2008年10月05日(日) 21時27分00秒

「青い鳥」 重松清 2008-109

テーマ:--重松清
重松清「青い鳥」読了しました。

これは良本
たぶん、人を育てることを生業の一部としている人にとっては、とてつもなく感動する本です。

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青い鳥/重松 清
¥1,680
Amazon.co.jp
出版元
新潮社
初版刊行年月
2007/07
著者/編者
重松清
総評
25点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:5点 
読了感:4点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:5点 
意外性:4点 
装丁:3点

あらすじ
村内先生は中学の非常勤講師。国語教師なのに吃音を持つ先生の、一番大切な仕事は、ただ「そばにいること」。「ひとりぼっちじゃない」と伝えること。いじめ、自殺、学級崩壊、児童虐待……子どもたちの孤独にそっと寄り添い、だからこそ伝えたい思いを描く感動作。すべての中学生、中学生だったすべての大人に捧げる救済の書。<<紀伊国屋Bookweb>>


8つの中篇が所収されています。

どの物語にも共通して登場するのが、非常勤講師の村内先生。
彼を主軸に、悩める子供達を救う物語です。


「青い鳥」 

「ひむりーる独唱」 

「おまもり」 

「青い鳥」 

「静かな楽隊」 

「拝啓ねずみ大王さま」 

「進路は北へ」 

「カッコウの卵」

なんといっても村内先生の「やさしさ」が印象的です。
彼自身が「吃音」というハンデキャップを負いながら、それを強みにして「大切なことしか話さない」先生として位置づけられます。

悩める子供達は、一般的には被害者であり、もしくは加害者です。
そういった世間の尺度ではなく、その子供達個人の孤独を救うために彼がいます。

積極的な関与によって救うわけではなく、寄り添うことによって、彼は子供達を救うわけです。
厳密には「救う」わけではなく、「ひとりで立てるように手助けする」といった感じでしょうか。
そのスタンスに感動しました。

決して押し付けではない、やさしさであり
決して見返りを求めない、愛情であった
りするわけです。

たくさんの本を読んでいらっしゃる読者の方々にとっては、予定調和の物語という印象を受けることもあるかもしれません。ただ現代において、こういった話は「フィクション」ではなく、まぎれもない「事実」だったりするわけで、そういった点において、良い着眼点を持った作品だよなと思ったりしました。


個人的には「おまもり」と「カッコウの卵」が良かったです。

本書の登場人物で一番の幸せ者は、実は村内先生自身かも知れません。

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2008年07月07日(月) 22時13分24秒

「くちぶえ番長」 重松清 2008-074

テーマ:--重松清
重松清氏「くちぶえ番長」読了しました。

amazonリンク
くちぶえ番長 (新潮文庫 し 43-10)/重松 清
¥420
Amazon.co.jp
出版元
新潮文庫
初版刊行年月
2007/07
著者/編者
重松清
総評
20点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:3点 
読了感:4点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:3点 
意外性:3点 
装丁:3点

あらすじ
小学四年生のツヨシのクラスに、一輪車とくちぶえの上手な女の子、マコトがやってきた。転校早々「わたし、この学校の番長になる!」と宣言したマコトに、みんなはびっくり。でも、小さい頃にお父さんを亡くしたマコトは、誰よりも強く、優しく、友だち思いで、頼りになるやつだったんだ―。サイコーの相棒になったマコトとツヨシが駆けぬけた一年間の、決して忘れられない友情物語。<<紀伊国屋BOOKWebより抜粋>>



小学四年生に連載されていたものが文庫化されたようです。

小学○年生!!懐かしいですね。
学研と並ぶ小学生のベストセラー雑誌
です。

ということで、文体・物語ともに小学生向きです。
なので、当然分かりやすい。

もう、「これでもか」ってくらい分かりやすいので、逆に好印象なわけです。

活発な転校生の1年の物語で、このあらすじも「風の又三郎」をモチーフとした感じ。

それでいて父親同士が知り合いという微妙な関係もあったり、話自体がちょっと膨らみます。

成長物語であり、ちょっと恋愛(もちろん四年生向き)もあり、いじめ問題も取り扱ったり、そりゃもう展開が王道な物語です。

2度目となりますが、ここまで「推薦図書的」な物語は、返って好印象となる好事例です。


といいつつ、小学四年生の頃の自分が読もうとしてちゃんと連載をワクワクしながら待っていたかといわれれば、それは微妙なところ。

読書嫌いでしたからね~・・・・

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2008年03月12日(水) 21時25分05秒

「エイジ」 重松清 2008-031

テーマ:--重松清
重松清氏「エイジ」読了しました。
重松作品。
ま、久しぶりって感じです

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重松 清
エイジ (新潮文庫)
出版元
新潮文庫
初版刊行年月
2004/07
著者/編者
重松清
総評
21点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:4点 
意外性:3点 
装丁:3点

あらすじ
ぼくの名はエイジ。東京郊外・桜ヶ丘ニュータウンにある中学の二年生。その夏、町には連続通り魔事件が発生して、犯行は次第にエスカレートし、ついに捕まった犯人は、同級生だった―。その日から、何かがわからなくなった。ぼくもいつか「キレて」しまうんだろうか?…家族や友だち、好きになった女子への思いに揺られながら成長する少年のリアルな日常。山本周五郎賞受賞作。<<Amazonより抜粋>>



重松作品では定番の「ニュータウン」ものです。
あらすじにあるとおり、中学2年生のエイジが主人公です。
若いときはちょっと格好の良かった両親と、微妙な年頃の姉を持つ主人公エイジは、いわゆる”反抗期に近い不安定な状況”にあります。

ま、10代ってのはあういう時期がありますよね。
ある事件をきっかけに、「あちら側」ではなく、志を持って「こちら側」に居続けようと思う一人の少年の物語です。
何が「あちら側」で、何が「こちら側」かは読んでいただければ分かります。

本書では、ある事件なわけですが、誰でも「きっかけ」というものは多かれ少なかれ、大きかったり小さかったりの差はありますが、経験するものだと思います。
そして、たぶんはじめて自分自身で何かを選択するんだろうなとか。
そんな時期が10代だったりしたんだよなと感慨深くなりました。

あと、後付の解説にもありましたが、主人公を含む3人の少年(エイジ・ツカッちゃん・タモツくん)の事件に対する関わり方の違いを感じ、自分がもしこの境遇だったりしたらどの少年と同調できるかを考えてみると面白いかもしれません。

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2006年09月18日(月) 17時44分44秒

「その日の前に」 重松清 2006-119

テーマ:--重松清
2006年本屋大賞第5位の作品。
「その日のまえに」を読了しました。

「大事な人の死」をテーマにした極めて精度の高い連作短編集でした。

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重松 清
その日のまえに
出版元
文藝春秋
初版刊行年月
2005/08
著者/編者
重松清
総評
22点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:5点 
読了感:4点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:3点 
意外性:3点 
装丁:3点

あらすじ
昨日までの暮らしが、明日からも続くはずだった。それを不意に断ち切る、愛するひとの死―。生と死と、幸せの意味を見つめる最新連作短編集。 <<Amazonより抜粋>>



7つの作品群。
ラストの3つは、表題作に加えて「その日」「その日のあとで」と、正統な連作となっており、その連作にリンクされるように前の4作品が用意されています。
きっちりリンクされているところは、伊坂作品に類似しているところがありますが、その前4作の「その後」が描かれているという点では、伊坂作品より、意味を持つリンクなのかもしれません。
ちなみに、ネット上にアップされている感想を見てみると「朝日のあたる家」だけが、リンクしていないようなことを仰っている方も多いようですが、しっかり登場人物の2人が「表札」(「その日のまえに」205頁)といった形で登場しております。
他の作品に比べれば、一番地味な登場なので見落としがちですが、一番救われている登場の仕方で個人的には一番気に入っています。

で、読み終えて、率直に思ったのは、「この作品は、もう一度、読み直す時が必ずくるだろう」ということでした。

このことは、私自身の個人的な現況に大きく関与します。
それは、私の周りの大事な人が、今現在、幸いにも皆健在であることから、このシチュエーションをきっちり飲み込めなかった、シンクロすることができなかったということです。
本書を読み進めるたびに、妻・両親・兄弟、それから親友、師・・・大事な人はたくさんいるけれど、その人たちを失うといった感覚自体を、否定している自分を見つけてしまいました。

例え不通になってしまっていても、生きてさえいれば、見えないところで支えてもらっているという自分の甘えのようなもの、そんなものを大きく感じることができました。

ですからわがままを言わせてもらえれば、本書の主人公達の気持ちに同調できる時に、もう一度読んでみたいと思ったのです。
そして、更なるわがままを言わせてもらえれば、なるべくそれは遠い未来にしてもらえないだろうかと、誰かに頼みたい気分なのです。

物語自体は、どの短編も、さすが重松氏といった構成と、心理描写でした。
そして、「自分の外側の世界のこと」と思えなくするような、筆致であったと思います。

その結果として、このような状況を、「真っ向から、拒否する自分」が明らかになったことは、大きな収穫と呼んでよいものかもしれません。

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2006年09月08日(金) 23時29分00秒

「トワイライト」 重松清 2006-114

テーマ:--重松清
最近、はまっております「重松節」。
「トワイライト」読了しました。
これまた、いろいろと考えさせられる作品でございました。

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重松 清
トワイライト
出版元
文藝春秋
初版刊行年月
2002/12
著者/編者
重松清
総評
23点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:5点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:4点 
意外性:3点 
装丁:4点

あらすじ
26年ぶりに再会した同級生達。校庭に埋めたタイムカプセルとともに、それぞれの胸の思いも封印を解かれる―。あの頃の未来に追いついたいま、21世紀とはどんな日々なのか。70年代型少年少女に捧ぐ。<<Amazonより抜粋>>


どうしても、同じく重松氏の作品である8月の月刊「後感」で見事1位を獲得した「いとしのヒナゴン(以下、ヒナゴン)」 と比較してしまうわけですが、ヒナゴンが夢を信じることの大切さ、カッコ良さみたいなものに対して、こちらは、逆に現実に押しつぶされそうな自分の不甲斐なさ、またそこに見ることのできる「生きていくということ」が描かれています。

舞台は「定年ゴジラ」(ちなみにこちらは8月の月刊「後感」で2位と獲得) でクローズアップされた都心から離れたニュータウン(これって多摩センターそのものだったりしますけどね)。
26年ぶりの同窓会で再会した同級生達の「現実」を赤裸々に描いた作品です。

物語は克也・徹夫・淳子(ケチャ)の3人の視点で交互に語られていきます。
3人に、徹夫の妻で同じく同級生の真理子、マイペースな浩平、そしてすぐに転校してしまったけれど、今回のタイムカプセルを掘り起こすことを言い出した張本人の杉本の3名が加わり、計6名の「今」と「これから」が進んでいきます。

結局のところ、みんなそれなりに家庭を持ち、人生を進めてきて、大いに悩みを抱え、それなりに不甲斐なさが丸出しになっているのです。
で、一番切なかったのは、やはり徹夫なのですよね。

本文中にもありますが、小学生の時は、漫画の「ドラえもん」になぞらえて、徹夫を「ジャイアン」と称していますが、やっぱりその時まがりなりにも「本当は優しいガキ大将的存在」が、実は家庭不和の真っ只中にあって、人生のすべてに逃げている男になってしまっているわけです。

これは周りも厳しいけど、本人が一番やるせないんじゃないかって思いました

この同窓会をきっかけに再び出会うこととなる同級生達がお互いの人生を知りつつも決してそれ以上の関係にならず、結局のところ、(自分の問題は、自分で解決しなくっちゃ、もう大人なんだし)的終焉を迎えます。

この辺りのもって行き方は、さすがの「重松節」です。

・・・

そういえば、(小学校の頃の同窓会ってしてないな~)と、変に自分のことを思い出し、同時に(あ、同窓会委員って私だ)って余計なことまで思い出しちゃいました。

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2006年08月26日(土) 00時47分42秒

「いとしのヒナゴン」 重松清 2006-109

テーマ:--重松清
良い本です
是非学校の推薦図書にしていただきた種の作品です。
「信じる」ってことは大事だし、やっぱりイッちゃんはサイコーなのです。

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重松 清
いとしのヒナゴン
出版元
文藝春秋
初版刊行年月
2004/10
著者/編者
重松清
総評
25点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:5点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:5点 
意外性:3点 
装丁:4点

あらすじ
黒い影、獣のにおい、夜の闇に光る二つの目。謎の類人猿「ヒナゴン」の存在を信じる、元ヤン町長イッちゃんが燃えた。市町村合併問題、町長選をめぐって、ヒナゴン騒動はヒートアップ。一年ぶり、待望の長篇小説。<<Amazonより抜粋>>



何が良いって、ストーリですよ。

「片田舎の若者離れ」「過疎化の進む、財政難に苦しむ田舎町の真実」「平成の大合併」「夢を持たなくなった子供たちと夢が語れなくなった大人たち」「一本気な者の愚かさに見える格好良さ」「老いという恐怖」・・・
いろんなテーマが凝縮されているにも関わらず、それでいて「嫌味がない」というか「胸焼け感がない」。
例えば、小鉢の料理がたくさん出て、あれも美味しいこれも美味しい、でも「丁度良い」って感じ。
・・・う~んちょっと変な例えですね。

で、それらのテーマの物語が「比奈町」という舞台の「町長選挙」「ヒナゴン騒動」で語られることで見えてくる、「信じる」という共通したテーマ。
例えば、それでいて、すべて食べ終わった後に、ふと、たくさんの食材に隠された一貫性が見えてくるといった感じ。

・・・

・・・

ますます例えが”くずれた「美味しんぼ」”のようになってしまいましたが、とにかく、ハートウォーミングな作品なわけです。

比奈町出身で、東京での生活に疲れた主人公「石井信子」(通称:ノブ)が、語る物語なのですが、この間、読了したばかりの「定年ゴジラ 」にも増して”語り方”が良いですね。
「定年ゴジラ」では”地文が3人称でも語りかけられている感覚”と表現しましたが、本作はまさに語り手としての役割がしっかり生きていました。
例えば、一人称であるが故の「聞き語り(本人が登場しない場面を誰かに聞いて上で語っている様)」な部分などは、とっても親近感がありました。

なんだか「重松節」というよりは「重松語り」といった感じです。

そんな語り手から語られる様々な物語・・・といってもやっぱりこの辺りは、「よくある物語的な物語」だったりするのですが、この「よくある物語」を十分に引き立てているのは、登場人物のおかげかと思います。

元ヤンキーの町長イッちゃん(五十嵐一郎)をはじめ、その同級生で悪がき仲間のドベさん・カツ・ナバスケ。
ノブの同級生のジュンペや西野君(西野君だけがあだ名で呼ばれいってのも大きなポイント)。
それに、脇を固める数々の登場人物。

きっちりそれぞれの役割をこなしているんです。
で、それに加えて、大きな見所は、これら登場人物の全員が、”間違っていようがなんだろうが、しっかり意思を持っている人々”なんですよね。

良いことばかりではない閉塞された町で、それなりに一生懸命に頑張っている人々なわけで、なんだか叱咤激励されている感覚になるのです。

いろいろと語りたいところですが、何はともわれ、ちょっと疲れ気味って人は、是非一読いただきたい作品です。
本書は、この書評ではめずらしく(ほぼ)万人にオススメできる良書です。

P・S:
ちなみに元ヤンキーの町長イッちゃん。それとそのイッちゃんの奥さんの理恵さん(もちろん元ヤンキー)。
このお二方の夫婦っぷりは見ものです。
流石奇屋「本の大賞」本年度助演男優賞ならびに女優賞の最有力候補がでてしまいました。

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2006年08月19日(土) 15時23分42秒

「定年ゴジラ」 重松清 2006-106

テーマ:--重松清
第119回直木賞候補作の定年ゴジラを読了しました。
これぞ「重松節(と勝手に命名)」ってやつですね。

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重松 清
定年ゴジラ
出版元
講談社文庫
初版刊行年月
1998/03
著者/編者
重松清
総評
23点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:5点 
読了感:4点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:4点 
意外性:3点 
装丁:3点

あらすじ
開発から30年、年老いたニュータウンで迎えた定年。途方に暮れる山崎さんに散歩仲間ができた。「ジャージーは禁物ですぞ。腰を痛めます。腹も出ます」先輩の町内会長、単身赴任で浦島太郎状態のノムさん、新天地に旅立つフーさん。自分の居場所を捜す四人組の日々の哀歓を温かく描く連作。「帰ってきた定年ゴジラ」収録の完成版。<<Amazonより抜粋>>



7つの連作短編に文庫版のみ「帰ってきた定年ゴジラ」を加えた全8編が所収されています。

重松さん、うまいですね。
こりゃ、筆致が素晴らしいんですね。

特段大きな揺れのある物語ではないのですが、とてもストーリ性がありました。
要するに「定年を迎えた男達の何気ない人生模様」を描写しているだけといえばだけなのです。
が、独特の文体で装飾し、ぐいぐい読ませてもらいました。
さつき断景 」に近い文体は、地文自体は3人称であるものの、まるで語りかけられているような感覚を受けます。
そして、後30年弱で迎える自分自身の定年後の人生を無理やりでも思い浮かべてしまうわけです。

連作短編という形式はとっているものの、時系列順に並べられ、環境には、変化がおきます。
その中でも大きなストーリを形成しているのは、主人公山崎さんの次女万理の結婚話なわけですが、このあたりの山崎さんの態度の歯がゆさのようなものに、妙な親近感を感じました。

個人的には、第4章「夢はいまもめぐりて」が、ぐっときました。
この章のラストで、山崎さんが「ふるさと」をフルコーラス口ずさむのですが、ここは「意地になって、田舎を忘れたがっていた不器用な自分」を思い起こさせるシーンであり、同じ境遇ではないものの、ちょっとぐっと来てしまったのですね。

登場する人々も基本的に「人間らしさ」に溢れ、ほんと何気ない中に見つけた良い話を聞かせてもらったという感じです。

仕事やプライベートに一生懸命な人にオススメの一冊です。

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2006年04月08日(土) 02時38分02秒

「流星ワゴン」 重松清 2006-042

テーマ:--重松清

いやいや、やられちゃいましたよ。
極めて、感情移入しやすい作品でした。
シチュエーションは「バック・トゥー・ザ・フューチャー」ばりのファンタジーなのですが、語られている物語は、断絶した父子の関係を再生する物語です。

amazonリンク
重松 清
流星ワゴン
出版元
講談社文庫
初版刊行年月
2002/02
著者/編者
重松清
総評
23点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:5点 
読了感:4点 
ぐいぐい:5点 
キャラ立ち:3点 
意外性:3点 
装丁:3点

あらすじ
死んじゃってもいいかなあ、もう…。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして―自分と同い歳の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか―?「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。<<本背表紙より>>


物語は、簡単に言ってしまえば、「大人のファンタジー」でございます。

冒頭に記述したとおり、5年前の交通事故で死亡したものの浮遊しつづけてしまっている橋本さんが運転するオデッセイが「デロリアン」よろしく、「バック・トゥー・ザ・フューチャー」のシチュエーションなわけです。
ただ、「バック・トゥー・ザ・フューチャー」は「過去を変える⇒未来(今)への歪みが起こる」ことが、面白み(メインストリーム)であるに対して、本書は「何を実行しても、過去は変えられない⇒確認をするのみ」であることが大きな違いであろうと思います。

死にたいと思っている人を乗せる「流星ワゴン」は、確かに過去に連れて行ってはくれますが、あくまでも「死にたい状況に追い詰めてしまった最初のきっかけ」を知るのみであり、まさに「後悔、先に立たず」という極めて、正しいルールに則っているというわけです。

ですので、読み手は、主人公が死にたいと思う原因である「家族崩壊」のきっかけとなった場面を覗き、歯がゆい思いで、物語を進めていくという苦行を強いられるのです。

で、この物語が前述の通りであるとした場合、相当に辛い物語でなることは容易に想像できます。
が、いやいや、それがそうでもないってところが、作者のうまさなのだと感嘆いたしました。

それはナビゲーター役である橋本義明・健太親子と、時を同じくして死期間近となった主人公の父親である永田忠雄(通称:チュウさん)の存在に拠るところが大きく、これら登場人物がおりなす「親子(父子)関係の修復」というのが真のテーマだったりするからなのです。

主人公である永田一雄は、オデッセイに乗って過去を確認し、悲嘆すると同時に、同世代の姿で登場する(嫌いな)父親とのコミュニケーションをはかり、徐々に心を開いていきます。

「親のこころ、子知らず」であり「子のこころ、親知らず」である関係が、同世代の父子というシチュエーションによって徐々に誤解が解かれていく様子は、何か深く感じ入ることができました

この経験を得ることのできた主人公が、ラストに見せた行動は、至極当たり前の結末であり、「そうそう現実は甘くない」ってことと、ありたりですが「死ぬ気になれば、なんでもできる」ってことを、ただただ率直に感じました。

また、橋本親子には別の物語が存在しており、ラスト前にピークを迎えることとなりますが、この物語自体には、正直、涙腺にきてしまいました。
ここにもしっかりとした「親子の関係」があります。

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2005年10月14日(金) 01時50分53秒

「さつき断景」 重松清

テーマ:--重松清

重松 清
さつき断景

何かと「それなりに」噂の重松氏の初お目見え本です。
この本は良いですね。好きです。
年代の違う3人の登場人物が過ごす、1995年~2000年の6年間の5月1日だけを切り取って繋げた作品。
こういった趣向の作品は嫌いではないですし、「ある日常」を描くってことも意外に好きだったりします。

1995年、1月阪神・淡路大震災、3月地下鉄サリン事件、そして5月1日―。神戸でのボランティア活動から帰京したタカユキ(15歳)は惰性としか思えない高校生活に疑問を感じていた。電車一本の差でサリン禍を免れたヤマグチさん(35歳)は、その後遺症ともいうべき自己喪失感に悩んでいた。長女が嫁ぐ日を迎えたアサダ氏(57歳)は、家族団楽最後の日をしみじみと実感していた…。そして96、97…2000年。三人は何を体験し、何を想い、いかに生きたのか。<<Amazonより抜粋>>

それぞれにちょっとだけ”わけ”は、あるものの、まったくもって普通な登場人物3人の6年間の物語なわけですが、365日(もしくは366日)分の1だけの出来事を6つ繋げて、6年間の物語としている趣向に大変興味を持ちました。
その物語には、残り364日(もしくは365日)の出来事は語られず、かといって当たり前のようにそこに存在していたりするわけです。その圧倒的に経過する期間については語らず、1/365でその人達の人生の6年間を語りきるということなわけです。

また、リアリティーがあると思ったのは、タカユキ・ヤマグチさん・アサダ氏には、比較的大きな事が起きた95年の出来事があり(それぞれに淡路大震災のボランティア活動だったり、サリン事件にギリギリ逃れたり、長女が嫁いだりする)、一般的な物語はそれをきっかけにして、6年間の変遷を見せるものだと思いきや、2000年での彼らの大きな出来事は、95年のこととは、まったく関係のないことだったりするわけです。

このあたりを、我々の身に置き換えてみると、なるほど、とても真実味があるわけです。

また、一般的には、年をとると、刺激的なことがなくなるから、時間が早く感じたりするものなのですが、この年代の違う3人には、平等に同じ時間が流れているということがよく分ります。やもすれば、一番年長者のアサダ氏の6年間は他の二人より十分(あらゆる意味で)充実した6年間だったりするわけです。
もちろん小説的脚色があったりするわけですけど。

そんなこんなで大変に楽しませてもらいました。
真実味のある情景(タイトルになぞらえれば「断景」)が手に取るように分る作品
でした。

そんな趣向が好きそうな方はお手にとってお読みくださいませ。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
蛇足:
ちなみにわたくし流石奇屋ヒットの95年~00年の5月あたりは以下のとおりです。

95年:社会人2年目にして、一人暮らししてから5ヶ月くらい。部屋の掃除と洗濯物以外の土日の過ごし方を見つけに、現在もなお使用している「図書館」に通い始めた時期
96年:社会人3年目にして、一人暮らしして1年と5ヶ月くらい。忙しかったようなそうでないような。
97年:社会人4年目にして、一人暮らしして2年と5ヶ月くらいで、付き合っていた今の奥さんに結婚を申し込もうかどうか迷っていた時期
98年:社会人5年目にして、結婚して2ヶ月くらい。新婚なのに、仕事に忙殺されていた時期。
99年:社会人6年目にして、結婚して1年と2ヶ月くらい。昨年以上に忙殺されまくっていた時期。
そして00年:社会人7年目にして、結婚して3年と2ヶ月くらい。なんだか土日も出勤していた時期。
で、そんな状況が04年春くらいまで、つづいたりしていました・・・

なんだか結婚してから、忙殺シーズンという稼ぎ時とマッチした人生でございました。
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