2008年09月06日(土) 18時00分58秒

「温かな手」 石持浅海 2008-096

テーマ:--石持浅海
石持浅海氏「温かな手」読了しました。

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温かな手/石持 浅海
¥1,470
Amazon.co.jp
出版元
東京創元社
初版刊行年月
2007/12
著者/編者
石持浅海
総評
21点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:3点 
読了感:4点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:3点 
意外性:4点 
装丁:3点

あらすじ
大学の研究室に勤める畑寛子の同居人・ギンちゃんは名探偵。サラリーマンの北西匠の同居人・ムーちゃんも名探偵。ギンちゃん&ムーちゃん兄妹は、人間の生体エネルギーを糧にする謎の生命体。宿主である寛子や匠の清らかな生体エネルギーを確保するために、彼らが遭遇した殺人事件や騒動を鮮やかに解き明かす。一風変わった名探偵兄妹とそのパートナーが活躍する連作短編集。独特の設定とシャープな謎解きが魅力の、石持ミステリの真骨頂!<<東京創元社HPより>>



ギンちゃんとムーちゃん(文章内の表現)が繰り広げる7つ連作短編が所収されています。

「白衣の意匠」
「陰樹の森で」
「酬い」
「大地を歩む」
「お嬢さんをください事件」
「子豚を連れて」
「温かな手」

前半は、近親者の殺人事件が中心ですので、
どうにも連作の体裁を取る以上、登場人物の「テンション」が落ちていってしまうわけです。

とはいっても主人公格のギンちゃんとムーちゃん(文章内の表現)はあらすじにもあるとおり、人間のかたちに似せた別の生命体で、人間そのものを捕食の対象としかしていませんから、何にも気にしません。

で、このテンションが下がりまくる、先の2人のそれぞれの同居人(もちろんこちらは人間)というのが、実はこの物語の大きなカギを持っていたりするわけです。

連作短編なのでどういう展開でくるかと思いましたが、すべては最後の物語であり、タイトル作でもある「温かな手」によって見事に昇華したようにも思います。

最後の物語を読んで、
作中でもまったく触れられなかった点に、ギンちゃんとムーちゃんの人間としてのかたちがそれぞれ男性と女性(みせかけの関係上は兄と妹)であることも、この生命体の心ばかりの演出であったのだと、気がつきました。

なるほどなーと思いました。

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2006年11月02日(木) 23時00分11秒

「扉は閉ざされたまま」 石持浅海 2006-144

テーマ:--石持浅海
このミステリがすごい!  2006年版」および「本格ミステリ・ベスト10  2006年版」の第2位(両方とも)を獲得した「扉は閉ざされたまま」を読了いたしました。
確かに新しいタイプの推理小説かも知れませんね。
ギリギリの心理戦ってやつですかね。

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石持 浅海
扉は閉ざされたまま
出版元
祥伝社ノンノベル
初版刊行年月
2005/05
著者/編者
石持浅海
総評
23点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:5点 
意外性:3点 
装丁:4点

あらすじ
久しぶりに開かれる大学の同窓会。成城の高級ペンションに七人の旧友が集まった。(あそこなら完璧な密室をつくることができる―)当日、伏見亮輔は客室で事故を装って後輩の新山を殺害、外部からは入室できないよう現場を閉ざした。何かの事故か?部屋の外で安否を気遣う友人たち。自殺説さえ浮上し、犯行は計画通り成功したかにみえた。しかし、参加者のひとり碓氷優佳だけは疑問を抱く。緻密な偽装工作の齟齬をひとつひとつ解いていく優佳。開かない扉を前に、ふたりの息詰まる頭脳戦が始まった…。 <<Amazonより抜粋>>


人を殺し、その現場を密室にした犯人である伏見亮輔の目線の3人称で語られていきます。
読み終わった直後の正直な感想は、(嘘つくってのは、疲れるのよね)ってことでした。

序章で、伏見の殺人現場の描写がなされ、続く、第1章「同窓会」がその殺人前、第2章「談笑」から以降は、殺人後となっています。
ようするに時系列的には「第1章」「序章」「第2章」「第3章」ってことです。

前述したように物語自体が、犯人である伏見の目線ですので、読み手は結局のところ伏見と同様に、その殺人がばれてしまわないか「ドキドキ」するわけです。
と同時に、読み手≒伏見ではありますが、知りうる情報は「どのように殺害したか(=密室を作り出したか)」だけなので、それ以外の情報(動機・密室にする必要性など)については、読み手自ら謎ときをしていくといった構造も持っています。

なので、この時点で読み手は「犯人」という立場と「探偵」という立場の両方を獲得してしまい、「お得」ってことになるわけです。
この辺りの構造が、新しいのかも知れません。

この主人公「犯人」伏見、相当の”キレモノ”という設定なのですが、一方でその謎を解く相手「探偵」も、同級生の妹であり更に”キレモノ”な優佳であり、物語後半は”キレモノ”対”キレモノ”の心理戦だったりするのです。
このあたりは正直、疲れます(もちろん良い意味で。)
言葉を変えれば、見事に引き込まれてしまったということになるのですが、この辺りが、前述した「嘘つくってのは疲れるのよね」に繋がるのです。

ラスト自体は賛否両論あると思います。

優佳と伏見の心理戦の先にあるものは何か?
最後まで読み手自身が、「本来の立場」=「第3者的立場」であったりすると、確かに納得感がなかったりします。
ただ、読み手の意識が「犯人」であり、同時に「探偵」であったならば、それなりに「犯人」「探偵」双方について、同じ感情を持つことになるあたりは、もう一つの著者の小技なのかも知れません。

う~ん意外に、この物語の構図は、テクニックを駆使されているのかも知れませんね。
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2006年10月24日(火) 20時58分32秒

「顔のない敵」 石持浅海 2006-140

テーマ:--石持浅海
最近、石持氏の作品を読んでおります。
「顔のない敵」読了しました。
初の短編集ですかね。
著者には、短編を書くという印象はありませんでしたが、それなりに楽しめました。

amazonリンク

石持 浅海
顔のない敵
出版元
光文社カッパノベルズ
初版刊行年月
2006/08
著者/編者
石持浅海
総評
21点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:3点 
意外性:4点 
装丁:3点

あらすじ
1993年、夏。カンボジア。NGOのスタッフたちが地雷除去を続ける中、突然の地雷の爆発音が轟いた。これは、純然たる事故なのか? 表題作を含め、「対人地雷」をテーマにしたミステリー6編と、処女作短編を収録。<<Amazonより抜粋>>



石持氏の短編集で、「対人地雷」をテーマにした作品5編とデビュー作1編の計6編が所収されております。

「対人地雷」という難しい題材を、色々な形で小説の中に取り込んでおります。
これは石持氏自身の素晴らしい構成力の賜物です。

デビュー作を除く、この5編を、純粋に推理小説と読むか、一貫した「対人地雷」、もしくは「対人地雷」に関わる人々の物語と読むかによって評価が変わるのですが、私自身は後者の印象が強く、そのような意味では、非常によくできた作品です。
ついでに言ってしまえば、後者のような感覚で読み進め、プラスアルファの要素として「推理」があると考えると、なんだかお得な感じがしますね。

また、この5編は、物語並び順とその時系列は、バラバラなのですが、登場人物に関連性があり、風変わりな連作短編とも読み取れます。
例えば、1編目の「地雷源突破」で、デモストレーション中に爆死してしまったサイモンは、5編目の「銃声ではなく、音楽を」で、再登場(時系列としては逆順)しますし、その他にも連携しております。
短編が、「地続き」となっていることを印象付けることによって、短編以上の世界の広がりを感じることができたことは、とても好感触でした。
(個人的にこの「地続き連作短編」手法は、好きなのです)

ただ、惜しかったのは、それぞれの作品で起こる殺人に関して、犯人が、ほとんどが法的な処置がとられないまま収束してしまっている点。
単に犯人が捕まる(法的な処置がとられる)といった展開を、期待しているわけではありませんが、どうにも、もやもやとしたものが残ってしまいました。

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2006年09月28日(木) 22時27分14秒

「セリヌンティウスの舟」 石持浅海 2006-125

テーマ:--石持浅海
「BG、もしくは・・・」の石持氏の「セリヌンティウスの舟」読了しました。
面白い趣向の作品でした。

amazonリンク

石持 浅海
セリヌンティウスの舟
出版元
光文社カッパノベル
初版刊行年月
2005/10
著者/編者
石持浅海
総評
20点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:3点 
ぐいぐい:3点 
キャラ立ち:3点 
意外性:4点 
装丁:3点

あらすじ
荒れ狂う海で、六人のダイバーはお互いの身体をつかんで、ひとつの輪になった。米村美月、吉川清美、大橋麻子、三好保雄、磯崎義春、そして、僕、児島克之。石垣島へのダイビングツアー。その大時化の海で遭難した六人は、信頼で結ばれた、かけがえのない仲間になった―。そんな僕らを突然、襲った、米村美月の自殺。彼女はダイビングの後の打ち上げの夜に、青酸カリを飲んだ。その死の意味をもう一度見つめ直すために、再び集まった五人の仲間は、一枚の写真に不審を覚える。青酸カリの入っていた褐色の小瓶のキャップは、なぜ閉められていたのか?彼女の自殺に、協力者はいなかったのか?メロスの友、セリヌンティウスは、「疑心」の荒海の中に投げ出された。 <<Amazonより抜粋>>


短い物語です。
”不審な自殺”についての推理が、児島克之の一人称目線で語られていきます。

物語の合間には、六人が信頼関係を結ぶこととなった海での事故の様子が語られ、少ない文量でありながら、こちらは、なかなかリアルな描写でした。

で、肝心のメインストリームなのですが、これが趣向としてはユニークでした。

一般的な物語としては、「不審な自殺」といえば「他殺かも?」となり、「じゃ、この中の誰が?」「何故?」「どのように?」ってことになるわけですが、敢えてその定石を覆すような展開なわけです。
この展開の不自然さを吸収しているのが、登場人物間にある「絶大な信頼関係」ということであり、この時点で「上記のような展開を期待している読み手」VS「登場人物達」といった構図が成り立つ訳ですね。

本の背表紙にある著者の言葉を読み、そのあたりを深く納得しました。
大袈裟に言えば、「踏み絵」のような作品なわけです。

ただ、物語の大半を占める、5人の推理合戦は、ちょっと冗長感がありますね。

これが約半分の文量なら、相当面白かったかも知れません。
なんだか堂々巡りな感じを受けました。
ただ、(実際に、このようなシチュエーションだったらどうか?)というと、意外に堂々巡りしたりするはずなので、ある意味でこの不毛な推理合戦もリアリティーの追求なのでしょうかね?
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2005年11月10日(木) 23時23分48秒

№122 「水の迷宮」 石持浅海

テーマ:--石持浅海
石持 浅海
水の迷宮

2005年8月の月刊『後感』 では堂々4位を取得した「BG、あるいは死せるカイニス」 の石持氏の2冊目です。
「BG・・・」では異世界の中での特異な設定のなかで、特異であるが故のミステリを読ませてもらい、それなりに面白かったのです。

で、本作。
結局のところ、本帯にあるとおり「胸を打つ感動と美しい謎。」なわけで、きっちりとした殺人ミステリでありながらハッピーエンドという、犯人を含む登場人物が全員立派な人だという、で、「そんな都合良く話がすすんでしまったいいのん」と、そんな作品です。
ちなみにAmazonでは相当評判悪いようですが、ミステリ自体はそれほど悪くありません。
ご都合主義を、圧倒的に容認できる方なら、感動すらできる作品です。

夢を実現に導くために。事件の謎を解く鍵は、三年前に片山が見た夢。
三年前、不慮の死を遂げた片山の命日に事件は起きた。首都圏の人気スポット・羽田国際環境水族館に届いた一通のメール。そして、展示生物を狙った攻撃が始まった。姿なき犯人の意図は何か?自衛策を講じる職員たちの努力を嘲笑うかのように、殺人事件が起きた!――すべての謎が解き明かされたとき、胸を打つ感動があなたを襲う。<<Amazonより抜粋>>


本書のミステリは、大きく3つあります。
①3年前の片山の死の謎
②3年後(現在)に起こる、展示生物を狙った攻撃の謎とその犯人
③その展示生物を狙った攻撃の中で起こる、殺人事件の真意とその犯人

で、探偵役である「深澤」が、脅迫される水槽の順序②や、殺人事件の見立て③が、①の事件を想起させ、あるヒントをきっかけに事件の解決に導きます。
そして②も③も解決し、えいやと①まで解決し、感動をし、なんなら、水族館職員が一丸となってある事業を立ち上げるに至ります。まさに「えいえいおー」なわけです。

・・・ここまで、この感想を読み続けていただき、「?」と不思議に思った方は、まずはお読みいただきたいところです。そして、(あ、「えいえいおー」だ。)と思っていただければ良いわけです。

決して勇気付けられるほどの感動ではないのですが、こんなミステリーもめずらしいなぁと思いました。だいたいにしてこの手のラストで幸せになるのは、「被害者周辺」か、「(同情票を得て)加害者周辺」か、最近流行りの「全員、不幸(要するに非救済)」のはずですが、本作は、登場人物が全員(犯人も、もしかしたら被害者すらも)が、最終的にみんな幸せだったりする訳です。

・・・このあたりも読んでいただければ、事情は理解いただけるはずです。

で、めずらしい作品だなぁと思う反面、最後の最後に一言だけ言わせてもらえば、解決部分は物凄く不自然なのです。

言われもない「違和感」の正体は、探偵役の深澤が、心理まで踏み込んだ解決をしてしまっている点であり、その心理事情を深澤自身が語ることにより、罪悪をすべて許してしまおうという主旨が、はっきり伝わってしまうことなのでしょう。

「死人に口なし」とはよく言ったもので、そりゃまぁ、殺人事件の被害者の心理描写を、本人に成り代わって発言することまではまだしも、そこにいる犯人の心理まで説明することはないだろと思うわけです。
超絶した探偵だという評価ができちゃいますが、そういったメタ要素があるわけでもないので、これまた相当の違和感があったのです。そこが残念。

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2005年08月06日(土) 01時10分58秒

「BG、あるいは死せるカイニス」 石持浅海

テーマ:--石持浅海
石持 浅海
BG、あるいは死せるカイニス

「本のサイズが気に入っているだけで、借り続けている」ともっぱら噂のミステリ・フロンティアシリーズ の「BG、あるいは死せるカイニス」です。
・・・

で、どうやら、借り続けているのは、本のサイズが気に入っているだけではないようです。
はい、結構面白かったわけです。

天文部の合宿の夜、学校で殺害されたわたしの姉。男性化候補の筆頭で、誰からも慕われていた優等生の姉が、どうして? 捜査の過程で次第に浮かび上がってきた《BG》とは果たして何を指す言葉なのか? 全人類生まれた時はすべて女性、のちに一部が男性に転換するという特異な世界を舞台に繰り広げられる奇想の推理。<<東京創元社・本書紹介ページより抜粋>>

この「全人類生まれた時はすべて女性、のちに一部が男性に転換するという特異な世界」設定ってのが、良いですね。

基本的に本書は、(ミステリ・フロンティアシリーズってくらい)ミステリなので、謎解きメインではありますが、この謎解きは当然ながら「特異な世界」だからこそ導かれるロジックだったりします。

なので、ロジックそのものはフェアなのですが、(そもそもそんな世界の住人ではない私にとっては、そんな感覚分らないじゃ~ん)と、ある種「もやもや」するのです。
この「もやもや感」が、個人的には好きだったりするわけです。
(小説なんだし・・・なんでも良いじゃないか)と寛容な気持ちになれる自分が気に入っているといった方が良いかもしれません。こういった感覚を求めて前向きに読書していたりするわけです。

また、物語の構成上に、この「特異な世界」を、思いきり使い切っているという点もいいです。
例えば、物語の語り部となる「遥」と冒頭に殺害されてしまう「優子」の関係は、異母姉妹なのですが、早々簡単な異母姉妹でありません。
生まれた時はすべて女性で、のちに一部が男性に転換するという世界における、異母姉妹とは、「優子」の母が、「遥」の父だったりするわけです。
分りますか?優子の母だった女性が、後に男性化し、遥の父となるということです。
このような世界で起こる、殺人事件ですから、フェアな解決にも「もやもや」するということです。

また、タイトルにあるBGという単語が重要なキーワードになります。
BGという都市伝説の謎。第2の殺人。国家機密レベルに発展する事件。ただの怨恨だけで終わらない展開。そして意外な人物による解決。

ネタバレにならない程度に感想を書くと、この物語は、
「この世界自体への復讐を目的とした偉大なるヒーローの登場」で収束します。
このあたりの終わり方は、ぞくぞくしてよかったですね。

仮面ライダーとかウルトラマンとか「変身ヒーローもの」が好きな人に、意外にオススメ。
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