2007年03月15日(木) 00時16分42秒

「オレンジの季節」 鯨統一郎 2007-034

テーマ:--鯨統一郎
鯨統一郎氏「オレンジの季節」読了しました。
本帯には「鯨統一郎が放つ、本格家族小説!?」と書かれております。
ま、正直”!?”が怪しいと思っていたのですが、(そうきたか~、でもね~。)といった感じです。

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鯨 統一郎
オレンジの季節
出版元
角川書店
初版刊行年月
2006/07
著者/編者
鯨統一郎
総評
20点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:3点 
ぐいぐい:3点 
キャラ立ち:3点 
意外性:3点 
装丁:4点

あらすじ
会社員の立花薫は、憧れの上司・戎怜華にプロポーズした。怜華が突きつけた結婚の条件は「薫が専業主夫になること」だった。泣く泣く会社を辞めた薫を待っていたのは、大家族である戎家のしきたりと膨大な量の家事だった。専業主夫として慣れない家事に忙殺される薫。やがてストレスが爆発しそうになったとき、戎家である事件が起き―。 <<Amazonより抜粋>>


それなりに出世欲もありつつ、結婚するために専業主夫を目指す、男と、その嫁いでいった先の家族の物語です。

非常にリアリティがあって、改めて(極めて個人的に)(この環境は、私は無理だな~)などと、思ったりしました。
仕事に忙殺している時は、憧れちゃったりする主夫ライフですが、これは面倒ですね。
ってくらいリアリティーのある専業主夫が描かれています。

そういった意味では、本帯の通り、とても本格的な家族小説なのですね。

で、この家族ってのが、それほど問題もない、いわゆる”上の中レベルの家族像”であり、これまた普段の家族なもので、よりリアリティがあったりします。
頑なな父親が居て、理解ある母親が居て、歓迎する娘が居て、拒否する弟が居て、寝たきりの祖母がいる。そんな構成です。
ま、物語ですから、それなりに事件が起こりますし、ご近所付き合いの難しさ(というか鬱陶しさ)とか、洗濯物はどうやって洗うとか、まったくもってマイノリティーな世界でありつつ、その中での王道を描いており、前述した、(極めて個人的に)(この環境は、私は無理だな~)などと、思ったりするのでした。

と、まぁ、ここまではいいのですけど、本帯の「!?」にあたる部分について触れたいと思います(ややネタバレ)

よくよく本の章構成を先読みするとなんとなく「!?」になったりするのですが、ラスト前に、唐突な展開が訪れます。

「これは意外(賞賛!!)」と言いたいところなのですが、正直「なんでこの展開にしちゃったのだろう??」と、”!!”より”??”が先に立ってしまいました。(なもんで、意外性は淡々と3点だったりします)
はっきりいって、何を目的にこの展開を持ってきたのでしょうか?
まさか、大きな世界観の序章だったりして

もやもやした感じの感想ですけど、是非手にとってお読みいただければと思います。
「ラスト前までのリアリティー家族小説+これは何が目的なのラスト」という一度で2度美味しい(本当か?)作品です。

楽しめればいいじゃないと開き直りたいところですが、それにしちゃ、よく分らんラストでございました。
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2006年06月11日(日) 21時14分42秒

「KAIKETSU! 赤頭巾侍」 鯨統一郎 2006-071

テーマ:--鯨統一郎
意外に多くの作品を紹介させてもらっている鯨氏作品。
装丁を見てもお分かりのとおり、どうやら「ライト感覚」で読めそうな雰囲気でしたが、まったくもって「ライトな感覚」で読み終わりました。

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鯨 統一郎
KAIKETSU!赤頭巾侍
出版元
徳間書店
初版刊行年月
2006/02
著者/編者
鯨統一郎
総評
19点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:3点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:3点 
意外性:3点 
装丁:3点

あらすじ
正義の味方・赤頭巾侍。いささか直情径行の気味あり。悪漢を切り捨てた後に苦しまぎれの“こじつけ”推理が炸裂!!しかも毎回。早トチリの剣豪の活躍を描く、異色の時代ミステリー。 <<Amazonより抜粋>>


江戸時代の粗忽者の剣豪が主人公の、8編の中編集なのですが、これ以上ないってくらい、同じパターンの繰り返しです。
これは、一般的には読む勢いを止めてしまう要素になりえますが、個人的には2編目辺りを読んで、「それはそれ」ってことで許せました。

前述のように、読み手も軽い気持ちで読み続ければそれで、良いのです。

ざっとどんなパターンかというと・・・

①悪巧みしている悪党の描写(その他伏線)
②その悪党の悪事の描写(まぁ、理不尽な人殺し)
③主人公・久留里一太郎、その事件を知り、とにかく悪党を成敗しようと家を出る
④主人公・久留里一太郎、瓦版屋の勘太から、思い込みの下手人と思われる人物を聞く
⑤主人公・久留里一太郎、赤頭巾侍となって、問答無用に斬る
⑥主人公・久留里一太郎、同心・小田左右衛門丞和正から、赤頭巾侍の斬ったものは下手人ではないと宣告される
⑦主人公・久留里一太郎、悩んだ挙句、とってつけたような推理で、赤頭巾侍(自分)の斬ったものが下手人であることを証明する
⑧いろいろあって、寺子屋のシーン。物語に沿った江戸時代のトリビアネタを披露して、終焉。

上に記述していないものも含めて、きっちり同じパターンなんですね。(8編目だけやや違いますが)
で、ポイントは④で、聞き出した下手人(この時点ではあくまでも容疑者)を、⑤で簡単に斬ってしまう点。
そして、⑥で違うといわれて、⑦で懸命に「後付推理」をする点ってとこでしょうか

この辺りのアレンジの違いがあれど、この同一パターンってのは、テレビ連続ものの「時代劇」をパロディー化しておりますね。
あの一種独特な、勧善懲悪の世界をパロディーにしつつ、順番を変えてみたといった感じです。
起承転結の転結が、結転に逆転しているんです。

そういった意味でも、しつこいようですが、お煎餅でも食べながら気軽に読んでいただければ良いでしょうね。

ちなみにこの「赤頭巾侍」は、下手人を「狼」と例えており、童話「赤頭巾ちゃん」の逆もいっております。
・・・逆転好きのようです。

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2006年01月30日(月) 21時12分00秒

邪馬台国はどこですか? 鯨統一郎 2006-0013

テーマ:--鯨統一郎
鯨氏のデビュー作にして代表作である「邪馬台国はどこですか?」を読了しました。

読みやすい歴史小説が結構好きな私。
実はそこにミステリー要素があったりすると震えてしまう私。
そんな私にはぴったりの作品です。

私を「貴方」に読み替えて、同意いただけて、かつ未読の方は、是非本書を読んでみてください。
それぞれの説にいろいろと驚かされますよ。(ということで、やや反則気味ですが『採点の詳細』にある『意外性』が5点ということです。)
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鯨 統一郎
邪馬台国はどこですか?

出版元
創元推理文庫
初版刊行年月
1998/05
著者/編者
鯨統一郎
総評
18点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:3点 
読了感:2点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:2点 
意外性:5点 
装丁:2点

あらすじ
カウンター席だけの地下一階の店に客が三人。三谷敦彦教授と助手の早乙女静香、そして在野の研究家らしき宮田六郎。初顔合わせとなったその日、「ブッダは悟りなんか開いてない」という宮田の爆弾発言を契機に歴史談義が始まった…。回を追うごとに話は熱を帯び、バーテンダーの松永も教科書を読んで予備知識を蓄えつつ、彼らの論戦を心待ちにする。ブッダの悟り、邪馬台国の比定地、聖徳太子の正体、光秀謀叛の動機、明治維新の黒幕、イエスの復活―を俎上に載せ、歴史の常識にコペルニクス的転回を迫る、大胆不敵かつ奇想天外な作品集。<<Amazonより抜粋>>



鯨氏の書評登場回数はこれまでで3回。
「ミステリアス学園」
「九つの殺人メルヘン」
MORNING GIRL

どれも、それぞれ違う世界観だったりしますが、この代表作は、あまり作家が育たないと言われている「歴史考証もの」です。

カウンター席だけの地下1階の店「スリーバレー」に集まる3人+バーテンダーが、数多ある代表的な歴史の謎について語り合い、その中の一人である宮田六郎の新説に驚かされる作品です。
このシチュエーション自体は既読の「九つの殺人メルヘン」に近いものがあります。

短すぎず長すぎない6編の短中編が所収されていて、取り上げられている謎は、以下の6つ
・仏陀(ブッダ)は悟りを本当に開いたのか?
・邪馬台国はどこにあるのか?(本タイトル)
・聖徳太子の正体は誰なのか?
・本能寺の変は何故起こったのか?
・明治維新は何故起こったのか?
・イエス・キリストの復活劇の謎?

・・・ま、ちょっと歴史に興味のある方なら、大いなる謎の数々なのですが、この宮田六郎の大胆な新説は、この謎のすべて解決し、なおかつ論理的に証明してしまうわけです。

個人的には、中世から近世に渡る日本史に興味があるので、本能寺の変だとか明治維新あたりが大変面白く読めました。
特に本能寺の変は、今でも謎が多く残り、この事件をモチーフにした数々の小説や考証がなされていますけど、この六郎説は、気持ちが良いほどに論理的に解決してしまっています。
当然ながら説の一つでしかないとは思いますが、事件そのものを多面的に捉えつつ、織田信長のそれまでも奇行と照らし合わせて、あの結論を導いているのは、読物としての興奮とは別に、考証としての納得感があるわけです。

歴史考証ものという点では、高田崇氏の「QEDシリーズ」がありますが、あちらはどちらかといえば、その考証を説明すると同時に現実に起こる事件も解決するスタイルであり、ちょっとした紀行ものの雰囲気もありますが、こちらは小さなバーの中の酒飲み話に終始するところが大きな違いです。

このような定点があまり動かない物語(静的)ではありながら、これだけ物語世界に引き込まれていくというのは、「謎とき」の本性をきっちり掴んでいる証拠なのでしょう。

本書の姉妹作に「世界・・・」というものもあるようですので、機会があれば読んでみたいと思います。

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2005年10月22日(土) 01時30分00秒

「MORNING GIRL」 鯨統一郎

テーマ:--鯨統一郎

鯨 統一郎
Morning girl

05年7月刊行。この書評の間では大変珍しい新刊本です。(とはいえ3ヶ月前ですが・・・)
ミステリアス学園 」だとか「九つの殺人メルヘン 」の鯨氏なのですが、前述した2作とは雰囲気が違う作品です。
この小説自体の趣向は個人的にお気に入りです。シチュエーションもそこそこOK。
で、ミステリのテーマが「何故、人は眠るのか」という壮大なもので、これはこれで個人的には好きなのです。


人類の睡眠時間は日ごとに減っていった。地球では放射能汚染が広まり、オゾンホールからは紫外線が容赦なく降り注ぐ。スペースアイランド“飛翔”でも、睡眠時間減少は変わらなかった。そこで科学者たちが集まってその謎を解こうとするのだが…。すべての鍵は「眠り」にあった。

前述した個人的にお気に入りの趣向とは、架空の作家(アーサー・J・クック三世)の作品を、たまたま手にした鯨氏が、日本で出版したいと思い立ち、この無名作家の翻訳をして発表したという点
ちゃんと訳者前書きがあったり、それなりに表紙があって物語が始まります。
たまに見る趣向ではありますが、こういったこだわりって意外につぼなんですよね。

で、さらなるこだわりは、文体そのものにも現れていて、舞台の台本のように会話部分にちゃんと登場人物が書かれている点
ですので、本を何気なく開くと、何かの脚本と勘違いしちゃいます。
その架空作家であるアーサー・J・クック三世氏曰く「未来に書かれた作品の現代語訳」となっておりますが、この文体はなかなか面白かったです。
意外にすらすらと読めますね。

さて、そんなこんなで物語そのものですが、概略にもあるとおり宇宙空間で生活をするようになっている未来の話であり、原因が見つからないまま、人の睡眠が徐々に短くなっていく(でも体調は普通)というシチュエーションです。
この原因を究明し、解決しようとプロジェクトチームが発足されますが、そのリーダーはあることをきっかけにリーダーの職を解任され、独自のチームを結成し、原因をあれやこれやと検討していきますが、この検討過程において、眠るという行為そのものの正体や眠る間に見る夢の正体などの仮説があるときは科学的にあるときは精神論として、繰り広げられます。
ごくごく当たり前のように「眠る」我々にとって、この謎は、もしかしたら最も身近にある、最も大いなる謎なのかもしれません。
そういった謎を解いていくという大胆な話なわけです。

で、ラストにはこの物語としてのきっちりとした結論を出しているところに好感が持てました。
だいたいにして裏切られがちなこの手の謎ですが、この小説内では、本当にきっちり解決しています。内容そのものは(そうきたか~)って感じではありますが、曖昧になるよりはよっぽどよいですね。

ちなみに冒頭の架空作家の翻訳というシチュエーションを裏付けるのは、巻末の参考文献欄です。
見落としがちですが、ちゃんと英語(というかローマ字)を読み取れば、それが日本の文献であることは知り、
”にやり”としてしまいました
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2005年03月06日(日) 22時07分44秒

「九つの殺人メルヘン」 鯨統一郎

テーマ:--鯨統一郎


著者: 鯨 統一郎
タイトル: 九つの殺人メルヘン

ぐいぐい読めました。
日本酒を出すバーにいつも集まる刑事、犯罪心理学者、マスターの「厄年トリオ」。そこに女子大生が現れ、刑事が抱えている事件を、童話の新解釈になぞらえて解決してしまうという話。

本筋にあるアリバイトリックの解決もさながら、事件の話の前に厄年トリオが話すお酒の話(例えば、本醸造と純米酒の違い)や懐かしい子供の頃の話(例えば、子供のころに良く見たクイズ番組の紹介)などの雑談が面白いです。
特に子供の頃の話は、現在40代以降の方であれば懐かしいと思われるはずです。
・・・私は、知っていたり知らなかったりです。「ガンバコ」・「ドロケイ」(子供の頃の遊び)あたりはヒットでしたが。

また一時期、流行った童話の新解釈についても興味を持ちました。
無理やり感がありますが、その新解釈が事件解決に繋がっていく点は、なるほど考えられた物語です。

淡々と事件が解決されていくなか、最終章である9章で、きっちりオチをつけてくれる辺りも、連作短編でありがちな「流れてしまう」感がなく、よかったです。

ちなみに、このアリバイトリックは、有栖川有栖氏の9つの分類に沿ったものなんだそうです。で、紹介しておきます。(どの短編がどの分類かであるかを分からないように順不同で書き連ねています。)

①アリバイがない
②ルートに盲点
③誘導
④証拠物件が偽造
⑤証人に悪意
⑥証人が錯覚
⑦犯行推定時間に錯誤
⑧犯行現場に錯誤
⑨遠隔

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2005年01月22日(土) 21時20分30秒

「ミステリアス学園」 鯨統一郎

テーマ:--鯨統一郎


著者: 鯨 統一郎
タイトル: ミステリアス学園

いわゆる「作中作」「メタもの」の部類でしょうか?
文中にこの小説の的確な表現があったので引用します。それは「マトリョーシカ」です。

最終話を含めて全7章からなる構成ですが、6話までの話が、入れ子構造となっています。すなわち2話が1話を包含し、3話が2話までを包含しています。繰り返していくと6話までが、前回の話をすべて包含しています。
そして最終話で語られる、本当の真実(あえて「本当の」と修飾しています)。
最初とラストの一文ずつでこの物語全体を包括しているのは、秀逸だと思います。

ミステリアス学園のミステリ研究会のメンバーが巻き込まれる数々の事件。それらを解決するとたびに、何かが壊れていく。

個人的にはこの手の話は好きだったりしますが、同一のパターンの繰り返しに、やや「胸焼け」がしてきました。このような小説について驚きを持って接することができないということ自体がもしかしたら不幸なのかもしれないと思わせる作品でした。

また、作中で大いに語られる「ミステリ講義」は、なかなかためになるものでした。「本格」「新・本格」「社会派」「ハードボイルド」などのカテゴリの説明。「密室」「アリバイ」など、あまたのミステリの定義や、果ては、「キャラ萌え」の説明など。実際の著作・著者を文中に紹介しつつ、それらの評論をしている点については、ふむふむと思うことも多かったです。

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