2007年04月07日(土) 11時59分07秒

「平面いぬ。」 乙一 2007-042

テーマ:--乙一
お気に入りの作家さんのひとりである乙一氏の「平面いぬ。」読了しました。
ちなみに、もともと「石ノ目」という単行本があって、それを文庫化するにあたり改題して「平面いぬ。」としたようです。
確かに、「石ノ目」よりは「平面いぬ。」のほうが、キャッチーですね。

amazonリンク

乙一
平面いぬ。
出版元
集英社文庫
初版刊行年月
2000/07
著者/編者
乙一
総評
21点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:3点 
意外性:4点 
装丁:3点

あらすじ
わたしは腕に犬を飼っている――。ひょんなことから居着いてしまった「平面いぬ」ポッキーと少女の不思議な生活。天才・乙一のファンタジー・ホラー傑作集。『石ノ目』改題。 <<Amazonより抜粋>>



4つの中編が所収されています。
4つの作品とも、ホラー要素と筋書きの面白さは、ばっちり乙一テイストですが、その後に刊行された「失われた物語」や「ZOO」に所収されている中短編群と比較をすると、やっぱり未熟な感じがしました。

裏を返せば、それら最近の作品が、どんどん面白くなってきているという証なわけですけど。

4つの中編をそれぞれご紹介します。

「石ノ目」
作品全体のトーンは、京極堂シリーズにも似た感じです。
よくある伝承モノといってしまえば、伝承モノ。
この手の物語にありがちな、あいまいなままの収束感はなく、世話をする老婆の正体と、目にしたものを石にしてしまうことそのもののからくりが、はっきり分るのできるので、読後はそれなりにすっきりします。
潔い感じ

「はじめ」
自分の悪いことをすべて引き取ってくれる架空の人物「はじめ」が、妄想の世界から現実に訪れるといった話。
ファンタジーですね。
2つの世界を行き来する「はじめ」自身のあり方が切ないです。

「BLUE」
醜いぬいぐるみ「BLUE」の話。
よくある寓話なのですが、結末は乙一テイストでやるせない感じです。

「平面いぬ。」
表題作です。中国人に彫ってもらった犬の刺青が体表面で生きていくという話。
これもファンタジーなのですが、家族愛とからめて意外に深い作品だと思いました。

前述したとおり、これより刊行時期の遅い作品と比較してしまうと物足りない部分もあるのですが、ちゃんと乙一しております。

AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2007年03月25日(日) 21時56分13秒

「小生物語」 乙一 2007-037

テーマ:--乙一
小生≒乙一であり小生≠乙一という不可思議な徒然物語「小生物語」読了しました。

amazonリンク

乙一
小生物語
出版元
幻冬舎
初版刊行年月
2004/07
著者/編者
乙一
総評
20点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:2点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:4点 
意外性:3点 
装丁:4点

あらすじ
驚天動地、奇々怪々、前代未聞、無我夢中、陰翳礼讃、波瀾万丈…。小生と乙一の161日。著者のホームページ及び、Webマガジン『幻冬舎』連載に加筆・訂正を加えて単行本化。<<Amazonより抜粋>>


「小生物語」といっても厳密には物語ではなく、「まえがき」で著者が述べているとおり「ネットで書き散らした日記のようなもの」なわけです。(ちなみにこの「まえがき」だけ読んでも、卑屈感があって秀逸です)

なのですが、かといって純粋な乙一氏の日記なのかといわれれば、これは「あとがき」で著者が述べているとおり、「そうでもない」。(これまた、ちなみにこの「あとがき」は、大概のあとがきが、そうであるように、ちゃんと後で読んだ方が面白いことになります

正直、内容全体は「本が売れてしまった若い作家のだらだらとした日常」ってことなのですが、要所要所に乙一的挿話が挟みこまれています。
それは単発、要するにその日の物語として収束されるもの(例:映画館で同席していた泣きやまない子供とその母親)から、継続的に日記に組み込まれるもの(例:お気に入りのソファーと、それについてきた少年)まであります。
このあたりの日常のダラダラ感と、非日常的挿話の見せる微妙なズレ感があいまって、これが意外に面白かったわけです。

とはいえ、前にお断りの通り「物語」ではないので、ストーリー性があるものではなく、ただただ人の日記といわれればその通りなので、ある程度の「前向きな読み手ごころ」が必要かも知れません。

氏の作品にそれなりに敬意をもてる方々なら、「好きな作家のエッセイとして」読むことができると思いますので、そんな感じで読んでみてください。
AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2006年12月26日(火) 22時03分39秒

「銃とチョコレート」 乙一 2006-167

テーマ:--乙一
”かつて子どもだったあなたと少年少女のための”講談社ミステリーランド
第十回配本「銃とチョコレート」読了しました。

amazonリンク

乙一
銃とチョコレート
出版元
講談社
初版刊行年月
2006/05
著者/編者
乙一
総評
20点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:3点 
ぐいぐい:2点 
キャラ立ち:4点 
意外性:3点 
装丁:4点

あらすじ
少年リンツの住む国で富豪の家から金貨や宝石が盗まれる事件が多発。現場に残されているカードに書かれていた【GODIVA】の文字は泥棒の名前として国民に定着した。その怪盗ゴディバに挑戦する探偵ロイズは子どもたちのヒーローだ。ある日リンツは、父の形見の聖書の中から古びた手書きの地図を見つける。その後、新聞記者見習いマルコリーニから、「【GODIVA】カードの裏には風車小屋の絵がえがかれている。」という極秘情報を教えてもらったリンツは、自分が持っている地図が怪盗ゴディバ事件の鍵をにぎるものだと確信する。地図の裏にも風車小屋が描かれていたのだ。リンツは「怪盗の情報に懸賞金!」を出すという探偵ロイズに知らせるべく手紙を出したが……。 <<Amazonより抜粋>>


児童書と言われれば、確かに難しい言い回しや漢字は使用せず、使われている漢字には、ルビがふられています。
それに加えて、文体は極めてジュブナイル。

いやいや意外に読みづらいですね。ははは

ということで、主人公リンツ少年の一人称で物語が進みます。

怪盗ゴディバに探偵ロイズ、そして探偵に憧れる物語の主人公リンツ少年。
まさしく、古き良き「探偵冒険活劇(な児童書)」なわけですが、ここは乙一氏、ちゃんと乙一テイストを出しております。

大きな乙一テイストとしては、物語の背景にある「差別」「戦争」「移民」「欲望」といったキーワードで語られる、”人のダークサイド”。
これら「人のダークサイド」は、個人的には乙一作品の共通テーマと思っておりますが、この一見「探偵冒険活劇」の物語への盛り込み方が絶妙ですね。

これは、児童の皆様が読むと、かなりショックなのかも知れません。
(というより、これを淡々と読めてしまう児童の皆様がいたら、それはそれで非常にショックだったりしますが)

”善は悪に変わることがあるが、悪は悪のままである。”といった『どうしようもない世界』を描くにはもってこいの作家さんなのですよね。

例えば、ラストのエピローグのような箇所で語られる母の告白あたりは、大きな感慨を持って受け止めてしまいます。

欲を言えば、もっと酷いことを想像していただけに、ちょっと盛り上がりに欠けてしまったのですが、これは過大な期待をかけた私個人の反省点だったりもするのですよね。

ということで、ちゃんと児童向けに作られた「ダークサイド児童書」としてオススメします。
そして、是非、児童の皆様には、本作品を嫌悪して欲しい。

そう願う今日この頃です。
AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2006年09月21日(木) 01時32分50秒

「ZOO」 乙一 2006-121

テーマ:--乙一
乙一氏の「ZOO」を読了しました。
単行本の方です。
表紙には、ZOO(ズー)のなかにZ-(ズー)みたいですが、Z-ではなく「乙一」です。
よく出来た洒落です。
知らない人がいきなり読んだら混乱しますね。

で、内容は、もっと驚きでした。

amazonリンク

乙一
ZOO
出版元
集英社
初版刊行年月
2003/06
著者/編者
乙一
総評
22点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:2点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:4点 
意外性:4点 
装丁:4点

あらすじ
最も注目される若手ナンバーワン、乙一のホラー短編集。毎日届く恋人の腐乱死体の写真。彼女を殺したのは誰? 「犯人探し」に奔走する男を描く表題作ほか、書き下ろしを含む全10編を収録。<<Amazonより抜粋>>



10編の短中編が所収されています。


どの作品も、乙一マジック満載ですね。
ということで、どんなところが乙一マジックなのかというと・・・

1.基本的に主人公が不幸せ
2.基本的に主人公を含む登場人物が邪悪
3.基本的に当たり前でないことが当たり前のように描かれる
4.基本的に唐突かつ劇的に物語が終わるが、よく考えてみると、それなりに論理的な感じ

ってとこでしょうか?

加えて言うなら、この結末を4のように感じる読者は、もちろん邪悪ってことでしょうか。
当然ながら、私も含まれます。

印象深かったのは「カザリとヨーコ」「SO-far」そして「SEVEN ROOMS」(←つながいさん、オススメの通り、良かったです。)です。
この3作品に共通しているのは、前述した4の劇的さがとても強烈だった点です。

いじめられる片方の双子が、とった行動とは?
お互いが見えない夫婦の間に残された息子の結末は?
閉じ込められた部屋から幼い姉弟は逃げられるか?

・・・

残り数ページで起こる、怒涛の展開なのですが、どれも期待以上のラストでした。
推理小説ではないので、なんだか中盤くらいに分ってしまうところもあったりしますが、これは、これで良いんです。
そういった意味では乙一作品にとって「予定調和」な収束なのでしょうね。

短編がとても上手な作家さんであることを改めて認識しました。

いいね!した人  |  コメント(2)  |  リブログ(0)
2006年06月21日(水) 21時16分09秒

「天帝妖狐」 乙一 2006-077

テーマ:--乙一
「夏と花火と私の死体」 に続く、乙一氏「ジャンプジェイブックス」シリーズ第2段(と勝手に命名)です。
「夏と花火・・・」と比べると、ちょっとだけミステリ要素が含まれてますね。
この辺りの作品は、個人的には、通過儀礼といったところでしょうか

amazonリンク

乙一
天帝妖狐
出版元
集英社
初版刊行年月
1998/04
著者/編者
乙一
総評
19点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:3点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:3点 
意外性:4点 
装丁:2点

あらすじ
はがれた人差し指の爪、引っかき傷のできた皮膚、酔っぱらいに殴られて血を出した鼻…夜木一太郎の体は、怪我を負うたびに、人ならぬものの体と入れ替わっていく。あの日、「にんげんのからだがほしい」と言った垂早苗との約束どおりに…。表題作「天帝妖狐」と、学校のトイレの落書きが、ショッキングな出来事へとつながる「A MASKED BALL」。『夏と花火と私の死体』に続く異色ホラーの意欲作、第2弾。<<Amazonより抜粋>>

今回は前フリなく、所収されている2編の紹介をしたいと思います。

■A MASKED BALL
和訳すると「仮面舞踏会」ってことのようです。
なるほど男子トイレの個室の落書きで繰り広げられる、顔の見えない者どおしの会話。
その会話にある奇妙な事件の宣戦布告。そのとおりの事件が本当に起こり、上村吾郎は、犯人を貢げ出そうとします。
いわゆるヒロイン的立場で登場する宮下昌子という女性は、手に取るように分り易い”表裏のある”女性
分り易すぎるため、あまり感想もないのですが、実際にそばにいたら厄介ですよね。
で、そんなヒロインを助けるべく、若干の推理をして犯人をおびき寄せる上村なのですが、そこに犯人の真意があったりします。
多少のミステリ要素が加わっております。

■天帝妖狐
なかなか、漢字変換に手間取ったタイトルですが、これは、それなりに展開に工夫があります。
いわゆる怨念モノであり、超人ハルク的展開です。(超人ハルクそんなに知りませんけどね)
垂杏子に届く、夜木一太郎からの手紙から物語が始まります。
この物語のポイントは、立退きを迫られたアパートをどのように救うかってことと、垂早苗という謎の人物の正体と、裏切り者は誰かって事です。
こちらも、それなりにミステリ要素(というより謎解きそのもの)があります。

2作品とも、「おぉ」という感嘆がでるものではなかったのですが、それなりに雰囲気があります。
やっぱり文量の問題かもしれませんが、物語そのものが、深いところまでいかなかったのが残念といえば残念。
同じモチーフで、もうちょっと長い作品だったら、それなりに引き込まれるのではと思いました。

ということで、乙一初期2作品を読了いたしました。
次は何を読みましょうかね?
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2006年06月19日(月) 21時25分36秒

「夏と花火と私の死体」 乙一 2006-075

テーマ:--乙一
乙一氏17歳の時の作品です。
で、デビュー作なんですかね?
Amazonリンクの表紙の方を、借り出しています。
それなりにおしゃれな表紙の文庫もあるようですので、無理やりこちらを手に取っていただく必要はありませんが、個人的にはこちらの挿絵が気に入りました。
ま、文庫版にも挿絵があったら、そりゃ文庫版だとは思いますけど・・・

amazonリンク

乙一, 幡地 英明
夏と花火と私の死体
出版元
集英社
初版刊行年月
1996/10
著者/編者
乙一
総評
19点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:3点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:3点 
意外性:4点 
装丁:2点

あらすじ
九歳の夏休み、少女は殺された。あまりに無邪気な殺人者によって、あっけなく―。こうして、ひとつの死体をめぐる、幼い兄妹の悪夢のような四日間の冒険が始まった。次々に訪れる危機。彼らは大人たちの追及から逃れることができるのか?死体をどこへ隠せばいいのか?恐るべき子供たちを描き、斬新な語り口でホラー界を驚愕させた、早熟な才能・乙一のデビュー作、文庫化なる。第六回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞受賞作。<<Amazonより抜粋>>



やっぱりローティーン向けの物語って感じだったのですが、物語の構成が、相当うまいですね。
これを17歳で書いたってところに、驚愕したりします。

表題作と「優子」という中編が2編所収されています。

本帯には、”モダンホラー”などとありましたが、モダンホラーの定義も良くわかりませんので、これ以上は言及しません。
ですが、少なくとも、このホラーレベルってやつは、ローティーン向けですかね。

■「夏と花火と私の死体」
私の死体っていうくらいですから、冒頭に殺されてしまう五月(さつき)視線の一人称で物語りは進みます。
この死体の一人称というスタンスが、結構良いです
これって要するに三人称視点と同義なのですが、より物語に不可思議さを与えてくれます。
これは、村上氏の最新作である「アフターダーク」にある「私達(作者と読み手)」という三人称くらいに、衝撃的でしたね。
物語自体は、中編(というよりちょっと長めの短編)なので、深いところまでは言及せず、どうやってこの一人称の私の死体を弥生と健が隠すことができるかってところがメインです。
そうそう、「健」という少年は、どことなくGOTHにでてくる僕の印象に近いですね。
どうやらこの状況を楽しんでいる様子
でした。

従姉妹の「緑」への伏線は、やっぱり感がありましたが、それはそれで良いのです。

■「優子」
人形師を父に持つ、お手伝いの清音が見た作家政義の異常ってところなのですが、この物語はちゃんと意外性を持たせています。
この意外性ってのが、やや説明っぽいのが残念でしたが、静枝がらみの伏線の持ち方はバッチリでした。

そういえば、本書は文庫本化され、その際に、だいぶ見直されているようですね(未確定情報)。
少なくとも私がよんだ「ジャンプジェイブックス」の方ですのであしからずです。

いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2006年05月29日(月) 21時53分54秒

「失はれる物語」 乙一 2006-067

テーマ:--乙一
立て続けに「乙一シリーズ」
角川スニーカー文庫に所収の5編に書き下ろし1編を加えた全6編の短編集です。
「GOTH」の猟奇的・浦賀的(というか安藤的?)からは、やや違った印象です。

いやいや、分っていましたけど、この作家さんは相当の筆致がありますですね。

amazonリンク

乙一
失はれる物語
出版元
角川書店
初版刊行年月
2003/11
著者/編者
乙一
総評
22点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:4点 
意外性:4点 
装丁:3点

あらすじ
大切な人とわかちあいたくなる、暖かい涙を誘うピュアストーリーズ。少年や少女だった日のひりひりするような魂を上質の文章力と定評あるストーリーテリングで描く乙一の傑作短編集。04年1月配信のBB映画「手を握る泥棒の物語」原作<<Web KADOKAWAより抜粋>>


なんというか、全体的に読みやすいです。
6つの短編それぞれカラーが違うんですけど、すんなり読めちゃいますね。
”すんなり読めちゃった”ということで、それぞれの物語をあっさり解説。

「Calling You」
頭の中に携帯電話が生まれて、時間のずれた人と会話ができちゃう物語。
ラストはちょっとしたサプライズがあったりして、なかなか凝った展開です。

「失はれる物語」
後述します

「傷」
人の傷を吸収できる子供の物語。
あとがきにもありましたが、ラストは相当、恥ずかしい感じです。
ありといえばありですが。

「手を握る泥棒の物語」
ちょっとユーモラスな作品。
タイトルの通り「泥棒」の話なのですが、展開は「ローマの休日」風です。
読んでいただければこの微妙なニュアンスは伝わるものと思います。

「しあわせは子猫の形」
殺されてしまった元の住人との奇妙な生活です。
決して怖くなく、かえって暖かい作品です。
これは殺人の謎解き要素があって、いいですね。

「マリアの指」
飛び降り自殺として処理されたマリアを好きだった僕が、ふとしたことで、マリアの指を手にします。
これも謎解きがあります。
こちらの方が容疑者が複数いたりして、本格的でした。

と、あっさり解説できちゃうくらい、読み易い。
いいですね通勤にはもってこいでした。

で、タイトルでもある「失はれる物語」
これは、良いです。
この物語だけを、もうちょっと膨らませて単行本にしていたら、実は評価が上がっちゃったりするかもしれませんでした。
ただ、(文量としては、このくらいがちょうど良かったかも)とも思います。
いやいや、優柔不断ですね・・・

で、この物語は、事故で、植物人間となり、右腕の内側以外の感覚がなくなってしまった人視点の物語であり、永遠に暗闇の世界からの物語です。
妻と娘がいる主人公は、右腕の内側だけで外世界とのコミュニケーションを図るのですが、次第に、その感覚に違和感を感じ始めます。
その事実を理解し、主人公のとった行動とは・・・

なかなか、怖い作品であると同時に、”愛するものへの慈しみ”みたいなものを感じました。

ちょっと2006年後半は、「乙一」氏を追ってみましょうかね?

いいね!した人  |  コメント(1)  |  リブログ(0)
2006年05月28日(日) 21時03分22秒

「GOTH 僕の章」 乙一 2006-066

テーマ:--乙一
ようやく読了です「GOTH 僕の章」。
ま、「GOTH 夜の章 」の読了が06年3月4日なので2ヶ月と半月くらい経っちゃいましたね。
これが、たまにある「図書館の借り出しマジック」だったりするわけですね。

ということで、まったく前作との「繋がりを思い出すこともなく読み始めて、だんだんと思い出す」といった特異な読み方をさせていただきました。

ちなみに「GOTH 夜の章」の感想はこちら→

amazonリンク

乙一
GOTH 僕の章
出版元
角川文庫
初版刊行年月
2002/07
著者/編者
乙一
総評
21点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:3点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:4点 
意外性:3点 
装丁:4点

あらすじ
この世には殺す人間と殺される人間がいる。自分は前者だ―そう自覚する少年、「僕」。殺人鬼の足跡を辿り、その心に想像を巡らせる「GOTH」の本性を隠し、教室に潜んでいた「僕」だったが、あるとき級友の森野夜に見抜かれる。「その笑顔の作り方を私にも教えてくれない?」という言葉で。人形のような夜の貌と傷跡の刻まれた手首が「僕」の中の何かを呼び覚ます。彼女の秘密に忍び寄った彼が目撃するのは…。圧倒的存在感を放ちつつ如何なるジャンルにも着地しない乙一の、跳躍点というべき一作。「僕」に焦点した三篇を収録。<<Amazonより抜粋>>


読後感は、個人的に浦賀和宏氏の安藤シリーズを最初に読んだときのような感覚に近かったです。
これって、「夜の章」とまったく同じ。
そりゃそうですよね、同じ作品なんだし・・・
・・・夜の章の読後から2ヶ月後ってことで、まったく同じ感想をいってしまいました。
すみません。

「リストカット事件」「土」「声」という3つの中編が所収されています。
いずれも「僕」と「森野夜」という固定キャラクターの周りで起こる猟奇的な物語です。
とはいえ、そこは「僕の章」ってことで、「森野夜」はあまり活躍いたしません。
というか、ほとんど声を発していません。

作品として印象的だったのは、「土」です。
この話は、どうしても人を土の中に埋めたくなってしまう人の話なのですが、実行に至る心理描写が絶妙だったのと、想定しうる、最も救われない終わり方ってところですね。
この「GOTH」は一貫して、死への興味と対称にある生への執着みたいなところが見え隠れする作品群だったのですが、この「土」の終わり方は、相当「あちらの世界」の終わり方でございました。
この一編の終わり方があって、作品世界の広がりが出てきたって感じです。
(正直、やられた!)って感じでした。

残りの2編も、思い切り殺人鬼(という言葉が正確かどうか不明ですが)の心理とそれを興味の対象としか扱えない「心の所在なき僕」の対峙がメインであり、どんな作品カテゴリにも入りませんが、きっちり作品全体としてカテゴライズされておりました。

注目の作家さんですね。

いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2006年03月04日(土) 01時37分46秒

「GOTH 夜の章」 乙一 2006-026

テーマ:--乙一
え~乙一さん。
初お目見えでございます。

しかも”何故か上下巻となった”といわれる文庫版「GOTH 夜の章」。
タイトルの「GOTH」とは、いわゆる「ゴス」なわけで、サブカルチャーのゴス。ゴスロリのゴスでございます。
amazonリンク

乙一
GOTH 夜の章
出版元
角川文庫
初版刊行年月
2002/07
著者/編者
乙一
総評
22点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:3点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:4点 
意外性:4点 
装丁:4点

あらすじ
森野夜が拾った一冊の手帳。そこには女性がさらわれ、山奥で切り刻まれていく過程が克明に記されていた。これは、最近騒がれている連続殺人犯の日記ではないのか。もしも本物だとすれば、最新の犠牲者はまだ警察に発見されぬまま、犯行現場に立ちすくんでいるはずだ。「彼女に会いにいかない?」と森野は「僕」を誘う…。<<Amazonより抜粋>>


読後感は、個人的に浦賀和宏氏の安藤シリーズを最初に読んだときのような感覚に近かったです。

主人公「僕」と「森野夜」という同級生の女の子(この子が「GOTH」なわけですが)の周りで起こる3編の物語が収録されています。
この二人は、「悲惨で、聞いた瞬間に首を吊りたくなるエピソード」を常に求めており、その特別な習性故に、現実に起こる事件の傍に必ずいたりします。
あくまでもその事件から見れば「傍観者」でしかないのですが、「ついでに」謎なんかも解いちゃったりします。

ここでのポイントは、「傍観者」というところと「ついでに」というところです。

一つ目の「傍観者」は、はっきり主人公が宣言しているくらい徹底しています。
この姿勢は「事件」に対してのみならず、「家族」や「友人」などにも徹底されれています。
この”関与しないこと”を是とする若者をデフォルメしたかのような立ち振る舞いは、やるせなさを通り越して清々しいほどです。

二つ目の「ついでに」というのは、それなりに謎解きや意外性の要素があったこと自体が、前提知識のない私(そもそも連作中編集とも思っていなかった)には意外(というかお得)でした。
キャラクターだけでも十分異様な登場人物の周りで、これまた異様な事件が起こり、普通にこれだけでもそこそこ面白いなと思いつつ、ちゃんと謎まで解いてくれちゃう(また、「意外なオチ」をちゃんとつけている)といったところです。
そういった意味では、よくある「猟奇的雰囲気小説」とは一線を引いた作品でした。

読者が、俯瞰でこの世界を覗いているという構図自体が、作中の「僕」と同じスタンスだったりするので、誰も「僕」という名の彼と「森野夜」という彼女を否定することはできないのでしょう。

ということで、しばらくすると「僕の章」を借り出すことにはなりますが、この「夜の章」だけでも十分面白い作品でした。


追記:「GOTH 僕の章」の感想はこちら→

いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。