2009年02月28日(土) 01時20分54秒

「ちょいな人々」 荻原浩 2009-018

テーマ:--荻原浩
荻原浩氏「ちょいな人々」読了しました。

amazonリンク
ちょいな人々/荻原 浩
¥1,600
Amazon.co.jp
出版元
文藝春秋
初版刊行年月
2008/10
著者/編者
荻原浩
総評
21点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:3点 
意外性:4点 
装丁:3点

あらすじ
隣の庭木を憎む主婦、脱サラした占い師、いじめられっ子と一緒に復讐する相談員など、ちょっと変でちょっと可哀そうな人達のお話<<Amazonより抜粋>>


7つの短編が所収されています。
氏のユーモアセンスが全面に出ている短編集です。

一方で「明日の記憶」のようなものも書き、一方でこういう短編も書けてしまうという点は、良い意味で読者を裏切ってくれる作者であるといえるでしょう。

7つの短編すべてが、ユニークな設定であり、そこに登場する人物も、個性的な人。
そして、きっちり物語は収束し、誰も困らずに終わる。

これらを統合して、極めて厳しい言い方をすれば「ありがちなユーモア小説」となってしまいますが、ちょっと他の作者と違うような気もするわけです。

個人的には「犬猫語完全翻訳機」とその続編にある「正直メール」が好きでした。


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2008年12月01日(月) 21時20分42秒

「愛しの座敷わらし」 荻原浩 2008-136

テーマ:--荻原浩
荻原浩氏「愛しの座敷わらし」読了しました。 

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愛しの座敷わらし/荻原 浩
¥1,890
Amazon.co.jp
出版元
朝日新聞社
初版刊行年月
2008/04
著者/編者
荻原浩
総評
21点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:4点 
ぐいぐい:3点 
キャラ立ち:3点 
意外性:3点 
装丁:4点

あらすじ
生まれてすぐに家族になるわけじゃない。一緒にいるから、家族になるのだ。東京から田舎に引っ越した一家が、座敷わらしとの出会いを機に家族の絆を取り戻してゆく、ささやかな希望と再生の物語。朝日新聞好評連載、待望の単行本化! <<Amazonより抜粋>>


なんというか荻原節なのですよね。

良くある「いまひとつうまくゆかない家族」があって、それが引越しをし、そこに棲む「座敷わらし」を介して、「家族としての機能」を取り戻していく物語です。

面白いなと思ったのは、文体。
5人の家族の視点で物語が進むのですけど、地文は変わりつつも、ずっと三人称という点。

通常、ここまでの視点の変化があるのであれば「一人称単数(私、俺、僕、わたしなど)」で語られるべきところを、ずっと「三人称単数(具体的には登場人物の名前そのもの)」でいくのです。

最初のうちはなれないものの、どこかで馴染める感じになるのが不思議でした。

また本書はもともと朝日新聞で連載されていたものが単行本化されたのですけど、新聞小説特有の「切れ切れにくるクライマックス」があまりありませんでした。

この辺りも意図的に仕組まれているのではないかと穿った見方をしてしまいます。

内容はあらすじおよび前述したとおり「家族のしての機能」を取り戻す。
いわゆる「家族再生」の物語です。

こういう家なら引っ越したいなと思わせる物語でした。
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2008年04月22日(火) 22時32分42秒

「さよなら、そしてこんにちは」 荻原浩 2008-046

テーマ:--荻原浩
荻原浩氏「さよなら、そしてこんにちは」読了しました。

amazonリンク
さよなら、そしてこんにちは/荻原 浩
¥1,575
Amazon.co.jp
出版元
光文社
初版刊行年月
2007/10
著者/編者
荻原浩
総評
21点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:3点 
意外性:4点 
装丁:3点

あらすじ
世のため、人のため、そして家族のため、働き者の悲哀を描く、著者独壇場の傑作集。いっしょけんめい翻弄される人々スーパーマーケットに勤務する松田孝司は食品課・非生鮮係長。自分の健康など二の次で、今日もメモを片手に血眼でテレビを見る。主婦向けの高視聴率番組で紹介される“身体にいい食品”をチェックするために……(「スーパーマンの憂鬱」)ほか、若い妻と愛娘にクリスマス・パーティーをねだられる住職、実は笑い上戸の葬儀社社員など、さまざまな人生を切り取った作品集。プロフェッショナルの悲哀を描く著者独壇場の傑作ユーモア!<<紀伊国屋Bookweb>>


小説宝石やら小説新潮やら小説すばるやらに掲載された中編7つが所収されています。

どの物語も共通しているのは、「現代の些細な流行を風刺した作品」であることです。
掲載された年の流行ってことで、今となってはやや「古い印象」のものもありますが、総じて物語としての一貫性があったのは好感触でした。

以下、タイトル毎に紹介。

■さよなら、そしてこんにちは
葬儀ビジネスの悲哀。タイトル作です。最後にきっちり落とすところは私の知っている荻原節といったところです。

■ビューティフルライフ
リストラ後の家族が田舎暮らしをする話。こちらもきっちり「家族」を見せるところが良いですね。

■スーパーマンの憂鬱
一時期流行った「健康食ブーム」。そのブームに翻弄されるスーパーの仕入れ係の物語です。実際にこんな話はあったんじゃないでしょうかね。

■美獣戦隊ナイトレンジャー
戦闘モノイケメン俳優にのぼせる主婦の話です。これはもう少し長編でも良かったかも知れません。

■寿し辰のいちばん長い日
いわゆるグルメブームに乗り切れない寿司屋の話。分かりやすいオチがつき、ほくそ笑んでしまいます。

■スローライフ
タイトルの通りです。スローライフなのに・・・といった話。こちらも落語のようなちょっとひねったオチ(?)がつきます。

■長福寺のメリークリスマス
こちらは「流行」というよりも、昨今の「クリスマス」を寺の住職はどう過ごすかという極めてシュミレーションな物語。こういう住職の方が人間らしくて良いですね。

ということで各物語、さくっと軽めに解説させてもらいました。
そろそろ荻原氏のこういったノリの長編も欲しいところですね。




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2008年01月09日(水) 20時57分36秒

「サニーサイドエッグ」 荻原浩 2008-003

テーマ:--荻原浩

荻原浩氏「サニーサイドエッグ」読了しました。

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荻原 浩
サニーサイドエッグ (創元クライム・クラブ)
出版元
東京創元社
初版刊行年月
2007/07
著者/編者
荻原浩
総評
21点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:4点 
意外性:3点 
装丁:3点

あらすじ
私は最上俊平、私立探偵である。ペット専門の探偵ではないのだ。ある日、若く美しい女性が事務所を訪れてきた。ペット捜しなら、もう――「うちの猫を捜してほしいんです」はい喜んで。1カ月ぶりの仕事ではないか。しかもそうこうするうち、「ブロンドで青い目の若い」秘書まで雇えることに。え、な、なんだこいつは!? おまけに猫捜しも、ただの猫捜しではなくなっていくのだった……あの名作『ハードボイルド・エッグ』続編! <<Amazonより抜粋>>



2005年の9月に読了したこちら の続編ですね。
もちろん世界観は、まるまる「ハードボイルドエッグ」のまま。
チビもいるし、Jもいる。
ぱっとその世界を思い出せるということは、しっかり印象に残っているということなわけです。

読前感想でも触れていますが、

「ハードボイルドエッグ」の感想に「続編希望」と書いたら、それが実現しました。
というのも、ちょっとうれしかった
りします。

ということで、本作は前作同様「ハードボイルド仕立ての悲哀コメディー」となっております。

今回のポイントは、ふいのきっかけで相棒となるギャル「茜」。
この「茜」と主人公・最上のやりとりを軸に、結局のところ「ペット探偵の事件簿」ばりに物語が進行していきます。「茜」自身にも、複雑な状況になったりして、意外でした。

ただのコメディーで終わらないところがなんとも荻原節だったりもして、読了後はそれなりに爽快感(というか達成感)のようなものを感じることができます。

ところで、12月に読んだ、同じく「ハードボイルド仕立て」のこちら と、評点で大きく差がでるのは何故でしょうか?

会話の回りくどさなど、鼻につくといえば、こちらの方が、よっぽど鼻につくのですけど、
やっぱり「きっちりハードボイルド風である」ということと、それを「思い切りシニカルにしている」といったところで、こちらの方が、ユーモアのある作品(=機知のある作品)なんじゃないかなと思ったりしました。

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2007年08月27日(月) 22時11分35秒

「千年樹」 荻原浩 2007-096

テーマ:--荻原浩
荻原浩氏「千年樹」読了しました。
これは良い作品だと思います。

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荻原 浩
千年樹
出版元
集英社
初版刊行年月
2007/03
著者/編者
荻原浩
総評
23点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:4点 
意外性:4点 
装丁:4点

あらすじ
木はすべてを見ていた。ある町に、千年の時を生き続ける一本のくすの巨樹があった。千年という長い時間を生き続ける一本の巨樹の生と、その脇で繰り返される人間達の生と死のドラマが、時代を超えて交錯する。<<Amazonより抜粋>>



初期作品に見られた「荻原節」は完全に鳴りを潜めてしまいました。
が、新しい構造を持つ物語に、チャレンジしているように思いました。

全8編の短編が所収されています。
本書の特徴は、3つあると思いました。

①「ことりの木」という同じ「くすの巨木」を中心にした物語である
②ひとつの短編に過去・現代の2つの物語が在り、それはひとつの共通のキーワードを持ち合わせている
③現代の物語の登場人物が、物語間でリンクする(=同一人物であるが時代が違う)

このあたりの構造って、個人的に非常に好きです。
読んでいて、なんかこう「うれしくなってきちゃうんです。
この手の作品


伊坂幸太郎の「ラッシュライフ 」的な、古川日出男の「ベルカ、吠えないのか? 」的な、山本幸久の「はなうた日和 」的な・・・(といって、ピンと来ない方ばかりだと思いますが)

ひとつの物語で収束させつつ、全体としても、もっと大きな世界を描いてしまうという構造。
この「くすの木の周り」には、きっともっとたくさんの物語を持っているだろうという「余白の十分感じさせる」世界観。

う~ん、完全にこの手の作品は、はまりますね(極めて個人的に)

物語一つ一つは、とても悲しく、それでいて空しく、ちょっとホラーじみたものばかりなのであり、今までの荻原作品に期待していたものは、何一つなかったりするんですけど、物語ひとつひとつの完成度も高く、一つ目の「萌芽」から最後の「落枝」まで、休むことなく物語世界を楽しませてくれます。

ラストの「落枝」では、「人間の悪」をテーマに物語を収束させるあたりも、ぐいっと引っ張ってくれました。

ま、なによりこの構成力ってのが良いですね。


あまりにもはまってしまったので、各編ごとに共通のテーマ(キーワード)と登場人物を以下の通り、整理してみました。


千年樹-登場人物図

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2007年05月05日(土) 01時44分44秒

「四度目の氷河期」 萩原浩 2007-053

テーマ:--荻原浩
2007年GW読書期間第1弾。
荻原氏の最新作「四度目の氷河期」読了しました。

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荻原 浩
四度目の氷河期
出版元
新潮社
初版刊行年月
2006/09
著者/編者
萩原浩
総評
21点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:4点 
ぐいぐい:3点 
キャラ立ち:3点 
意外性:3点 
装丁:4点

あらすじ
ぼくは今日から、トクベツな子どもになることにした-。何をやっても、みんなと同じに出来ないワタルは、ある日死んだ父親に関する重大な秘密を発見する。その瞬間から、少年の孤独なサバイバルゲームは始まった…。 <<Amazonより抜粋>>


荻原版ジュブナイルといった感じでしょうかね。
タイトルとか冒頭の博物館の陳列ケースに声をかけるシーンなどから、それなりの波乱万丈な流れを期待していたのですが、意外にストーリ自体はさっぱりしています。

主人公のワタル目線、「ぼく」の一人称で、「ぼく」の4歳から17歳の人生を語っていきます。
「自分は人とは違う」と思い込み、それを体現しようと努力するわけですが、正直このあたりで、主人公の「人とは違うことへのこだわり=ある意味での自己満足」についていくことができるか心配になってしまいました。

事の大小を置いておけば、誰から子供の頃は「人とは違う自分」というものに憧れ、いずれ来るであろう「あたりまえな自分」をどうにか否定しようとするところがあるのですが、そのような点で、このワタルは典型的に悲しいくらい子供なわけです。
と同時に、自分自身の幼少から少年・青年時代を見るようで、なんだか気恥ずかしい感じを受けました。

よくよく、考えてみると、これ荻原氏だからここまで読みきれたのですけど、他の作家さんなら読み終えていない可能性が高いかもしれません。
このシチュエーションは、要するに、どこにでもいる普通の男の子の10代までの自伝のようなもの(もちろん、母子の別れとか物語的な脚色はありますが)で、「それで、どうしたの?」と聞いてしまう類の話だと、本当に極めて個人的に思ってしまったのです。(すみません)

それなりにちゃんとしたラストもあったりして、物語としては当然ありなのですが、正直、わざわざ、時間を掛けて読むこともなかろうと、そこまで今ここでノスタルジックな感慨を受けなくても良いだろうにと。

物語中の救いは、サチのワタルとの関係性の変遷と、サチ自身の境遇の変化。
もしからしたら、この「四度目の氷河期」は、サチの物語かも知れませんね。

・・・

ふと思いましたが、本作は、読み手の年齢やら経験やらで感想が大きく変わるような作品じゃないかと思いました。
この作品を10代で読んでいたら、同世代の感覚として深く感銘を受ける可能性もありますし、もう少し年をとってから読んでいたら、それなりに懐かしさと、慈悲深い心で読めたのではと思います。

で、こんな中途半端な年代に読んでしまったことに後悔しつつ、この年代は、こんな感想をもってしまうものもいるのだと客観的に思ったのでした。

やっぱり荻原氏には、軽妙な荻原節で悲哀なサラリーマン物語を書いてもらいたいと、切に願っちゃいます。
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2006年09月14日(木) 23時59分23秒

「押入れのちよ」 萩原浩 2006-117

テーマ:--荻原浩
荻原氏の現時点での最新刊である「押入れのちよ」を読了しました。
(やっぱり荻原氏は、「短編」より「長編」だよな~)と認識できた短編集でございます。
のっけからネガティブな感じですが、ま、そういうことです。

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荻原 浩
押入れのちよ
出版元
新潮社
初版刊行年月
2006/05
著者/編者
荻原浩
総評
20点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:3点 
読了感:3点 
ぐいぐい:3点 
キャラ立ち:4点 
意外性:3点 
装丁:4点

あらすじ
今ならこの物件、かわいい女の子(14歳・明治生まれ)がついてきます…。幽霊とサラリーマンの奇妙な同居を描いた表題作ほか、「木下闇」「殺意のレシピ」「介護の鬼」など全9話を収録した、ぞくりと切ない傑作短編集。<<Amazonより抜粋>>


雑誌初出が、1999年のものから書き下ろしまでの9作の短編が所収されています。
要するに7年間に書かれた荻原氏の短編集なわけですが、あまり初出年毎の差異はございません。

テイスト的には「コールドゲーム」「噂」あたりに近い、やや怖い感じの物語群ですが、”ホラー作品集”と言い切れるものでもないですね。
作品にもよりますが、どちらかといえば、ちゃんとした短編にスパイスとして「ホラー要素」を加えたといった感じでしょうか?

せっかくなので2文節くらいの概要をざっと・・・

「お母さまのロシアのスープ」
どうやらロシアに住む娘二人と母の話。
と思いきや、思い切りストレートなオチがついて、最初からビックリさせてもらいました。

「コール」
男2・女1の大学の同級生3人の話。
ちょっとした叙述トリックもあって、なかなか趣き深いです。

「押入れのちよ」
安く借りることの出来たアパートには娘の幽霊「ちよ」がいたという話。
主人公と「ちよ」のやりとり。ちよのキャラクターは秀逸です。

「老猫」
叔父から遺産で譲り受けた家には飼い猫が住んでいたという話。
じわじわと異様な世界へと変貌していく様は、どこかで読んだこともあるようなないような・・・

「殺意のレシピ」
お互いを殺そうと思っている夫婦の夕食の風景。
ドタバタコメディーなのですが、テーマとしては、単純に笑っていられない話ですね。

「介護の鬼」
義父の介護をする苑子は、まさに悪い意味で「介護の鬼」。
これまたドタバタコメディーのようですけど、じっとりした感じを受けました。

「予期せぬ訪問者」
愛人を殺害した現場にやってくる訪問者。なんとかその場を切り抜けようとするが・・・
殺人者と訪問者のやりとりが面白いです。

「木下闇」
15年前に、妹が、行方不明になった現場に戻ってきた姉。不思議な気配に誘われて巨大なくすの木を登ってみると・・・
静かな作風です。ぞくぞくっときますね。

「しんちゃんの自転車」
真夜中に遊びに来たしんちゃんと私の冒険の物語。
なんとなく最初からオチはわかっちゃったのですが、一人称で軽やかに語ることで、別の趣きが生まれています。


ちゃんとした短編なので、全体としては悪くはないのです。
なのですが、結局のところ、荻原節に必要なのは、登場人物のキャラクター設定であり、それを補完するためには長編が良いのですね。
背景とか会話とか、やっぱり短編となると十分補完することもできず、どうしても、そのあたりの弱さ(浅さ)が目立ってしまったわけです。
裏を返せば、私が荻原作品を追っているのは、「キャラ押し」だったりするということを再認識できたりもしました。
(ま、知ってましたけどね)

表題作に登場する「ちよ」なんかは、このモチーフで長編ならば、十分助演女優賞を狙えるキャラクターなのですが、なんだかもったいない感じがしました。

ということで、しつこいようですが、極めて個人的には「荻原氏はやっぱり長編!!」ということで、おしまい。

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2006年09月03日(日) 15時48分38秒

「ママの狙撃銃」 荻原浩 2006-110

テーマ:--荻原浩
最近忙しくなってしまって、読了した本の感想がUPできない状況になってしまっています。
とはいえ、ちゃんと本を読了できているってことは、それほど忙しくもないってことで、いやはや「矛盾の9月」でございます。

・・・

閑話休題。。

・・・

ということで、荻原浩氏の「ママの狙撃銃」を読了しました。
「明日の記憶」で、一躍有名作家の仲間入りとなった(と思う)荻原氏の最新長編でございます。
時同じくして、既刊の荻原本を読了した私にとっては、こちらの作風の方が、やっぱ荻原ワールドであり、気負いしない感じが受け止められてよかったです。

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荻原 浩
ママの狙撃銃

出版元
双葉社
初版刊行年月
2006/03
著者/編者
荻原浩
総評
22点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:4点 
ぐいぐい:3点 
キャラ立ち:4点 
意外性:4点 
装丁:3点

あらすじ
福田陽子は一見ふつうの主婦。ある時、「もう一度仕事をしてみないか」??25年ぶりのKからの電話。幼い頃米国に住む祖父の元で暮らした陽子は、祖父からあらゆることを教わった。射撃や格闘技、銃の組み立て・分解。そう、祖父の職業は「暗殺者」だったのだ。<<Amazonより抜粋>>


あらすじにもあるように、一見、馬鹿馬鹿しいシチュエーションを、まじめに作品にしております。
この主人公である主婦・福田陽子は、家族(の家計)を守るため、暗殺者(スナイパー)の仕事を引き受けます。

物語は、そんな福田陽子の一人称で進みます。

ちょっとした中流家庭の主婦を営む陽子には、小説的な様々な問題が用意されていて、それらの解決をすると同時に、スナイパーの仕事もこなしていくスーパー主婦といった感じです。

陽子自身の知られざる過去の経緯といった場面もあるはありますが、あまりくどくなく、それでいて「どうしても断わりきれない理由」が陽子自身の気持ちあったりする場面は、読んでいて痛々しく感じました。

物語中盤になると、スナイパーとしての活躍とは別に、娘の珠紀のイジメ事件を解決する場面があります。
このあたりは、ここ最近にない爽快感を感じました。
正直、かっこ良い主婦なわけで、やもすれば、陽子の一番の活躍の場面です。

一つ目の暗殺が無事に終わった直後に新しい依頼が舞い込んできます。
この物語がラストの大きな展開に繋がっていき、ちょっと悲しくて、それでいて勇気の持てる終わり方に結んでいます。


今までの荻原本にはない作風でありながら、どこか懐かしい感じのする作品でした。

ちなみに、息子の秀太。
いいキャラです。
オロロの早苗 に近いインパクトで、ございました。
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2006年02月06日(月) 01時19分28秒

「さよならバースディ」 荻原浩 2006-017

テーマ:--荻原浩
この「さよならバースディ」でもって、昨年9月から読み始めた、荻原浩氏の既刊につきコンプリートでございます。パチパチ。
で、刊行順でいえば「あの日にドライブ」なのですが、これは発売当初に奇跡的に借り出せたので、記念すべきコンプリートの作品は、「さよならバースディー」でございます。
類人猿ボノボ である「バースディ」と東京霊長類研究センターの「田中真」の物語。
中盤からラストにかけての真実と驚愕は、(そうきたか~)と感服でございました。

amazonリンク
荻原 浩
さよならバースディ
出版元
集英社
初版刊行年月
2005/07
著者/編者
荻原浩
総評
22点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:4点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:3点 
意外性:4点 
装丁:3点

あらすじ
類人猿の言語習得実験を行う霊長類研究センターを舞台に、そこで働く研究者、実験をされるボノボを巡って引き起こされる人間ドラマを、上質のミステリーとして描いた傑作。<<Amazonより抜粋>>


荻原氏の定番と言えば、主人公が勤める「広告代理店(もしくはそれに近いコマーシャルな仕事)」だったりしますが、この物語は、東京のはずれにある霊長類研究センターが、物語の定点です。

冒頭はバースディプロジェクトと呼ばれる研究の進捗状況を報告する場であり、人間とコミュニケーションすることができるボノボのバースディが、集まった研究者を驚かせるシーンからはじまります。
主人公は、このバースディプロジェクトの責任者である田中真。
彼は、同じ仕事場の研究スタッフである藤本由紀と付き合っています。
そして、田中が結婚を申し込んだ夜に、由紀は飛び降り自殺をしてしまいます。

圧倒的な落胆の中で、その自殺現場に居合わせたバースディから、事件の真相を聞きだそうとすることが、物語のメインストリームとなりますが、ここは荻原氏、そう簡単には行きません。

事件(他殺)を想定していた田中が、フリーライターの神田から、とある話を聞く中盤以降、事件はまったく別の様相を見せます。
前任の責任者の自殺との因果関係、スポンサーの撤退、そして大学という機関のあり方。

ラストは、バースディとの信頼関係すら揺らぐ真相に、打ちひしがれる中、すべてが理解できた田中は、ある方法で、バースディを媒体として、死んだはずの由紀とコミュニケーションを図ります。

この物語の大きなポイントは、”愛する人が、突然いなくなる”という悲しさと、”よりどころとしていたものから裏切られる”という切なさだと思いました。

この悲しさ・切なさが人生のうちに同時に訪れてしまった主人公。

そして、圧倒的に救われないままであった主人公を助けるバースディという構図。
許容できるはずのない状況でありながら、意外なほど静寂なラストです。
もちろんハッピーエンドでもなければ、破滅的でもない、ただただ真実を知るという行為だけが、残された静かなラストでした。

”出来過ぎたラスト”と酷評をもらっていたり、”「明日の記憶」が良かったので期待はずれである”といったコメントも散見されているようですが、私はそれなりに良かったと思いました。

ま、正直、あれくらい演出じみていないと、ホント救われないですからね(正しくは、このラストでも救われないですけど)

ということで、読後感は、同氏の「コールドゲーム 」に近い感覚でした。

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2006年01月31日(火) 21時18分46秒

「明日の記憶」 荻原浩 2006-014

テーマ:--荻原浩
いや~やられました。
昨年の秋から追い続けている待望の荻原本。
しかも話題の「明日の記憶」で、書評2回目の男泣きです。
ちなみに映画化 もされるようですね。

土曜日夜中の1時半から読み始めて、止まらず、朝方までで一気通読。
本当に土曜でよかったです。
そして本の内容は土曜日の夜中に一人で読むには、大変つらく、どこまでも切なく、そして感動的過ぎる作品でした。
そういった意味でも本当に土曜でよかったのです。

こんなの電車の中で読んでいたら大変なこととなっていましたね。
amazonリンク
荻原 浩
明日の記憶
出版元
光文社
初版刊行年月
2004/10
著者/編者
荻原浩
総評
24点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:5点 
読了感:4点 
ぐいぐい:5点 
キャラ立ち:4点 
意外性:3点 
装丁:3点

あらすじ
知っているはずの言葉がとっさに出てこない。物忘れ、頭痛、不眠、目眩――告げられた病名は若年性アルツハイマー。どんなにメモでポケットを膨らませても確実に失われていく記憶。そして悲しくもほのかな光が見える感動の結末。<<Amazonより抜粋>>


広告業に勤める佐伯が、物忘れが激しくなってきたことに気がつき、ふとしたことから医者に見てもらうと「若年性アルツハイマー」だったという「展開」とか、宣告後に、自暴自棄に陥り、夜中に一人起きて酒とタバコで気を紛らわす「弱さ」とか、この佐伯には、まもなく結婚する娘と会社があって、その双方に気がつかれないようにする佐伯自身の「努力」とか・・・とにかく身につまされる瞬間がたくさんありました。
決して私自身が同じ境遇ではないのですが、明日同じことが自分の身に起きたら、きっと同じ振る舞いをしてしまうのだろうと、身につまされたのです。

佐伯自身がその症状を自覚をするころから日記をつけ始めます。
その日記が、症状が悪化しようとも、基本的に理路整然としてる佐伯自身の一人称の物語の間に挟みこまれるように登場します。
やはりそこには、目を背けたくなるような病気の進行がはっきりと表現されています。
例えば、書けたはずの難しい漢字が「かな」になっていったり、同じ文章(以前に書いたことを忘れてしまい、もう一度書いてしまう)が、しばらくするとまた繰り返されるところなど、物凄くリアルに感じ入ってしまい、この演出は、ある意味残酷だなと思いました。

そして、病状が進行していくなか、徐々に自分自身を見失いかける佐伯を救っているのは、家族の存在だったのだと思います。娘の結婚式までは気丈に振舞う佐伯自身の姿にも感動しますが、特に妻・枝実子の佐伯に見せる献身ぶりには要所要所でうるうるしちゃいました。(これは、最優秀助演女優賞候補ですね)
久しぶりに鼻がツーンとしちゃいました。
例えば、アルツハイマーは、人体にアルミニウムが摂取されることが原因であること知ると、その進行を抑えるべく、アルミ製の鍋や容器をすべて捨て新しいものに買い換えたりします。
特に「心配している」ということを前面に出すのではなく、佐伯の不安を増長させまいとする、そしてプライドを傷つけないようにする献身ぶりを見せてくれます。こういうのダメなんですよね~
ま、これこそ夫婦のあるべき姿ではありますが、一方で刻一刻と記憶が消失していくという事実と向き合っていかなければならない夫婦の姿にも、圧倒的な悲しみがついて回るわけです。

ラストは、学生自体に友人と行った『とある場所』で、独白調に語られる『記憶を失っていくことも悪くない』というある種の悟り。そして、その悟りの後に訪れる、悲しみさえも包み込むような圧倒的な感動。
佐伯が苦しんで苦しんで苦しみぬいて得た何かと引き換えに訪れるこのラストで、これまた男泣きでした。
(ここで終わらすか~)と思う方はいらっしゃるかと思いますが、私にとっては100点満点のラストでした。

・・・

以前、この書評にて「荻原氏は毎回進化している」といった風の生意気なコメントをした記憶がありますが、本書も漏らさず、ユーモアだけではない著者の進化がはっきりと感じとれました。
特に物語の演出・進行は、荻原氏の技量の高さを感じ入り、大いに感服
してしまいました。

例えば、このような病気に罹ったことによるいくつかのエピソードが秀逸で、人間関係の脆さを表している「会社に病気がばれるエピソード」や、「陶器の先生とのエピソード」。また、国立にある施設に自分が罹患者であることを伏せて「見学に行くといったエピソード」など、本当にノンフィクションのような肌触りのするエピソードばかりで、この辺りは荻原氏の技量の高さを証明しています
こういった作家さんの作品を多少順不同になりながらも、刊行順に読めたことに、なんだかうれしくなってきます。

そうそう、この作品は、本屋大賞 2位の作品なのだそうです。
ふむふむ、これで私の「信用のおける賞」の3つ目が現れたということですね。(ちなみにもう2つは、「メフィスト賞」と「日本ファンタジーノベル大賞」です)

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