2006年01月07日(土) 03時06分39秒

「沢蟹まけると意志の力」 佐藤哲也 2006-004

テーマ:--佐藤哲也

借りた本には本帯がついてまして、そこにはこう書かれてました。
「小説だからって、フザケるのもいい加減にしろ!」

・・・格好良いです。

・・・ということで、決して総評の点数は良い方ではなく、読書中も何度も読了をあきらめようとすることで個人的に有名な佐藤哲也氏のデビューから2作目の作品です。
ちなみにこの書評の間では、著者の作品を結構ご紹介していますが、広くご紹介するには憚れる作家さんです。(良い意味も含めて・・・)

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佐藤 哲也
沢蟹まけると意志の力

出版元
新潮社
初版刊行年月
1996/07
著者/編者
佐藤哲也
総評
15点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:2点 
読了感:2点 
ぐいぐい:2点 
キャラ立ち:2点 
意外性:4点 
装丁:3点

あらすじ
今、とぼけた調子で、世に問う。世界一弱いヒーロー活躍、天才・サトウのナンセンス・ワールド!カニジンジャー沢蟹まけるは改造人間である。彼を改造したマングローブは世界征服を狙う秘密結社である。沢蟹まけるは人間の自由のためにマングローブと戦うのだ。<<本帯より抜粋>>


決して過大でもなく過小でもなく、すなわち過不足なく『あらすじ』の通りの物語です。
沢蟹まけるは、カニジンジャーに改造されます。
マングローブからは標準化委員会で決められた命名規約に基づき「イカジンジャー」とか「ブタジンジャー」とか「ネギジンジャー」とか登場します。
最後の最後にはマングローブの帆立貝会長自ら「ホタテジンジャー」(標準化外)になり、裏切り者のカニジンジャーを倒そうとします。

ここまでくるとホントに
「小説だからって、フザケるのもいい加減にしろ!」
ってなってしまいます。

ですが、一筋なわでいかないのが佐藤ワールドなわけです。

「沢蟹まける と 意志の力」というタイトルの通り、きっちり「意志の力」について哲学風な解釈を繰り返しちゃうわけです。具体的には、だいたい章立てを交互に「沢蟹まけるの章」と「意志の力の章」にわけているわけです。

そして「意志の力」を説明するため、例えばそれは、十九世紀初頭、リヨン湾における英国海軍戦列艦の一場面を引用し、例えばそれは、1943年、アイトフォーフェン上空千五百メートルにおける出来事を引用します。

しみじみタイトル負けしていない作品です。

ラストには、この沢蟹まけると意志の力が融合し、こんな感じで締めくくられます。

(以下文中より引用)
意志は言うまでもなく意志である。意志の力もまた意思であった。そして意志は「あれ」と言い、意志の力もまた「あれ」と言う。ひとはその思惑によって、あるべきことを凝視するのだ。「ない」は絶えがたい。ひとは常にあろうとする。その心によって「ある」を睨み、そこへ向かって一歩でも近づこうとする。それが意志の力である。もう一度確認しよう。意志の力は不可能を可能にする力ではない。手段でもなく、目的でもない。それはひとが「ある」ための力なのである。

・・・どうです。やっぱり、さっぱり分らないでしょ?
やっぱり、総評の点数は良い方ではなさそうでしょ?
やっぱり、読書中も何度も読了をあきらめちゃいそうでしょ?

でも、どうして借り出してしまうのでしょうか?
ここまで来ると、理屈ではなく本能で欲している”としか言いようがありません。

・・・

ということで、日本語大好き「佐藤哲也」をこれからも応援していきます。

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2005年12月15日(木) 22時23分45秒

№136 「イラハイ」 佐藤哲也

テーマ:--佐藤哲也
え~最近、このフォーマットになって、採点(らしきもの)をご披露しちゃっていますが、早速「採点の詳細」に自分自身にケチをつけちゃいます。
この「採点の詳細」って”至極、まともな本にしか評価点がつかない”風になってまして、まさにこの「イラハイ」には、極めて逆風(アゲインスト)なわけです。
なもんで、無視しちゃってください。無視無視。

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佐藤 哲也
イラハイ
出版元
新潮社
初版刊行年月
1993/12
著者/編者
佐藤哲也
総評
13点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:2点 
読了感:3点 
ぐいぐい:1点 
キャラ立ち:2点 
意外性:3点 
装丁:2点

あらすじ
婚礼の日にさらわれた花嫁を追って、波瀾をのりこえて駆ける青年の冒険の物語…。「贅沢な遊び、これこそがファンタジー」と絶賛された新古典。<<本帯より>>


さんざ、前述で毒づいちゃったのであれですが、この本は、物凄く読者を選びますし、物凄くTPOを選びます。
しかも両方の条件に合致しないと、ちゃんと評価できません。
ちなみに、私自身は「選ばれた読者」なわけで、全然OKでした。
ただ、この師走に読む本じゃなかった・・・

例えば、忘年会の帰りの電車の中で、この本を読むと、くらくらします。
例えば、残業が続いて、身も心も疲労困憊で、この本を読むと、これまたくらくらします。
その「くらくら」が、気持ちの良いものであれば、良いのですが、ま、大抵「辛い側」なわけです。

物語は、まったくもってあらすじにあるとおりで、「婚礼の日にさらわれた花嫁を追って、波瀾をのりこえて駆ける青年の冒険の物語」です。
なので、もうこれ以上、あらすじについては、語りません。

ですが、ここはアノ(*1)佐藤哲也氏のデビュー作。
「日本語遊び」盛りだくさんなのです。
圧倒的に語り続ける文体。
終わりのない哲学的・思想家的やりとり。
そして、悪戯好きなイルカとマタグリガエルなのです。

だってメインストリームの冒険がはじまるのが、半分過ぎた辺りからで、それ以降も、まったくもって主人公たるウーサンは、黙して語らず、なんならこの不条理な世界の唯一の傍観者だったりします。

主人公なのに、物語の片隅追いやられるという構図

これ自体が佐藤哲也氏に見る「高尚な物語」なわけです。

ということで、興味のある方は、暑過ぎず寒過ぎず、要するに春か秋、比較的長い間ぼ~っとできる時間帯を選んで、お読みください。決して後悔はいたしません。

(*1)コノ佐藤哲也氏。本書以外の書評
「熱帯」 佐藤哲也
「妻の帝国」 佐藤哲也

◆◆◆◆◆◆◆◆以下、ちょっとした情報。◆◆◆◆◆◆◆◆

アノ伊坂幸太郎氏が、コノ「イラハイ」を絶賛しているのですよね。
証拠はこちら
WEB本の雑誌>【本のはなし】作家の読書道-第31回:伊坂幸太郎 より


以下、抜粋

佐藤哲也さんの『イラハイ』。これはうちの奥さんもお気に入りですが、最高です。高校の教科書に載せればいいのに、と思うくらい(笑)。ファンタジーというと、僕は魔法や剣が出てくる話は得意ではないのですが、これは全然違う。応募した後のデビュー直前に読んだのですが、これを読んでたら“すでにこんなに面白い人がいるのに”って、怖くて書けなくなっていたかも。たとえば、「冒険が始まったので、ウーサンは走った」っていう、そういう表現だけで幸せな気持ちになります。すごく小説的でしょう? 映像では絶対に見せられない。小説を読む喜びってこういうことなのかなって気づきました。

・・・「高校の教科書」って、・・・確かに、あの頃読んでいたら、人生も変わっていたかもしれません。
ということで、本当の伊坂ファンは、これを読んじゃってください。
でも好きな本と書いている本は、圧倒的に違いますから気をつけてください。

そういえば、私と佐藤氏の出会いも「熱帯」の本帯の紹介文が、伊坂氏だったからでした。

そのときの紹介文は
「”佐藤哲也と同じ時代に生きることができて、そしてその作品を母国語で読めるということを、僕達はもっと誇っていいと思う。---伊坂幸太郎”」

うんうん。母国語じゃないと、この不思議感は味わえませんわな。そりゃ。

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2005年06月24日(金) 00時30分16秒

「妻の帝国」 佐藤哲也

テーマ:--佐藤哲也
著者: 佐藤 哲也
タイトル: 妻の帝国

「熱帯」の佐藤哲也氏の02年6月刊行の作品。
不思議な雰囲気を持つ、そして精神的にやられてしまう作品です。
世界観はファンタジーとして高レベル。
前半は、やや言葉の意味を理解しながらですので、読書ペースはゆっくり目ですが、世界が変貌してしまうあたりから、ラストまでは、ぐいぐいいっちゃいます。

直感による民衆独裁のみを肯定する民衆国家の構築をもくろみ、毎日大量の手紙を民衆細胞に当てて投函する「わたし」の妻である「不由子」。その手紙を読んだ民衆細胞の一人である無道大義は、自分のなすべきことを知る。そして、運命の「特別行動計画実施」の日である6月9日から、無道大義と同様な思いを持った民衆によって、世界は異様な形を成していく。最高指導者を妻に持つ「わたし」。そして民衆細胞として目覚めてしまった者達の可笑しくも悲哀の物語。


本書は、さりげなく生活をしているある夫婦の出来事が、世界を変えていくというとんでもない話です。


こんなことを思いました。
例えば、わたしの妻が家に閉じこもり具体的な住所・氏名を書いていない手紙を書き続け、切手を貼って投函しているとしたら、この本書の「わたし」と同様に、切手代の文句は言うし、圧倒的に不思議だと思いはするものの、基本的には邪魔にならないように、気分がよければ応援をしたりするんだろうなぁと。


また、こんなことも思っちゃいました。
で、この手紙が、直感のみでしか理解し得ない内容で、またその内容を読んだ人々が、「民衆の感覚」を持って、直感的に行動を起こすこととなり、行動の結果、悲惨な世界が形成されたとしても、やっぱり、その原因であろう妻本人を責めることはないだろうなぁと。


心のどこかでは、本書のファンタジーをありえないことと否定しているのでしょうけど、例えば、内容が不明の手紙を出し続ける行為そのものは、妻が私の承諾もなく、通信販売のステッパーを購入したりすること(事実)と、極めて類似の出来事だったりするんだろうなぁと思うわけです。
また、原因であろう妻本人を責められないこと自体も、世の旦那さまなら、当たり前のルールだったりするわけです。


本書の後半で、あまりにも悲惨になった世界にいる「わたし」と元職場仲間(青沼)が語り合います。


青沼は鼻から息を吸い込んで一気にこう言った。
「あんたが、あんたの女房をぶん殴って、言うことをちゃんと聞かせていれば、そもそもこんなことのにならなかったんじゃないのかい?」
いつかは誰かに言われるであろうと思っていた。答えは前から準備していた。
「そんなことはない」
「そんなことはない?」
青沼の口から溜め息が洩れた。首を振りながらこのように言った。
「悪かった。気にしないでくれ。言ってみただけだ」


この一節は、私を加えた圧倒的に大多数の旦那さま達に、何かのメッセージを残しています。
異口同音で、似たようなことを独りで思ったりしていませんかね。
私は良く思います。でも幸せなのです。ははは

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2005年06月04日(土) 22時23分38秒

「熱帯」 佐藤哲也

テーマ:--佐藤哲也

著者: 佐藤 哲也
タイトル: 熱帯

可愛い表紙、佐藤哲也氏の「熱帯」。
アマゾンのイメージには、帯がないんですけど、実際の帯には、こんな推薦文が記載されておるのです。

”佐藤哲也と同じ時代に生きることができて、そしてその作品を母国語で読めるということを、僕達はもっと誇っていいと思う。---伊坂幸太郎”

この「母国語」ってのがポイントです。

簡単にストーリを紹介すると・・・

とにかく暑くなった日本。不明事象を管理する不明省に勤める多々利不運の家のエアコンの室外機が何者かに爆発させられる。それは、気候風土における無謬性を確信している愛国的気候論者の全国組織「大日本快適党」とその党首であり、不運の叔父である多々利無運によるものだった。一方の大日本快適党の党本部の向かいにある赤井屋システムでは、不明省のシステムの改修プロジェクトを遂行(?)していた。不明省が不明の事象として管理している「事象の地平」を狙う大日本快適党。
不明省プロジェクトは無事に完了するのか?
大日本快適党は「事象の地平」を奪うことができるのか?
そして、極めて一般的な登場人物の多々利不運の運命は?

・・・

よく分らないですよね?
はい、ストーリは、はっきりいってよく分らないのです。
書いてみて気がつくのですが、この物語自体は、比較的ハードボイルド路線で、実際にCIAとか元KGBとかでてきちゃいます。国際問題だったりします。
ただ、ついでに(かわいい)水棲人や、「部長もどき」(という得体の知れないもの)が登場しちゃったりするので、なんだか大変な訳です。

で、先の「母国語」という観点で本書を意識し、日本語の文章(もしくは文章構成(もしくは表現方法))のあり方としてとらまえると、結構面白かったりします。

例えば、同じ文章を繰り返し引用することで、その場面の回想を引き出したり、別の場面の文章構成を、他の場面の登場人物に語らせたり(メタ的引用)します。

上記の手法とは関連しませんが、中学生の頃に読んだ高橋源一郎氏の「さようなら、ギャングたち」を思い出しました。
両者に共通していることは、「日本語に対する愛」だったりするのです。と勝手に思っています。

同著者の別の本も読んでみたくなりました。意外にこういうの好きです。

PS1
かわいい水棲人のイラストが描かれている表紙に一目ぼれして借りた本書でしたが、装画担当は、ほしおさなえさん だったのですね。ちょっとびっくり。

PS2
赤井屋システムのなかなか進まないシステム開発の現場雰囲気は、独立系SI企業のSEの皆様には是非、通読いただきたいです。世の中に出回っている、SE読本より、リアルです。なんで”デスマーチ”が起こるのかが、よ~く分ります。
*デスマーチ:予定の開発期間を過ぎても、まだまだ終わらないプロジェクトのこと。

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