「芥子の花 金春屋ゴメス」 西條奈加 2007-071 | 流石奇屋~書評の間

「芥子の花 金春屋ゴメス」 西條奈加 2007-071

既読の「金春屋ゴメス 」の続編です。
あらすじにもありますが、「異色の時代小説」です。

主人公辰次郎の江戸国での振舞いが板についてきました。


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西條 奈加
芥子の花
出版元
新潮社
初版刊行年月
2006/09
著者/編者
西條奈加
総評
20点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:4点 
ぐいぐい:3点 
キャラ立ち:4点 
意外性:3点 
装丁:2点

あらすじ
上質の阿片が海外に出回り、その産地として、日本をはじめ諸外国から槍玉に挙げられた江戸国。老中から探索を命じられたのはご存知「金春屋ゴメス」こと長崎奉行馬込播磨守。ゴメスは、異人たちの住む麻衣椰村に目をつけるが…。辰次郎、NY出身の時代劇オタク・松吉、海外旅行マニア・奈美といった面々はもちろん、女剣士朱緒をはじめ新メンバーも登場し、ますますパワーアップした異色時代小説。<<Amazonより抜粋>>



前作を読むことで、この物語の設定そのものを理解していたので、すんなりと物語の世界に入ることはできました。
物語自体は「江戸国」の出来事なので、読み進めていくと、ふとこのような設定を忘れ、”勧善懲悪”が売りの時代小説に似た既読感を感じることがあります。
さながらよくある「捕物帖」モノなので、逆に、この物語が近未来の日本の中に存在する「江戸国」の中であることを現す描写などがあると、返って抵抗しちゃったりします。
このことは、それだけ、「捕物帖」としての精度が高い物語だってことだったりします。

とはいえ、この設定でからこその面白さもあり、例えば、極刑の島流しは実は谷底(江戸国に島はないので)だったりするところや、悪役の前職は日本国で政治家だったとか。
このような異色なところを楽しみつつ、純粋に時代小説として楽しめるところもあるということで、一粒で2度美味しい感があります。

ラストの裁きも爽快でありつつ、なにやら次へ繋がる伏線のようなものも見え隠れしました。
これは続編に期待したいと思います。

ちなみに主人公格の辰次郎は前作より成長しており、金春屋ゴメスも男前(??!)になっております。
そんなキャラ立ち好き派にもそれなりにオススメできます。

できれば前作より順序良くお読みいただければと思います。