 
 
私は設備管理の仕事をしているので、旧いビル内に天井や壁などの建築部材にアスベストと疑わしい内装を見かけた経験があります。建設業や電気工事関係者ばかりでなく、設備管理の従事者にも健康被害がおよんでいるかもしれませんーネ。
3.11から7年経過した先日、大津波に巻き込まれ未だ行方不明の被災者や、倒壊した家屋の下敷きになった悲しみの遺族を映していました。慰霊式典はニュースで報道され、東日本大震災で倒壊した建物や家屋などの復旧作業に、自衛隊や全国のボランティアが被災地域に手を貸した善意は称賛されていますが、しかし、倒壊した地方のビルの瓦礫からアスベストが飛散 し、被曝して隠れた健康被害の可能性があるのではないかという疑惑は何処も報道しなかったですーネ…!!!。もう少し隠れた社会の底流にも報道は目を向けてほしいですーネ。私たちの身の回りに存在する今も未処理で残されたアスベストの建築部材の潜在的影響を受けた健康被害が後々顕在化することもありえます。恐ろしいですーネ、怖いですーネ…。
  
原一男監督と言えば映画現場にまつわる数々の伝説と、その果実としてのドキュメント作品が数多あります。このブログでも一度取り上げた身体障碍者を主人公にしたドキュメント「さようならCP」 (1972年)、彼の同棲相手・武田美由紀の性を赤裸々に撮った「極私的エロス 恋歌1974」 (1974年)、天皇制と戦争に翻弄された元兵士・奥崎謙三が戦争責任を追及するために軍隊関係者を訪ねるドキュメント「ゆきゆきて、神軍」 (1987年)、小説家・井上光晴の文学塾で、生きることと生活と「書くこと」の創作イデアを模索するドキュメントした「全身小説家」 (1994年)など、これらこれまでの作品をその時々にDVDなどで観賞した私としては、今回の作品「ニッポン国VS泉南石綿村」は見逃せませんでした。のでまたもや中区の「ジャック&ベティ―」の座席に座りました。東京でも渋谷の映画館、神奈川でも横浜で一館・・・、どちらもいい映画をいつもいつも上映しますーネ。最近の不満は、どこの映画館でも同じ作品を上映してるんだーナ…!!!もしももしも、ハリウッドのオスカーのように、日本アカデミー賞にドキュメント部門があればこれまでの原一男監督の作品は受賞しても良い映画でした―ネ!!!
«障害者»«男と女の性»«戦争と天皇制»«環境破壊»etc…原一男監督のこれまでのドキュメント映画を俯瞰してみると、映像による記録と映画とは何なんだ???と、私は如何しても考えてしまいます。松本清張の「昭和史発掘」ではないが、原一男監督のドキュメント映画は、近代の陰になっている故、時代の大きな流れと時間と共に風化しまう…、だが決して公の「歴史」の記録から脱色してはならない近代と昭和の淀みを映像記録として残しているの…カナと思いました。一番気づいたことの一つに、市民の声を遮り政治の前に立ち塞がる血の通ってない官僚制度と、官僚の形式合理性と事務的な対応カナ…。あの映像を見乍ら「あーこれはホロコースト裁判の時のアイヒマンだな、ただ上からの命令に従っているだけ・・・」という弁解と同じだな、と感じました。近代の官僚制度の孕む問題も映していましたーね。昨今、国会を騒然とさせている安倍自民党保守政権を廻る財務省官僚の文書改ざんも、根は同じでしたーネ。
   
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バイク便のライダーとして生活費を自力で稼いでいるララ・クロフトは、父リチャード・クラフト卿の一人娘であり、父の築いた巨大な複合企業・クラフト社の遺産相続人でもあったが、父の死を意固地にを認めず、クラフト社の経営権さえ引き継ぐサインさえしなかった。父は何処かで生きている…私を一人置いていくわけがない…と信じていた。クラフト社の総帥で、父の代わりに経営の采配を振るい、クラフトの良き庇護者であったアナは、「あなたは働く必要なんてないのよ、早く遺産相続にサインしなさい・・・」という。弁護士がララに渡した父リチャードの遺品のカラクリ箱の中には、メモ書きの紙切に書かれた、ララへのメッセージと謎が残されていた。クラフトの館の壁の奥には秘密の地下室があり、そこには「彼の最後の目的地」を示したクラフトの手帳と地図と手紙が隠されていた。そこには父のビデオレターがあった。父が企業の経営と共にもう一つ彼の生きる目的は、日本のどこかにあるとされる神話上の島、さらにその島には世界を滅ぼすほどの邪悪な力が封印されている女王の墓があることが記されていた。

 記憶を手繰りながら、ついついストーリを書いてしまった。が、さほど屈折した推理、斬新なストーリではないですーネ。A・ジョリーを一躍アクション女優にした『トゥームレイダー』(2001年公開、サイモン・ウェスト監督)、シリーズ第2弾でララ・クラフト役をA・ジョリーが演じたダイナミックで大胆な冒険、格闘技で敵対する「悪」との戦い、柔軟で身体能力に優れたトレジャー・ハンターのイメージを不動のものにした『トゥームレイダー2(200年公開、ヤン・デ・ボン監督 )』は、私の記憶の中では逸品のアドベンチャ映画でした。だから、これらの作品から比較したら、今回公開の第3弾の作品は、アリシア・ヴィカンダー主演のリブート版である『トゥームレイダー ファースト・ミッション(2017年、ローアル・ユートハウグ監督)で、何とも二番煎じで、A・ジョリーには及ばなかったです・・・ヨ。
  
A・ジョリー主演の『トゥームレイダー1&2』のストーリにあった、亡父の隠し部にあった「イルミナーティ=光の人々」という秘密結社が時空の扉を開ける鍵を見つけるために必要な«星座表»…、人類に壊滅的な災厄をもたらすギリシャ神話伝説の遺物≪パンドラの箱≫…何もかもが、A・ジョリ版の『トゥームレイダー1&2』を越えていない糞面白くないで同工異曲の映画ストーリばかりでした。ナンカ、次回作も制作されそうな終わり方でしたーネ。彼女の良き見方だと思っていたアナは…、この先は映画で堪能してください。

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4本目は、吉永小百合の主演で、北海道の大地を舞台とする北海道の厳しい自然に生きる戦中戦後の人々を描いた人間ドラマ&戦争映画『北の桜守』(2017年、滝田洋二郎監督)でした。明治期の北海道開拓を描いた『北の零年』(2005年公開、行定勲監督、那須真知子脚本)、戦後の混乱期の影を落とすソ連領となった極寒の離島の分校を描いた『北のカナリアたち』(2012年、阪本順治監督、那須真知子脚本、原案湊かなえ)に続く「北の三部作」シリーズの第3弾です。私は早速公開初日に見に行きました。

1945年ソ連軍が侵攻してきたために、敗戦濃厚な戦況の8月に、父親・江蓮徳次郎(阿部 寛)の出征によって樺太で暮らす江蓮てつ(吉永小百合)と2人の息子、長男の正太郎、次男の修二郎は、ソ連戦闘機の爆撃と射撃によって、樺太の故郷を捨て雪に埋まる極寒の大地を飢えと疲労と寒さの中を歩き続け、親戚の住む網走まで身一つで逃げるストーリです。網走でも貧しさと空腹で辛酸を舐め尽くす戦後を経験した・・・。長男の征太郎は樺太から本州へ渡航する船の沈没に巻き込まれて水死する、それが「てつ」の記憶の中でいつまでも戦争のトラウマとなって苦しめていた...。1971年、アメリカで成功を収め、社長の娘の妻・真里(篠原涼子)とともに、次男の修二郎(堺雅人)は夫婦で日本初のホットドッグ店の社長として帰国する。
戦中戦後の日本人が等しく味わった戦争による堪えがたい苦痛・・・、外地の戦場で、敗戦後にはシベリアの抑留地で身内を戦死させた悲しみと、家を焼かれ食べるものもない内地の飢餓と不安は、この作品の通奏低音ですーネ。吉永小百合さん、堺雅人さん、滝田洋二郎監督有り難う・・・。戦争を体験した日本人の心の底にたまっていた悲しみと痛みの「澱」のような戦中世代の心情をよく表現してくれてました・・・。戦後まもない昭和世代の自民党議員にはまだ多少、多くの日本人を犠牲にした…という痛恨と懺悔と、「あんな戦争は二度と味わいたくない…」という苦渋の体験と後悔が多少ありました。が、今の2世議員、平和を政治理論で語り、武力均衡論で論じるパワーゲームの政治家には、この日本人の共有する「痛恨」がなくなりましたーネ…!!!


 一番気になったのが、映像シーンの途中で舞台の上で、江蓮てつの周辺の人間や椅子やテーブルなどの小道具が、シルエットのように現れ、映像が中断される挿入の舞台シーンです。これは、「てつ」の心象風景を舞台で表現しているようです。ある場合には、てつが行方不明になった時に、雨の降りしきる桜の木の下で、樺太の「江蓮製材所」の近くにあった、北国で初めて咲いたの桜の木の記憶に残る、傷ついた桜の幹に糊に溶かした墨を塗りこんでいた姿から、疲弊したてつを発見した病院に担ぎ込んだ時にこの舞台風景が現れました…。てつの記憶の中の戦争の傷の「心象風景」を幻想的に演出しているようですーネ。えー、滝田洋二郎監督は舞台演出もするのかーナ、とそのマルチな才能に驚きましたが、これはケラリーノ・サンドロヴィッチ( 劇団「 ナイロン100℃」主宰。本名は小林 一三)の舞台演出だったようです。私の印象としては、映画のストーリをブツブツと寸断する舞台風景の挿入によって、映像から喚起されるカタルシスを壊してしまう気がしました・・・。


もう一つ気になったのが、次男の修二郎が妻・真里と共にアメリカから帰国して、生き残った網走時代の人たちの無事を感謝するのに、修験道のように長い急な階段を上り、鎖につかまりながら険しい坂道と断崖の岩を攀じ登って、その先の山頂にあった小さな祠へ参拝するシーンがありましたーネ。あのロケ現場は何処かな…???意外と私は神社やお寺や墓地が好きなんで、私も参拝したいと感じ、あちこちネットを探しましたが、分かりませんでした。日本全国彼方此方に点在する、古く神道の源流とも言われ、古事記で伊邪那岐命と伊邪那美命が天照大御神の次に産んだ弟の「月読命」を祀った神社の大元とされる長崎県の離れ島にある「壱岐」を訪れたこともあるモノ好きなので、あの映画に刺激されて、是非一度参拝したくなりました。

 
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